もうすぐ秋ですね…。
残暑は未だに続きますが…。
今年も3ヶ月で終わりですね。
それでは、本編どうぞ。
「零君、大丈夫かい?顔が真っ青だよ。」
帰投中、小型船に乗る零を響が気遣う。
「う、うん、なんとか、おえ…。」
零が吐き気と戦いながら、答える。
響の声に続くように、瑞鳳が零を見る。
「ほんとに大丈夫?辛そうだよ?通信のときも、おかしかったし。」
すると、先頭を駆ける五十鈴が。
「瑞鳳、本当はあんたもわかってるんでしょ?」
瑞鳳の方を見ずに、言い放つ。
更に。
「提督の代わりに、指揮を買って出た。尚且つ、
五十鈴は零を見る。
「ねぇ、本当に元帥の息子ってだけなの?」
零に訊けば。
先に、瑞鳳が口を開く。
「わかってるというか、知ってます。元帥の息子が、元帥にノウハウを教わってないはずがない。じゃなかったら、
響を除いて。
六駆の三隻は、話についていけず。
「なんの話してるんだろう…。」
「さぁ…?」
雷の問いに、暁はただ首を傾げるばかり。
電だけは。
「零君のことなのです。」
「「いや、それはわかってる。」」
当たり前のことをいって、二人からツッコまれた。
そのまま鎮守府へと先頭に続いて、速度を保つばかりである。
「記憶が戻ったんだよね?零君。それで、拒否反応じゃないけど、身体がびっくりして気持ち悪くなってるんでしょ?」
瑞鳳は零を気遣いながら、言葉を待つ。
「瑞鳳の言う通り、全部思い出したよ。うん、全部。五十鈴さんの言う通り、指揮の仕方まで。」
零が笑顔でそう言うと、瑞鳳は目に涙を浮かべる。
「良かった…。良かったよぉ…。零君が辛そうにしてるのを、もう見なくて良いんだね…。」
「ありがとう、瑞鳳。」
零は話してるうちに落ち着いたのか、顔色が心做しか良くなる。
「それよりも、みんな。」
「「提督だよね?」」
全艦が一斉に、零を見る。
零は、真剣な表情になり。
「響、もう一回だけ、通信してみて。」
零が響に促す。
「了解。」
短く言ったあと、通信を試みるが。
「ダメだ、出ないね。」
響は頭を振る。
「もしかしたら、海野提督に何かあったのかも知れない。」
零の一言に、全員がその速度のまま固唾を飲む。
「五十鈴さん、旗艦として何か良い案なんてあったりする?」
零が五十鈴に、目を向けると。
「そうね…このまま鎮守府に行くのは、少し心許ないわ。」
「もし、深海棲艦に攻め込まれてるとしたら応援に来てくれる人も必要だし…。」
五十鈴に続くように、雷も入る。
「だよね、どうしようか。」
「あっ!」
全員が悩む中、五十鈴が思い出したように声を上げる。
「海野大将よ!呉に居るの!あの筋肉ゴリラなら娘の窮地ともなれば、仕事を放ってでも来るはずよ!」
五十鈴の提案に、零は目を見開いたあと大きく頷く。
「海野提督って、お父さんも海軍なんだ…。よし、それで行こう!」
「ついでに、暁と雷は入渠させて貰えば、一石二鳥ね。」
五十鈴は頭が良いと、零は悟った。
「五十鈴さん、俺は提督じゃないから、旗艦命令で通達して。」
そう零が五十鈴に指示を出す。
しかし、返ってきたのは。
「あれだけの指揮を見せておいて、今更何よ?いいから、零君が
五十鈴が零に片目を瞑りながら言うと、零も頷き返し。
「じゃ、じゃあ、暁と雷は被弾して辛いだろうけど、できる限りの最大戦速で呉鎮守府に向かって。響、電、五十鈴さん、瑞鳳は俺とこのまま舞鶴に向かおう。」
「「了解!」」
零の指示はたどたどしいものであったが、全艦が納得した。
暁と雷は、そのまま呉へと向かった。
「司令官さんが無事だといいのです。」
電の言うことはもっともであり。
「ほんとにね、どうしたのかしら?何も無ければいいんだけど。」
五十鈴は同調する。
「司令官さんは、元帥さんが居ない今、大本営には行きたくないって、執務室に引きこもるような人なのです。それなのに、大淀さんも出ないとなれば、おかしいことなのです!」
電の言葉は、説得力があるもので。
「鎮守府に急ごう。」
零の号令に、全艦が頷き。
「「了解。」」
そのまま全速力で向かった。
「ん?おぉ?何か寒気が…。」
「また天龍さんあたりに文句を言われてるのでは?」
「う、うぅむ。」
その頃、海野大将は"筋肉ゴリラ"と揶揄され、悪寒を覚えていた。
「っくっしゅん!!」
どういうわけか、それは執務室に閉じ込められている長門もだった。
「自分の提督が窮地だというのに、呑気にくしゃみか?」
「生理現象だ。いつでも出るだろう?」
長門が、至極当然とばかりに返せば。
「生意気な!!」
――パァン!!
「ぐっ!」
指宿が長門の頬を、拳銃の持ち手で叩いた。
「くくっ、助けが来ないとわかるなり、大人しくなったか。」
指宿が、雪の頭に拳銃を突きつけ直し、下卑た笑みを浮かべる。
「指宿中将。私は忙しいので、そろそろやめて頂きたいのですが…。」
雪の一言に、指宿は額に青筋を浮かべる。
「海野少将、何故こんな目に合ってるのか、未だにわからないのか?」
指宿の問いに、雪は堂々たる威厳を保ったまま。
「皆目見当も付きませんね。」
そう言い放った。
しかし、それがいけなかった。
「俺の嫁になるからと、甘く見ていれば…!」
「誰も、指宿中将の嫁になる予定などありませんが…?」
呆気に取られる雪とは対照的に。
指宿は、脳天から衝撃を受け。
「ま、まだそんなことを…ここまでしているのに…。」
「はぁ。身勝手に、我儘に、それでいて横暴。数多の女性から嫌われるのも、無理はありませんね。」
的を射る雪に、指宿は眉間に皺を寄せ。
「何度も縁談を破談にした上、人を見下すとは…!!」
「「縁談!?提督が!?」」
艦娘達は驚きを隠せず、思わず声を出す。
それを気にせず、指宿は銃を持つ手に、力を籠める。
「俺は優しいからな、選ばせてやる。」
指宿は引き金に指をかけたまま。
「今殺されるか、今嫁になるか。選ぶといい。」
指宿の傲慢な態度に、雪は溜息を一つ吐く。
「はぁ、下らなさ過ぎる。」
(提督に気を取られてる今なら…。)
大淀は、指宿が雪に気を取られるうちにと、通信を試みる。
だが。
――パァン!!
「ふざけた真似をするな!艦娘!俺の油断を狙おうなどと、笑わせるな!」
「きゃっ!」
怒号とともに、大淀は頬を勢いよく平手で振り抜かれる。
「あなたは、それでも海軍の人間ですか?!」
それを見た赤城が、指宿に怒鳴る。
「うるさいぞ、艦娘風情が!」
完全に頭に血が昇っている指宿を相手に、雪も為す術が思いつかない。
「くそ!俺の嫁になれば、黙っていたものを!お前といい、お前の父上といい!嫌気が差す!」
この指宿尋定という男、身長は180センチ、体重は136キロという巨漢であり。
お世辞にも、女性ウケが良いとは言えなかった。
「俺の嫁にさえなれば、将来は安泰だというのに!」
「安泰なのは、指宿中将だけです。」
指宿の一人語りに、雪はすかさず割って入る。
「くそ!いいだろう!このまま、お前たち諸共、鎮守府ごと潰してくれる!」
(長門さんも赤城さんも居るのに、提督が人質に取られてたら何も…。)
指宿の怒声を耳に受けながら、大淀は考えを張り巡らせる。
しかし、案など思いつかない。
「私との縁談が破談になった程度で、ここまでとは…。民衆の前で示しが付かなくなりますよ?」
雪は、説得を試みる。
しかし。
((それ以上、
艦娘からしてみれば、完全な"煽り"にしか聞こえなかった。
「余裕で居られるのもここまでだ。俺と結婚が嫌ならば…死ね!」
指宿が引き金を引いた。
(だ、誰か!お願い!!)
赤城が目を瞑る。
――バァァァン!!
「な、なんだ!?」
「俺の娘に何をしてるんだッ!貴様ァ!!!!」
「勝手は、榛名が許しません!」
ドアが蹴破られたと同時、艦娘と男の怒鳴り声が響き渡る。
音に驚き、呆気に取られている指宿を。
「貴様は海軍の恥晒しだッ!!」
――ズガァン!!
「ごべっ!!」
飛び蹴りで、文字通りに指宿を吹っ飛ばした。
「大本営で、しっかりと処分を言い渡すからな!」
男の姿を見て、雪と艦娘達が思わず声を上げる。
「ち、父上!」
「「海野大将と榛名さん?!」」
「雪、無事か?」
海野大将が、雪を気遣う。
「は、はい、私よりも長門と大淀が。」
「大淀と長門はすぐに入渠してこい。」
「「はっ!」」
その命令に、二人は敬礼し、そのままドックへ向かう。
「それよりも父上、どうしてこちらへ?」
雪は額から汗を流し、父に訊く。
「あぁ、お前のとこの暁と雷が来てな。」
「「司令官!大丈夫?!」」
雪は信じられないモノを見たかのように、二人を見る。
「暁、雷。二人には遠征を頼んでいたはずじゃ…」
二人は顔を見合わせ。
「話は後でいい?
「暁の言う通りよ!今言えるのは、頑張ったのも、危険があるって判断したのも、零君よ!」
二人の説明に雪は目を丸くし、そのまま微笑む。
「そうか、彼が…ふふっ。」
全員が気を抜いていれば、蹴破られたドアから何人かが入って来る。
「あれ?ドアがない…?」
「「え?!なにが起きてるの?!」」
零の後に続き、艦娘が入ってくる。
「皆、遠征お疲れ様。」
雪が労うと、後ろから指宿が立ち上がる。
「おのれ…何をさっきからごちゃごちゃと…。」
そう呟いたかと思えば。
「お前のせいだ、海野雪…。」
拳銃を再び雪に向ける。
「させんぞ!」
海野大将が飛びかかろうとするが。
「うるさい!」
指宿が雪に近づき。
「さて、海野少将、ここまでだな。」
額に突きつける。
「動くなよ?」
海野大将はその場から動けなくなる。
自身の娘の額に銃口があるとなれば、下手なことは出来ない。
しかし、一人の艦娘が制止を聞かなかった。
「指宿中将だっけ?提督から離れて。っていうか、邪魔。」
瑞鳳である。
「来るなよ、艦娘。お前らの提督が…。」
瑞鳳は聞く耳を持たず。
「提督から、離れて。」
「だから近づくなと…。」
指宿は、瑞鳳の殺気に気圧される。
「
瑞鳳は尚も近づき続ける。
「いいのか…?どうなっても…。」
指宿の態度と言葉が、尻すぼみになる。
「いいから、退いて。」
瑞鳳は圧と殺気をそのままに、指宿の腕を掴む。
「ぐっ…。」
圧倒される指宿。
「ここには、まだまだ少年の子供も居るの。誰かが血を流すところを、これ以上は見せてあげないで。」
そんな指宿を差し置いて、瑞鳳は睨む。
そして。
「いい加減に離れなさいよ、邪魔。」
瑞鳳の一挙手一投足、指宿の次の行動。
全員が固唾を呑みながら、二人を見続ける。
それしか出来ない。
「自分の艦娘を恨むことだな。」
指宿が引き金を引くと同時、瑞鳳がそのまま掴んだ手に力を込める。
「痛い!痛い!」
艦娘の力には敵わず、思わず指宿が悲鳴を上げる。
銃弾は弾道を大きく逸れ、後ろの壁を貫いた。
「提督から、すぐに、離れて頂戴。」
威圧そのままに、瑞鳳が指宿を見る。
「艦娘風情が、調子に乗るなよ…?」
指宿は痛みに耐え、瑞鳳に銃口を向ける。
「そんなモノで、私達艦娘が貫けるかしらね?」
瑞鳳の目には、指宿しか映っていない。
否、
「提督に振られたのか、何なのか知らないけど。」
瑞鳳は
「こんなことまでして、情けないとは思わないの?」
距離が空いたのを確認し、雪が音を立てずに離れるも。
「逃げることなど、予想済みだ。」
指宿は、そのまま雪に向き直る。
その瞬間。
「危ないっ!」
零が雪に向かって走り出す。
それも、自身の判断と直感で。
(全てが遅く見える。)
零の集中力が格段に上がっていた。
───バーン!!
銃弾が放たれた。
その凶弾が貫いたのは。
「ぅぐっ…。」
「「零君?!」」
「なんだと?!」
雪を庇った、零の肩だった。
これには、全員が度肝を抜かれた。
そう、指宿も含めて。
瑞鳳は、肩から血を流しながら蹲る零を見る。
(零君…血が出て…なんで…?え…?)
如何せん、理解が追いつかない。
「零君…?」
近づき、呼びかけても、返事は無い。
「零君…?」
揺すっても。
「零君?私だよ…?」
抱き寄せても。
「起きてよ…。」
返事も無く、ただただ、血を流し続けるだけの零。
「あ、あぁぁ…。」
──嗚咽を漏らした。
「…許さない。」
──瑞鳳の目から。
「許さない。」
──涙が滴り。
「
──その髪は白くなっていく。
「
──その手に握られるのは、弓。
「返シテ。」
──矢を番え。
「返シテクレルマデ、絶対ユルサナイ。」
──指宿に照準を合わせる。
「私カラ、アノ子ヲ、取ッタ、ユルサナイ。」
──その目は黒を帯びた青に染まる。
「それでは、まるで、
指宿は腰を抜かし。
「いかんッッ!!!!」
その瑞鳳を見た海野大将は、声を張り上げる。
艦娘達は、呆然と、ただただ瑞鳳を見つめるばかり。
「瑞鳳!!しっかりするんだ!!」
雪も声をかけるが。
──
憎しみに呑まれた、瑞鳳のその耳には。
……何も届かない。
いかがだったでしょうか?
艦これBGMを聴きながら、仕上げました…。
それでは、また次回に。