魔法学園の呪われ首席少女(の順位)を落としたい   作:タタラ

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閑話 大賢者の苦労

 

「――はぁ……。とうとう、こんな荒っぽい手に出てきたか……」

 

 誰もいなくなった訓練場にて一人。

 

 たくさんの教師が学園中の修繕に駆り出される中、ボクも自分から手を上げ、ヒイラギくんたちが頑張ったここへ。

 

 破壊されたそこかしこを魔法で直しながら、ボクはため息を吐く。頭の痛い問題に、最近はいつも悩まされていた。

 

 ――現在、魔法国は政治的に孤立している。

 

 特に、かつての仲間たる勇者パーティを輩出した各国を中心として、うちの国だけ爪弾きにされているのだ。

 

 魔法国だけ戦力が図抜けているからなんて、そんなふざけた理由で……。

 

 どうせ今回の襲撃もどこかの国の手引きに違いない。また世界規模の戦争を起こそうとでもいうのだろうか?

 

「やっと平和になってきたというのに……どうしてこう、みんな争いが好きなんだろうか」

 

 はあぁ、と。深いため息。

 

 正直他国の考えにはまったく共感できないけれど、しかし。

 

 ――それにしたって魔法国、政治的な立ち回りが下手すぎるんだよね……。

 

「みーんな魔法魔法って……たしかに魔法は大事だけれど。限度があるだろうに……」

 

 うちの国、一二が魔法で三も魔法って感じの魔法好きだからね……。だからこそ軍事力がずば抜けているんだけれど、皮肉にもそれが国際的な孤立の一因になっているし。

 

 なんだろう……みんなもっと魔法以外にも興味持とうよ。国外との交渉も毎回ボクが駆り出されているけれど、別に僕は貴族でもなんでもないからね。

 

 しかも問題はそれだけじゃない。そのお得意の魔法でさえ、最近は質が下がってきているのだ。

 

「平和ボケと言うのかな……。最近の子からはどうにも必死さが感じられない」

 

 大戦時と比べるのは酷だろうけれど……あの頃を知るボクとしては、やはり少し物足りなさを感じてしまう。

 

 他国の脅威を感じ始めた昨今は特に、国力低下が大きな問題となる。

 

 ボクのような老兵が口を出し過ぎるのも良くないし、本来なら未来ある若者には伸び伸びやってもらいたいのだけれど。

 

「今回の襲撃の件もあるし。……やはり手を入れざるをえない、か」

 

 魔法学園へのテコ入れが効果を発揮するには時間がかかってしまうが。それでも、十年二十年先のためを思って。

 

 軍にはすでに以前より手を入れているから、次は国内戦力の卵たちにもっと成長してもらわなければ。

 

「すべては……彼ら彼女らに、もう二度とあの地獄を味わわせないため」

 

 そのためなら、ボクは理不尽な老害と詰られようと、正しいと思うことをし続ける。

 

 ただ今日は、ボクに見る目がないせいで、危うく金の卵を逃すところだった……。

 

 あの、非の打ち所がない少年――トール・ヒイラギくん。

 

「いやあ、しかし……良かったね、彼」

 

 思い出しても惚れ惚れする。あの見事な魔力制御。

 

 大魔法士と呼ばれる人間は、たいてい感覚派なんだけれど、彼はその前例を覆す数少ない魔法士かも。

 

「いっそ、彼を学園の教師にした方が全体を底上げできるのでは……?」

 

 悪い案じゃない気がする。

 

 元々技術は完全に学生離れしていたところに第二魔法の習得だ。いよいよ大半の学園教師を置き去りにしてしまった。

 

 それに何より彼は――人格が極めて優れている。

 

「優れた魔法士は大体どこか歪んでいるというのに、彼ときたら」

 

 自分より他者を優先する。面倒見も良く、人望がある。まさに教師に打ってつけの人材じゃないか。

 

 ……まあ、本人はまだ学生として学ぶつもりのようだから、無理強いはできないけれど。

 

「せめて、彼がこの国でも最高峰の教育を受け続けられるように。そうだな……ボクの弟子にするというのはどうだろう?」

 

 うん。いま考えついたけれど、とてもいい案に思えるね。

 

 直弟子なんてもう何十年も取っていないけれど、実は少し夢だったんだ。

 

 ――若くて才能がある、見目麗しい弟子……!

 

「必死に国に尽くして、結果八十を越えているのに独り身だからね。エルフの血のおかげで老けない身体にかまけていたけれど、最近は特に家へ帰ると寂しいんだ……。それくらいの役得、許されるだろう?」

 

 別に、囲い込むとか青田刈りとか、そんな意図は一切ないんだ。ただなんというか……そう。推し、というやつかな!

 

 ふふふ。彼はヒイラギ侯とも違って、物腰も柔らかいしね。ボクの枯れた生活にも彩りが出てきそうだ。

 

 うん、やっぱりいい考えだ。そうしよう!

 

 さて……そうと決まれば――

 

「国外の不穏分子の調査……特に今回の襲撃については、国とも連携して動かないとだから。まずは弟子取りの提案だけでも」

 

 いつまでも引退できず嫌になるけれど。

 

 魔法国に暮らすたくさんの同胞たちのため。そしてほんの少し、ボク個人の趣味のためにも。

 

 もうしばらくは、頑張ろうか――。

 

 

 

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