この話はフィクションです。
特定の考えを否定肯定する意図はございませんのでご了承ください。
シリウスシンボリが生徒会で一波乱を起こしてから数週間。
トレセン学園を、いや世界を巻きこんだ事件が発生した。
「ブラックウイルス」なる新種のウイルスによる感染症が、世界中で流行し始めたというのだ。
国によってはこの事態を重く見て、都市封鎖に踏み切るなどの措置がとられた。
トレセン学園内にもこの事件の余波は届き、レースへの観客動員をどうするか、国が発表した「抗体」を注射することをウマ娘たちに奨励するかどうかが話し合われることとなった。
「おい。この件、今後の世界にどう影響を与えるか賭けようぜ」
ナカヤマフェスタが、いたずらっぽい表情で寝転んでいるシリウスに話しかけた。
「黙れ。私は疲れてんだ・・・」
数週間前、シリウスと生徒会の間でちょっとした抗争があった。
旧知の仲であるルドルフとひと悶着があって以来、シリウスは精神的に波があった。
そのことをナカヤマも心配しており、彼女なりの励ましをしようとしたのである。
「私の読みだと、こいつはどでけえヤマになる。まったく、大人ってのは面倒くせえなあ。っと、ちょっと前までのアンタはまさにそんなことをしてたような気がするなあ。ルドルフ会長と権力争い!なんてみんな噂になってたぜ」
「・・・挑発しても今の私は乗る元気がねえ」
その日の授業中も、シリウスは思いがけずまどろんだ。
「シリウス!!」
先生の声で目が覚めた。
シリウスがそこまで眠り込むのは珍しかった。
放課後の練習もシリウスは軽めにこなした。
そんな日が続いていたある日、政府はURAを通してウマ娘にも「抗体接種」を行ってほしいという旨を通達した。
あくまで自分の意思を尊重するが、接種がなかったウマ娘には一部のレースに制限がかかるという生々しい内容だった。
時期的に今は冬で風邪もはやりやすい。とはいえ、早期にパンデミックが収束すれば、皐月賞や桜花賞といったクラシック三冠のレースなどには間に合いそうなものだった。
ウマ娘たちの間では議論があったが、政府は安全性を保証しており受け入れるウマ娘が多かった。
「この抗体、怪しくねえか?私はリスクをとってでも接種しないに賭けてみようかと思ってるが」
「馬鹿言え。政府が大嘘をこくなんてありえねえだろ」
シリウスはすんなり抗体接種して面倒ごととおさらばする予定だった。
そのとき、寮の部屋をノックする音があった。
彼女の腹心の後輩である「オールウェイズ」というウマ娘が、シリウスのもとを訪問してきたのである。
「どうした。何があった」
オールウェイズは素行不良こそあれど将来を有望視されているウマ娘で、シリウスの一番弟子のような存在になりつつあった。
その彼女が、スマホの画面を見せながら二人の前にあらわれた。
「シリウス先輩、例の抗体ですけど、接種される予定ですか?」
「なぜだ」
「あれ、私たちの界隈で危険だっていう話があって・・・ほら、このページに書いてあるんです。それで、先輩には打ってほしくないなと思って。重大な副作用が起こるかもしれないんです。私、先輩のこと好きだから」
「な・・・」
「おい、とはいえその話は繊細な話だぞ。レースへの制限がかかるかもしれない。アスリート人生に影響あったら責任とれんのか?」
思わずナカヤマフェスタが素に戻った反応を示した。
「いえ・・・とれません。でも、もしそれでシリウスさんが健康を害されたらと思うと・・・」
シリウスはおもむろに立ち上がり、オールウェイズの頭に手をのせて言った。
「ありがとな。今日は帰りな。私がついこの前までルドルフと喧嘩してたの知ってるだろ?あれ意外と疲れたんだよ。そのことはきっちり考えるから」
「ありがとうございます!あの、みんないつもの部室できっとシリウスさんを待ってるんで」
「そうか。オールウェイズ。一言だけ言わせてくれ」
「はい」
「この後、私の身に何が起こったとしても、絶対に心配すんじゃねえ。お前たちを裏切ることはしねえから」
「・・・!!・・・はい!わかりました」
(・・・どういうことだ?)
ナカヤマが訝し気にシリウスを見た。
オールウェイズが帰り、ナカヤマが寝静まったころ、シリウスは一人部屋を出て言った。
寮の入り口にはヒシアマゾンが立っていた。
「すまねえな」
「いいんだよ。アンタからの申し出なんて珍しい。一時休学を自ら申し出るとはよっぽど疲れたね?」
「今の私に、世界がどうとか、レースがどうとかはどうでもいい。休息が必要だ」
「ゆっくり休んで、また元気な姿を見せておくれよ」
ヒシアマゾンに見送られてシリウスが寮を出た。
トレセン学園の外には赤い高級車が止まっていた。
「待ってたよ。飛行機もちゃんと手配してある。存分に旅してきな」
運転席に乗っていたのは、スピードシンボリだった。
多分続き書きます。
編集とかでちょこちょこ文章が変わることがあるかもしれませんが、お気になさらず