またしても何も知らない元一般鍛冶屋VS拗らせ旧友VS全てを見ている薬師   作:ただのにわᑕᗩᖇ

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「ねぇ、お願い■■。目を、開けて」

目の前の寝台に横たわる、辛うじて人型を保つ何か。
友が縋り付くそれから放たれる異質な焦げ臭さは、特別強くもないにも関わらず嫌に鼻を突く。
ふと、視線を下にずらす。ずらして、しまった。

はく、と。ありもしない餌を取り合う鯉のように、なにか言おうとしては空回る。

それは、腕輪だった。□□が皆でお揃いの物を付けようと言って、□□に何かと甘い●●が賛同して、■■が各々(おのおの)の名前を彫ったソレ。
この戦が始まる前に、奴らに傷をつけられたくなくて。生存や幸運の加護と一緒にそれぞれの腕輪にも結界を付けては■■と○○に「大袈裟だろう」と笑われた。

それが最後の会話になる等と、想像すらしなかった。

「おい」

右手を腕輪に、左は肩であろうそこに置いた。

「返事をしろよ、若造」


パキッ。

何かが、崩れ落ちた。


前日譚 雲の上でくらいゆるゆるぐだぐたでいいじゃない
それゆけわちゃわちゃ五人組


───カン、カン、カン。

 

これで、何度目だろうか。

最早そんな疑問すら抱かず、文字通り無心で不純物を叩き出し続ける。

理想のそれに近づける様に、一打一打に魂を込めて。

最早慣れ親しんだその動きに思考を割く必要は無い。

投げやりではなく、それ(思考)すら雑念以外の何物でも無くなる程にこの身体に馴染んだが故。

その代わり、ただひたすら意識を研ぎ澄ます。

 

幸運にも、この場所(鍛冶屋)に足繁く通う物好きはそうそういないし、居ても大抵が仕事や己のやり方に理解のある者だ。未だ鍛冶の頂きに至らぬ身なれど、今更周囲が()()騒がしい程度で心を乱される様な未熟者でもないつもりだ。

それでもこうして静かに作業出来る環境は職人としては素直にありがた───

 

 

「うむ!今日の飯もなかなかに美味いな!合格をやろう!」

「師匠、流石に勝手に冷蔵庫を漁るのはどうかと思いますよ」

「食器棚勝手に弄りながら言っても説得力ないですよ」

「おい、余の分は当然残っていような」

 

静かに───

 

「酒も美味いし今日も親友はかわいい!あひゃひゃひゃ!」

「おいふざけるなそれは余の酒ぞ」

「もう酔ってるんですか?珍しいですねぇ」

「そもそも休みとはいえ昼間から人の家の酒の所有権巡って騒ぐのは社会人としてどうなんだい?」

 

しず───

 

「ええいさっきからうるさいぞ()()!お前は我の母か!」

「弟子です」

「まぁまぁ()()、これでも食べて落ち着いて?美味しいよ、はいあーん」

「あーん♡」

「情緒不安定すぎませんか?」

()()相手と言えど親友に介護させるとか幼子か何かか此奴」

「おや、ついこの間まで湯沸かし器すらまともに使えなかった()()様が言うと説得力が違いますね」

「喧嘩なら買うぞ小童が」

 

 

「うるせぇなどいつもこいつも!騒ぎてぇなら他所に行けッ!」

 

流石に我慢の限界が来たのでいつものメンバー(飲兵衛×3+クソガキ一匹)を隣の居間(リビング)に放り投げる。

「「「「わー」」」」と随分と間抜けた鳴き声を上げながらその姿を確認し障子をバンッ!と閉める。

一瞬の事でありながらひと仕事成し遂げた様な達成感に一つ頷きながら作業台へと戻る。

さぁ、やり直しだ。

 

「なんのかんの言いつつも追い出さないのツンデレだよね」

「飯漁ること自体に怒らないの我達のこと大好きすぎだよね」

「「「「ねー」」」」

 

聞こえてるぞやかましい。

 

「ひと段落着いたら主も来いよー

 

 

 

 

応星!」

 

「・・・おう」

 

「応星だけに?わひゃひゃ」

「やかましいわ」

 

 

俺は応星。コロニー郡『仙舟同盟』羅浮の工造司所属の───多分、一度生まれ変わっているだけの、ただの鍛冶屋だ。

 

 

 

 

 

 

 




「───□□」
「もし彼奴(あやつ)に、■■に会えるかもしれないと言ったら。お前はどうする?」
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