絶望神と共に行く遊戯王5D's   作:重症患者を救いたい

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2話 強襲!絶望神アンチホープ!

 荘厳なる漆黒、《絶望神アンチホープ》が威容を放ちながら言葉を放つ。疾走っているオレも遊星も圧倒されているが、四つ目の絶望とか宣いだした。何を、言っているのだろうか。

 

『この世界とは異なる次元にて、我の原典は希望を否定する絶望として伝説の決闘者の前に立ちはだかった。だが!あろうことか、闘いの伝承を再現せし創造主は複製たる我を原典とは遥かに劣化した存在として生み出した!その結果……生まれてくるべきではなかった絶望を我は味わった。数えきれないほどの嘲弄!祝福されぬ生誕!「絶望神」の名を冠する我が!絶望するなどと!』

 

 ぐわんぐわんと空気が振動する。それは心からの慟哭だった。

 まあ、要するに大多数のデュエリストにネタにされている絶望をこいつは味わっているワケだ。

 まず、レベル1モンスター4体を墓地に送る召喚条件自体が原作と異なるし、重い。

 が、これだけ現実世界に干渉できる存在だ。機嫌を損ねるわけにもいかない。

 

「嘆きたくなるのはわかりますよ。他の自分のモンスターが攻撃できないデメリットも持っちゃいる。けど、実際こうして召喚できているわけだし?意志あるものを馬鹿にすんのはオレの主義に合わねえ。なんとかするさ」

「そうだ!この世に不要なものなどない!どんなに使いづらいカードにも意味はある!だから、生まれてくるべきではなかったなんて言わないでくれ!」

 

 こいつの事情を知らない遊星も叫ぶ。自身の存在意義の否定は、彼も厭うものだから。

 

『……甘美な言葉だな。ならば空虚なる者よ!未来の救世主よ!我が存在する意味を示してみせよ!』

 

 空虚?よくわかっているじゃないか。なるほど、こいつと縁が繋がった理由が理解できたかもしれない。

 

「ならばお望みどおりにってな。バトルフェイズ!《絶望神アンチホープ》で《ジャンク・デストロイヤー》を攻撃!『アンチホープ・ディスペア・スラッシュ』ッ!!」

 

 外殻に備わった無数の剣が飛び出し、破壊の魔神へと振り下ろされる。

 

「罠発動!《くず鉄のかかし》!相手モンスター1体の攻撃を無効に―――」

「できませんよ、それは!墓地のレベル1モンスター《イービル・ソーン》を除外し、《アンチホープ》の効果発動!この効果はバトルステップにのみ発動可能であり、ダメージステップ終了時まで他の効果を受けず、戦闘では破壊されない!」

「なに!?」

 

 剣は立ちはだかったかかしをすり抜け、《ジャンク・デストロイヤー》をなます切りに。

 爆発四散した余波が遊星を襲う。

 

「ぐうっ……」

 

遊星:LP3700→1300

 

 衝撃で遊星号がバランスを崩す。神の一撃だ、ダメージが現実のものとなっている可能性は十分にある。それは、オレとしては不本意だ。

 

「大丈夫ですか!?痛みは!?」

「平気だ。心配には及ばない」

 

 ふ、と笑みを浮かべるとすぐに体勢を立て直した。よかった、彼を傷つけずに済んだ。

 

『我が導きし魂よ。このデュエルは我の存在意義を探すための闘い。この英雄にも生き証人となってもらわねばならぬ。命を奪うような真似などせん』

「そりゃ結構。が、聞き捨てならねえ台詞が聞こえたんですけど。オレはアンタの所為でこの世界にきたわけ?」

『以前のウーヴァン・ディットは我を扱いこなすどころか召喚すらできなかった。このままでは、奴らが依頼してきた不動遊星との闘いで勝利を得るなど夢のまた夢。なれば、と我は別次元から我と似た波長を持つ魂を引っ張ってその身体に宿してやったのよ』

「は?」

 

 確かに、前の世界ではオレもこの生に祝福などされなかった。不貞を働き蒸発した父、病気で亡くなった母。引き取ることを拒む親戚。その境遇を憐れむか、揶揄うかしかしない他人。有体に言えば、オレも人間に絶望はしていた。

 

『しかし面白い!今の貴様はデュエルという愉しみを見出し、英雄と闘い縁を結ぼうとしている。喜べ、生きる意味を探しているという点では我と貴様は同類よ』

「……一応感謝はしときますよ。人生に刺激をくれて、こんなオレでも絆を結んでくれそうな相手とめぐり合わせてくれたことは。が、駄弁っている時間がもったいねえ。1枚カードを伏せて、ターンエンド!」

 

 勝手にこの世界に連れてこられたのは迷惑以上の何物ではないが、オレはこのデュエルを楽しんでいた。未来に希望を持たせてくれる在り方をした遊星と闘えるなんて、ワクワクしないはずがないだろう。……元のウーヴァン・ディットはどうなったかは、後で考えることにする。

 

「……大丈夫か?」

「ええ、色々ととんでもない話が出てきましたが、大丈夫ですよ。そら、アンタのターンだ。この身勝手な神様をどう攻略するか見せてもらいましょうか!」

「わかった。その期待に応えてみせる!俺のターン!」

 

遊星SPC:5→6

ウーヴァンSPC:5→6

 

遊星

LP:1100

SPC:6

Hand:5

Monster:

FieldMagic:《スピード・ワールド2》

Magic&Trap:Set2(1枚は《くず鉄のかかし》)

 

ウーヴァン

LP:2200

SPC:6

Hand:5

Monster:《絶望神アンチホープ》

FieldMagic:《スピード・ワールド2》

Magic&Trap:Set1

 

 遊星の眼が光った。早速攻略する手段を引き当てたか。

 

「SPCが2つ存在することで、《Sp-ハイスピード・クラッシュ》を発動!自分フィールドのカードを含む2枚のカードを選択して破壊する!破壊するのは、俺のフィールドのセットされたカードと《アンチホープ》だ!」

「折角召喚したのにすぐ除去させやしませんよ!SPCを1つ取り除き、《Sp-禁じられた聖槍》を発動!《アンチホープ》の攻撃力は800ダウンするが、このターン、このカード以外の魔法・罠の効果を受けない!」

 

ウーヴァン:SPC6→5

《絶望神アンチホープ》ATK5000→4200

 

 蒼のオーラが《アンチホープ》の身体を覆い、破壊の衝撃を弾いた。さあ、次は何をする?

 

「そう簡単にはいかないか。だが!破壊された《リミッター・ブレイク》の効果!デッキから《スピード・ウォリアー》を特殊召喚する!」

 

 遊星を支えてきたモンスター5銃士の内の1体、クリーム色のアーマーの戦士が颯爽と登場。

 

「さらに、《ジャンク・シンクロン》を召喚!」

 

 橙色の装甲を纏った機械の戦士が勢いよく飛び出した。遊星のデュエルを、それたらしめる調律師。小柄な機械の体躯を精一杯躍動させ、闘志を示す。

 

「このカードが特殊召喚に成功した時、墓地に存在するレベル2以下のモンスターを守備表示で特殊召喚する!甦れ、《クリア・エフェクター》ッ!!」

 

 羽衣を纏った女性が、己らを調律する腕を持つ者のもとへと集う。……来るか。

 

「いくぞ!レベル2の《スピード・ウォリアー》、《クリア・エフェクター》にレベル3の《ジャンク・シンクロン》をチューニング!」

 

 遊星は腕を振るい、《ジャンク・シンクロンを》導く。腰部に取り付けられたスターターへと手をかけて、引き絞る。同時に背負ったエンジンに火が入り、大きく唸りを上げる。瞬間、《ジャンク・シンクロン》の身体が3つの星へと変わり、それに追従するように残る2体のモンスターも4つの星へと姿を変えていく。

 

「集いし怒りが、忘我の戦士に鬼神を宿す!光さす道となれ!」

 

 7つの星々が集い、一際大きな輝きが決闘場を包み込むと、遊星は新たに新生するモンスターの名を高らかに呼んだ。

 

「―――シンクロ召喚!!吠えろ、《ジャンク・バーサーカー》ッ!!」

 

 光が弾ければ、赤い鎧を身にまとった、鬼の如き相貌の戦士が舞い降りた。頭部から天を突くように伸びる金色の角を誇示している。何よりも目を引くのは掲げられている超巨大な斧。圧倒的な存在感を放っている。

 

《ジャンク・バーサーカー》ATK2700

 

「攻撃力2700……だけど遊星が考えなしにモンスターを召喚するはずがない!」

「《クリア・エフェクター》の効果で1枚ドロー。そして、墓地に存在する「ジャンク」モンスター、《ジャンク・デストロイヤー》を除外することで《ジャンク・バーサーカー》の効果発動!《アンチホープ》の攻撃力を、除外したモンスターの攻撃力分ダウンさせる!」

 

 斧に《ジャンク・デストロイヤー》の意思が宿り、《ジャンク・バーサーカー》がそれを振るう。巻き起こる衝撃波。それに襲われた絶望神は思わず膝をついた。

 

《絶望神アンチホープ》ATK4200→1600

 

『おのれ!』

「こういう時、《エフェクト・ヴェーラー》があればいいんですけどね。ないもんは仕方ねえよ」

「まだだ!《ジャンク・バーサーカー》の効果は1ターンに何度でも使える!《ジャンク・シンクロン》を除外することで、攻撃力を再びダウンさせる!」

 

《絶望神アンチホープ》ATK1600→300

 

 《ジャンク・シンクロン》は遊星の主力となるモンスター。それを除外したということは、このターンで決めるつもりか。

 

「バトルだ!《ジャンク・バーサーカー》で《絶望神アンチホープ》を攻撃!」

「攻撃力の差は2400!ウーヴァンのライフは2200!そして、彼の場に伏せカードはない!これが通れば……!」

 

 忘我の戦士が巨大な斧を振りかぶり、もはや神威をなくした絶望へと迫る。

 

「《アンチホープ》の効果は使いません。どっちにしろダメージは通ってしまうからな」

 

 絶望神が真っ二つにされると、濃い煙が周囲に立ち込め、オレ達の視界を奪う。

 

「やったか……?」

「何勘違いしてるんです?」

「え?」

「まだオレのライフは0になっちゃあいないぜ?」

 

 黒煙が晴れる。その中でオレは嗤っていた。もっとも、可愛い栗色の毛玉のような悪魔達が増殖して壁となっているため、遊星がその表情を見ることは出来ないが。

 

「そのエフェクトは!」

「みなさんご存じ《クリボー》の効果だ。このカードを手札から捨てることで戦闘ダメージを0にしたのさ!」

 

ウーヴァン:LP2200→2200

 

 手札誘発の元祖。今やサポートカードも増えたが、今回は単体でのご出張だ。

 

「……カードを1枚伏せ、ターンエンドだ」

「さて、まだオレも神様も満足しちゃいない。モンスター1体を戦闘破壊しただけじゃ、まるで全然、活躍というにはほど遠いですからね。―――だからこのドローで逆転させてもらおうか!オレのターン!」

 

遊星SPC:6→7

ウーヴァンSPC:5→6

 

 決意と共にカードを招き入れる。どうやらデッキは応えてくれたようだ。スロットルを引き、アクセルを強く踏み込む。

 

「まずはこのメインフェイズの開始時、SPCを6つ取り除き、《Sp-大寒波》を発動!次のオレのドローフェイズまで、お互いに魔法・罠カードの使用及びセットは出来ない!」

 

ウーヴァン:SPC6→0

 

「このターンで勝負を決めるつもりか!だが、その発動に対し《シンクロ・バリアー》発動!」

 

 《ジャンク・バーサーカー》の姿が消え、緑の障壁が遊星号を覆う。

 

「このカードは、シンクロモンスターをリリースすることで発動し、次のターンのエンドフェイズまで、俺が受けるダメージは0になる!」

 

 スピードの世界に極寒の冷気が混じっていく中、遊星は高らかに吼えた。

 

「……なるほど?決着を着けるのは無理ですね。だったらこうだ。《金華猫》召喚!」

 

 霊体となっている夢魔の猫を呼び出す。このデッキにおいて重要な役割を持つカードだ。

 

「召喚成功時、効果発動!墓地からレベル1モンスターを特殊召喚する!対象は、《ミスティック・パイパー》!」

 

 最初のターンに召喚したドローターボとなる笛吹男の登場。

 

「モンスターの召喚に成功したことで手札の《ワンショット・ブースター》は特殊召喚できる!そして、《ジェスター・コンフィ》を手札から特殊召喚!」

 

 デフォルメされたブースターと、小太りで少し愉快な笑い声をするピエロを展開する。これで手札を4枚も消費してしまったが……再び召喚条件は整った。

 

「またレベル1のモンスターが4体……」

「さあいくぜ?《金華猫》、《ミスティック・パイパー》、《ワンショット・ブースター》、《ジェスター・コンフィ》を墓地へ送る!」

 

 再び黒が視界を染める。暗黒の宇宙が顕現したかのような黒。振り仰いで逆に、下から目が眩むほどの存在感。戦慄が走る。

 

「再び顕現せよ!《絶望神アンチホープ》!」

『我は尽きぬ!この絶望を以て、勝利を手にするまでは!』

 

《絶望神アンチホープ》ATK5000

 

 勝ちたい。その気持ちはオレも同じだ。だからこそ、《大寒波》で反撃の芽すら封じた。

 

「攻撃してもダメージが0になるんじゃあ意味がありませんね。けどな、次のターンスピードスペルは使えねえし、魔法・罠をセットすることもできない。さあ、どう出る?ターンエンド!」

「……俺のターン!」

 

遊星SPC:7→8

ウーヴァンSPC:0→1

 

遊星

LP:1100

SPC:8

Hand:4

Monster:

FieldMagic:《スピード・ワールド2》

Magic&Trap:Set1(《くず鉄のかかし》)

 

ウーヴァン

LP:2200

SPC:1

Hand:1

Monster:《絶望神アンチホープ》

FieldMagic:《スピード・ワールド2》

Magic&Trap:

 

 遊星の表情は明るくはない。《ジャンク・デストロイヤー》に《ジャンク・バーサーカー》……大型モンスターにも対処できるこの2体を失った状態でこの盤面をひっくり返すのは難しいだろう。《ジャンク・シンクロン》も除外してしまった。ならば遊星の選択は―――

 

「《マッシブ・ウォリアー》を守備表示で召喚。ターンエンドだ」

 

 守りを固めてきた。そうする他ない。だが、その瞳に諦めの色もない。それがいい。希望を繋ごうとする意志を破って初めて、オレは何かが掴めるかもしれないのだから。

 

「オレのターン!」

 

遊星SPC:8→9

ウーヴァンSPC:1→2

 

ドローする。引いたカードを見る。あの程度の守りを突破するカードが来た。

 

「メインフェイズ、《E-HERO ヘル・ゲイナー》召喚!」

 

 黒い鎧のような装甲より生える幾つもの刃に、鋭い爪。この禍々しきHEROは絶望を更に重ねさせる。

 

「《ヘル・ゲイナー》の効果発動。このカードを2ターン後の未来まで除外することで、自分フィールド上の悪魔族モンスター……《アンチホープ》は永続的に2度の攻撃が可能になる」

 

 《ヘル・ゲイナー》が不敵に笑いながらその身を光の粒子と化して消えていく。そしてその場に残った光の残滓は全て絶望神へと吸収されていった。

 

「攻撃力5000の2回攻撃……!」

「バトルだ!《アンチホープ》で《マッシブ・ウォリアー》を攻撃!」

 

 無数の剣が、《マッシブ・ウォリアー》に襲いかかる。岩盤を盾にして1回目の攻撃は防がれた。

 

「《マッシブ・ウォリアー》は1度だけ戦闘では破壊されない!」

「ならもう1度攻撃するまでですよ!『アンチホープ・ディスペア・スラッシュ』ッ!」

「罠発動!《くず鉄のかかし》!」

「無駄だ!墓地の2体目の《イービル・ソーン》を除外し、バトルステップ中の効果を受けなくする!」

 

 剣は再度かかしを無視し、岩盤を失った《マッシブ・ウォリアー》を串刺しにする。砕け散る岩の戦士。

 

「なんて奴だ……防御がまるで通じない」

「悪し様に言われるようなスペックじゃあないってことだ。とはいえ、トドメを刺すまでがデュエル。油断はしないぜ?カードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

 次が10ターン目、おそらく、ここが分水嶺となるだろう。

 

「俺のターン!」

 

遊星SPC:9→10

ウーヴァンSPC:2→3

 

 遊星のSPCは10。《スピード・ワールド2》の効果でそれら全てを取り除けば、対象をとらずフィールドのカードを1枚破壊できる。狙うならば当然、《アンチホープ》だろう。

 

遊星

LP:1100

SPC:10

Hand:4

Monster:

FieldMagic:《スピード・ワールド2》

Magic&Trap:Set1(《くず鉄のかかし》)

 

ウーヴァン

LP:2200

SPC:3

Hand:0

Monster:《絶望神アンチホープ》

FieldMagic:《スピード・ワールド2》

Magic&Trap:Set1

 

だが、安直な手段を取れば、逆にこちらの術中にはまる。絶望が襲い来る。

 

「俺はSPCが2つ存在することで《Sp-エンジェル・バトン》を発動!カードを2枚ドローし、手札から1枚を捨てる」

 

 相変わらず発動条件の緩いカードだ。制限にしてもいいんじゃないのか。

 

「そして、SPCを10取り除き、《スピード・ワールド2》の効果発動!フィールド上のカードを1枚選んで破壊する!」

 

遊星:SPC10→0

 

「読めていますよ!SPCを1つ取り除き、2枚目の《Sp-禁じられた聖槍》を《アンチホープ》を対象に発動!攻撃力を800ダウンし、魔法・罠の効果を受けねえ!それが《スピード・ワールド2》の効果であろうとも!」

 

ウーヴァン:SPC3→2

《絶望神アンチホープ》ATK5000→4200

 

「ならば、選ぶのは《Sp-禁じられた聖槍》だ!」

「え?んなことしたって効果は無効にならねえよ?」

「わかっているさ。さらに、《シンクロン・エクスプローラー》を召喚!このカードの召喚に成功した時、墓地の「シンクロン」と名の付くモンスターを特殊召喚する事ができる!舞い戻れ、《クイック・シンクロン》ッ!」

 

胴体がボールのように丸々した機械人形が決闘上に飛び出した。身体の中心に空いた孔は、勝利へとつながる道。道から飛び出るはガンマン風のシンクロン。

 

「俺はレベル2の《シンクロン・エクスプローラー》にレベル5の《クイック・シンクロン》をチューニング!」

 

 遊星の言葉と共に《クイック・シンクロン》は自身を五つの星へと姿を変えた。

 《クイック・シンクロン》が身を変えた五つの星が五輪の環を描き、その環の中を《シンクロン・エクスプローラー》が潜り抜けて行く。

 

「集いし叫びが、木霊の矢となり空を裂く!光差す道となれ!」

 

 遊星の言葉に導かれ、《スピード・ウォリアー》が身体を二つの星へと変じさせていく。

 七つになった星々は空に光の道を描くと、その道からくず鉄の弓兵が姿を現した。

 

「―――シンクロ召喚!出でよ!《ジャンク・アーチャー》ッ!!」

 

《ジャンク・アーチャー》ATK2300

 

 橙色の戦士が唯一の眼を赤く煌めかせて弓を引く。オレのライフは残り2200。この状況においてリーサルを取るならば、その選択は正しい。

 

「《ジャンク・アーチャー》の効果発動!《アンチホープ》をエンドフェイズまで除外する!『ディメンジョン・シュート』ッ!」

『おのれ!』

 

 青白く輝く光の矢が迸り、絶望神の胸のど真ん中を射抜く。射抜かれた一点を中心として空間ごと捻じ曲がるようにして絶望神は消えていく。

 

「バトルだ!《ジャンク・アーチャー》でウーヴァンにダイレクトアタック!『スクラップ・アロー』!」

 

 限界まで引き絞った弦を解き放って打たれた希望の矢は、寸分たがわずオレの胸を貫く―――はずだった。

 

「墓地の《カイトロイド》の効果発動ですよっと。デュエル中に一度だけ、直接攻撃によって発生するダメージを0にする」

 

 ハンググライダー型の機械が墓地から風を受けて矢を受け止める。このままやられるようではあの傍迷惑な神に何を言われるかわかったもんじゃない。

 

「止められたか……ならば、墓地の《ADチェンジャー》の効果発動!《ジャンク・アーチャー》を守備表示にする!カードを1枚伏せ、ターンエンドだ」

 

 守備表示にした、ということは《アンチホープ》の攻撃を受け止める手段がいよいよなくなってきたか。だが、そう思わせておいてセットカードが《強制終了》だったら泥仕合間違いなしだ。

 

「このエンドフェイズ、《アンチホープ》はフィールドに戻ってくるぜ?」

『そろそろ終わりにしてやれ』

 

 プレッシャーをオレにもかけてきた。お互いに防御が得意だからか、なかなか勝負が決まらないことにいら立っているようだ。狭量か?

 

「じゃあ祈りましょうか。このターンで勝てるようにな!オレのターン!」

 

遊星SPC:0→1

ウーヴァンSPC:2→3

 

引いたのは、ドローソース。まだまだ可能性はある。

 

「2体目の《ミスティック・パイパー》を召喚!効果発動!このカードをリリースして1枚ドロー!それがレベル1モンスターならさらに追加ドローだ!」

 

 笛吹き男がスピードの世界に消える。引いたのは当然、レベル1モンスター。

 

「オレが引き当てたのはレベル1の《D.D クロウ》。よってもう1枚ドロー!……ふ」

 

 嗤った。遊星が攻撃に対する防御手段を持っていようが突破できるカードが来たからだ。

 

「オレは手札の《D.D クロウ》を墓地へ送り効果発動!アンタの墓地の《ダメージ・イーター》を除外する!」

「なに!?」

 

 秘かに仕込んでいた効果ダメージへの対策。それが除外されたことで先が見えたようだ。

 

「オレ達に相応しいカードで決着をつけましょうや!SPCが2つ存在することで《Sp-運命の呪縛》を発動!まずは呪縛カウンターを2つ《アンチホープ》に置く」

 

 鎖で雁字搦めにされる絶望神。だが、彼?もまた嗤っていた。

 

「そして、呪縛カウンターを1つ取り除くことでカウンターを乗せていたモンスターの攻撃力の半分―――すなわち2500ダメージを相手に与える」

 

 攻撃力を呪詛へと変換した禍々しい閃光が遊星を襲う。伏せカードが開かれることは終ぞなかった。

 

「うわぁあああああ!」

 

遊星:LP1100→0

 

 ぷしゅう、と白煙を吐き出し遊星号が停止。オレもノワール・ワンを停める。

 

「……」

 

 悔しそうに、顔を俯かせる遊星。……アクセルシンクロの境地に辿り着いていない彼では、絶望を超えるにはまだ早いということか。オレはノワール・ワンから降りて、ゆっくりと彼に歩み寄る。

 

「楽しいデュエルでしたよ。アンタはどうだった?」

「ああ、俺も楽しませてもらった。ありがとう」

 

 手を差し出される。その手を固く握った。力及ばずで悔しいだろうに、楽しめた、と言ってもらえるのはありがたい。

 

『我も満足だ。我を扱いこなす相棒が見つかったのだからな。生まれてきた意味を探すには良いタッグになれるだろう』

 

 デュエルが終わった後も消えていないのか、この神。

 

「遊星!ウーヴァン!」

 

 ブルーノがスクーター型Dホイールでこちらに到着する。遊星の背中を軽くたたいて、励ましている。

 

「まさか、キミがそんな実力者だったなんて思わなかったよ。その神といい、一体何者だい?」

「まさしく、それについてお願いがありましてね。実は……今日起きる以前の記憶がないんだよ。だから、ウーヴァン・ディットの経歴を洗ってくれねえかな」

「ええ!?」

「なに?」

『我が語るのは?』

「アンタは信頼できねえ。なんだよ別の次元から魂引っ張って憑依させるとか。邪神じゃねえか」

『それはそう』

 

 さて、“オレ”ではないオレは一体何をやらかしてきたのか。この先何が待ち受けているのか。とにもかくにも、このまま終わらせてはいけない。オレの歩みは、ここから始まるのだ。

 

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