絶望神と共に行く遊戯王5D's   作:重症患者を救いたい

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8話 地縛神の飛翔!決着の時

 ブレオの前に立ちはだかるは、攻撃力5000を誇る《邪神イレイザー》。

 スタジアムを圧するその威容を前にして―――それでもなお、ブレオの口元には笑みが浮かんでいた。

 

「オレのターン!」

 

ブレオSPC5→6

オルデSPC5→6

 

ブレオ

LP:4000

SPC:6

Hand:6

Monster:「ナイトメア・デーモン・トークン」「ナイトメア・デーモン・トークン」「ナイトメア・デーモン・トークン」

FieldMagic:《スピード・ワールド2》

Magic&Trap:Set2(《心鎮壺》で封じられた状態)

 

オルデ

LP:3500

SPC:6

Hand:0

Monster:《邪神イレイザー》

FieldMagic:《スピード・ワールド2》

Magic&Trap:《心鎮壺》

 

 確かな自信。その根拠は明白だった。

 6枚の手札、3体のトークン。そして、オルデが《邪神》を呼ぶために全てを注ぎ込み、すでに手札も伏せも残していないという事実。

 今この瞬間、《邪神》は最強でありながら、同時に孤立無援の存在だった。

 

「確かにそいつは厄介だが、攻略法はいくらでもある。――オレは、3体の『ナイトメア・デーモン・トークン』をリリース!《神獣王バルバロス》をアドバンス召喚!」

 

 その瞬間、スタジアムを揺るがすような咆哮が響き渡った。

 獅子の頭に人の上半身、そして馬の下半身を持つ、伝説の王獣。その手には紅蓮に煌めく巨大な槍と、蒼穹を映す重厚な盾。まさに神話の王が顕現したかのように、スピードの世界を駆け抜ける。

 

《神獣王バルバロス》ATK3000

 

「《バルバロス》の効果発動!――こいつはモンスターを3体リリースしてアドバンス召喚した時、相手フィールドのカードをすべて破壊するッ!!」

「な、なんだと……!?」

 

 槍の穂先に荒れ狂う暴風が収束し、一閃。

 紅の嵐が邪神の身体を薙ぎ裂き、同時に伏せられていた壺もろとも粉砕する。轟音と共に砕け散るその光景に、スタジアムの観客がどよめいた。

 だが。

 

「忘れちゃいないだろ!《イレイザー》が破壊された時―――フィールドのカードをすべて吹き飛ばすッ!」

『(ふざけんなテメェ!従属神ってんなら俺様に歯向かうんじゃねぇ!)』

 

 絶叫と共に、邪神の全身を走る黒い紋様が爆ぜる。

 闇の奔流が逆巻き、ブレオの《バルバロス》すら巻き込み、辺り一面を根こそぎ薙ぎ払った。

 破壊の嵐のあとには、さらなる破壊の嵐が。

 それは邪神の怨嗟が世界そのものに刻みつけた、最後の呪詛だった。

 荒れ果てた戦場にただ風が吹き抜ける。だが、ブレオは一歩も怯まず、視線をまっすぐオルデへと向けていた。

 

「……だが、これでお前の切り札は倒した!」

 

 彼の声には揺るぎがない。

 すぐさま手札を抜き取り、二枚のカードを勢いよくデュエルディスクに叩き込む。

 

「カードを2枚伏せて、ターンエンドだ!」

 

 閃光のように展開された伏せカードが戦場を覆い、迎撃の布陣が完成する。

 ――――切り札を討ち破り、なお隙なく守りを固める。

 ブレオの姿は、まさしく“ユニコーンの矛と盾”だった。

 

「ああ、こりゃピンチだな。―――俺のターン!」

 

ブレオSPC6→7

オルデSPC6→7

 

 次の瞬間、オルデの視線が手札に落ちる。引き当てたその一枚を見た途端、口元が歪んだ。

 嗤うような笑み。窮地の中でこそ浮かぶ、奇妙な余裕。

 

「……モンスターをセット。ターンエンドだ」

 

 ただ守備表示でモンスターを置いただけ。派手さも、切り返しもない。

 だが、オルデの声音は妙に落ち着いていた。自信に満ち、すべてを見透かしているかのように。

 ブレオは無意識に唇を噛む。

 ―――何かがある。そう思わずにはいられなかった。

 

「オレのターン!」

 

ブレオSPC7→8

オルデSPC7→8

 

手札は豊富な5枚。潤沢な選択肢がある中で、ブレオは1枚のカードを手に取った。

 

「《ライオウ》を召喚!」

 

 それは近代化された土偶と言っていいだろうか。焼土の代わりに鉄鋼を、呪力の代わりに電力を使った祭具。変わらぬ鉄仮面で甘い考えを持った敵を咎める。

 

《ライオウ》ATK1900

 

「バトルだ!《ライオウ》でセットモンスターを叩く!」

 

 鋭い雷撃が守備モンスターを直撃。壺が砕け散ると、その中から――禍々しい単眼の魔物が現れた。

 ひとつ目がぎょろりと輝き、口端が吊り上がる。

 

「なッ……!」

「迂闊だったな!」

 

 オルデが叫ぶ。

 

「このモンスターは《メタモルポット》!互いの手札をすべて捨て、新たに5枚を引き直す!」

 

 黒き魔物は、裂けるような口で手札をむさぼり喰らい尽くす。次の瞬間、虚空から金塊のような光が雨となり、両者の手に新たなカードが舞い落ちた。

 すべてをリセットし、再び未来を作り直す―――狂気のリセットボタン。

 場の空気が一変する。

 

「おっと、あんたは4枚捨てて5枚引き直し……だが、俺は0枚からの5枚ドローだ。ありがたいな!」

 

 オルデは嗤い、手にした新たなカードを扇のように広げた。その表情には余裕すら漂う。

 

「くっ……!」

 

 ブレオは悔しげに歯を食いしばる。

 

「カードを3枚伏せて……ターンエンドだ!」

 

 憤りを込めてカードを叩きつけるように伏せる。

 その瞬間、彼の場には合計5枚もの伏せカードが並び、まるで牙を剥いた鉄壁の要塞。

 攻め入る者は必ず迎撃を受けるだろうと告げるかのように、冷ややかな威圧感を放っていた。

 

「いやはや、5枚も伏せられてるとこええな!俺のターン!」

 

ブレオSPC8→9

オルデSPC8→9

 

ブレオ

LP:4000

SPC:9

Hand:2

Monster:《ライオウ》

FieldMagic:《スピード・ワールド2》

Magic&Trap:Set5

 

オルデ

LP:4000

SPC:9

Hand:6

Monster:

FieldMagic:《スピード・ワールド2》

Magic&Trap:

 

 軽口を叩きながらカードを引く。だが、その瞳に油断の色は一切ない。

 

「まずはこいつだ。SPCが2つ以上存在することで、《Sp-スピード・ジャマ―》を発動!あんたのSPCを6つ取り除くぜ?」

「……通す」

 

 短いやり取りの裏に、重い駆け引きが走る。

 カウンターするか否か。切るべきカードはどれか。互いの思惑を読み合う、心理戦の幕が上がった。

 

ブレオSPC9→3

 

「じゃあ次だ。SPCを2つ取り除き、適当に《Sp-サイクロン》を発動。さっきのターンで一番最初に伏せたカードを対象に取って、破壊するぜ?」

 

オルデSPC9→7

 

「……ちっ、カウンター罠《魔宮の賄賂》を発動!その発動を無効にし、相手は1枚ドローする!」

 

 突風のごとき魔法は、漆黒の賄賂にかき消される。

 オルデは肩を揺らして嗤った。

 

「それなら―――大技いくぜ!SPCを6つ取り除き、《Sp-大嵐》発動!フィールドの魔法・罠カードを、まとめて吹き飛ばす!」

 

オルデSPC7→1

 

「―――やらせるか!LPを半分支払い、《神の宣告》発動!」

 

ブレオ:LP4000→2000

 

 轟音とともに巻き起こった暴風は、神の一閃に打ち消され、霧散する。

 空間そのものが軋み、破壊の奔流がかき消されるさまに、観客席からどよめきが走った。

 

「……やっぱり、それを隠してると思ったぜ」

 

 オルデは口の端を吊り上げる。

 

「いいさ。伏せ除去は一旦こんくらいで手を打ってやる……なんてな!―――次はこうだ!カードを1枚セット。そのカードを対象に、墓地の《破械神シュヤーマ》の効果を発動!対象カードを破壊し、俺は《シュヤーマ》を特殊召喚する!」

「なにッ!?」

 

 ばりん、とオルデが伏せたばかりのカードが砕け散る。その破壊を契機に、漆黒の鬣をなびかせた蒼き番犬が、咆哮とともにフィールドへ降臨した。

 

《破械神シュヤーマ》ATK2000

 

「さらに――破壊された《破械唱導》の効果発動!デッキから「破械」モンスターを特殊召喚する!来い、《雙極の破械神》!」

 

 紫電を裂いて現れたのは、禍々しき双角を持つ鬼神。大地を踏み鳴らし、轟音と共に顕現する。

 

「だが特殊召喚時の効果は使わねえ。その代わり――もう1枚カードをセットし、《破械神シュヤーマ》の効果発動!このセットカードを破壊し、その後フィールドの魔法・罠を1枚破壊する!狙うのはもちろん、さっき《魔宮の賄賂》で守り抜いたそのカードだ!」

「……そうはさせるか!ライフを1000支払い永続罠《スキルドレイン》を発動!フィールドに表側表示で存在するモンスターの効果は無効化される!」

 

ブレオ:LP2000→1000

 

 ブレオの叫びと同時に、禍々しい力場がフィールドを覆う。蒼の番犬も鬼神も、その咆哮を封じられ、力を奪われたかのように動きを鈍らせる。

 

「へえ……やっぱりな」

 

 オルデは唇を歪め、むしろ満足げに嗤った。

 

「《バルバロス》に《ライオウ》―――そういう構築なら、当然そのカードが入ってると思ってたぜ」

 

 効果を縛られようとも、落胆の色は一切ない。むしろ計算どおりに切り札を引きずり出したかのような確信を瞳に宿し、さらに次の一手を狙う。

 

「しかし、残りは《ライオウ》と伏せカード2枚か……。どうするかね。ま、とりあえず―――バトルだ!《シュヤーマ》で《ライオウ》を攻撃!」

 

 蒼の番犬が跳躍し、稲妻の土偶の喉笛に喰らいついた。雷光が弾け、鉄の躯は粉々に砕け散る。

 

「ぐっ……!」

 

ブレオ:LP1000 → 900

 

 確かにアタッカーは潰した。残るライフも風前の灯火。

 だが、ブレオの顔に苦悶はない。むしろ静かな自信に満ちた余裕を漂わせていた。

 

「……?」

 

 訝しげに眉をひそめるオルデ。

 

「続いて、《雙極の破械神》で……」

 

 鬼神が前に進み出る―――が、そこでオルデの瞳が細められた。

 

「……いや、やめだ。攻撃せずメインフェイズ2に移行。カードを2枚伏せて―――ターンエンド」

 

 ブレオが見せたわずかな余裕。それがオルデの攻め手を封じたのだった。

 

「その選択、果たして正しかったと思うか?―――オレのターン!」

 

ブレオSPC3 → 4

オルデSPC1 → 2

 

 引き当てた1枚を確認し、ブレオの口元に笑みが広がる。

 それは先ほどまでの“張りぼての余裕”ではない。本物の勝機を掴んだ者の顔だ。

 

「まずはSPCを4つ取り除き、《スピード・ワールド2》の効果発動!手札の《Sp-パワー・バトン》を公開し、相手に800ポイントのダメージを与える!」

 

ブレオSPC4→0

 

 ユニコーンを模したDホイールから白光が迸り、オルデのマシンを直撃。衝撃で彼の身体が大きく揺れる。

 

オルデ:LP3500 → 2700

 

「くっ……(このタイミングでSPCを使い切った……?妙だな)」

 

 訝しむオルデをよそに、ブレオは攻めを重ねる。

 

「さらに、《可変機獣ガンナードラゴン》を召喚!」

 

 鋼の竜が組み上がり、咆哮と共に戦場を震わせる。

 本来なら妥協召喚で攻撃力は落ちるはずだが――

 

「だがこの効果は《スキルドレイン》で無効化される!つまり……本来の力をそのまま発揮できるんだよ!」

 

《可変機獣ガンナードラゴン》ATK2800

 

 爆炎のジェットを吹かし、鬼神と相対する鋼鉄竜。

 

「《雙極の破械神》には届かねえぞ」

「分かってるさ。カードを2枚伏せて……バトル!《ガンナードラゴン》で《シュヤーマ》を撃ち抜け!」

 

 轟音と共に放たれる砲撃。オルデが即座に応じる。

 

「発動!《破械唱導》!自分の《シュヤーマ》と《スキルドレイン》を破壊する!」

「カウンター罠《大革命返し》!2枚以上を破壊する効果を無効にし、除外だ!」

 

 閃光が弾け、オルデの罠が霧散する。

 

「くっ、《スキルドレイン》は落としたかったが……」

「攻撃続行!砲撃、貫けぇ!」

 

 爆炎に呑まれ、蒼き番犬が粉砕される。

 

オルデ:LP2700→1900

 

「ぐっ……だがな!」

 

 一瞬顔をしかめたオルデが、次には不敵に笑みを返す。

 

「《シュヤーマ》を破壊できたこと……それがあんたの狙いじゃねえことくらい分かってる。なら、出してみろよ――とっておきを!」

「お望み通りだ!罠発動、《ショック・ウェーブ》!オレのライフが相手より少ない時、フィールドのモンスター――《雙極の破械神》を破壊し、その攻撃力分だけお互いにダメージを受ける!」

「……チッ。余裕を装っていたのは、ブラフだったか。まんまと《次元幽閉》の類だと読み違えたぜ!」

「その誤解ごと吹き飛ばす!―――受けろ!」

 

 黒い稲光が鬼神を貫き、その巨体が轟音と共に爆散。衝撃波が津波のようにフィールドを覆い、両者を同時に呑み込む!

 

「ぐああああああっ!!」

「ぬおおおおおおおっ!!」

 

ブレオ:LP900→0

オルデ:LP1900→0

 

 二つのDホイールが白煙を上げて減速。

 

『き、決まったァァ!!なんと!ブレオ、相打ち覚悟の《ショック・ウェーブ》でオルデを道連れにしたァ!しかし!人数差は埋まっていない!チームユニコーン、ここからどう戦うッ!?』

 

 観客席が大きくざわめく。白熱する第二戦の幕切れに、興奮が渦を巻いた。

 しかし――戦場はまだ終わっていない。

 

「それに、だ。あんたのエンドフェイズはまだ終わっちゃいない。《雙極の破械神》が復活する!」

 

 黒き残骸の中から、轟音と共に鬼神が再構築されていく。

 WRGPのルールにより、相手のライフを0にしてもエンドフェイズまでは処理が続行されるのだ。

 

「フッ……想定済みだぜ。さあ――次の闘いが本番だ!」

 

 ピットへ戻っていく二機。その眼光は、互いに次の走者を射抜いていた。

 白煙を引きながらピットへ戻ったオルデを、仲間たちの視線が迎えた。

 焼けたゴムの匂いが漂う中、Dホイールのエンジンがゆっくりと唸りを止める。

 

「君にしては派手にやられたね」

「まさか道連れにしてくるとは思いませんでしたよ」

 

 ディスカーとウーヴァンが、揃って皮肉めいた笑みを浮かべる。その声音には嘲りよりも驚きが混じっていた。

 オルデはヘルメットを外し、髪を掻き上げながら肩をすくめる。

 

「だが問題はねえ。《雙極の破械神》はまだフィールドにいる」

 

 自嘲とも余裕ともつかない言葉を残すと、彼は深く息を吐いた。ブレオを落とした――それだけで十分な仕事は果たしたとでも言うように。

 

「やることはやったぜ?あとは任せたぞ」

 

 その声音に応じて、ディスカーの瞳が静かに燃え上がる。獲物を前にした猛禽のような光を帯びて。

 

「ああ、期待に応えよう!」

 

 一方で、ブレオのDホイールも減速し、無骨な軌跡を残してピットに戻ってきた。

 マシンが完全に停止した瞬間、張り詰めていた力が抜けるように、彼は大きく息を吐き出す。ヘルメットを外した顔には汗が滴り落ちていた。

 

「悪いな、相打ちになって……」

 

 悔しさを滲ませながら額の汗を拭うブレオ。その声は震えていたが、自らの限界まで戦い抜いた者の本音だった。

 

「いや、よくやったよブレオ。君が突破口を開いたんだ」

 

 アンドレの声は、叱責ではなく称賛の響きを持って返る。その眼差しに力強い確信が宿っていた。

 ジャンも頷き、無言でブレオの肩を叩く。その仕草にこめられたのは言葉以上の信頼だった。

 

「後はオレに任せろ。一気に捲り返そうじゃないか」

 

 ジャンの眼差しは迷いなく前を射抜いている。まるで、目の前にそびえ立つ破械神すら乗り越えると告げるかのように。

 観客席はざわつきの渦に包まれていた。ブレオとオルデの壮絶な相打ちの余韻を飲み込みきれぬまま。しかして、次なる一戦の幕が上がろうとしていた。

 

『さあァァ!いよいよ第三戦だ!チームユニコーンからはリーダーのジャン!そしてチームリベリオンはディスカー・ド・スール!両者がコースへ飛び出すッ!!』

 

 アナウンスが響いた瞬間、二台のDホイールのエンジンが爆音を轟かせた。

 鋭い金属音と共に、地面を蹴るタイヤが黒い痕を残す。

 ジャンは深く息を吸い込み、迷いのない眼差しで前を見据える。

 アンドレやブレオの思いを背負うように、グリップを強く握りしめた。

 一方のディスカーはヘルメット越しに笑みを浮かべる。その瞳には、闘いを純粋に楽しむ清廉な光が宿っていた。

 

「さあ!素敵な闘いにしようじゃないか!」

「ふっ、出来るものならな」

『スタンバイ完了!―――第三戦、スタートォ!!』

 

 号令と同時に、二台のマシンが火花を散らして一斉に加速する。

 轟音と白煙が重なり合い、風圧が観客席にまで押し寄せた。

 アクセルを踏み抜くジャン。

 それに並走するかのように、ディスカーの鳥型のマシンが獣の咆哮を上げる。

 二つの影がコースを駆け抜け、闘いの舞台は新たな局面へ突入していく―――。

 

『さあ、先攻は大会規定によりチームリベリオンのディスカー・ド・スール!果たしてどんな闘いを見せるのかッ!?』

「私のターン!」

 

ジャンSPC0→1

ディスカーSPC2→3

 

ジャン

LP:4000

SPC:1

Hand:5

Monster:《可変機獣ガンナードラゴン》

FieldMagic:《スピード・ワールド2》

Magic&Trap:Set2+《スキルドレイン》

 

ディスカー

LP:4000

SPC:3

Hand:6

Monster:《雙極の破械神》

FieldMagic:《スピード・ワールド2》

Magic&Trap:Set1

 

 フィールドに仁王立ちするは《雙極の破械神》。その圧倒的な威容に対し、ジャンの伏せカードが鋭く威嚇するかのように光を放つ。観客の視線が両者に注がれ、張り詰めた空気が漂った。

 

「……まずはバトルといこう。《雙極の破械神》で《ガンナードラゴン》を粉砕する!」

 

 鬼神が紫電を纏った拳を振り下ろし、機械竜を叩き潰さんと迫る。

 

「単純な手だな。《次元幽閉》を発動!攻撃モンスターを除外する!」

 

 突如としてフィールドが裂け、異空間への亀裂が《破械神》を飲み込もうと広がる―――。

 

「……甘い!SPCが3以上存在することで、《雙極の破械神》をリリースし、《Sp-エネミーコントローラー》を発動!《ガンナードラゴン》のコントロールを奪う!左!右!A!B!」

 

 鬼神の肉体が粒子へと変換され、巨大なコントローラーの電源と化す。伸びた端子が、鋼鉄の竜へと突き刺さろうと迫る。

 

「それも読んでいた。SPCを1つ取り除き、《Sp-禁じられた聖槍》を発動!《ガンナードラゴン》は攻撃力が800ポイントダウンするが、このターン、他の魔法・罠の効果を受けない!」

 

ジャンSPC1→0

 

 翠の光が機械竜を包み込み、迫る端子を弾き返す。観客席から歓声が沸き上がった。

 攻撃手段を失ったディスカーは無言で息を整え―――やがて冷ややかに呟く。

 

「……ならば」

「これでバトルは終了か?」

 

 挑発するジャンに、彼は薄く笑った。

 

「ああ、君の“風”は理解した。ならばこちらも……メインフェイズ2!SPCを2つ取り除き、《Sp-サイクロン》を発動。《スキルドレイン》を破壊する!」

 

ディスカーSPC3→1

 

 荒れ狂う竜巻が発生し、力を奪う結界があっけなく吹き飛ばされる。

 

「ほう……それを握っていたか」

「そして私はまだ通常召喚をしていない。―――おいで、《ふわんだりぃず×ろびーな》!」

 

 フィールドに舞い降りたのは、鮮やかな羽を広げたコマドリ。その姿は一見無力に見えるが、ディスカーの戦術の起点となる存在だ。

 

「召喚成功により《ろびーな》の効果発動!デッキから仲間を――」

「やらせはしない!手札から《エフェクト・ヴェーラー》を墓地へ送り、その効果を無効にする!」

 

 ジャンの手札から光が走り、中性的な魔術師が現れて効果を封じ込めようとする。

 

「そうはいかない!ここでオルデが残したカードを発動!《スキル・プリズナー》!このターン、《ろびーな》はモンスター効果の対象にならない!」

 

 魔術師の放った光が弾かれ、小鳥は健在のまま羽ばたく。

 

「ふっ……いいだろう」

 

 効果の適用を阻止され、ジャンの瞳がわずかに細められる。観客席も再びざわめきに包まれ、試合は早くも一進一退の攻防へと突入していた。

 

「では、《ろびーな》の効果を処理。デッキからレベル4以下の鳥獣族――《ふわんだりぃず×いぐるん》を手札に加える。さらに鳥獣族の召喚を可能にする!――来い、《いぐるん》!」

 

 空を切り裂くように、一羽のハクトウワシが舞い降りる。ディスカーの“風”は止むことを知らない。

 

「召喚に成功した《いぐるん》の効果発動!デッキからレベル7以上の鳥獣族――《ふわんだりぃず×えんぺん》を手札に加え、さらに追加召喚を行う!私は《ろびーな》と《いぐるん》をリリース――」

 

 小さなコマドリと猛禽が風に乗って舞い上がり、光の粒子となって消え去る。その跡に、重厚な影が大地を踏みしめ現れる。

 

「現れろ、《ふわんだりぃず×えんぺん》!」

 

 飛べぬ巨鳥――皇帝ペンギン。その威容は、空を支配する仲間たちすら従わせるように堂々とフィールドに立った。

 

「召喚に成功した《えんぺん》の効果発動!さらにチェーンして、除外ゾーンの《ろびーな》、《いぐるん》の効果を処理する!」

 

 除外領域から二枚のカードが光の弧を描き、再びディスカーの手札へと還る。まるで果てなき旅路が一巡し、再び始まるかのように。

 

「そして《えんぺん》の効果処理―――デッキから《ふわんだりぃずと夢の町》をサーチ!最後にカードを3枚伏せ、ターンを終了する!」

 

 防御を固めつつ、着実に次の布陣を敷くディスカー。その周到さに、観客席は息を呑んだ。

 

「―――まさに盤石というわけだ。だが、どうということはない!」

 

 ジャンの眼差しが鋭く光を放つ。ピットで肩を叩かれた仲間の言葉が、背中を押していた。

 

「オレのターン!」

 

ジャンSPC 0→1

ディスカーSPC 1→2

 

 相手の布陣を“盤石”と評しながらも、ジャンの声音には微塵の迷いもない。その確信めいた響きが、会場に火を灯した。

 

「どれほど完璧に見える壁だろうと―――突破口は必ずある!」

 

 ハンドルを強く握り直す。その瞳は、真正面に立つ《えんぺん》を真っ直ぐに射抜いていた。

 

「――《神獣王バルバロス》を、リリースなしで召喚!」

 

 轟音とともに、戦場に巨躯が現れる。先程ブレオが用いた従属神の王――その姿は、再び流れを変えようとするジャンの意思そのもの。観客席からどよめきが沸き起こる。

 だが、その気配を察知するかのように、ディスカーが神速の如き反応を見せた。

 

「《バルバロス》を対象に、永続罠《大捕り物》を発動させてもらおう。縄は獲物を逃さない」

 

 縄が王の四肢に絡みつこうと迫る。だがジャンは即座に切り返した。

 

「無駄だ!SPCを1つ取り除き、《Sp-禁じられた聖槍》を発動!――《バルバロス》は魔法・罠の効果を受けない!」

 

ジャンSPC 1→0

 

 翠の光が王を包み、縄を打ち払う。その瞬間、ジャンの表情にわずかな安堵が浮かんだ――しかし。

 

「ならばチェーンだ」

 

 ディスカーの声が重く響く。

 

「《ふわんだりぃずと夢の町》を発動。手札からレベル4以下の鳥獣族モンスターを召喚する。――再び巡れ、《ろびーな》!」

 

 赤いコマドリが宙を舞い、召喚陣に降り立つ。大縄は確かに回避された。だが、それは新たな連鎖の始まりに過ぎなかった。

 

「チェーン終了。《ろびーな》の効果発動。デッキから《ふわんだりぃず×すとりー》を手札に加え、さらに《いぐるん》を召喚!」

 

 今度は白き翼を広げたハクトウワシが飛来する。再び、ディスカーの布陣は風の循環のように広がり、手数を増していく。

 

「《いぐるん》の効果を発動――デッキから《地縛神 Wiraqocha Rasca》を手札に加える。そして、《ろびーな》《いぐるん》をリリース!」

 

 小鳥と大鷲が夜空へ舞い上がり、光の尾を引きながら消える。その刹那、スタジアムの空は漆黒に沈み、観客たちの悲鳴が闇を震わせた。

 黒い波動が地の底から噴き上がり、天空を裂く轟音が響き渡る。

 

「―――究極の破壊を齎せ!《地縛神 Wiraqocha Rasca》!」

 

 降臨。驚天動地。

 巨大な漆黒のコンドルが、観客席を覆い尽くすほどの翼を広げ、天上から姿を現した。 

羽ばたくたびに、空気は震え、観客席を不安と畏怖の風が突き抜ける。おそるべき威容。

 

『な、なんだあれはァ!?モンスター……なのか!?会場全体が!まるで支配されているようだ!』

 

 実況席の声すらも震えていた。客席からも悲鳴とどよめきが混ざり合う。圧倒的な存在感に、誰一人として言葉を選べない。

 

『“神” ……あれはそう呼ぶしかない! これが――地縛神ッ!』

 

 その瞬間、会場全体を何かが撫でた。冷たい風とも熱波ともつかぬ圧力が押し寄せ、観客は思わず息を呑む。胸の奥で心臓が脈打つ音が、普段よりも大きく聞こえる気がした。

 誰もが言葉を失っていた。ほぼすべてが、すべての存在が慄いていた。

 

「ブレオのデータにはなかった……!」

 

 ジャンの表情が険しく歪む。

 

「だが! その神とて無敵ではないだろう!」

 

 後方からアンドレが声を張り上げる。

 

「ジャン、気を抜くな! あれは常識の外にある!」

「その通りさ」

 

 ディスカーは唇を吊り上げる。

 

「だが、効果はえげつない。このカードが召喚に成功した時――相手の手札の数まで、上限は3枚だが、私のフィールドのカードを対象にする! 対象は《大捕り物》、そして《えんぺん》―――この2枚をデッキに戻す!そして、その戻した数だけ相手の手札をランダムに捨てる!」

「なに!?」

 

 ジャンが呻くように声を漏らす。

 

「さあ――輝いてしまおうか!」

 

 《Wiraqocha Rasca》の瞳がぎらりと光り、ジャンの手札を睨み据える。嘴が開かれると黄金の光線が奔り、選ばれたカードを撃ち抜いた。象徴は閃光とともに霧散し、手札から消え去る。

 

「そして―――捨てた枚数分、《Wiraqocha Rasca》の攻撃力は1000ポイントアップする! 捨てたのは2枚……すなわち、攻撃力は2000アップだ!」

 

 直後、地鳴りのような低音が観客席を震わせた。ただ存在するだけで、地上に異様な圧が刻み込まれていく。

 

《地縛神 Wiraqocha Rasca》 ATK100 → 2100

 

「ハンデスと同時に攻撃力を上げるモンスター……だが、その数値は《ガンナードラゴン》に及ばない!」

 

 ジャンは声を張る。だが、即座にディスカーが冷ややかに応じた。

 

「地縛神に触れることは出来ないさ。―――《Wiraqocha Rasca》は攻撃対象にならず、さらにフィールドにこのカードしか存在しない場合、相手は攻撃そのものを行えない。つまり、いくら攻撃力を誇ろうと……《Wiraqocha Rasca》にも、この私にも届かない」

 

 淡々とした口調。まるで絶望を事実として突きつけるかのように。

 

「もちろん、君が言ったように効果耐性はない。無敵ではないさ。だが、盤面を見ればわかるだろう?ああ、そうそう。《ろびーな》と《いぐるん》は効果により、すでに私の手札へ戻っている」

 

 静かに事実を並べる声音に、場の空気がじわりと冷えていく。

 それでもジャンは怯まなかった。視線を逸らさず、わずかな隙を探し出すように頭を巡らせる。そして―――

 

「ならば、カードを2枚伏せ……ターンエンドだ!」

「それでは、私のターン」

 

ジャンSPC 0→1

ディスカーSPC 2→3

 

ジャン

LP:4000

SPC:1

Hand:0

Monster:《可変機獣ガンナードラゴン》《神獣王バルバロス》

FieldMagic:《スピード・ワールド2》

Magic&Trap:Set2

 

ディスカー

LP:4000

SPC:3

Hand:5(内3枚は《ふわんだりぃず×ろびーな》《ふわんだりぃず×いぐるん》《ふわんだりぃず×すとりー》)

Monster:《地縛神 Wiraqocha Rasca》

FieldMagic:《スピード・ワールド2》

Magic&Trap:Set1

 

 ディスカーが冷静にカードを引き抜いた、その瞬間。ジャンは即座に作戦を開始した。

 

「ライフを1000支払い―――《スキルドレイン》を発動! フィールドの全てのモンスターの効果は無効化される!」

 

ジャン:LP4000→3000

 

 【スキルドレイン】。それはディスカーの【ふわんだりぃず】への切り札とも言える対策だった。もちろん、《地縛神》さえも力を奪うことができる。だからこそ―――

 

「……彼女が悲しむから、それはやめてほしいな。リバースカード、オープン。《砂塵の大竜巻》。その《スキルドレイン》を吹き飛ばす」

 

 対策の対策。準備はすでに整っている。だが―――

 

「ライフを半分支払い、《神の宣告》を発動! 相手の魔法・罠を無効にする!」

 

ジャン:LP3000→1500

 

 その瞬間、観客席がどよめく。ディスカーの返しをも読んでいたのか、ジャンは即座に切り返した。

 

「カウンター罠は、カウンター罠でしか止められない……! これで通るはずだ!」

 

 わずかな安堵が胸に広がる。

 しかし―――

 

「ライフを半分支払い、手札から《レッド・リブート》を発動。罠の発動を無効にし、そのカードを伏せ直させてもらおう」

 

ディスカー:LP4000→2000

 

 宣告の力は即座に封じられた。希望は、指先から零れ落ちる砂のように消えていく。

 

「な……に……!?」

 

 ジャンの喉から漏れた声は、驚愕というより絶望に近かった。

 

『おおっと! まさかの手札からのカウンター罠! 冷徹な一撃が、ジャンの戦術を完全に封じたァッ!』

「まだ《レッド・リブート》の効果は続いている。貴方はデッキから罠カードを1枚セットできる。……もっとも、このターンは発動できないのだけれどね。そして、地縛神は―――相手に直接攻撃できる!」

「ぐっ……」

 

 歯噛みするジャン。その表情には苦痛と同時に、なお消えぬ闘志の炎が宿っていた。

 その眼差しを見たディスカーは、静かにカードを掲げる。

 

「《ふわんだりぃず×すとりー》を召喚」

 

 ダチョウが甲高く鳴き声を上げ、フィールドに舞い降りる。最後の詰めに相応しい一手。

 

「このカードが召喚に成功した時、墓地のカード1枚を除外できる。私は……貴方の《超電磁タートル》を除外!」

 

 守りの切り札は消えた。だが、ジャンは口元を歪めて笑う。

 

「…………ははっ。まさか、ここまで徹底して封じられるとはな」

 

 敗北の予感を悟りつつも、ジャンは相手を讃え、胸を張る。背負ってきたものへの誇りを示すために。

 

「さらに続けられるが……決着が見えている状況で、無駄に手を伸ばすのは行儀が悪い。―――これで終わりだ。バトル! 《Wiraqocha Rasca》、ダイレクトアタック!『デス・シンギュラリティ』ッ!!」

 

 巨鳥が天を突くような咆哮を放つ。

 漆黒の翼が夜空を裂き、黄金の閃光を帯びて一直線にジャンへと迫る。

 

「ぬあああああああっ!!」

 

ジャン:LP1500→0

 

『き、決まったァァァアアアッッ!! 目まぐるしい効果の応酬! そして神すら操る冷徹な采配!! 激戦を制したのは―――チームリベリオンだぁぁっ!!』

 

 割れんばかりの歓声。その中で、ディスカーとジャンは二人揃ってピットに停車する。

 ユニコーンの仲間たちが駆け寄り、敗北に俯くジャンの背を強く叩いた。

 

「ジャン……!」

「お前の走りは、俺たちに届いたぞ!」

 

 しばし沈黙。だが、ジャンはやがて顔を上げ、仲間を見やった。その眼はまだ、闘志を失ってはいなかった。

 

「……己の未熟さを知らされた。だが―――」

 

 歯を食いしばりながら、それでも誇り高く言い放つ。

 

「次の大会では優勝するぞ!」

 

 仲間たちの瞳が一斉に輝き、力強い声援が返る。敗北の中に確かな希望が芽吹く瞬間だった。そんな中、ディスカーが静かに口を開く。

 

「良いデュエルだったよ、チームユニコーン」

 

 その声音には、勝利の余韻とともに、相手への敬意が滲む。

 

「全力でぶつかってきたな。感謝するぜ?」

 

 オルデの声が続く。少し笑みを浮かべながら、力強く肩を叩く。

 

「いやあ、最高の戦いでしたよ」

 

 ウーヴァンも口角を上げ、チームユニコーンの健闘を称える。

 敗北の痛みがまだ胸に残るジャンだったが、仲間たちの励ましと、敵からの賞賛によって、心に小さな火が灯る。

 その火は、次なる戦いへの意志の炎だった。

 

「ああ、必ず次は倒させてもらおう!」

「今度は好き勝手させないぜ!」

「また会おう!」

「楽しみにしているよ。次はもっと白熱した戦いになるだろう」

 

 オルデとウーヴァンも頷き、互いに健闘を称える。

 静かなピットには、勝者の余韻と敗者の誇りが混ざり合い、次の戦いへの期待がじわりと満ちていった。

 ―――そして、チームリベリオンの次の相手は、チーム5D’s。新たな激戦が、すぐそこまで迫っていた。

 

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