白銀の騎士、鏡の中より生存を懸けて   作:塩焼きそば啜郎

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原作で出番が少なかった人を書きたい系作者です。


第一話

目が覚めればそこは見知らぬ部屋……というのはありきたりな導入だろうか。とにかく、その青年は困惑した表情でベットから身を起こした。

 

「え……?」

 

周囲の景色は全く記憶に無い。窓から陽の光が差し込む、質素な部屋だった。青年はしばらく周りを眺めた後、自分の姿を確認する。

 

「……」

 

幸いにも、昨日までの自分の姿と何ら変わりはなかった。それ以外は全て違うのだが。少しだけ冷静になれた青年は、改めて周囲の探索を開始した。

 

無言でキッチンやリビングを歩き回り、情報を集める。

 

「本当にここ、どこだ?」

 

分かったのは、僅かな事のみ。食料の蓄えはある事と、水道や電気は止まっていない事、自分が深夜のコンビニでアルバイトをしている事だった。少ない。情報が少なすぎる。

 

「はぁ……」

 

青年はベットに座り込んだ。これからどうすれば良いのか、元に戻る方法はあるのか。頭の中で様々な思考が浮かぶ中、その視界にある物が映り込んだ。

 

「これは……」

 

机の上に置かれた、黒い物体。中にはカードらしき物が収められているのが確認出来る。そして物体には、犀を模したような紋章が刻まれていた。

 

「嘘だろ……嘘だろ嘘だろ嘘だろ!?ガイ!?()()!?」

 

青年は初めて絶叫を上げた。主人公の見た目と大まかな内容しか知らないが……確かに見覚えがある。『仮面ライダー龍騎』。13人のライダーによる凄惨な戦いが繰り広げられた世界に自らがやって来た事を青年は悟った。

 

「詰んだ……戦闘経験なんて無いし……知らんけど絶対ヤバい奴だらけだし……なんなら(ガイ)はネタにされるくらい有名だし……」

 

ベットの上で頭を抱えて転がり回る。自分に待っているのは戦いによる死か、モンスターの捕食による死。どちらにせよ悲惨な死の運命だった。

 

「ガイかぁ……なんでかな。誰だったっけ……あの蛇の……王蛇か。王蛇ならまだやりようあったのかも知れないのになぁ」

 

原作は知らないが、仮面ライダーガイは王蛇の(ガードベント)となり死亡する、というのは知っていた。散々ネットでネタにされていたからだ。笑いながら検索していた過去の自分が恨めしい。

デッキを掴み、カードを取り出して見る。

 

ADVENT−METALGELAS……一枚。

 

STRIKEVENT……一枚。

 

CONFINEVENT……二枚。

 

FINALVENT……一枚。

 

計五枚。犀型ミラーモンスター、『メタルゲラス』が描かれたカードは召喚で、デッキと同じ紋章が描かれたカードは必殺技……というのは知っている。見るからに武器が描かれたカードも何となく用途は分かった。問題は最後の二枚。

 

「コンフ……コンファ、イン……コンファインベント?」

 

このカードもガイを象徴する有名なカードなのだが、青年はそれを知る由もない。因みにCONFINEとは『制限する』という意味を持つ。彼はパニックだったので思い出す事も出来なかったが。

 

「しっかし、どうしたものか……壊してどうにかなりそうな物でも無いし……」

 

実際、デッキを破壊したら待つのは捕食による死である。何も分からない中、下手な行動を取る勇気は青年には無かった。カードを戻し、ベットの上でデッキを眺める。夢ならもうそろそろ覚めてくれ。そんな青年の願いを壊すような音が響いたのは、次の瞬間だった。

 

「……うわぁ……」

 

脳内に響く金属音。それは近くでミラーモンスターが出現した事を表している。青年はベットから立ち上がり、窓から外の景色を見た。

 

「……でッッッか!!何あいつ!?」

 

見れば、巨大な蜘蛛のようなミラーモンスターが、黒い車に糸を巻き付けているではないか。

 

「しかも……誰だったっけ、名前が浮かばん」

 

車の車体に映る怪物を戸惑ったように見る、長髪の男性。やがてその体は車体へと吸い込まれて行く。

 

「どうする?出るか?出ないか……?」

 

ここで出れば、もしかしたら仲間が出来るかも知れない。あの男性は恐らく主人公。主人公が人殺しを好む鬼畜という可能性は低い。敵は何人もいるはずなのだ。その中で、貴重な仲間と出会える好機……青年は覚悟を決めた。鏡の前に立ち、左手でカードデッキを構える。

 

「来た……」

 

その腰には、鏡面から出現した『Vバックル』が装着されていた。左腕を曲げると同時に、犀の角を象るかの如く右腕を前に突き出す。奇しくもそれは、かつての変身者と同じ構えだった。

 

「変身!」

 

カードデッキをVバックルに装填する。瞬く間に鏡像が青年を覆い、次の瞬間にはその体を重厚な鎧が包んだ。

 

「よし……やってやる!」

 

青年、いや、『仮面ライダーガイ』は勇んで鏡に飛び込む。一瞬の暗転の後に降り立ったのは、合わせ鏡のような空間、『ディメンションホール』だった。前後左右に自身の姿が反射している。

 

「ライダーってこんなのに乗ってたのか……」

 

ガイは一台の『ライドシューター』に乗り込み、勢いよく発進させる。現実と鏡像を結ぶ次元の壁に、ライドシューターのエンジン音が轟いた。

 

やがてディメンションホールを抜けミラーワールドへと辿り着いたガイは、ライドシューターから降りて辺りを伺う。その名の通り、全てが反転した鏡合わせの世界だ。

 

「龍騎がいたのは……向こうか!」

 

ガイは戦闘音が鳴り響く場所へと走って行った。

 

「この肩の角バランス悪いな……カッコいいけど」

 

己の武装の実用性に疑問を持ちつつ。




青年/仮面ライダーガイ

願い……無し

突如として龍騎の世界へとやって来た男。元の世界では大学生。ガイの装甲にケチをつけ、ミラーワールドを駆ける。
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