ミラーワールドを走り続けていると、その音は段々と近くなっていった。更に走ると、ガイは開けた場所に出た。そこには武器を構え、蜘蛛型ミラーモンスター『ディスパイダー』と対峙するライダー、それを後ろから見るもう一人のライダーがいた。ガイはもう一人の方へと近付く。
「なぁ、あんた」
「うおっ!?…………そっちも、あいつと同じ……?」
「そうらしいな。俺も自分の事についてはよく分かって無い。あんたと同じ状態だ」
ガイに声をかけられたもう一人のライダーは、左右を交互に見やって言った。困惑こそすれど、ガイよりかは落ち着いていると言えるだろう。
(あれ?おかしいぞ、なんで赤く無いんだ……?)
何故なら、ガイは現在進行系でパニックになっているから。信頼出来る仲間が出来たと思えば、なんだか違う姿。表面では冷静さを保っているようにしているが、内心はビクビクしていた。
(あれー?もしかして出るの早すぎた感じ?いつ出れば良かったの?)
ガイが一人でオロオロしている内に、もう一人のライダーはデッキからカードを引き抜いた。どうやらディスパイダーと戦っているライダーの真似をするようだ。自動的に開いた『ライドバイザー』にカードを装填する。
『SWORDVENT』
電子音声の後、空からは質素な剣が降ってきた。地面に突き刺さったそれを、ゆっくりと引き抜く。
「……よ〜し、何だか分かんないけど、俺も……!」
「ち、ちょっとあんた!」
慌てて駆け寄って来たガイに、男は振り向く。
「なんだよ、あいつ一人であんなデカいのに勝てるってのかよ!」
「その姿でやるのか?」
「そうだけど……」
「いやさ、ほら……何も描いてないじゃん?それ」
ガイは男のカードデッキを指差す。犀の紋章が記されたガイのカードデッキとは違い、男のには何も記されてはいなかった。
「……とにかく!ここで見てるだけってのは出来ない!」
男はディスパイダーの方を向き直すと、雄叫びを上げて突然する。
(いや無理だろ!契約してない状態で勝てるわけ無いだろ!)
「だぁぁぁ〜っ!!」
ガイの心の叫びも虚しく、男はディスパイダーとの距離をグングン詰めて行く。その様子をもう一人、『仮面ライダーナイト』はじっと見つめていた。
「やぁっ!!」
気合いの一撃。だが振り下ろされた剣はあっさりと折れる。
「うわっ、折れたぁ!?うわぁぁぁっ!」
ディスパイダーの脚に弾き飛ばされる男。ナイトは冷静に、持っていた『ウイングランサー』の柄で男を横に弾き飛ばす。男はそのままシャッターに激突した。
「うおっ!?ってぇ〜……」
「邪魔をするな!」
「あーあー、だから言ったのに……」
追ってきたガイの一言に、ナイトは振り向く。
「なんだ、いつの間にか増えていたな」
「……増えてちゃ駄目か?」
「どうでもいい……そこの奴みたいに邪魔をしないならな」
ナイトは腰に装着された『ダークバイザー』にカードを装填する。
『ADVENT』
その瞬間、空から甲高い咆哮が響き渡る。蝙蝠型ミラーモンスター、『ダークウイング』が襲来し、ディスパイダーとのすれ違い様にその脚を切断した。間髪入れず、カードをもう一枚装填。
『FINALVENT』
走り出したナイトにダークウイングが合体し、そのまま空に飛翔。ナイトは地上のディスパイダーに向け、ウイングランサーを構えた。その身を『ウイングウォール』が包み、巨大な一本槍と化してディスパイダーへと急降下。ファイナルベント『飛翔斬』は見事に直撃し、爆炎が上がった。
「うわっ……!?やったのか……?」
「これがモンスターとの戦いか……」
「って……あぁぁ、ちょっとちょっと!」
(このタイミングで行く!?)
爆炎の中心から立ち去ろうとしたナイトに、男が駆け寄る。
「ねぇ、あんたも俺と同じでしょ?人間なんだよね!?ね!?これどーなってる訳!?」
「……」
「これなんなの!?」
「……はしゃぐな!」
(そらあんなに質問攻めされたらな……)
男のしつこい問いにナイトは痺れを切らしたのか、男を叱責した。男はそれに文句をつけたが、ナイトは空を見ている。釣られてガイも空を見上げ、目に入った光景は……
「あいつもデッカい!!」
「え?」
男が間抜けな声を漏らすのと、ナイトに突き飛ばされたのはほぼ同時だった。二人がいた所に火球が着弾する。
ガイも取り敢えず男の元に駆け寄った。
「おい、大丈夫か?」
「あぁ、何とか……って、そっちのあんた!いきなり突き飛ばすなよ!」
「フン、来たか……」
三人をめがけて飛翔するのは、赤龍型ミラーモンスター、『ドラグレッダー』。ナイトとガイは咄嗟に駆け出した。
(龍騎があの姿って事は、まだあの龍と契約してないって事……つまりあいつは野良モンスター!死ぬ!確実に狙われたら死ぬッ!!)
「ちょっと待てって!ねぇ!」
慌ててついてきた男を含め三人のライダーは、全速力でミラーワールドを走った。後ろからはドラグレッダーの放つ火球の炎が迫る。
「あれ……二人とも速くないか!?」
「そんな分厚い鎧を着てるからだ!」
いつの間にか一番後ろになっていたガイが口を開く。ナイトがぶっきらぼうに応じた。その間にもドラグレッダーの容赦無い攻撃は続き、爆発が続く。そしてついに、爆発がガイを襲った。
「うおおおっ!?」
ふっ飛ばされたガイは二人を空中で越し、前方の車に激突する。強固な鎧で致命傷は免れたが、それでも全身に痛みが走った。
「こ、こんな所で……しかもモンスターに……」
「おいあんた!」
そこに男が走って来た。ガイを支え、何とか立ち上がらせる。
「早く逃げるぞ!」
「お、おう!助かった!!」
「こんな状況で人助けか……お人好しめ」
男とガイは二人三脚で走り始める。半ば爆発に巻き込まれながら、何とか直撃は免れていた。
「これなら何とか……!」
ガイがそう呟いたが現実は非情である。痺れを切らしたドラグレッダーは咆哮を上げ、特大の火球を撃ち出した。二人はまともに爆発を喰らい、その余波は前方を走るナイトにも及んだ。
「うおおぁーっ!?」
三人の戦士が、ミラーワールドの空を舞った。