うぉアッマッ! うぉデッカッ! うぉキッツッ!   作:所羅門ヒトリモン

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6 黒髪ショートボブ高身長無口気弱デカカワ系大人し美少女・学園の後輩でバレー女子とセクハラお悩み相談で……

 

 

 籾下さんと言えば、僕はもうひとりの後輩女子を想起せざるを得ない。

 彼女もまた、九十九坂学園では少数派に属する真面目系の女の子であり、籾下さんと同じく今年度入学の一年生だ。

 先ほど、僕は籾下さんのおっぱいについて、まるでバレーボールのようだと連想したばかりではあるけれど(冷静に考えると、とても冷静ではいられない大きさだ!)。

 そういう表現を当てはめるのなら、どちらかというと彼女の方がより相応しい属性を持っている。

 

 柔屋(やわらや)育美(いくみ)

 

 彼女の属性は、黒髪ショートボブ。大人しそうで伏し目がちな目。ほどよく鍛えられて柔軟な質感の健康スキン。困り眉の似合う気弱そうな顔。後輩。バレーボール部。デカ乳デカ尻デカ可愛デカ娘。高身長。無口。気弱。押されたら断れない。まるで大型猫。セクハラされがち。

 

 柔屋さんとの出会いは、彼女がクラスメートと思しき女子数人に寄ってたかってセクハラされているところを、たまたま通りがかった僕が図らずも助け出した形だったかな。

 

 まだ梅雨が始まる前。

 ちょうどいまと同じように、文芸部の部室と職員室のあいだにある廊下を渡り、二階の校舎の曲がり角へと差し掛かった際に。

 

 彼女は一階でもなければ二階でもない場所。

 

 つまりは階段の踊り場で、なんというかエッチなことをされていた。

 具体的に言えば、柔屋さんは羽交い締めにされ、そのバレーボール級のおっぱいやビッグサイズのお尻を代わる代わるまさぐられていたようだった。

 

「へ、へへへ……一年のくせに、イロイロとデカすぎるもん持ってるじゃねーかよ……」

「う、うぅ……や、やめて、ください……」

「だめー」

「そうそう、やめてあげなーい。だって柔屋さん、かわいいんだもんっ」

「わっ、すごいっ。おっぱいホント大きいねっ? お尻も私たちの倍くらいない?」

「こんだけデッカいってことは、もうたっくさん遊んでるんだろうな〜?」

「ねえねえ、ほんとは私たちのことも誘ってるんでしょ〜?」

「ちが……んんっ!」

「おっ! 喘いだ! やーらしっ!」

「かわいっ。色っぽーいっ。ほんとに同い年ぃ?」

「背の大きい子って、気の弱い子多めだよね〜」

「ねっ? 狙い目だって言ったでしょ?」

「だ、だれか……」

 

 助けを求めた柔屋さんの視線が、僕とぶつかったのはその瞬間。

 柔屋さんの視線が上に注がれて、必然的に顔がボカンッ! と真っ赤になって。

 そんな柔屋さんの反応に気づいたセクハラ女子たち六人──どことなくヤンキー系で不良的な空気感をまとう──が、釣られて意識をこちらに向けて。

 

「あ」

「柊木様!?」

「なっ、なに見てんだよ……!」

「ちょっ」

「やめなよっ、男だよ……!?」

「ちっ、違うんです。これはオフザケっていうか、アタシ本気でそっちのケがあるとかじゃなくて……!」

「おいっ」

「なに弁明とかしてるわけ!?」

「背のデカいヤツを狙ったのも、ただ男の代用って言うか……!」

「あーもう!」

「とにかく逃げよっ!」

 

 ダカダカダカダカ!

 セクハラ女子たちは僕が何かを言う前に、慌てた様子で階段を駆け降りて行った。

 わずか数秒の出来事だったので、僕は本当に何もしてない。

 ただ突然のスクールインモラル。

 そして前世のトラウマをちょい刺激する女の子同士の絡み合い。

 僕は思考が停止して、強いて言えば無意識の内にほんの少し眉間にシワが寄っていた。その程度だった。

 

 もちろん、少し時間があればすぐに柔屋さんを助けよう、という意識にはなっただろう。

 

 女性人口の多いこの世界では、性的な欲求を同性で満たそうとする女性も少なからずいる。

 正確には、世界がこんなだから当たり前にそういう女性たちもいるって話だけど。

 朱に交われば赤くなる的な感じで、最初は女子校特有の一過性の百合だったのが、この世界じゃ常時女子校空間みたいなものなので、いつの間にかほとんど真っ赤っか! みたいな?

 

 まぁ、同性間結婚が合法になっている時点で、このへんは仕方のない話だと思う。

 

 柔屋さんにセクハラを働いていた女子たちも、世界的に見れば珍しい話じゃない。

 レズビアンの雛鳥は、各地で産声を上げている。

 もっとも、彼女たちが仮性であったのかすでに真性のレズであったのか?

 そこまではさすがに、僕の窺い知るところじゃない。

 とはいえ、状況証拠から察するに、背が高くて髪も短い女子に目をつけてセクハラを働いていたのなら、恐らくはまだ可愛らしい仮性の域ではあったんじゃないかな……(真性だったなら、僕が姿を現したからといって謎の言い訳をすることもなかっただろうし)。

 

 彼女たちは行き場を失った異性愛感情や性的欲求を、仕方なしに男性的記号を持った柔屋さんを使って満たそうとしていた。僕はそう思う。

 

 え? おっぱいが大きいのに男性的記号とか何言ってんのか分からない?

 

 ふふふ。おバカさん。

 

 おっぱいは男女関係なしのチャームポイント。そうだろ?

 

 もちろん、だからと言って、半ば暴行・イジメめいたセクハラが許されるなんて話は何処にも無い。

 偶然にも睨みを利かせたみたいな登場になったおかげで、セクハラ女子たちは蜘蛛の子を散らしたように退散して行ったけど。

 たとえ睨みを利かせられていなかったとしても、僕がこのとき助けを求めていた柔置さんを放置して立ち去る選択肢は、まったく無かった。

 

 正直、レズビアンの女性(レズっぽい女性含む)を見ると今でも胃がキリキリするし頭がズキズキするけど、心因性なのは分かってる。

 

 病は気から!

 

 僕にはチンチン生えてますけど?

 そういうマインドで己が心の弱さに打ち克てばいい。

 幸い、僕の意識がそんな感じで[呆然]→[介入を決意]へ遷移する前に、事態は拍子抜けなほど簡単に落ち着いていたんだけどね。

 

 重要なのはここからだ。

 

 結論から言うと、僕は柔屋さんに懐かれた。

 柔屋さんの視点からだと、僕は少女漫画のヒーローよろしく、窮地に陥った主人公を颯爽と助けるバチクソイケメンに映ったっぽい。

 しかも、ただ睨みを利かしただけで不良すらも恐れをなして逃げていく。そんな激ヤバ〝漢ォ!〟オーラまで出ている感じで。

 

 柔屋さんはペタリと腰を抜かして女の子座りになって。

 ほんの一瞬前まで、セクハラの恐怖と羞恥心で、心も頭もいっぱいいっぱいになっていたはずなんだけど。

 セクハラ女子たちが立ち去って、僕が階段を降りながら「大丈夫?」と声をかける頃には……

 

「……!」

「?」

 

 両手で口元を押さえて、真っ赤な顔で女の子の顔になっていた。

 常日頃から、如何にして全自動メス顔晒し機になれるかを考えている僕は、このとき直観的に理解したね。

 

 ──あ。この子、声には出してないけど心のなかで「わ、わぁ……! 白馬の王子様みたい……!」ってなってるな?

 

 となれば、ハハ。

 女の子が望む通り、そのように振る舞うのもやぶさかではない僕である。

 柔屋さんは背が高い。

 しかしそれは、女子にしては、という注釈ありき。

 幸いにも僕は男で、且つ、平均以上に背も高い方だった。

 腕力にも自信があった。

 

「もしかして、立てない? だったら、少しごめんね?」

「! !? ……ぇ……!?」

「保健室まで連れていくね」

「!?」

 

 戸惑う柔屋さんに断りを入れて、僕はそのカラダをお姫様抱っこし。

 ゆっくり慎重に、丁寧に彼女を保健室まで運び込んだ。

 その後は養護教諭の先生に彼女を任せて、僕は「初恋泥棒って、たぶんこんな感じかな?」なんて首を傾けながら、いいことをした気になって帰ったんだ。

 

 翌日から、僕は柔屋さんにトイレなどを出待ちされるようになった……

 

「うぉ!? びっくりしたっ……って、あ。昨日の?」

「……はい」

 

 コクン、と頷いて。

 柔屋さんは恥ずかしそうにモジモジしながら、男子トイレの出入り口すぐ横に立っていた。

 九十九坂学園の男子トイレは、現状、完全なる僕専用のトイレだ。

 男性保護の観点とかなんとかで、普段は基本的に清掃用ロボットか僕しか使わない場所だと言っていい。

 女子生徒も女性教諭も、盗撮を疑われたり痴姦を疑われたりするのを避けるため、滅多なことでは近づかない。

 

 しかしながら、柔屋さんはいた。

 

「あの……私……これっ……です!」

「え?」

 

 彼女は自分の左胸を、突然に指差した。

 両手の人差し指を使って、ブレザーを押し上げる豊満なおっぱいを強調するように。

 あるいは、乳首の位置を指し示す──にしては指先の位置は上だから、胸元にあるホクロの位置でも教えられているのかと最初、僕は錯覚した。

 そんなワケなかった。

 柔屋さんは名札を示して、自己紹介していたのだ。

 

「あ、ああっ! 柔屋さんて言うんだね」

「……そっちは、柊木先輩……です、ね」

「うん。僕は柊木。柊木柚子太郎」

 

 互いの自己紹介が済んだのは、このとき。

 そして、

 

「ひょっとして、昨日のお礼を伝えに?」

「……!」

 

 コクコク。

 柔屋さんは無口だったけど、リアクションを見てとれば意思疎通に支障はなかった。

 

「気にしなくていいよ。僕、昨日は特に何もしてないし」

「……そんな、保健室までっ! 私、連れて行って、もらいました……」

「柔屋さん軽かったね?」

「! 私が、軽い……!?」

「あの後は、すぐに立てるように?」

「あっ──えっとっ……はいっ! 十八時くらいには……! なので、ありがとう、ございます……!」

「どういたしまして。また困ったことがあったら、いつでも力になるよ」

 

 僕は「HAHA」と、めっちゃカッコつけて柔屋さんの肩に手をポンして、「じゃあね」と言った。

 休み時間は限られていたし、男子トイレのあるフロアと一年生用のフロアは違う。

 わざわざ礼を言いに男子トイレまでやって来た柔屋さんを、長々と拘束するのは悪かったし。

 これで用件は終わっただろうと思って、最後は頼れる先輩ムーブで背中を見せれば完璧だなと思ったんだ。

 

 柔屋さんはそれからほとんど、毎日のごとく男子トイレに現れるようになった。

 授業終わりの教室、廊下に出ると突き当たりの曲がり角にデカデカ一年がいるなんて噂も流れるようになった。

 

 キツイ。

 

 授業終わりの教室はともかく、後輩女子にトイレタイミングを完全に把握されてるのはさすがにキツイ……僕がトイレを利用してる時間が長ければ長いだけ、不要な事実が把握されてしまう……

 

 イマジナリー柔屋さんが、「先輩、今日はうんち、なんです、ね……!」とか囁いてくる! 耐え難い。トイレから出たばかりの僕から、万が一にでも悪臭が嗅ぎ取られていたりしたら? 上位雄はうんちなんてしません。ああなんてことだ! 僕のキャラクターイメージに傷が!

 

 だと言うのに、柔屋さんは僕に話があるワケでもないのか。

 だいたい梅雨に入る直前ぐらいまで、無言で出待ちされる日々が続いた。

 またセクハラされて困ってるの?

 僕が問いただしても、理由は語らずムッツリと黙り込んだまま……

 

 というか、なぜ僕がトイレに行ったタイミングでだけ、男子トイレに現れるんだ?

 

 柔屋さんは新しい怪異なのかもしれない。

 冗談まじりに、僕がそんなことを思うようになった矢先でのこと。

 

「あの……先輩」

「……え? ん? おお! なに? 柔屋さん」

「お願いが、あります」

「もちろん引き受けるよ」

 

 柔屋さんは非常に長い時間をかけて、ついに僕に用件を打ち明けてくれた。

 おいおいなんだよ。早く言ってくれよ。なんでもやってあげるよ。

 トイレ出待ちをやめてもらえるなら、僕はどんな無茶なお願いにだって応えるつもりになっていた。

 

 でもって、柔屋さんのお願いの内容はこうだった。

 

「私、先輩みたいに強くてカッコよくなりたいんです……」

「強くて、カッコよく?」

「もっと堂々とできるように……バレーでも肝心な場面で引っ込み思案になってしまうので、いいプレーができなくて……クラスの子にむ、胸を勝手に触られ、ても……! 背ばっか大きいだけで気は小さいままで……」

 

 それは長年の悩みだったのだろう。

 無口で気弱な柔屋さんは、どうしたらあの日の僕(柔屋さん視点)みたいに強くカッコよくいられるか?

 それをずっと相談したかったようだ。

 長年溜め込んだ悩みなだけに、一度堰を切ってしまえば、まさに氾濫のように言葉は溢れ出て仕方がなかったのだろう。

 無口な人ほど、内心では多弁家だったりする。

 

「先輩は、どうしてあんなに堂々と、恥ずかしいことができるんですか……?」

「フフフ。その言い方は少し気になるところがあるけど、僕にだって羞恥心はあるんだぜ?」

「え?」

「柔屋さんをお姫様抱っこして保健室に運んだ日なんか、あとあとになってキモくなかったかな? とか、明日誰かにからかわれたらどうしよう? とかさ、普通に思ったし」

「そっ、それじゃあ、どうして……!?」

「そうだなぁ。ある程度は、やっぱり慣れの問題だからじゃないかなぁ」

「慣、れ……」

 

 キザすぎて恥ずかしい言葉も、クサすぎて恥ずかしい言葉も。

 最初は口に出すの、かなり難しかったし辿々しかった。

 でも、この世界で中学生をやってるうちに、ある程度は舌も回るようになったし苦労なくムーブをかますことも可能になった。

 まだまだ完璧な領域には到達していないけど、

 

「うん。慣れだね」

「慣れ……」

 

 僕は柔屋さんに、人生二週目分の含蓄を込めて断言したのだった。

 それから長い沈黙があって。

 柔屋さんは彼女なりに何らかの意を決したのか、「じゃあ……これから少し、特訓に付き合って欲しいです……」と言った。

 

 

 

 

 人気のない放課後。九十九坂学園の校舎には死角が多い。

 

 文芸部での活動がいつもより幾らか早めに終わり、最終下校時刻までまだまだ余裕があるなか。

 二階から一階に降りて、半ば物置きと化している階段裏の物陰へ。

 僕が足を運ぶと、すでに柔屋さんはいた。

 

「今日はバレー部、休みなの?」

「……顧問が、風邪を引いてしまったみたいで、今日はミーティングだけ……」

「そうなんだ。それじゃ、早速だけどいつものヤツやる?」

「……」

 

 コクン。

 柔屋さんはやや頬を赤く染めて、小さく頷いた。

 薄暗な階段裏には、使われていない机や椅子が乱雑に置かれている。

 そのうちのふたつ、狭い空間内で椅子を向かい合わせて互いに座り。

 ブレザー姿の柔屋さんとまっすぐ顔を突き合わせながら、僕らは特訓を開始する。

 

「先輩……す、好き、です……」

「え? ごめん。聞こえなかった」

「す、好きっ、です……!」

「へえ。何が好きなの?」

「先輩っ、がっ! 好き、です……!」

「先輩って、代名詞じゃん。ちゃんと名前で言ってよ」

「うぅ……!」

 

 そう。好きよ好きよゲームである!

 愛してるよゲームの亜種であることは字面からもお察しの通り。

 なお勘違いしないでもらいたいのだが、これは柔屋さんから言い出したことだ。

 柔屋さんは言いました。

 僕のように強くカッコよくなるには、恥ずかしいことをいっぱいして経験を積んで、精神力を無理矢理にでも鍛えるしかないと。

 あんなことやこんなことをしておけば、いざという時「でも私、あんなことやこんなこともしてるし!」と気を強く持てる。要はそういう理屈みたいですね。

 そりゃ慣れだとは言ったけども……!

 

(僕からしたら、歳下の女の子と一対一で、しょっちゅう合コンごっこしてるみたいなものじゃん!?)

 

 是が非でも、経験値獲得の場とさせていただきましょう。

 対戦よろしくお願いします。

 

「それじゃ、罰ゲームね。はい、手握って?」

「……!」

「いい子だね。じゃ、今度は僕の番──好きだよ、育美」

「!! そ、ん、な……下の名前、でなんて……!」

「油断した? もう照れちゃったか。はい罰ゲーム。僕の目を見て、三十秒ガマンして?」

「……せ、先輩、ゥゥ……!」

 

 柔屋さんはすぐに顔を逸らしてしまった。

 可愛い。

 あれ、ちょっと待って? は? なんだこのデカカワ娘。

 飼い主の後を追ってドアの向こうから「にゃぁにゃぁ」甘えるネコみたいにストーカー気質があるくせに、男のイタズラ心をとんでもなく煽ってきやがって……

 

「まだまだ特訓は終えられないみたいだね」

「うぅ……すみません、先輩……」

「謝らなくていいよ。それじゃ、次の特訓(ゲーム)にいこうか」

 

 題して、逆セクハラゲーム。

 これは常日頃なにかとセクハラされがちな柔屋さんに、逆の立場。

 つまりセクハラする側の体験を積ませることで、生来の受け体質を根本的に変えようという試みである。

 こちらも、提案してきたのは柔屋さんからだ。

 僕は今から、柔屋さんにセクハラされる。

 

「……そ、それじゃあ……ふぅ〜♡」

「っ──」

「ぁ、先輩いま、ちょっと……ビクッてしました?」

「してないよ」

「ふ〜♡」

「っ」

「! やっぱり、しました、ね……?」

「耳に息を吹きかけてこられたら、誰だってちょっとは反応するでしょ」

「そうですけど……じゃあ、こんなのはどうですか……?」

 

 耳元で囁くと、柔屋さんは自分の椅子に戻って上着のボタンを外した。

 黒ストッキングに包まれた足を斜めに閉じながら、微かなに内腿をこすり、顔を斜に向けて俯く。

 

「私、暑がりなので……この時期は汗が、溜まっちゃうんです……」

「汗が……溜まる……?」

「はい……なので、本当はいつもブラウスでいたいんですけど……おっぱいが大きすぎて……」

 

 ゴクリ。気づけば僕は、喉を鳴らしていた。

 

「クラスの人からも、すごくおっぱいイジリが多くなってしまうので……」

「な、なにを……!?」

「こう、やってっ……谷間の汗を拭いたり、気軽にできないんです……」

 

 フキフキ♡ フキフキ♡

 パツパツになってボタンが車裂きの刑を受けているみたいなブラウスの胸元。

 柔屋さんはそこをひとつ、ふたつ、自らボタンを外して開放した。

 むわっ♡ とした熱気と湿度が、甘やかな体臭と混じって鼻腔に届く。

 

(おっぱいでっけ……)

 

 自ずと視線が吸い込まれる僕に、柔屋さんは自らのハンカチを使って谷間の汗を拭う姿を見せつけていた。

 わずかに露出した女の子の素肌。

 しかも、普段は見られないおっぱいの谷間部分……柔屋さんは自分の両手を使って、器用に谷間のなかへハンカチを滑り込ませてはその布を引き戻す。

 そして、その濡れたハンカチを広げると、おっぱい汗でできた染みまで見せつけてきた。

 

「ほ、ほら……こんなにいっぱい……汗が溜まっちゃうんです……私のおっぱい、大きすぎ、で、ヘンですよね……?」

「そんなことはない」

「じゃあ、先輩はこんなに胸が大きい女の子を、恋人にしたいって思いますか……? 付き合いたい、って……思いますか……?」

 

 なんだよそれ……

 

「そりゃ……付き合いたいと思うよ」

「ほんとう、ですか……?」

「うん……まぁ、だって、一般的に女性の丸みを帯びた体つきは、大半の男にとって魅力的なものだから……」

「こんなに大きくて、こんなにすぐ汗が溜まっちゃってもですか……?」

「!?」

 

 柔屋さんはハンカチを咥えると、自身の両手を下乳に添えて前傾姿勢になった。

 ブラウスから覗く谷間には、汗の玉が浮かんで小さな水たまりを作っていた。

 嘘だろ。さすがにこれは何かの仕込みだろ。

 

「先輩……私のおっぱい、ほんとうにヘンじゃないなら……汗を、拭いてくれますか……?」

「え……?」

「お願いです……このままじゃ汗、こぼれちゃう……」

「わかった」

 

 僕はハンカチを受け取ると、その湿った感触に得も言われぬ感覚に襲われつつも、もはやマインドコンロールされていてどうしようもなかった。

 柔屋さんは恥ずかしそうに顔を背けながらも、両肘でおっぱいを挟み込んで、ブラウスの隙間を自らの手で広げている。

 ハンカチを近づけ、そ、と表面を拭った。

 汗の染みが、さらにハンカチを重たくした。

 

「んっ♡」

「! これで、いいかな……?」

「……はい……えへへ……どうでしたか、先輩……?」

「えっと……どう、ってなにが……?」

「……私、男のひとに自分の汗を拭かせちゃいました……すごい、セクハラだと思います……」

「負けたよ」

 

 こんなセクハラ、僕には思いつきもしなかった。

 

「や、やった……♡ はじめて、勝てました……♡」

 

 ──ああ。汗があってこそ青春だ。

 

 

 

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