切裂ヤイバの献身   作:monmo

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第十一話

 

 

 

 

 

 あの後、俺は担架で医務室に運ばれ、そこでリカバリーガールの治癒を受けてようやく意識がハッキリと戻った俺は、軽く傷の手当てをしてもらってから、クラスメイトの待つ観客席へと向かった。

 身体中に包帯を巻かれ、頬にはガーゼを貼られた俺は歩きながら、最初に目の合う相手の方に顔を向けた。

 

「あっ、ヤイバぁっ!!!」

 

「切裂ぃっ!!!!」

 

「切裂くんっ!!!」

 

「はいっ、ドーンマ───いってェ!!?」

 

 芦戸と峰田が同時に気づき、ソレに緑谷も反応する。上鳴が始めようとしたドンマイコールは、耳朗の鉄拳によって止められた。

 

「ゴメン、負けた」

 

「惜しかったよなぁ切裂っ! オメーなら絶対爆豪に勝てると思ったんだけどよぉっ!」

 

「いや、もういいよっ!!」

 

「ホントだよ切島くんっ! 何言ってんのっ!!」

 

 明るく話す切島に、耳朗と葉隠の怒声が飛ぶ。まあ、切島はそういう男だとわかっているので、心配されるよりもその反応を求めていた。

 

「オメー、下手な地下総合格闘技よりも残虐ファイトしてたからなっ!!?」

 

「もう耳朗と口田なんか、途中から見れなくて席立っちゃったんだぜっ!!?」

 

「っっ───っ────ッ!!(激しく頷いている)」

 

 砂藤と瀬呂の話に、ココまで爆豪よりも大人しく試合を見ていた口田すら、涙目で必死に訴えていた。

 

「ゴメンゴメンっ……爆豪くん、本気でぶつからないと怒るから……」

 

「だからって……限度がありますわ!」

 

「切島用のチェーンソーまで使い始めるとは思わなかったぞ」

 

「鳥肌が立った……!」

 

 八百万も障子も常闇も、見ていて気持ちの良いモノではなかったそうだ。まあ、当然か。

 

「緑谷と轟…………いや、それ以上のヤバい試合だったぜ……!!」

 

「ただ、相手が爆豪だったしな……逆に俺達が戦ったらどうなるか……」

 

「切裂ちゃんと爆豪ちゃん、プロヒーローの評価はどうなるのかしら?」

 

 峰田、尾白、蛙吹もそれぞれ思い思いの感想を話していたが、俺はそれよりも聞きたい事があった。

 

「ねぇ、緑谷くん…………爆豪くんって、優しい人だよね」

 

「え……!」

 

「え……」

 

「はぁッ!?」

 

「お前頭打ったか!?」

 

「もう1回リカバリーガールの所行こっ!!」

 

 俺の発言に周りのクラスメイト達から更に心配する声が上がったが、唯一緑谷だけは俺を見て眼を輝かせた。

 

「そう言えば、試合まだ始まってなかったの?」

 

「あっ……かっちゃん、ちょっと無理しちゃって…………休憩時間多めに取るんだって……!」

 

「そっか……」

 

 確かに、次で決勝だったのに滅茶苦茶してしまった。少しだけ爆豪を心配しつつ俺は客席を見回し、もう試合が無いのにいない人に気づいた。

 

「飯田くんは?」

 

「それが……家の事情で早退する事になったって……」

 

「ふーん……」

 

 緑谷は少し口どもったが、飯田の兄であるプロヒーロー『インゲニウム』の事は、言おうとはしなかった。確かに今言っても仕方のない事だろう。

 そんなワケで俺は飯田が座っていた、緑谷の隣に座った。奥の芦戸がちょっと寂しそうな顔をする。

 

「酷いケガだね。だいぶ無茶したんでしょ?」

 

 席に座った俺は、改めて緑谷のケガの具合を見る。包帯は相変わらず、どれもまだ外せないようだ。

 

「うん……切裂くんも大丈夫? かっちゃんの爆破、くらいまくってたけど……」

 

「君よりマシさ」

 

 俺の包帯は、すぐ取れるだろう。ふと、俺も緑谷と麗日と同じ、頬のガーゼが同じ位置に貼られている事に気がついた。

 

「ハハッ……また相澤先生に叱られるな……」

 

 そう呟いた緑谷の、表情は暗かった。

 

 それもそうだ。障害走は俺に1位を奪われ、騎馬戦ではなんとかハチマキを奪ったものの、実際は引き分けに近い。そしてトーナメントはベスト8。オールマイトに期待されてたにも関わらず、輝かしい結果とは完全に言えなくなってしまった。

 彼がオールマイトへの想いを背負っていたのも知っていた手前、わかっていて体をボロボロにさせたのは申し訳なかったが、轟を救うにはこの状態の緑谷しかいないと思っていたのだ。

 

 だから、もうこれ以上、彼に無闇に傷ついてもらう必要はない。

 

 

 

 

 

 彼の快進撃は、今ココから始まるのだ。

 

 

 

 

 

「緑谷くんの個性ってさ……ちょ、『超パワー』だったよね?」

 

「えっ? う、うん……!」

 

 俺に個性の事を問いかけられて、緑谷は少しドキりとしながら俺の方に顔を向けた。今考えてみれば、ドキドキしていたのは俺の方だったかもしれない。

 

「ソレさ……全身に拡散できないの?」

 

「え?」

 

 緑谷の間抜けな声が、観客席に響いた。

 

「腕や指に超パワーを一点集中するから、耐えきれなくてブッ壊れちゃうんでしょ? だったら一度溜めたパワーを全身に拡散しておけば、ケガしないまま個性を使い続ける事ができるんじゃない?」

 

 俺の長々とした説明に、緑谷はうなずくのを止めた。

 

「パ……パワーを一点に集中するんじゃなくて、全身に拡散させる…………?! 個性を、使い続けるって………………そッ、そうかッ……そうかッ!!!!! 個性をスイッチじゃなくて、僕は…………ッっ!! あ…………ッ、あ゛ぁッッ!! あ゛り゛か゛と゛う゛切裂くん゛ッッッッッッ!!!!!!!!」

 

「デっ、デクくんっ!!?」

 

 隣にいた麗日が飛び上がるほどの勢いで、緑谷は試合中の轟に叫んでた時より大きな声で叫びながら、怪我で固定されていない左手でノートを開き、メチャクチャな文字を書き始める。得意の独り言も、いつもより声のボリュームが大きい。

 

「あぁそうだみんなそうだ個性を当たり前のように使っているから後になってから個性のついた僕にはどうしても盲点だった。尾白くんや葉隠さんみたいに個性を日常的に発動し続けている人たちはみんな体の一部として個性を使っているんだ。僕はどうしても個性を必殺技的な何かだと考えていたし個性をもっていなかった分自分の力だけでどうにかしようと無意識に考えていたんだ。もっとフラットに個性を考える事ができればこんな自損は起こらないしあんな動きも不可能じゃないハズ。そもそも個性を使おうと考えるだけで判断がワンテンポ遅れるんだし必要な時に必要な使う箇所ごとにスイッチを切り替えようとしてきた。最初から全身に低威力で発動し続ける状態にしておけばそんな事考える必要ないじゃないか。あーもーなんでこんな初歩的な事に気が付かなかったんだ。あんな近くで見てきたのにオールマイトも…………ブツブツブツブツ」

 

「……スマホのメモにした方が良いんじゃない? 書き直すの大変でしょ?」

 

「ハッ!」

 

 俺に指摘されて、緑谷が今度は慌てて左手で携帯を取り出し、物凄い速度のフリック入力でメモをとり始める。

 それで呪文も収まり、ようやく静かになったのかと思った俺がチラリと横を見てみると、彼は体を携帯のマナーモードみたいにブルブルと振動させながら、なんと泣き始めた。

 

「う゛ゥゥゥゥゥゥ〜〜〜今すぐ身体を動かしたいのに動けないィィィィィィ〜〜〜〜ッッッッ!!!!!」

 

「まずはそのケガ治そう?」

 

「なんだかよくわからないけど……よかったねデクくんっ!」

 

 そして緑谷が試合そっちのけになるほどスマホのメモ書きに夢中になっている中、最後の試合がプレゼントマイク先生の放送と同時に、大型モニターに映し出されて始まった。

 

 

 

 

 

 決勝戦

 

 轟 VS 爆豪

 

 

 

 

 

『雄英高校体育祭も、いよいよラストバトルーーーーッッッッ!!!!!! 1年の頂点が、この1戦で決まるゥーーーーッッッ!!! いわゆるッッッッッッッッ、決勝戦!!!!!!!!!』

 

 グラウンドの武舞台の上には相変わらず直立不動の轟と、身体に包帯と頬にガーゼが貼ってある爆豪が対峙していた。

 

『ヒーロー科ァァァ!!!! 轟 焦凍ォォッッッッ!!!!!!!!! バァァァーーーーサァァーーーーーースッッッッッ!!!!!!!! ヒーロー科ァァッッッッ!!!!! 爆豪 勝己ィィィッッッッ!!!!!!!!』

 

 プレゼントマイク先生の実況も、過去最高潮までテンションが上がっており、スタジアムの熱狂もこれ以上ないぐらい盛り上がっていた。

 

『最後の試合が今ッッッッッッッ、スタァァァァァァァァトッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!』

 

 優勝者を決める、最後の試合が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局、轟は自分の炎を出す事はなかった。

 

 

 

 

 

 ・・・♡・・・♡・・・

 

 

 

 

 

『今年度、雄英体育祭……1年の全日程が終了! それではこれより、表彰式に移りますっ!!」

 

 ミッドナイト先生の司会進行と同時に、スタジアム内の歓声が聞こえた。

 

「………………」

 

「………………」

 

「ッッ──ッ! ────ッッッ!!」

 

 と言っても、ベスト4に入ってる3位の俺は、クラスメイトやB組の皆が並んでるグラウンド上に立っているワケではない。

 振動と同時に俺達の乗っていた表彰台が上に迫り上がり、噴き上げられた白煙の中から差し込む光に俺達は包まれた。

 

「うわぁ……」

 

「何アレ……」

 

「起きてから、ずっと暴れてんだと…………しっかしまぁ……シマんねえ1位だなぁ」

 

「悪鬼羅刹……」

 

「飯田ちゃん、張り切ってたのに残念ね……」

 

「うん……」

 

 俺と轟と爆豪の乗った表彰台が露わになってクラスメイト達のみならず、ほかの科の生徒どころかスタジアムの観客席まで全員がドン引いていた。

 

 俺はもちろん『3位』の台に1人で乗っている。表彰台に乗るなんて人生初めてだ。

 

 反対側奥の『2位』の台に乗っている轟も俺とほぼ同じ立ち姿勢で大人しいが、いかんせん無表情だ。

 

 ドン引かれている原因である、俺の隣の『1位』の台に乗った爆豪は、ヴィラン拘束用の拘束具を装着されて、セメントス先生が作ったのか無骨な壁に貼り付けられていた。

 口にも拘束具がある爆豪は、暴れ悶えながらずっと轟の方に何か言いたそうに叫んでいる。

 

『3位には切裂くんと、もう1人飯田くんがいるんだけど……ちょっとお家の事情で早退になったちゃったので、ご了承くださいな♪』

 

 テレビカメラが目の前にあるせいか、少しメディア意識してポーズを取るミッドナイト先生。フラッシュが一気に焚かれて、こっちが眩しくなった。

 

『それでは、メダル授与よ! 今年メダルを贈呈するのは、もちろんこの人っ!!』

 

「HAAAーーーHAHAHAHAHAHAHAHAHA !!!!! 」

 

 俺も、誰もが知っているこの笑い声に、観客の歓声が一気沸き上がる。広いスタジアムのドームの端から、勢い良くオールマイト先生が空中に飛び出して、そのまま俺達のいるグラウンドに降り立つ。

 

 

 

「私がメダルを持って来たーーッ!!!!」

『我らがヒーロー、オールマイトっ!!!!』

 

 

 

 リハーサルしていなかったか、オールマイト先生がアドリブしたか、2人のセリフが被った。

 一瞬シン……と静かになるスタジアム内に、ミッドナイト先生の咳払いがこだまする。

 

「そ、それではオールマイト……3位からメダルの授与を……」

 

 気を取り直して、ミッドナイト先生からメダルを受け取ったオールマイト先生が、俺の表彰台に階段で上がってきた。

 

「HAHAHA……!! 切裂少年、おめでとう! 障害走に始まってから、騎馬戦とココまで!! 君の記録は、どれも素晴らしいモノだよっ!!!」

 

 俺に銅のメダルを首に掛けてくれたオールマイト先生を、俺は見上げる。近くで見るとやっぱりデカいなと思っていると、そのまま筋肉バキバキの腕で優しくハグされた。

 

「爆豪少年との試合は、本当に惜しかった…………けども、君が勝っていてもおかしくはない戦いだった!! 彼と戦った事で、新たな気付きもあっただろう! 心優しい君は……良いヒーローになれるよっ!!!!!」

 

 俺を腕から解放して頭を撫でてくるオールマイト先生に、俺は彼を見上げながら自分の片手を刃に変化させる。

 

 

 

 

 

「ありがとうございます。オールマイト先生……俺は、こんな危険な個性を持って産まれたけども……それでもヒーローに憧れて、此処雄英を目指しました。この超人社会には、自分の個性によって悩んだり、苦しんでる人が世界中にいると思うんです……

 

 

 

 ……誰もがヒーローになれる可能性を持ち…………誰もがヴィランになる可能性を持つんです……

 

 

 

 ……だから俺は、こんな危険な個性でもヒーローになれる事を証明して……個性で苦しんでいる人達を、差し照らしてあげたいんです。どんな個性の人でも明るく生きていける、優しい世界を作りたいんです!」

 

 

 

 

 

「ッッ──ッ!!? ────ッッッ!!! ────ッッ!!!!!(ア゛ァァッッ!!!? 負けたクセにデカいクチ叩いてんじゃねぇぞ、ナマクラァァッッッ!!!!!)」

 

 俺の声はドローンのマイクが吸って、公共放送に流れただろう。会場からも大きな拍手と歓声が響いた。

 

 隣の爆豪が俺に顔を向けて、何か言いたそうにしていたが、何言ってんのかわかんなかった。

 

「HAHAHAHAHAHAHAHAHA !!!!! プロにも負けないぐらいの、素晴らしい目標だ切裂少年っ!!! 君がプロヒーローになるまで……いや、プロヒーローになってからもっ、私は応援してるよっ!!!!」

 

 高笑いされてポンポンと肩を叩かれてから、オールマイト先生は隣の轟へとメダルを渡しに離れて行った。

 

 なんかアッサリとした授与式だなと思っていたが、そういえば……俺は緑谷と違ってオールマイトとほとんど接点がなかったんだと、しみじみ思い知らされた。

 

 

 

 

 

 ・・・♡・・・♡・・・

 

 

 

 

 

 その後、轟と爆豪のメダル授与も終わり、雄英体育祭はヴィランの事件も起こる事なく、無事に閉会を迎えた。

 俺達クラスメイトは、ようやくこの着慣れたジャージを脱いで、いつもの制服に着替えて教室に集合していた。爆豪が犬みたいに金メダルを咥えているのが、少し微笑ましい。俺のメダルは、もうバッグの中だ。

 

「お疲れ。つう事で、明日明後日は休校だ。体育祭を観戦したプロヒーローから指名などもあるだろうが……それは、こっちでまとめて休み明けに発表する。ドキドキしながら、しっかり休んでおけ」

 

 

 

「「「「「「「「「「「「「「「「「「はいッ!」」」」」」」」」」」」」」」」」」

 

 

 

 相澤先生の軽いSHRを終わらせて、俺達は解散した。クラスメイト達はすっかり疲れ果てて、普段のお喋りする気力も残っていなかったが、それでも俺は峰田と一緒に校内の帰路を辿った。

 

「なあ切裂っ! 指名来るかな!?」

 

「来るさっ、峰田くんとあんだけ頑張ったんだから!」

 

 最終種目は1回戦敗退とは言え、峰田は騎馬戦でかなり目立っていた。これで指名が来なかったら、プロヒーローは見る目がないと言いたい。俺もベスト4まで来たんだから、来るとして間違いないだろう。明々後日の登校が今からでも楽しみになってきた。

 

 そんな意気揚々として帰ろうとしていた俺達を呼び止める声があった。

 

「切裂」

 

「と、轟くん……!?」

 

「えっ、轟!?」

 

 振り返るとそこには、銀メダルをまだ首にかけたままの轟がそこに立っていた。峰田も意外すぎる来訪者に目を白黒させながら驚いていた。

 

「ど、どうしたの……?」

 

「俺はお前に、謝らないといけない」

 

「え?」

 

 俺達2人の動揺も治らない間に、轟はゆっくりと自分の顔半分の火傷の話と……第2回戦で緑谷と交わした言葉を教えてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの時…………USJで戦った時っ、君は炎を使ったじゃないかっ!!!」

 

「あれは違うッ! あれは切裂が……ッ!!」

 

「違わないっ!! 君は拘りを捨てて、人を助ける事ができる人間だっ!! そんなヒーローになりたいんじゃないのかぁっ!!!」

 

「違うッ!! 俺は…………ッ!」

 

「君の境遇もっ、君の決心もッ! 僕なんかに計り知れるもんじゃないっ! でもッ、君は人を守るために……全力を出す事ができる人間だっっ!!!」

 

「なんで……そこまで……ッ!」

 

「期待に応えたいんだ……! 笑って、応えられるような……カッコいい、ヒーローに…………ッ!! 僕はそんなヒーローになりたいんだァ!!!」

 

「クッ……!!?」

 

「思い出せ轟くんッ! 君の……原点をっ!!」

 

「俺は……親父の力は……ッ!」

 

「君のッ! 力じゃないかぁッッッ!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あいつは……ムチャクチャやって人が抱えてたモン、全部ブッ壊していった」

 

 轟は左手を見詰めながら、話を続けた。

 

「結局まだ考えは整理がつかねえ…………ただ、家庭に目を背けてた俺には、清算しなきゃならないものがあるってのは、わかったんだ……!」

 

 このままではいけないという意思を込めて、彼は左手を握りしめた。

 

「だから、見極める……! 自分のなりたいモン見て、オールマイトみてえなヒーローを目指す……!」

 

 そして、自分の伝えたい事を全て俺に伝えてくれた轟は、俺の前に頭を下げてきた。

 

「みんなが全力で戦ってたのに、半分の力なんかで戦おうとした、俺を許してくれ……」

 

 それが、彼なりのケジメだったのだろう。俺が彼に返す言葉は決まっていた。

 

「轟くん……俺は、いつか君とも戦ってみたい……! 全力でね!」

 

 俺は彼に近寄り、まだ包帯の巻かれている左手を伸ばした。

 

「ぁ……あぁ!」

 

 その返事を聞いて、普段よりも少し明るい表情をした彼の左手が、しっかり俺の手と繋がった。

 夕日に照らされるイケメンフェイスは、俺にも峰田にも目に毒だった。

 

 それからすぐ、俺と峰田は轟と別れた。さっきの元気な足取りと違って、その歩みは穏やかだった。

 

「なんか、最後にトンでもない話聞いちゃったな……」

 

「峰田くん。いろんな人がいろんな思い背負ってヒーローになろうとしてるよ、ココは」

 

 峰田は少しだけ視線を落としながら、呟いた。

 

「オイラなんか……恥ずかしくなってきちゃった……」

 

「峰田くんの目標だって、ヒーローになる立派な目標さ……! それでココまで来れたんだもん! 俺だって……!」

 

 表彰台で俺が掲げたのは、超人社会を動かす規模の、あまりにも大き過ぎる目標。ヒーロー人生を賭けても、果たして達成できるかどうかも怪しくなってくるほどの目標だ。

 思い返すと、今になって恥ずかしくも感じた。

 

「切裂の目標もっ、スケールデカすぎんだけどなっ!! まっ、ヴィランになっちまうより、100倍マシかっ!!」

 

「そうだね。峰田くん……明日からまた特訓、頑張ろう」

 

「えぇッ!!? オイラもうヘトヘトだよおぉっ!!」

 

 夕暮れ。俺達の濃厚過ぎる1日が、遂に終わった。

 

 

 

 

 

 ここから物語は、敵との戦いに向けて加速していく。

 

 

 

 

 

 不安はある。でも、負けるつもりはない。

 

 

 

 

 

 トガちゃんとの再会を目指して、彼女のための世界を目指して、俺は戦うのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 切裂ヤイバの献身 体育祭編 完

 

 ED曲 ONE OK ROCK - We are

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次回『ヒーロー名と職場体験準備』

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