切裂ヤイバの献身   作:monmo

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第十五話

 

 

 

 

 

 ヒーロー殺しを捕まえた翌日。つまり職場体験4日目。俺、峰田、緑谷、飯田、轟の5人は、保須市にある総合病院で朝を迎えた。

 特に入院するほどの怪我をしたつもりはなかったのだが、プロヒーロー達に救急車を呼ばれて、俺達5人は学生だからと丸ごと怪我の処置まで医者に任されてしまい、結果こうなったのだ。

 ちなみに、病室がひと部屋4人ベッドだったせいで、朝から俺だけポツンと1人で寂しかったから、今は峰田のベッドに俺は座っていた。

 

「ねぇ、ニュース見て。『セルキー事務所』で職場体験の雄英生が密入国者を拘束。コレ、梅雨ちゃんでしょ?」

 

「うぉっ! スッゲぇ!!」

 

 さすがにヒーローコスチュームは自分のベッドの下に保管し、患者服を着ている俺が携帯の画面を開いて、ほかのクラスメイト達の活躍をみんなに教える。その隣で、峰田は画面を覗き込みながらモギモギを使ってジャグリングをしていた。ジャグリングと言ってもまだ玉は2つだけの、お手玉と言った感じだが。

 ほかにも、耳朗がデステゴロの事務所で立て籠もりのヴィランから民間人を救出したとか、色々と活躍がネットニュースに上がっていた。

 

「コレでヒーロー殺しを捕まえたのもニュースになればっ、オイラ達の人気も爆発だぜっ!」

 

「峰田くん、俺達ヒーロー殺し直接捕まえてないでしょ?」

 

 勝手に自分の手柄にしようとしていた峰田を止めていると、緑谷は天井を見上げながら昨日の戦いを思い返しているようだった。

 俺の見ていない、ヒーロー殺しとの路地裏の戦いを。

 

「……冷静に考えると、凄い事しちゃったね……」

 

「そうだな」

 

「あんな最後見せられたら、生きてるのが奇跡だって思っちゃうね……僕も最初から本気出さなかったら……今頃……!」

 

「俺らはあからさまに生かされた。あんだけ殺意向けられて、なお立ち向かったお前はスゲえよ」

 

 轟は飯田の方を見ていたが、彼は俯いたまま自分の声を震わせた。

 怒りも、悲しみも、後悔も、ゴチャゴチャにさせて。

 

「いや、違うさ…………俺は兄をあんな目に遭わされた怒りで、我を忘れてしまった……! そのせいでマニュアルさんまで……あんな大怪我を……!」

 

 俺はすぐに飯田の台詞を止める。マニュアルが傷ついたのは、5体もいた脳無が原因だ。

 

「飯田君のせいじゃないよ……! ひとりで抱え込んでも、負担が大き過ぎたら押し潰れるだけさ…………だから、俺達クラスメイトがいるんじゃないの?」

 

「そうだそうだっ! 自分の兄貴の事だからって、水臭いぜ委員長っ!」

 

 この入院中に、俺と峰田は緑谷から何が起こったのかを聞いていた。全部知っているつもりだったが、それでも彼から聞きたかった。

 

「切裂君、峰田君……! ……緑谷君にも、似た様な事を言われたな…………お節介はヒーローの本質だって……!」

 

「う、うんっ!」

 

「緑谷くん、俺も好きかも、その言葉!」

 

 俺と緑谷はお互いに顔を合わせて、少しだけ笑みを浮かべ合う。そして今度は彼の左腕を気にかけた。

 

「飯田くん、腕大丈夫?」

 

「ああ……医者が言うには、手の指が動かしずらくなるのと、少し痺れるぐらいの軽い後遺症が残ると言っていた」

 

「………………」

 

 この部屋の人間は聞かされていたのか、普段から無表情の轟はともかく、峰田や緑谷まで暗い顔をしていた。

 

「何、手術で神経移植すれば治る可能性もあるらしいが……この傷は自分自身の戒めとして残しておきたい。いつか本物のヒーローになれるまで……!!」

 

 それでも、飯田は自分の包帯だらけで固定された左腕を見ながら、決意の籠った声で応えてくれた。 

 原作と少し違ったかもしれないが、彼ならきっと大丈夫だ。

 

「なれるさ、委員長……!」

 

「おーともよっ!」

 

「うん! みんなで一緒に、強くなろう!」

 

 峰田がモギモギを両手に持ちながら両腕を掲げる。その反対側で緑谷が、体育祭で作った手の甲の傷を皆に見せながら、飯田に拳を突きつけた。

 それに対して彼は笑いかけ、俺は飯田に右腕を突き出す。

 俺の腕にはUSJで脳無につけられた裂傷の痕が残っているのだ。

 

「なんだかお揃いみたいで良いねっ、飯田くんの傷も見せてよ!」

 

「ま、待て! 包帯を外すなと主治医に言われたんだ!」

 

 包帯を外そうとしてきた俺に飯田が抵抗していると、それまで話に入ろうとしなかった轟が、自分の手を見て恐る恐る声を上げる。

 

「な、なぁ……やっぱり俺と関わると、みんな手がダメになっていく呪いでもあるんじゃねえか?」

 

「ないって轟くんっ! ソレ昨日も言ってたじゃん!」

 

「じゃあ次は峰田くんの番だ!」

 

「ヤメロぉ!? シャレにならねえっ!!」

 

 轟の天然ボケと俺と峰田の騒ぎを見て、少し元気を取り戻した飯田は、更に話を続ける。

 

「それにしても……2人も保須に来ていたなんて、思わなかったよ」

 

「うん……俺達は偶然、保須に用があっただけだから……」

 

「そうさ! オイラ達マウントレディのファッションショーがあるから、前日に東京入りしてたのに……!」

 

「時間的には、そろそろ始まった感じじゃないかな……」

 

「うう〜〜〜っ! マウントレディのファッションショー行きたかったぁ……! 会計士さん『ウワバミ』や『ミッドナイト』先生とかも参加するよ、って言ってたのにぃ〜〜っ!」

 

 俺が携帯の時間を確認した隣で、峰田は血涙を流しながらお手玉を続ける。

 病院に運ばれてから、俺はマウントレディや会計士さんと連絡を取っていたが、入院はどうしても取り消しできず、せっかく4日目のファッションショー、峰田と楽しみにしていたのに参加できず仕舞いだ。前日に彼の嘆きが病室に響いたのは、言うまでもない。

 

「しょうがないよ峰田くん。東京に俺達のファン増やせたのと……脳無1体倒した功績だけで我慢しよ?」

 

「アイツをか!? 凄いな峰田……!」

 

 USJで一緒に脳無と交戦し、死ぬかもしれない思いをした轟が、俺の言葉に驚いて峰田の方を見た。

 

「と、轟に褒められると、なんだかムズムズするな……!」

 

「USJのヤツよりだいぶ弱かったけど……周りに人いながら戦うのがあんなに大変だとは思わなかった……!」

 

「オイラも……思い出すだけで心臓のバクバクが止まらねえ……!」

 

 実際、脳無と戦っている間、緊張の連続だった。何かひとつでも間違いを起こせば失われる命があった事に、俺も峰田も思い出すだけで身震いが起こった。そして改めて、相澤先生達プロヒーローを純粋に尊敬する事となる。

 

「俺達は人気のない路地裏だったからな……それでも、怪我したプロヒーロー守りながら戦うだけで、精一杯だった」

 

「でも……脳無は全員捕まったんでしょ? それだけでも良かったよ……!」

 

 あの戦闘で脳無は、俺と峰田で倒したヤツ、俺と峰田とプロヒーローとマウントレディで倒したヤツ、エンデヴァーが倒したヤツ、エンデヴァーとグラントリノが倒したヤツ、マウントレディが倒したヤツ。しっかり5体全員確保に成功した。

 原作と違う暴挙に敵連合が何考えてたのかは全くわからないが、奴等の思い通りにはならなかっただろうと思いたい。

 

 そこまで考えていると、病室のドアが開かれた。

 

「おお、起きとるな怪我人ども!」

 

「グラントリノ!」

 

「2人共、少しは休めたかしら?」

 

「マウントレディ!?」

 

「アレっ!? ファッションショーは!!?」

 

「そんなの辞退したに決まってるでしょ! 自分の受け持ってる学生が入院してるのに……ファッションショーなんて呑気に出てる場合じゃないの、わかるでしょう!?」

 

「天哉くん、怪我は大丈夫かい?」

 

「マニュアルさん! そちらこそ、お怪我は大丈夫ですか!?」

 

 それぞれの職場体験先の事務所のヒーロー達が迎えてくれた。

 別の救急車で運ばれたマニュアルは、俺達とは別室に入院していた。幸い、意識はあったため、治療が終わってからは普通に元気にしていた。それでも、今の彼は普段の魚の背ビレみたいなヘルメットを外して頭に包帯を巻き、片腕をギプスで固定されている、痛々しい姿だった。

 

「なあに、ヒーローやってるなら、コレぐらいの怪我。覚悟の上さ……!」

 

 マニュアルはそう言って飯田に笑顔を見せる。プロヒーローとしての強がりだったのか、飯田を不安にさせないつもりだったのかは、本人にしかわからない。

 その隣では、ご立腹なグラントリノが緑谷に向かって指を差した。

 

「小僧っ、お前には凄いグチグチ言いたい! が、その前に……来客だぜ」

 

 彼の声に合わせて病室に入ってきたのは、黒いスーツでメチャクチャ身長はデカいのに、顔だけ完全に犬の異形型の人だった。

 

「保須警察署署長の『面構(つらがまえ) 犬嗣(けんじ)』さんだ」

 

「署長!?」

 

「犬ぅ!?」

 

 その見た目と肩書きに、病室の患者側が一斉に驚く。さすがの峰田も、お手玉の手を止めてモギモギを頭に戻した。

 

「ああ、掛けたままで結構だワン」

 

「「ワン?」」

 

 独特な語尾を聞き流せず、立ち上がろうとした俺と緑谷の声が被ったが、慣れているのか署長は無視して話を続けた。

 

「君達がヒーロー殺しを仕留めた雄英生徒だワンね? 逮捕したヒーロー殺しだが……火傷に骨折と中々重傷で、現在厳戒態勢の下治療中だワン」

 

「「「……っ!」」」

 

 その報告に緑谷、飯田、轟の3人が息を呑む。それぐらいやらないと、止まらない相手だっただろう。加減なんてできなかったハズだ。

 

「雄英生徒ならわかっていると思うが……超常黎明期、警察は統率の規格を重要視し……『個性』を『武力』に用いない事とした。そしてヒーローは、その穴を埋める形で台頭してきた職業だワン」

 

 でも結局、この国の自衛隊は解体された。個性を使えるヒーローが圧倒的だったから。国防力として意味を成さなくなったのだ。

 それに、結局は個性を使いたがるヴィランが現れて、現在はイタチごっこの平行線だ。

 

「個人の武力行使……容易に人を殺められる力。本来なら糾弾されて然るべきこれらが公に認められているのは、先人達がモラルやルールをしっかり順守してきたからなんだワン」

 

 そしてルールを敷いた結果、今度はトガちゃんが苦しむ事となった。別にこの人が悪いワケじゃないから、恨むのはお門違い。

 彼女が平和に暮らすには、なんとかしてこの辺も根元から改善していくしかない。

 

「資格未取得者が保護管理者の指示なく個性で危害を加えた事、例え相手がヒーロー殺しであろうとも、コレは立派な規則違反だワン」

 

 なんでこんな事をわざわざ説明しているのか、緑谷、飯田、轟は理解していた。状況をよくわかっていない峰田だけ、頭から「?」を出していた。

 

「君達の内3人及び、プロヒーロー『エンデヴァー』『マニュアル』『グラントリノ』 この6名には厳正な処分が下されなければならない」

 

 マウントレディから個性使用許可を貰っていた俺と峰田はともかく、緑谷達3人は無許可で戦闘を行ってしまったのだ。

 せっかくプロヒーローまで助けたのにと、目をギラつかせた轟が動き出すよりも、峰田が先に騒ぎ出した。

 

「えっ!? 待って!! お前ら個性使用許可貰ってなかったのかよっ!!?」

 

「う、うん……僕、新幹線で脳無に襲われてから、勝手に動き出しちゃったし……」

 

「俺はマニュアルさんに何も言わずに、ヒーロー殺しを追ってしまったからな……」

 

「……俺も親父から了解貰わねえで緑谷の方に向かっちまった」

 

「バカヤロウ!」

 

 峰田が叫んで頭を押さえる。それを署長が宥めさせた。

 

「まあとにかく……以上が警察としての公式見解。で、処分云々はあくまで公表すればの話だワン。公表すれば世論は君らを褒め称えるだろうが、処罰は免れない。一方で汚い話、公表しない場合……ヒーロー殺しの火傷痕から、エンデヴァーを功労者として擁立してしまえるワン」

 

 そこまで署長の説明を聞いて、俺は峰田と入院させられた理由がわかった気がした。

 

「幸い、目撃者は極めて限られている。この違反はココで握り潰せるんだワン。だが君達の英断と功績も誰にも知られる事はない…………どちらがいいか、君達で決めてほしい。私個人の意見としては……前途ある若者達の『偉大なる過ち』に、ケチを付けたくないワン♪」

 

 規則に対しても柔軟な対応を見せる署長さんは、笑顔なのかどうかはわからないけれども、俺達にサムズアップを見せた。

 

「それならもちろんっ! 公表はしない方向でお願いします! みんなそれでいいよねっ!!?」

 

「ああっ、緑谷君に賛成する。今回の件は、俺の私怨による暴走なんだ…………俺1人だけで処罰ならまだしも、緑谷君と轟君も一緒となっては、これ以上の迷惑をかけられない!」

 

「署長、なら初めからそう言ってくださいよ……俺もそれでお願いします」

 

「俺もそれでいいと思う。ヒーロー殺しの功績は、ちょっと口惜しいけど……」

 

「せっかくプロデビューする前に悪評が付いても大変だからな……! それにオイラ達は脳無倒した功績が残るし……♪」

 

 少し場違いだったかもしれないが、話はサクッと決まり、緑谷3人の活躍は人々に知られる事なく、エンデヴァーに助けられたという事となり、そして俺と峰田の功績が報道される事になった。

 

「まあ、どの道監督不行き届きで、俺らは責任取らないとだしな……」

 

 話は決まったものの、少しだけ涙目になって話すマニュアルの目の前まで歩いた飯田が、頭を深々と下げた。

 

「申し訳ございませんでした!」

 

「よし! 他人に迷惑かかる。わかったら2度とするなよ!」

 

 ズビシッと彼の頭に軽いチョップを打って、2人のやり取りは終わった。それぐらい、彼は気にしていなかった。

 それにしても危ない所だった。俺と峰田とプロヒーローとマウントレディで、ようやく食い止められた脳無を、戦闘系の個性でもないのに相手取っていたのだ。

 

 あんなのがまだいるのかと思うと、緑谷の言う通り、強くならなくては困る。

 

「大人のズルで君達が受けていたであろう称賛の声はなくなってしまうが、せめて……共に平和を守る人間として、ありがとう……!」

 

 そう言って最後に署長は俺達に頭を下げ、受け持ちのプロヒーローと今後の話をしてから、部屋を出ていった。

 俺は部屋に残ったマウントレディに近寄り、飯田みたいに頭を下げた。

 

「マウントレディ……ファッションショー台無しにして、すみません……」

 

「いいのよ切裂くん。ショーなんかよりも大切な……ヒーローとしての姿を見る事ができたんだから……」

 

「?」

 

「でもしっかり許可貰っといて、ホントによかったです! さっすがオイラ達のマウントレディっ!!」

 

「何言ってるの! 私も厳罰がないだけで、監督不行き届きで軽い処罰あるんだからね! 学生2人、ヴィランの前に置き去りにしちゃったんだから!」

 

 俺と峰田で180°違う対応を見せたマウントレディとひと言ふた事話を終えてから、彼女は他のプロヒーロー達と一緒に部屋を出ていった。

 

 その日の内に、俺と峰田は退院する事が決まった。俺はそんな大して怪我もしてないし、峰田はモギりすぎの自傷だけだった。署長の話を聞かせるために、事件の情報を漏らさないために、俺と峰田を強制的に入院させていたのだろう。

 飯田、轟、緑谷の3人は怪我の治療もあり、もう1日入院していくと峰田が話していた。

 

 俺らは会計士さんの車が来るまで……あと1時間くらいで退院だ。

 

 一旦自分の病室に戻った俺は、軽く荷物をまとめて制服に着替えてから、1階の自販機で何か買おうと病院の中を歩いていると、怪しいヤツを見つけた。

 

「ん?」

 

 病院のエントランスロビーの端っこで、緑谷が直立して携帯電話持ったまま、バイブレーションみたいにガタガタ震えていたのだ。

 

「何やってんだ?」

 

「わッ!?」

 

 背後から声をかけた瞬間、飛び上がった緑谷の手元から携帯電話が落ちた。

 そのまま俺の足元に滑ってきた携帯を拾うと、通話の終わった連絡先画面には『麗日さん』と表示されていた。

 

「なぁんだ、君もスミに置けないな」

 

「ちッ!? 違うよ切裂くんっ!! コレはただっ!!!」

 

 一気に顔を真っ赤にして、素っ頓狂な大声を出し始めた緑谷を、俺は優しく宥める。

 

「緑谷くんっ、シー……!」

 

「んむっ!」

 

 俺の人差し指を口元に当てた動作を見て、緑谷は自分自身の口を両手で押さえ込んだ。

 ここは病院である。騒音は厳禁だ。彼に近寄って携帯を返しながら、ヒソヒソと小さな声で話を続ける。

 

「大丈夫、みんなには言わないから」

 

「イヤ! だから、そうじゃなくて……!」

 

 まだ少し声の大きい緑谷の弁明も無視して、俺はその場を後にしようとしたが、いきなり肩まで掴まれて俺は驚いて振り返る。

 

「え?」

 

「……切裂くん」

 

 携帯こそ握っているものの、目の前で見た緑谷の表情は悪ふざけの通じない真剣そのものだった。

 

「あの時……ヒーロー殺しに睨まれて、僕は立つ事もできないぐらい、怯えた。体の震えが止まらなかった……!」

 

 ステインの姿を思い出しているのか、そう言っている緑谷の手は少し震えていた。

 

「グラントリノやエンデヴァーだって動けなかったのに、君は動いて僕を助けようとしたよね……!?」

 

 彼の瞳が、俺をまっすぐ見抜いた。

 

「ねえ……どうして切裂くんは、動けたの……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……わかんね」

 

「え!?」

 

 俺の気の抜けた答えに、緑谷は驚きながらも何と言っていいのかわからず、口元を動かしながら混乱していた。

 

「動けるから、動いた。そんだけ」

 

「そ、そっか……! 考えるよりも、体が動いたんだね……!」

 

 緑谷は『ヘドロ事件』と俺を重ね合わせたが、それが合っていないのは俺にはわかった。

 

「でもね……アレは殺気なんかじゃなかったんだと、思うんだ……」

 

「う、うん……! なんだろう……覚悟っていうか……そうしなきゃいけないみたいな……焦りだったのかな……」

 

「アイツだって、自分なりの正義を貫こうとしたんだろ……受け入れられるかは別として……」

 

「うん……だからってヒーローを殺したら……自分がヒーローじゃいられなくなるのに……」

 

「もう……そうするしかないと思ったんだよ」

 

 俺と緑谷は、エントランスロビーの大型モニターに映った、昨日の保須の脳無襲撃と……ヒーロー殺しが捕まったという抽象的なニュースを眺めながら、俺は呟いた。

 

「ヒーロー殺しも、どっかで間違えちゃったんだ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕達は、そうならないようにしようね……」

 

「ああ……」

 

 緑谷の言葉に、俺は曖昧な返事を返す事しかできなかった。

 

 

 

 

 

 ・・・♡・・・♡・・・

 

 

 

 

 

 雄英高校の職員室。普段は教師達の仕事の話で溢れ返る厳正な空間に、それを破壊する声が流れる。

 

『電話が〜っ来た! 電話が〜っ来た! 電───

 

「はい、もしもし」

 

 独特過ぎる携帯の着信音を響かせ、ほかの教師からの辛辣な視線にも気付かないまま、携帯の持ち主であるオールマイトは電話に出た。

 

『もしもし、俺だ俊典』

 

「せ……先生ッ!」

 

 その通話先の相手が彼の師、グラントリノだとすぐ気付いたオールマイトは、いきなり座っていた椅子から立ち上がり、吐血しながら目の前にいるかのように頭を下げた。

 自分の教え子である少年の緑谷と、彼に受け継がせた自分の個性『ワン・フォー・オール』の秘密を共有している者として、ココでは話がしづらかった彼はすぐに場所を移動した。

 

『緑谷 出久、まったく……おかげで減給と半年間の教育権剥奪だ! まあ、結構な情状酌量あってのこの結果だがな。とりあえず、体が動いちまうところはお前にそっくりだよ、俊典』

 

「申し訳ございません、私の教育が至らぬばかりで……先生には多大なるご迷惑をおかけしまして……いやはや、何とも……」

 

 グラントリノの長ったらしい説教に、オールマイトはペコペコと携帯を押さえたまま、頭を下げ続ける。側から見れば、アレが本当にNo.1ヒーローの姿なのかと疑いたくなる光景だ。

 だが、グラントリノは彼に対して説教だけをするつもりはなかったのだ。少なくとも、この瞬間までは。

 

『へっ、何言ってやがる! 体育祭に間に合わなかったのは惜しかったが……あの小僧にあそこまでワン・フォー・オールを使いこなせる様にしたのは、大したもんだっ』

 

 

 

 

 

「……は? み、緑谷少年が……ですか?」

 

 

 

 

 

 それが、オールマイトのひと言で更に荒れる事となった。

 

『んっ、ああッ!? アレ、お前が教えたんじゃねえのかッ!!? あの小僧、誤魔化したな……!』

 

「す、すみませんっ! おっしゃる事がよく……っ!」

 

 しばらく仕事が忙しく、緑谷の修行を全く見ていなかった彼は、唐突に師に褒められた事で、素の反応を晒してしまった。

 

 いったい彼に何が起こっていたのか、考え事が増えて慌てるオールマイトをグラントリノは止めた。

 

『まぁ待て! この話は一旦置いとくとして、それよりだ……今回電話したのは、ほかでもない『ヒーロー殺し』の件だ。実際に相まみえた時間は数分もないが、それでも戦慄させられた……!』

 

「グ……グラントリノともあろう者を戦慄させるとは……しかし、もうお縄になったのに、何が……」

 

 思考はまだ緑谷へと傾いていたが、それでもわざわざ話題に出してきたグラントリノに、オールマイトは彼の話へと集中する。

 

『俺が気押されたのは恐らく、強い思想……あるいは強迫観念から来る威圧感だ、褒めそやすワケじゃねえが、俊典お前の持つ『平和の象徴概念』と同質のソレだよ』

 

「同質……」

 

『安い話……『カリスマ』っつうヤツだ。今後取り調べが進めばヤツの思想、主張がネットニュース、テレビ、雑誌、あらゆるメディアで垂れ流される。今の時代、良くも悪くも抑圧された時代だ。必ず感化される人間は現れる』

 

 メディア社会の運命。善人も悪人も、ヒーロー殺しの話を聞いて、それぞれの思想を胸に動き出す事を、グラントリノは危惧していた。

 

「確かに感化される輩は出てくるんでしょうが……それは散発的なもの…………個々が現れたところで、今回のようにヒーローが……」

 

『ソコで敵連合だ……保須事件でステインと連合の繋がりが示唆された。この時点で連合は雄英を襲って返り討ちにされたチーマーの集まりから、そういう思想ある集団だったと認知される。つまり、受け皿は整えられていた……! 個々の悪意は小さくとも……ひとつの意思の下、集まる事で何倍にも何十倍にも膨れ上がる。ハナからこの流れを想定していたとしたら……敵の大将は、よくやるぜ……! 着実に外堀を埋めて……己の思惑通りに状況を動かそうという、やり方……』

 

 ソコまで話を聞いていたオールマイトが、携帯電話を徐々に握りしめる。

 

「塚内君から……脳無に複数の個性が与えられていると聞き、嫌な予感はしていましたが……!」

 

『俺の盟友であり、お前の師……先代ワン・フォー・オール所有者《志村》を殺し、お前の腹に穴を開けた男……《オール・フォー・ワン》が再び動き始めたと見ていい……!』

 

 彼はオール・フォー・ワンとの壮絶な戦いと、その果てを思い出した。共に戦ったサイドキックとの、思想の違いによる別れも。

 

「あの怪我で、よもや生きていたとは…………信じたくない事実です……!」

 

『俊典……お前の事を健気に憧れているあの子にも……折を見てしっかり話しといた方がいいぞ……お前とワン・フォー・オールにまつわる全てを……!』

 

 グラントリノはそう言っていたが、果たして彼に友が視た自分の運命も話すべきだろうか、オールマイトは迷っていた。

 

 オール・フォー・ワンの話まで出され、そこで全ての話は終わるとオールマイトは思っていたのだが、グラントリノの話は続いた。それも、彼の予想もしない方向へ。

 

『それとなあ……俊典、お前んトコの学校に『切裂』ってヤツがいるだろ?』

 

「は、はあ……切裂少年ですね……! 彼は緑谷少年と同じクラスメイトですが……」

 

 いきなり彼の話題となり、オールマイトは困惑する。そもそも彼は峰田と同じ、保須ではないヒーロー事務所に職場体験しに行ったのだと、彼は知っていたからである。

 

『たまたまヒーロー殺しを捕まえる時に居合わせたんだがよ……アイツが緑谷の小僧を人質に取って俺達を襲おうとした時……真っ先に動いたのが、その切裂って小僧だ』

 

「そ、それはなんと……!』

 

 彼がなぜ保須にいたのかよりも、グラントリノの話にオールマイトは耳を疑った。

 

『そうだ。俺はもちろん、ほかのプロヒーローやNo.2のエンデヴァーですら、ヒーロー殺しの圧に怖気づいて動けなかった。思想は到底相入れないモンだが、ヤツの威圧を向けられりゃ、全盛期のお前だろうと怯むぐらいの信念があった。だが、あの小僧は動いた……!』

 

 そこまで言ってから、グラントリノは大きく息を吸ってから、オールマイトに問いかける。

 

『純粋な疑問なんだが……いったい何モンなんだ。その切裂ってぇヤツは?』

 

 グラントリノの質問に、彼は彼の情報を思い出せるだけの範囲で思い出した。

 

「ご家庭は、ごく普通の1人っ子でしたが……それ以外は特筆する様な事件に巻き込まれたといった過去も、彼にはありません……」

 

「だったら尚更不思議だな。ヒーロー殺しのプレッシャーにも負けずに、緑谷の小僧を助けようと……いや、ヤツを止めようと動いた……!」

 

 それはヒーロー殺しの思想にも負けず、彼に立ち向かっていった事となる。

 

「彼にも『平和の象徴』を担うカリスマがあると……?」

 

 もしも緑谷と出会わなければ、彼に『ワン・フォー・オール』を譲渡した選択肢も、あったのかもしれない。

 

 それだけ、彼という人間はヒーローとしての素質があるとオールマイトは思っていた。

 

 しかし、グラントリノの考えは別だった。

 

 

 

 

 

『あるいは……ヒーロー殺しと同等か、それ以上の思想を抱いているかだ……!』

 

 

 

 

 

「……っ!!」

 

 彼の発言に、体育祭の表彰式で宣言した切裂の言葉が、オールマイトの脳裏に思い返された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───どんな個性の人でも明るく生きていける、優しい世界を作りたいんです!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大きな目標だとは思った。

 

 誇張などではなく、彼の眼は真剣そのものだった。

 

 個性に溢れた超人社会を、より良い物に変革させる。

 

 途方もない努力が必要かもしれない。もしかしたら、ひと世代だけでは完遂すら困難かもしれない目標だった。

 

 けれども、同じヒーローとして、応援したくなる目標だった。

 

 あの表彰台に立っていた轟少年や爆豪少年とは全く違う、誰からも受け入れてもらえる様な、正統派なヒーローの姿だと思う。

 

 しかし、彼にはその思想に至れる動機が見えなかった。

 

 

 

 

 

 平和の象徴となる。

 

 

 

 

 

 それは自分自身、壮絶な人生の果てに誓った思想だ。

 

 奪われる側の人間が、怯えずに安心して暮らせるための。

 

 そのために、彼は電話相手のグラントリノを含む、様々な人物からの協力を受け、今の自分に至るのだ。

 

 では、彼の場合はどうだろうか?

 

 彼の個性は一歩間違えれば、人を傷つけかねない危険な個性だ。

 

 しかし、それは彼のご家庭の指導の賜物の下、彼はヒーローとしての志を持って、この雄英高校の入学を掴み取ったのだ。

 

 決して優秀と言える学力ではなかったが、それはお互い様だった。

 

 ヒーロー基礎学や体育祭で目の当たりにした、爆豪少年に肩を並べる個性の応用力は、目を見張る物があった。

 

 しかし、彼は爆豪少年と違い、向上心を表に出す事が少なかった。

 

 実践訓練でも、まるで事務的に、それでいて愚直に、自分の鍛錬を行う姿は焦燥感すら感じた。

 

 No.1ヒーローである自分を超えようとする爆豪少年や轟少年と違って、彼は別の方向を向いている気がしたのだ。

 

 子供の頃から個性をかなり厳しく制限していたと、入学前の親から受け取る資料にも書かれていた。

 

 そういう者は決まって、個性を自由に使いたいが為にヒーローを志し……挫折すると、彼の担任の相澤先生も言っていた。

 

 だが、彼は違う。自由に個性を使うのではなく、個性の在り方そもそもの根幹を変えようとしている。

 

 ごく普通の家庭で育ちながらも、この超人社会を憂いて自分の『平和の象徴』とはまた違う、新しい平和の基盤を作ろうとしているのだ。

 

 まるで、自分自身にもう時間が残っていないのを、知っているかのように。

 

 何かが……欠けている気がする。

 

 まるで何か使命感を帯びている様な、そんな気迫すら、表彰式の時には感じた。

 

 そして今回の『ヒーロー殺し』の一件。

 

 彼はグラントリノすら竦んだ、ヒーロー殺しの思想の圧に対して動いたのだ。

 

 彼の抱く思想と覚悟は、間違いなく本物なのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だとするのなら……いったい何が、彼をそこまで突き動かしているのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 悩んでいても、ここでは答えは出なかった。

 

「少し……切裂少年を気にかけてみる事にします……彼の今までの過去も、調べられる限りは……」

 

「そうしてくれ。よしっ、話を戻すぞ! 緑谷の小僧……誰が教えたかわからねえが、ワン・フォー・オールを───

 

 更にグラントリノの話は続いていくが、オールマイトには切裂少年の姿が、頭にこびりついて離れなくなっていた。

 

 

 

 

 

 ・・・♡・・・♡・・・

 

 

 

 

 

 病院から退院して、翌日の職場体験5日目の最終日。俺と峰田は事務所であるマンションのドアの前で、マウントレディと会計士さんに最後の挨拶をしていた。

 

「短い間でしたがお世話になりました!」

 

「色々迷惑かけて申し訳ありませんでした!」

 

「本当よっ! ヴィランはまだしも、まさかヒーロー殺しとも遭遇するなんて思いもしなかったわ! まぁ、久々に大きな事件に関われたし、知名度は上がったからいいけど……!」

 

 2人で仲良く頭を下げる俺と峰田の前で、反省と欲望の間でブツブツと本音を漏らすマウントレディ。その隣で、会計士さんが謝りながらも俺達に明るい声をかけてくる。

 

「ほとんどそばにいてあげられなくて、ゴメンね! でも、君達の活躍……僕からも学校への評価推しておくから! お給料出せないのは、申し訳ないけど……」

 

「いいですって!」

 

「オイラ達、お金のためにヒーロー目指してませんので!」

 

「ソレは私に刺さるからやめて」

 

 マウントレディの冷静なツッコミに、会計士さんと俺の笑い声が響く。

 保須に行って大事件に巻き込まれた結果、最終日は普通に田等院で地道なヒーロー活動と、事務作業を学んで俺達の職場体験は終わった。なんて事のない普通の1日だったが、今の俺達には十分すぎる平穏で嬉しい日だった。

 

「とにかく、切裂くんと峰田くんお疲れ様。2人とも、ヒーロー活動も事務作業も凄く良かったわよ。私としても……新鮮で、良い経験になったわ!」

 

「事務作業も書類だいぶ捌けたし、次の事務所探しもできたしね! ホント大助かりだったよ!」

 

「ホントですかっ!?」

 

「ありがとうございます!」

 

 そこまで言われて喜んでいる俺達に、マウントレディがビシリと指を突きつける。

 

「でもっ、2人は現場で無茶しすぎよっ。ソコだけはマイナス評価! あなた達まだ免許も持ってないんだからっ、プロヒーローの私達に預けられているっていう事を忘れちゃダメよ!」

 

「そんなー!」

 

「はい……」

 

 確かにヴィランの戦闘だったとはいえ、心配かけたのはわかっていたので、それに関して俺は何も言わなかった。

 

「2人ともまだまだ若いんだから、焦ってヒーローを目指そうとしなくていいの。せっかく雄英なんて良い高校に通えたんだから、十分な準備を積んできなさい。そうね……無事に卒業したら、私がサイドキックとして雇ってあげるわ!」

 

「ええっ!!? なるなる絶対なりますっ!! イイよな切裂ぃっっ!!?! なあっっっ!!!!!」

 

「えっ!? う、うんッ!」

 

 峰田の尋常じゃない物凄い勢いに押され、俺も頷いてしまった。

 峰田と独立前にサイドキックの事は考えてはいたが、まさか彼女に指名を受けるとは思わなかった。

 そんな俺達を見て、マウントレディは笑った。

 

「ふふっ……約束よ? じゃあ、またどこかで縁が合ったら、会いましょう! 学校でも、仕事でも……パトロール中でもね♪」

 

「「はいっ! 本当に、ありがとうございました!」」

 

 最後に俺と峰田はテンション高く、もう一度2人で仲良く頭を彼女達に下げて、事務所であるマンションを後にした。

 

 

 

 

 

 ・・・♡・・・♡・・・

 

 

 

 

 

 2人の学生がドアから出て行ったのを見送り、会計士は仮面を手で押さえながら大きく息を吐いた。

 

「いや〜、それにしても慌ただしい1週間だったね! 最初見た時はヤンチャな男の子と、大人しい子だと思ってたけど……!」

 

「そうね……何件か気に入った事務所もあったし……東京にもファンは増やせたし……」

 

「保須の事件も相当な反響だからね……! 思ったより早く、事務所の返済も終わりそうだよ!」

 

 会計士はウキウキとしながらマウントレディに話を続ける。その隣で彼女は彼との会話に、思い耽っていた。

 

 たまたま自分の個性と美貌に恵まれ、向いていた仕事として成ってしまった職業ヒーローである自分に、憧れや夢を抱いてやって来た2人の学生は、眩しく感じられた。

 

 身長も性格も、個性まで正反対。それでも波長や息がピッタリなぐらい合っており、見ているこちらが微笑ましくなる2人だった。

 

 彼等の愛嬌に惹かれただけではない。

 

 個性は可能性。彼の言葉が、頭の中に残ってしまった。

 

 それに、最初は彼の思いつきみたいに始まった保須への遠征が、本当に彼の言う通りに事が進んでいった。

 

 まるで、自分達に幸運を呼び込んできたみたいに。

 

 それだけじゃなかった。パトロール中にも、彼の親友すら知らなかった意外な一面を、どんな個性にも……無個性にも分け隔てしない彼の優しさを、目の当たりにした。

 

 

 

 

 

 ───誰もが皆ヒーローになれるよ───

 

 

 

 

 

 無個性の子供に優しく語りかける彼の言葉に、彼女は決心した。

 

 彼を手離すのは絶対に惜しい、と。

 

 できれば彼の親友も一緒に、うちの事務所に抱き込んでしまえば、自分だけでなく彼等の知名度も上がるだろう。

 

 そうしなければいけないような、気がしたのだ。

 

「彼……プロデビューしたら、すぐ私に追いついてくるかも……!」

 

「へえ……確かにそうかもしれないね……!」

 

 会計士は面白そうに笑った。彼はマウントレディから保須での出来事を聞いている。将来大物になるかもしれないと思うのは、彼のプロデューサーとしての経験上、当然の予測だった。

 

 いや……もしかしたら、すぐさま追い抜いてくるかもしれないのだ。マウントレディはそれだけの魅力を、彼から感じた。

 

 その前に、彼をサイドキックにする約束を漕ぎ着けた事に、彼女は安心している。もしかしなくても、彼は約束を律儀に守るタイプの男だから、必ず来ると信じていた。

 

 自分のサイドキックになれた事をステップアップとして、もっと大きく飛び上がってほしいと、思ってしまった。

 

 

 

 彼が誰からも愛される様なヒーローになれる未来を、思い描いて。

 

 

 

 そして、これから自分自身も強くならねばならない。次に彼に再会した時に、何も変わっていなければ、呆れられてしまうと思ったからだ。

 

(アナタの席まで譲る優しい先輩じゃないわよ私は…………今に、ビックリさせてあげるんだから……!)

 

 その時を楽しみにしながら、彼女は会計士と共に職業ヒーローとして……いや、職業ヒーローから1歩上を目指して、いつもの仕事へと戻っていくのだった。

 

 

 

 

 

 ・・・♡・・・♡・・・

 

 

 

 

 

 マウントレディとの激動の職場体験も終わり、電車に乗って雄英の最寄り駅まで戻って来た俺は、峰田とも別れて帰路を辿った。

 

 さて……明日の土曜日は午前の前段で職場体験のレポートを作成してから、後段でヒーロー基礎学を1回。後はダラダラと普通の授業を終わらせて、平日よりも少しだけ早めに学校自体は切り上がる。

 放課後は峰田、切島、爆豪、緑谷、誰を特訓に誘おうか、ギャルゲーの選択肢みたいに考えながら帰り道を歩いていると、唐突に俺の携帯電話が震えた。

 

「ん?」

 

 非通知だった。

 

 電話番号を見る限り、市外局番ではなく普通の携帯からの番号だとはわかったので、関係なかったら間違い電話ですと言って切ろうと、俺は携帯を耳に当ててみた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ヤイバくんっ! 私ですっ、トガですっ!! トガヒミコッ!!♡』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………………え!?」

 

 数年ぶりの彼女の声に、俺は思考を停止させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次回『ロミオとジュリエット』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 峰田 実の現在のスペック

 

・『跳峰田』

  モギモギを踏んづけた反動で高速移動する技。まだ分身が出るほど早くない。

 

・『峰田ビーズ』

  モギモギを連結させてロープの代わりにする技。側から見ると、卑猥な道具にしか見えない。

 

・『峰田バルーン』

  モギモギを合体させた上で圧縮し、膨らませる技。合体させれば合体するほど、膨らんだ時のサイズは大きくなり、その大きさは気球ぐらいにもなる。

 

・『グレープラッシュ』

  モギモギを闇雲に連続で投げつける技。

 

・『グレープバスケット』

  モギモギを1個だけ圧縮させて、バスケットボールサイズに膨らませた物を投げつける技。連射力は下がるが、被弾面積を増やせる且つ『跳峰田』と併用した場合、反発が倍増する。

 

・『お手玉』

  なんと職場体験が終わった頃には、玉3個でジャグリングしてた。




ようやく、トガちゃん出せた……

あとすっかり遅れたけど、トガちゃんお誕生日おめでとう……(8月7日)

次の投稿は明日です
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