切裂ヤイバの献身   作:monmo

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第十九話

 

 

 

 

 

 事の始まりは、夏休み前の峰田からの誘いだった。

 

 

 

 

 

「バイト?」

 

「あぁ! 『 I・アイランド』ってトコなんだけどよっ!!」

 

 

 

 

 

 峰田の説明曰く、『 I・アイランド』という太平洋側にある移動式の人工島で、サポートアイテムの博覧会───『 I ・エキスポ』と呼ばれるイベントが行われるらしい。

 で、その人工島の施設内にある喫茶店のバイト要員が、エキスポ期間中限定としてネットで応募されているそうだ。

 

 高校生とバイトは切っても切れない関係だと思っていたが、まさかタダでさえクソ忙しい雄英に入ってやる事になるとは思ってもいなかった。

 

「上鳴も応募するってよっ! なぁっ、一緒に行こうぜ!!」

 

「う〜ん……ま、いっか!」

 

 原作でも聞いた事のない、全然知らない場所だが……期末試験も終わったし、前回一緒にショッピングモールも行けなかったし……まあ、そんな日があってもいいだろうと楽観的に思っていた俺は、彼の言う事に押されて携帯からバイトを応募してしまった。

 

 後日、都合の良いぐらい無事に当選した俺達3人は、東京の成田空港の国際線で I・アイランドへと、飛行機で飛んだ。此処、アメリカ領なんだって。パスポートの用意とか、ただのバイトのためだけでだいぶ手間がかかってしまった。

 無事に入国審査も終わらせて、もしものために申請したヒーローコスチュームと自分の荷物も回収した俺達は、外側のクソデカい塀に守られた人工島の内側へと入った。

 

「「「うおっ、スゲーっ!!?」」」

 

 I・アイランドは島にいる研究者と家族が、一般の街と遜色なく暮らせる居住区と、エキスポが開催される園内区に分かれていて、俺達に用があるのはその園内区だ。

 俺も思わず声に出すほど、園内の中はまるで遊園地の何倍も誇る広さに、興味を惹きそうな施設や個性をフル活用したアトラクションまで並んでいる。日本と違って個性の使用が自由なアメリカだからこそ、実現できる光景だった。

 今日はまだプレオープンらしく、俺達と同じく招待状を持っているプロヒーローや企業のお偉いさん、あとは島で暮らしている研究者の家族などしか園内には入れないらしく、一般公開の本番は明日かららしいのだが、それでも結構な人だかりだ。

 気になる物は目白押しだが、遊びに来たワケではない俺達は、事前に携帯で送られた地図を元に、バイト先の店へと向かった。人工島とは思えない光景に、上鳴と峰田はウズウズしていたが、今はまだ我慢だ。

 目的の店は大型のパビリオンに隣接した喫茶店で……仕事内容は俺の1番苦手な接客だったが、店長は金髪碧眼でアメリカンボディの女の人だったから、2人もやる気MAXで頑張っていた。

 

「峰田、切裂っ! このコーヒーとサンドイッチ5卓で、こっちのハンバーガーは8卓のテーブルっ! ……ってか、なんでオマエら英語普通に喋れるんだよぉ!?」

 

「上鳴くん、別に俺達英語ちゃんと話せてないよ。ただ、思いっきり知ってる単語並べてるだけだから!」

 

「そうそう! チビッ子相手にするみたいに、ドーンと構えてりゃあいいんだって!」

 

 俺達は私服から、店長に渡されたウェイターの服に着替えていた。お客のオーダーでカウンターからテーブルまでを、チョコマカ動き回る峰田は峰田でカァイイが、やっぱり1番似合っているのは顔ヅラの良い上鳴。だが、その彼が1番英語が話せない状態で手こずっている。

 

「コレ終わったらさ、島ん中見学しに行こうよ!」

 

「おうっ! せっかくヒロコスも持って来たんだからよっ! オイラ達のファンも増やそうぜっ!!」

 

「いいなソレ! おっしゃあ、Welcome〜!」

 

 しかし、バカとは言え上鳴も雄英生徒だ。すぐに慣れるだろう。

 時間はまだ昼前だから、まだまだこれから忙しくなるだろうと、俺は気合いを入れ直してお客の去ったテーブルを綺麗に片付けて回っていると、その途中で───

 

「あ……?」

 

 

 

 

 

 ───俺はトンでもない光景を目の当たりにした。

 

 

 

 

 

「ん、切裂っ? どうした?」

 

「何やってんだよ! 手ぇ止まってんぞ!」

 

 ようやく少しは自信持って小慣れてきた上鳴に呼ばれ、俺と同じぐらい気合いの入っている峰田が叫んでいたが、俺は2人に対し落ち着いて、なるべく冷静になって告げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「緑谷くんが女の子4人に囲まれてる……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「あ゛ぁッッッ!!!?!!?」」

 

 驚きよりも、怒りが勝ったのだろう。

 口に出す前に、見間違いかと何度も目を疑った。俺の視線の先には、私服じゃなくてヒーローコスチュームを纏った緑谷と麗日、耳郎に八百万。それと、全く知らん金髪碧眼でメガネをかけた、少し歳上ぐらいの女子がクソナードの彼と一緒に歩いていたのだ。

 

「「緑谷゛ぁあ゛ぁァァァァッッッ!!!!!!」」

 

 2人は仕事も忘れて、女連れの緑谷に突っ込んでいく。俺が2人の仕事を肩代わりした数秒後に、彼の悲鳴が聞こえた。

 

 こうして、俺達の働く店のテーブルには、4人の女子に囲まれた緑谷と、それを接客する俺と峰田と上鳴の3人が集まった。緑谷は女子達と別のテーブルに座りそうだったが、イス動かして麗日の隣に座らせた。

 

「てかっ、あんたらいったい何してんの!?」

 

 黄色いソーダ系の飲み物を頼んでくれた耳郎が、早々に俺達がなんでココにいて、しかも働いているのか疑問を投げかける。

 

「エキスポの間だけ、臨時にバイトを募集してたから応募したんだよっ、なぁ?」

 

「休み時間にエキスポも見学できるし、給料貰えるし……来場したカワイイ女の子とステキな出会いがあるかもしれないしなぁ!?」

 

 上鳴と峰田はクラスメイトの女子達と好きに話していたので、俺は緑谷と知らない女へ視線を交互に集中させる。

 

「緑谷くん、その女の人誰?」

 

「き、切裂くん……なんか怒ってる?」

 

 そりゃ怒るさ。君は麗日ちゃんを曇らせない男だと思っていたんだから。

 俺の視線に、青色のソーダを注文していた緑谷がたじろぐ中、カフェオレ注文していたその知らない女が俺に手を差し出した。

 

「初めまして『メリッサ・シールド』よ。ここ I・アイランドで暮らしてる学生なの。よろしくね!」

 

「切裂 刃、緑谷くんのお友達です。こちらこそ、よろしく」

 

 屈託のない笑顔を向けられて、俺も普通に彼女と握手をした。ソコに向かって緑谷が高速で舌を回しながら、言い訳みたいに説明を始める。

 

「切裂くん! この人、オールマイトのヒーローコスチューム『ヤングエイジ』『ブロンズエイジ』『シルバーエイジ』そして今日本で活動する時の『ゴールデンエイジ』それら全てを制作した天才発明家で、しかもオールマイトのアメリカ時代の相棒で、旧知の親友でもあって、最近ノーベル個性賞を受賞した個性研究のトップランナー『デビット・シールド』博士の娘さんなんだっ!!!!!」

 

「お、おう……」

 

 なんか前半9割ぐらい、この子とあんま関係ない話が流れたが、とにかくそんじょそこらの女ではなくて、オールマイトの関係者なんだってのはわかった。

 少し歳上な雰囲気がしたので、俺達と同年代ぐらいですかと聞いたら、なんと17歳。ウチの店長には負けるが、その体型で17歳。隣に座って紅茶を嗜んでいる八百万と良い勝負である。同じテーブルに座る耳郎が白目剥いて、ホイップの乗った苺ミルクを頼んでいた麗日にワタワタ慰められてた。

 

「オイラ峰田 実です!」

 

「俺、上鳴 電気と言いますっ!」

 

「あ、あなた達も雄英生?」

 

「「はいっ! ヒーロー科です!」」

 

 俺の挨拶に、カッコつけた峰田と上鳴が便乗してメリッサさんとの挨拶に回った所で、俺は緑谷に視線を戻す。

 

「緑谷くん、君はどうしてこの島に? プレオープンのチケットなんて一般販売してないし……オールマイトの関係者って事は……先生に呼ばれたの?」

 

「えっ!?(うわっ切裂くん、やっぱ鋭い!)」

 

 なぜか緑谷が口籠もり始めた所に、遠くから散々聞き慣れたエンジン音が聞こえてきた。

 

「何を油売っているんだ! バイトを引き受けた以上、労働に励みたまえ!!」

 

「いっ、飯田くん!?」

 

 いったい何処から話を嗅ぎつけたのか。ヒーローコスチュームのアーマーを着た飯田が、俺達の所へと走って来て急ブレーキをかけて止まった。

 

「来てたん!?」

 

「うちはヒーロー一家だからね! I・エキスポから招待状を頂いたんだ。家族は予定があって、来たのは俺1人だが……」

 

 飯田の家は今、兄の事で事務所が大変なのだろう…………て事は親父がエンデヴァーの轟も、どっかにいそうだ。エンデヴァーがこんな所にいる気は、しなかったが。

 飯田の話に、八百万が口元を押さえて驚いていた。

 

「飯田さんもですの? 私も父が I・エキスポのスポンサー企業の株を持っているものですから、招待状を頂きましたの!」

 

「で、ヤオモモの招待状が2枚余ってたから……厳正な抽選の結果、ウチらが一緒に行く事になったってワケ!」

 

「うん! ほかの女子もこの島には来てるんよ?」

 

「えっ! そうなの!?」

 

 耳郎と麗日の説明に、俺が声を上げてしまった。

 なんかこの調子だと、A組全員いる勢いな気がしてきた。さすがにプレオープンの今日、園内に入れる人は限られそうだが。

 

「ええ。明日からの一般公開日に全員で見学する予定ですの」

 

「良ければ私が案内しましょうか?」

 

 八百万の台詞に、メリッサさんが手を挙げて提案すると、麗日と耳郎が嬉しそうに声を上げた。

 

「いいんですか!?」

 

「やったぁーーーっ!」

 

「「おっ、俺達も連れてって!!!」」

 

 峰田と上鳴まで、彼女に縋り付きそうになっていたが、ソレを俺はひと言で止める。

 

「峰田くん、上鳴くん、バイト」

 

「「うがぁぁぁぁぁぁあっッ!!!」」

 

「切裂君……雄英の恥部を晒すか否かは、君にかかっているぞ。上手く2人を誘導してくれ、頼む!」

 

 2人は叫び声を上げて、地面にのたうち回ってしまった。その様子を耳郎と八百万が、汚物でも見るみたいな目を向けており、緑谷と麗日とメリッサさんは、少し可哀想な目を向けるし、飯田には両肩を掴まれて真剣な顔を向けられた。

 

 最後に、あの店長に感謝でハグしてもらえるのを祈ろう。

 

 そのあとすぐ、アトラクションの方で爆発音が聞こえて、お客だった緑谷達はみんなそっちに行ってしまった。

 

「チクショーいいなぁ〜! 緑谷と飯田のヤロウ!」

 

「コイツが貧富の差ってヤツか……オイラ達惨めだな……」

 

「やめて2人とも」

 

 俺達は仕事があるので、まだ動き回る事はできない。峰田も上鳴も歯軋りしながら仕事に戻った。

 

 こうして、初日にしては忙しすぎるバイトを終えて、俺達は夕方になってからようやく解放された。

 

『本日は18時で閉園になります。ご来園、ありがとうございました』

 

 園内の放送が聞こえる中、俺は閉店した喫茶店の前で背筋を伸ばす。

 

「ん〜! ようやく終わったね。園内はもう閉まるし、早くホテル戻ろっか!」

 

「プレオープンでこの忙しさって事は……明日からどうなっちまうんだいったい……」

 

「やめろ考えたくないぃ!」

 

 俺の言葉に、喫茶店の前でへたれこむ峰田と上鳴が駄々を捏ねる。

 

 一応、昼に店長から休憩時間をもらったので、急いでヒーローコスチュームに着替えた俺達3人は園内を回ったが、パビリオンを少し歩き回って昼飯食ったらすぐ終わってしまった。

 観光客も日本人が多いってワケでもなく、あれだけ日本で有名になった『保須事件』も、海外では名前にも上がっておらず、自分達がまだまだ無名である事を、峰田と一緒に突きつけられた。

 それでも何人かの観光客や現地の人は、俺達に声をかけてくれた。せっかくのアメリカだから、ダックハンター迷彩にした甲斐あった。

 

 とは言え、さすがにココまで来てバイトばかりは惜しいので、居住区でも散策しようか考えていると、遠くから緑谷達お昼の面子全員が、こっちに来ているのが見えた。

 

「3人とも! お疲れ様〜!」

 

「労働よく頑張ったなぁ!」

 

 そう言いながら飯田は、立っている俺の前に3枚のチケットを渡してきた。

 

「ん?」

 

「何コレ?」

 

「レセプションパーティーへの招待状ですわ!」

 

 八百万の言葉に、峰田と上鳴がゆっくりと立ち上がって、俺が受け取ったチケットに集まる。

 

「パーティー?」

 

「俺らに?」

 

 2人の問いかけに麗日と耳郎、そしてメリッサさんが答えた。

 

「メリッサさんが用意してくれたの」

 

「せめて今日ぐらいは、って!」

 

「あ、余ってたから! よかったら使って!」

 

「「俺達の労働は報われたぁ!!!」」

 

 2人は涙目になって俺に両側から抱きついてきたが、俺には疑問が残った。

 

「待って! パーティーって……俺達スーツなんか持ってないけど……大丈夫?」

 

「このウェイターのヤツでいいだろ?」

 

「コイツならパーティー会場にも違和感ないぜ!」

 

 パーティー会場でウェイターに間違われるのは癪に障るが、実際コレしかないのだから仕方がない。参加できるだけでも良しとしよう。

 

「パーティーにはプロヒーロー達も多数参加すると聞いている! 雄英の名に恥じないためにも、正装に着替えて団体行動でパーティーに出席しよう! 18時30分にセントラルタワーの7番ロビーに集合! 時間厳守だ!! 轟君や爆豪君達には、俺からメールしておく! では解散!!!」

 

 飯田がテキパキと予定を組んで走り去ってしまったが、彼の台詞の中にどうしても気になる単語が出た。

 

「え、爆豪くんもいたの!?」

 

「うんっ! お昼の爆発……かっちゃんのだった!」

 

「切島くんもいたよ!」

 

 なにやってんだとも思ったし、なんでアイツがこんな趣味でもなさそうな場所に来たのかも謎だった。切島も一緒になって来ているのも、更に謎だった。

 

 てか、飯田の示した時間まで、あと30分ぐらいしかないけど……大丈夫か?

 

 一旦全員と解散して、俺と峰田と上鳴は、ウェイタースーツのまま、セントラルタワーの1階である7番ロビーへと到着した。

 

「やっほー、轟くん」

 

「切裂……お前も来てたのか」

 

 すでに青のスーツを着て到着していた飯田と……イケメンじゃないと着こなせない、真っ白のスーツでバシッと決めた轟がいた。顔も相まって似合いすぎてて怖い。火傷と髪の色のせいでホストには見えないが、こんなん見た女の子は放っとかないぞ。

 

 で、案の定……女子と緑谷と爆豪と切島が遅れた。

 遅刻1人目は緑谷。赤茶色っぽいスーツに蝶ネクタイが似合っていた。

 

「ゴメン遅くなって! って、アレ? ほかの人は?」

 

「まだ来ていない。団体行動をなんだと思ってるんだ!?」

 

 飯田は怒っていたが、そんな彼を宥める様に俺は優しく告げる。

 

「飯田くん、後から言うのもアレだけど……30分じゃ女の子のドレスは着付けられないよ……」

 

「そ、そうなのか!? いや、確かに俺は自分の着替える所要時間しか鑑みていなかった! ドレスの構造もよく知らないし……女性なら化粧の時間も考えるべきだったか……!!」

 

 飯田は緑谷みたいに、ブツブツと自分の世界へと入り始める。俺もドレスはよく知らないけど、たぶん無理な気がする。八百万はなんで言わなかったんだ?

 そんな事をしていると、遅刻2人目に麗日が入ってきた。

 

「ごめーん! 遅刻してもうた!」

 

 初めてのドレスという事で、彼女はどこか初々しい感じだ。制服の時も着ている、黒のタイツが眩しい。白い花の髪飾りが可愛らしいし、全体的に桃色の柔らかな色合いが似合っている。

 

 更に続いて3人目、4人目と八百万に耳郎が入ってきた。

 

「申し訳ありません……耳朗さんが……」

 

 八百万は髪型も少し変えて、大人びた黄緑色のドレスを着てきた。正直、女子高生が出して良い色気を超えている。

 

「ウ、ウチこういう格好はその……なんと言うか……」

 

 それに対して耳郎は恥ずかしそうな言動の割に、濃いピンク色の派手目なドレスを着てきた。黒のジャケットもロックパンクな彼女ぽくって良い。

 

「馬子にも衣装ってヤツだな!」

 

「女の殺し屋みてえ───

 

 峰田の台詞が言い終わるよりも早く、彼女のイヤホンジャックが2人に突き刺さり、悲鳴が上がった。

 

「なんだよ俺褒めたじゃんかぁ!」

 

 ダウンした峰田の隣で、上鳴が叫ぶ。その言葉の意味、もっかい調べてきな……

 そんな見苦しい2人と違って、緑谷と麗日の方は一生見ていたくなる様子だった。

 

「正装なんて始めてだぁ! 八百万さんに借りたんだけど……」

 

「に、似合ってるよ……うん、スゴく……!」

 

「デぇ、デクくんったら! お世辞なんて言わんでぇいいってえっっ!!!」

 

 お互いに赤面しながら、緑谷は素直に感想を言うし、麗日はワタワタしながらソレを嬉しそうに受け止めている。入学したての頃の、女子と話すだけで精一杯な緑谷を見ていた身としては、泣きたくなる。

 何この優しい世界。これ見ただけで I・アイランド来た甲斐あったかもしれない。

 

 そこに遅刻5人目かと思いきや、タワーの建物側の扉からメリッサさんが来た。

 

「デクくん達まだココにいたの? パーティー始まってるわよ?」

 

 濃い青のドレスにハイヒールだ。金髪の彼女によく似合っているし、上鳴と峰田が歓喜の声を上げた。

 さて、残るのは野郎2名だが、本当に来るのか怪しい空気になってきた俺は、飯田に確認してみる。

 

「爆豪くんと切島くんは?」

 

「それが……どちらも応答がない」

 

 飯田は携帯をかけたジェスチャーを俺に見せた。あの爆豪がパーティーに参加するなんて想像できないから、グズっているのかと思った。

 俺はメッセージで彼に直接、煽りを入れてやろうと携帯電話を開いた。

 

「ん?」

 

 さっきまで普通に使えていたハズの携帯の電波が、圏外になっている。ここに来る前に事前情報で基地局があるって聞いてたから、この建物でも使えるハズだ。

 

「どした?」

 

 いち早く俺の声に反応した峰田に、その事を口に出すよりも早く、いきなり建物内から警報器みたいなサイレンが鳴り響いた。

 

「なっ、なんだッ!?」

 

 飯田が驚きの声を上げると、続くようにして建物内のスピーカーから、ロボットみたいな無機質な声が、淡々と状況を告げてくれた。

 

『 I ・アイランド管理システムよりお知らせします。警備システムにより I・エキスポエリアに爆発物が仕掛けられたという情報を入手しました』

 

「爆発物ッ!?」

 

『 I・アイランドは現時刻をもって厳重警戒モードに移行します。島内に住んでいる方は───

 

 続いて、俺達のいるタワーの外壁からシャッターが降りて、正面玄関の出入り口が封鎖された。

 

「シャッターが……!」

 

「閉じ込められた!?」

 

 ───今から10分以降の外出者は警告なく身柄を拘束されます。また主要施設は警備システムによって強制的に封鎖されます。繰り返します───』

 

 放送はそれを延々と流し続けており、俺達はロビーに密集する。

 

「お、おい……これ、ヤバいんじゃないのか……?」

 

「携帯が圏外だ……情報関係は全て遮断されちまったらしい……!」

 

「エレベーターも反応ないよ?!」

 

 轟も携帯を開いて圏外を確認し、耳郎はエレベーターのスイッチを押していたが、最後は拳を叩きつけた。

 

「爆発物が設置されただけで、警備システムが厳戒モードになるなんて……」

 

 この島に住んでいるメリッサさんすら、今の状況を怪しみ始めたその時、建物の何処かから、炸裂音が鳴った。

 静かにしろと言わんばかりに、俺は手の平をみんなに突きつけた。

 

「今の音、何」

 

「え?」

 

 峰田も聞き逃すぐらい小さかったけど、パーティークラッカーにしては、重すぎるし大きすぎる音だった。

 

「銃声じゃねえか?」

 

「銃声!?」

 

 轟はUSJで聞いた事あったもんな。照合できる相手がいて、俺は確信した。

 

「パーティー会場で何かあったのかも!」

 

「行こう飯田くん! 会場にはオールマイトが来てるんだ!」

 

「オールマイトが!?」

 

「なんだっ、それなら心配いらねえな!」

 

 緑谷の提案に峰田が楽観的になり始めたが、もしコレがヴィランの仕業なら、相手はあの最強のオールマイトがいるのに、この場所へ襲撃を仕掛けてきた連中となる。

 油断は禁物だった。

 

「メリッサさん、どうにかパーティー会場まで行けませんか?」

 

「非常階段を使えば、会場の近くに行けると思うけど……」

 

 緑谷の質問に、メリッサさんはフロアの隅にあった非常階段の出入り口を指差した。

 

「案内をお願いします!」

 

 ココにいても情報は何もわからないので、ひとまず会場を目指す事に決まった。俺は耳郎の肩を掴んで、先導するメリッサさんのすぐ後ろに立たせた。

 

「耳郎ちゃん、怖いかもしれないけど前に出て索敵し続けて…………何が起きてるのか、全くわからないから!」

 

「う、うん……!」

 

 彼女の案内と耳郎の偵察を行いながら、俺達は非常階段を慎重に上がってパーティー会場の位置する、吹き抜けの上部フロアに出た。

 

「あそこから……って、切裂くん?」

 

 非常口からフロアに向かって走り出そうとした緑谷のスーツの裾を、俺は掴む。

 

「静か過ぎる……緑谷くんと耳郎ちゃんだけ来て……姿勢は低くね……!」

 

「うん……!」

 

「わかった……!」

 

 俺は緑谷と耳郎を引き連れ、非常口から四つん這い……からのスーツもドレスを気にせず匍匐前進をして、手すりの柵越しに下のフロアを覗いた。

 

「オ、オールマイト……!」

 

「……ッ!?」

 

 下のフロアに広がるパーティー会場内。スタンドマイクが立つ壇上にオールマイトが青く光るロープに巻きつかれて拘束されていた。彼だけではなく、会場にいるプロヒーロー達も同様だ。

 そしてその周りには、パーティーには絶対に不似合いな銃と装具で武装した連中が、オールマイトはもちろん会場の招待客を人質に取って占拠していた。

 オールマイトならあんな拘束具、超パワーで引きちぎれそうなハズだが、周りにいる招待客に銃が向けられて、動くに動けない状態になっていた。

 

 俺はそのまま上部から、テロリストの人数を確認する。

 

「ヒソヒソヒソヒソ……(見える範囲だけで10人……あの鉄仮面着けたヤツがリーダーか? …………『AR-15』から『Hk 416』に『AK-12』……サブマシンガンは『Vector』と『UMP』…………『レモン』と『アップル』グレネード……『フラッシュバン』も完備か…………拳銃はなんだ……? あのケツは……『Glock』と『SIG』か? 随分金掛かったテロリストだな……!)」

 

「ヒソヒソヒソヒソ……(き、切裂くんっ、そういうの今はいいから……っ!)」

 

 プレートキャリアからヘルメットまでバチバチに決めてやがるし、リーダーはプレキャリの上から白のコートなんて物着ている。鉄板を貼り合わせた仮面着けた、あの目立つヤツで間違いないだろう。個性が使えるプロヒーロー相手取る気満々の、かなりマジな連中だな。

 俺や切島、鉄哲とかなら銃弾なんて大した事ないが、それ以外の人達は別だ。個性という超常的な能力があっても、あの手の兵器はまだ今日の世の中を生き残っている。

 

「オールマイトが気付いた……耳郎さん!」

 

「うん」

 

 緑谷が携帯のライトをフロアの端からコッソリ点灯を繰り返して、倒れているオールマイトに気づかせた。少々危険だったが彼の指示で、耳郎は床にイヤホンジャックを突き刺している。コレならここからでもオールマイトの小声は聞こえる。

 緑谷の「話して」のジェスチャーで、オールマイトは話し始めた。

 

 

 

 オールマイトの話を全員に共有すべく、非常階段の踊り場まで戻った俺達は、青ざめた耳郎が聞いた話をまとめる。

 

 ヴィランがセントラルタワーを占拠して、この島の警備システムを掌握したそうだ。島のそこら中にいたロボットである警備マシンも、全てヴィランの思うがまま。つまり、島の人間が全員人質になっている状態だ。ヴィランは研究者を2名何処かに連れて行ったらしく、何かを探している素振りだった。プロヒーローも全員囚われたから、すぐに逃げろとの事。

 

「俺は雄英校教師であるオールマイトの言葉に従い、ここから脱出する事を提案する!」

 

「飯田さんの意見に賛同します! 私達はまだ学生……ヒーロー免許もないのにヴィランと戦うワケには……」

 

 委員長2人の意見には、賛同したかった。

 ヒーローコスチュームはココに来る前に宿泊施設に置いてきた。もし戦闘するなら全員、サポートなしのカラ身でヴィラン共と戦う事になる。

 個性も全く不明な今、ヤツらと正面から堂々と戦うリスクは高すぎる。

 しかし、メリッサさんは委員長の提案に、口元に手を当てて思考しながら答える。

 

「脱出は困難だと思うわ。ココはヴィラン犯罪者を収容する『タルタロス』と同じレベルの防災設計で建てられているから……」

 

「じゃあ……助けが来るまで大人しく待つしか……」

 

「違う」

 

 俺も思考を巡らせながら、上鳴の台詞を遮った。

 

「ち、違う?」

 

「外は太平洋のド真ん中だぞ? まず携帯が通じねえ。この島の基地局信用してたから、誰も衛星通信なんかサービス入れてねえだろ? 俺もお前らも、船も飛行機も操縦なんて知らない。外に出た所で、助けを求める事もできないんだ…………それに万が一、外に出てプロヒーロー達を呼べても、あのセキュリティをどうする? ネットの動画見たけど、島の中は警備マシンでごった返しているし、あの防壁の中は対空ミサイルと機関砲がありったけ詰め込まれてるんだぞ?」

 

「う……た、確かに……!」

 

 八百万だけでも外に出して、衛星通信の電話か何か作れば希望はあったが、そもそも島の中心のタワーから安全な外壁に出るまで、トンでもない距離をセキュリティを避けながら移動する事になる。それに島の防衛システムまで堕とされていた場合、このままだと一度外に出ると再突入するのもひと苦労な、ねずみ返し状態だった。

 

「じゃ、じゃあどうすんだよ……?」

 

 上鳴の弱腰な声に、俺と峰田は顔を合わせた。峰田も俺を見ていた。もう既に、覚悟は決まっていると言わんばかりの顔で。

 

「峰田くん」

 

「ああ……!」

 

 彼はもう、『USJ事件』で脳無に腰を抜かしていた峰田ではない。性格こそオープン野郎だが、子供のためなら自分の危険だって顧みない、1人のヒーローだ。

 

「俺達がやらなきゃいけないのは『玄関』を開ける事……! それに、セキュリティさえ解除すれば、あとはオールマイトがなんとかするだろう?」

 

 俺の提案に、誰よりも早く緑谷が拳を握りしめて呟いた。

 

「うん! オールマイトも動けないなら……今の僕達にしかできない事をしたい! 僕達で助けよう!」

 

「デクくん……!」

 

 麗日も賛同してくれた。やっぱり、この2人は最強のヒーローとヒロインである。どこまでもやってくれそうだ。

 

「 I ・アイランドの警備システムは、このタワーの最上階にあるわ! ヴィランがシステムを掌握しているなら、認証プロテクトやパスワードは解除されているハズ…………私達にもシステムの再変更ができる! ヴィランの監視を逃れ、最上階まで行く事ができれば……みんなを助けられるかもしれない!」

 

「決まったな」

 

 メリッサさんの提案に轟が答えたが、耳郎が彼を止めた。

 

「待って! 監視を逃れるって……どうやって?!」

 

「現時点で私達に実害はないわ! ヴィラン達は警備システムの扱いに慣れてないと思う!」

 

 メリッサさんの説明に、耳郎は少しだけ緊張を綻ばせる。向こうがコチラを捉えておらず、彼女の索敵があるなら、戦闘は最低限で済む。

 

「戦いを回避してシステムを元に戻すか……なるほど」

 

「それならイケんじゃねえ?!」

 

「しかし最上階にはヴィランが待ち構えてますわ!」

 

 轟と上鳴の言葉に、八百万が至極真っ当な事を告げる。確かに、メインシステムルームの戦闘は避けられないだろうが、ヴィランはパーティー会場に集まっているのが主力だろう。上にいる人員は最低限のハズだ。

 

「いや、システムルームに入った時点で、俺達の勝ちだ……!」

 

「切裂くんの言う通り、システムを元に戻せば……人質やオールマイト達が解放される! そうなれば状況は一気に逆転するハズ!」

 

「デクくん、行こうっ! 私達にできる事があるのに、何もしないでいるのはイヤだ! そんなのっ、ヒーローになるならない以前の問題だと思う!」

 

 すでに行く気満々な俺達に、飯田と八百万が大きく息を吐いた。しかし、その反応は俺達の意見に折れたのではなく、落ち着いて賛同するモノだった。

 

「これ以上無理だと判断したら引き返す。その条件が呑めるなら、俺も行こう!」

 

「そういう事であれば、私も!」

 

「よっしゃ、俺も! いっちょやってやろうぜっ!」

 

「おうよっ!」

 

 全員がやる気を上げる中、俺はメリッサさんに顔を向ける。

 

「メリッサさん。コンピューター強いですか?」

 

「もちろん! 私はアカデミーの学生、警備システムの設定変更なら役に立てると思う。最上階に行くまでは、足手纏いにしかならないけど……私にも、みんなを守らせて!」

 

 彼女も連れて行く事が決まり、緑谷はもう一度オールマイトに顔を合わせてくると、フロアに行ってしまった。たぶん、俺達がまだ逃げていないのを見たら、何をしようとしているのかは伝わるハズだ。先生がどう思うかはわからないが、動けない以上は俺達が頑張るしかない。

 

「よしっ、行くぞ!」

 

 緑谷も戻り、飯田の号令の下、俺達は1列になって非常階段を駆け上がった。

 

「耳郎ちゃん、悪いけど……ずっと前で索敵し続けてもらうよ」

 

「大丈夫、ウチがエスコートしたげるから!」

 

 ひとまず登るだけなので、耳郎を先頭に俺達はひたすら階段を登り続ける。

 

「コレで30階……!」

 

「メリッサさん、最上階は!?」

 

「ハァ、ハァ……200階よ!」

 

「「マジでっ!!?」」

 

 桁の違う階数に、峰田と上鳴が悲鳴を上げる。段差だって人並み以上に疲労する峰田にとっては、地獄そのものだろう。

 

「ヴィランと出くわすよりマシですわ!」

 

 八百万の言う通り、ヤツらに悟られるよりもなるべく早く、最上階に近付いておきたい。

 そのまま俺達は40階……50階と階段を登り続ける。

 そしてココで、メリッサさんの足が遅れ始めた。プロヒーローとして活動やトレーニングをしている俺達と違って、彼女はただの学生だ。

 

「メリッサさん! 私の個性使おうか!?」

 

「そしたら俺が背負う!」

 

「いいや、俺が!」

 

「いいや、オイラが!」

 

「いや、僕が!」

 

「いや、ここは脚力に余裕のある俺が!」

 

「こんなトコで言い争わないでくれる!?」

 

「………………(俺も手を挙げるべきだったか?)」

 

 言い争いを始めようとしたつもりはなかったのだが、先頭登っていた耳郎に吠えられた。

 峰田はサイズ的に無理。耳郎は先頭。八百万は本人の体力的に避けたい。麗日も唯一の飛行能力の個性だし、浮かせるだけでも大変なのだから、これ以上負担は背負わせたくない。轟と上鳴は人を背負ってると個性が使えない。最終決戦兵器緑谷は万が一にとっておきたい。消去法で飯田か俺しかなかったのだ。

 

「ありがとう! でも大丈夫、その力はいざという時にとっておいて!」

 

 そう言って彼女は、履いていたヒールを階段に投げ捨てて、階段を駆け上がってきた。強い女性だ。

 

 ペースは少し落ちたかもしれないが、そのまま俺達は60階……70階を通過。さすがにココまで来ると、メリッサさんじゃなくても息を荒げ始める者が増えてきた。

 

 それでも80階まで上がった所で、耳郎がいきなり止まった。

 

「あっ!」

 

「シャ、シャッターが……!」

 

 目の前には天井を塞ぐ様にして、階段のシャッターが閉じられていた。

 

「どうする……壊すか?」

 

「そんな事をしたらっ、警備システムが反応してヴィランに気付かれるわ!」

 

 轟の提案をメリッサさんが否定すると、峰田が非常階段から出るドアを開けようとした。

 

「なら、こっちから行けばいいんじゃねえの?」

 

「ダメッ!!」

 

 彼女の制止よりも早くドアは開いたが、代わりに嫌な予感を知らせる機械音が鳴った。

 

「あ、ゴメン……!」

 

 峰田は謝ってきたが、俺も周りも怒るつもりはなかった。この状況ならシャッターを壊すかドアを開けるかしか、どっちにしろ道はなかったのだから。

 

「開けちゃったんだっ、頭を切り替えよう! 悟られる前に走るよ!」

 

「そうだね! 行こうっ!!」

 

 俺の勢いに緑谷も乗っかり、俺達は80階の広い通路みたいな廊下を爆走する。

 上に行きたいのに横に進んでいては、一向に距離が縮まらない。早く上へ進む手段を探したい所に、飯田がメリッサさんに尋ねた。

 

「他に上に行く方法は?」

 

「反対側に同じ構造の非常階段があるわ!」

 

「急ぐぞ!」

 

 轟の声で俺達の速度が増そうとした直後、通路を進む先の隔壁が上から下りた。もしかしなくても、ヴィランに悟られたのだろう。

 

「隔壁がッ!?」

 

「クッ!!」

 

 驚く緑谷を背に、咄嗟に俺は両腕の刃で斬撃波を飛ばしたが、隔壁はデカい傷がつくぐらいで、切る事はできなかった。

 

「硬ァッッッ!!!?!?」

 

「対ヴィラン用に作られてるから!」

 

 メリッサさんの説明にショックを受けていると、麗日が通路の傍を指差した。

 

「あそこの扉!」

 

「轟君!」

 

「っ!」

 

 飯田の指示で、轟が形成した氷塊が閉じようとした隔壁につっかえ、通り抜けた飯田が横にあった扉を蹴り開けた。

 氷が閉じようとする隔壁に砕かれるよりも早く、通過した俺達は飯田の開けた扉から、フロアの中へと入った。

 入った中はいきなり外に出たのかと疑う様な、手入れのされた森林や自然の広がるフロアだった。数階分吹き抜けになっており、ココから上も目指せそうだ。

 

「こ、ココは!?」

 

「植物プラントよ! 個性の影響を受けた植物を研究……」

 

「待って、アレ見て! エレベーターが上がってきてる!!」

 

 メリッサさんの説明を耳郎が遮って指差す先、タワーの中央に備え付けられたエレベーターが、下から昇ってきていた。

 非常階段のドアも開けちまったんだ。隔壁まで下ろされた時点で、何も来ないハズがなかった。

 

「誘い込まれたか……!」

 

「隠れてやり過ごそう!」

 

 緑谷の指示で、全員が茂みの中に飛び込んだ。

 

「あのエレベーター使って、最上階まで行けねえかなぁ?」

 

「無理よ。エレベーターは認証受けてる人しか操作できないし、シェルター並みに頑丈に作られているから、破壊もできない!」

 

「無駄に高性能だなあ……!」

 

「使わせろよ文明の利器ぃ!」

 

 上鳴、俺、峰田が文句垂れていると、エレベーターがフロアに到着して扉が開いた。

 

「っ!」

 

 ヴィランは2名だった。身長の高いトカゲっぽい顔のヤツと、チビでゴリラみたいな顔したヤツ。俺と峰田みたいな凸凹コンビだが、そんな見た目はパッとしないヤツらだ。

 

「あの服装……会場にいたヴィランだ……!」

 

 2人はこちらには気づいていないのか、無駄話をしながらキョロキョロと辺りを見渡して歩き始める。

 

「ガキはこの中にいるらしい……」

 

「面倒な所に入りやがって……!」

 

 そのまま、俺達の隠れているこちらへと近寄ってきたので、俺はゆっくりと頭を引っ込めた。

 

(こっちに来る……!)

 

(静かに……!)

 

(来るな来るな……!)

 

(あっち行け……! 行け!)

 

(お願い……気づかないで……!)

 

 

 

「見つけたぞクソガキ共ッ!!!」

 

 

 

 え!? バレた!?

 

 みんなが強く眼を瞑って祈っていた中、俺は眼を見開いてあの2人の声を聞いていた。遮蔽物まで使ってるから、見えないハズなのにと思ったが、最初はそういう個性か何かかと考えた。

 

 でも、違った。

 

「あ゛ァッ!!? 今なんつったテメェッ!!」

 

「「え!?」」

 

 聞き間違えるハズのない声に、俺と緑谷だけでなく、全員が茂みから顔を出した。

 

 パーティースーツに身を包んだ、爆豪と切島がプラントの中の道に堂々と立っていたのだ。

 

「なんでアイツらッ!?」

 

 耳郎の言う通り、パーティーに来ようとしていたのも驚きだが、なんで80階のココにいるのか。そしてなぜ飯田の携帯に出なかったのか。俺の中で一気に疑問が湧いた。

 ヴィランが2人に問う。

 

「お前らココで何をしている?」

 

「そんなの俺が聞き───

 

「ココは俺に任せろっ! なっ! あのー、俺ら道に迷ってしまって、レセプション会場ってドコに行けば……」

 

 ヴィランの態度にメンチを切り始める爆豪を切島が抑え、当たり障りないような態度で話し始めた。

 

 ……どうやらマジで迷子だったみたい。

 

「道に迷ってなんで80階に来るんだよぉ!」

 

 峰田の小声で叫ぶツッコミに、全員が同意していた。でも80階まで普通に来れたって事は、メリッサさんの言う通り、警備システムはまだ完全に敵の手に堕ちたワケではなさそうだ。

 

「見え透いた嘘ついてんじゃねえぞォッ!!!」

 

 そんな事考えている間に、長身のトカゲ顔のヴィランの手の平が大きく広がり、空間を歪ませる塊が切島に向かって飛んだ。

 

「ヤベッ!」

 

 俺が飛び出そうとした次の瞬間には、轟の放った全力の氷塊が切島を守っていた。

 

「っ!? この個性は……ッ!」

 

「轟っ!?」

 

 突然現れた轟と俺達に、爆豪と切島が驚いていたが、彼は更に冷気を広げて、俺達の足元から氷を上に押し上げ、エレベーターがわりにして俺達を吹き抜けの上のフロアへと送る。

 

「俺達で時間を稼ぐ。上に行く道を探せ!」

 

「轟くん!?」

 

「君は!?」

 

「いいから行け!」

 

 もはや戦闘は避けられないと、轟は判断したのだろう。だが、1人で勝てると考えるほど、彼は自惚れていない。爆豪と切島を一緒に残した彼に、俺は氷に押し上げられながら、八百万に顔を向ける。

 

「八百万ちゃん! トランシーバーって作れるッ!?」

 

「は、はいっ!」

 

 驚きながらも彼女に創造してもらった1個目のトランシーバーを受け取り、周波数を『84.92』に合わせて轟に投げた。

 

「轟、受け取れっ!!!!」

 

 上から俺の投げつけたトランシーバーを、彼は難なくキャッチした。

 

「ココを片付けたらすぐに追いかける!」

 

 轟がそう叫ぶのが聞こえたので、俺達は止まった氷のエレベーターを飛び降りると、思考を切り替えて上へと進む道を探し始める。爆豪と切島への状況説明は、轟がしてくれるだろう。

 

「コレをっ!」

 

 俺は走りながら、2つ目のトランシーバーを八百万から受け取り、服に引っかけた。その間に耳郎が進行方向に指を差す。

 

「扉だッ!!」

 

 直後、下のフロアで爆発や氷の破壊される轟音が連続して起こった。やはり、アレぐらいでやられるヴィランじゃなかったか。

 加勢したい気持ちはあったが、今は轟の言葉に従って上の道を探すべきだ。トランシーバーもあるから、何かあったら連絡もできる。

 

「うおォォォッ!!!」

 

 上層フロアを駆け抜けた飯田が、入ってきたプラントとは反対側に面するドアを蹴り上げたが、廊下の両側は隔壁が下りていた。

 

「くっ、こっちもダメか!」

 

「クッソ、オイラ達完全に袋のネズミじゃねーか!」

 

「あったよ、道」

 

「何、どこだ!?」

 

 頭に血を上らせる峰田を落ち着かせるように、俺がポツリと呟いて指差す先、天井に小さな扉の付いた出入り口があった。

 

「非常システムのメンテナンスルーム……!」

 

「おおっ! あの構造なら、非常用のハシゴがあるのでは!?」

 

 メリッサさんの言葉に飯田も入り口を確認しながら、期待を込めた声で問いかける。

 

「確かに手動式のがあるけど……中からしか開ける事はできないわ!」

 

 しかし、彼女の言葉に周りは押し黙ってしまった。屋内とは言え、扉は自分達のいる所までかなり高い上、隔壁と同じデザインをしているから、俺じゃ切り開けない。

 

「ココまで来たのに……!」

 

「いや……!」

 

 しかし、俺は天井に斬撃波を飛ばして隔壁とは別の、天井の通気口の蓋を切り開いた。

 パカリと四つ切りにされた蓋が、プラントの地面へと落ちていく。

 ソレを見て、八百万が思いついたように呟いた。

 

「通風口の隙間から外に出て、外壁を伝って上の階に!」

 

「そうか! 上にも同じものがあれば!」

 

「中に入れるわ!」

 

 耳郎と麗日が表情を明るくさせる中、思考する緑谷はゆっくりと峰田の方を見た。

 

「狭い通風口に入れて、外壁を伝って行くには……」

 

「おっしゃあ! 壁登りは切裂と散々やってきたんだ!」

 

 迷いなくモギモギを壁に投げつけ、通気口まで連続ジャンプで飛び上がった峰田が、小さな体でスルリと穴に入っていく。

 俺は下のフロアを覗いたが、爆豪も切島も轟もなんとかヴィランを凌ぐどころか、圧倒し始めている。チビのゴリラみたいなヴィランは、紫色のガチムチのデカいゴリラに変身し、長身のトカゲのヴィランは空間を削り取っているのか、轟の氷も爆豪の爆破も粉砕していたが、徐々に3人に追い詰められていた。

 数分の時間も経たずに、天井の隔壁が開いてハシゴが降りてきた。そして峰田が元気良く、逆さまに顔を出した。

 

「お待たせしたぜ!」

 

「流石だよ峰田くん! 今作のMVPは君だっ!」

 

「凄いわ峰田くん! さすがヒーロー候補生ね!」

 

 俺とメリッサさんで峰田を褒めながら、全員で急いでハシゴを上がり、メンテナンスルームから隣接していた非常階段を上がる。

 すぐに90階へ到達すると、トランシーバーから轟の声が聞こえた。

 

『切裂聞こえるか?! グッ!』

 

「と、轟くん!?」

 

 声が聞こえて嬉しい反面、なぜか苦戦しているような声も聞こえて、俺は思わず呼びかける。

 

『ヴィランは倒したが……今度は警備用のマシンが動き始めた! もう少し時間がかかりそうだ……!』

 

「天井にハシゴが伸びた入り口があるから、ソコから上がって! 無理に倒さなくていいから!」

 

『わかった!』

 

 ソコで無線が切れて、俺達は更に階段を登り続ける。

 

「さすがは轟に、爆豪と切島だぜっ!」

 

「でも警備マシンが動き出したと言っていましたわ!」

 

「相手は閉じ込めるのではなく、捕えるのに方針を変えたか……!」

 

「きっと、僕達が雄英生である事を知ったんだと思う!」

 

 峰田、八百万、飯田、緑谷が話をしている途中、100階で登っている非常階段が終わってしまったため、俺達は慌てて別の階段目指して通路を走った。

 

「なんかラッキーじゃね!? 100階越えてからシャッターが開きっぱなしなんて!」

 

「私達の事見失ったとか!?」

 

「おそらく、違う!」

 

「私達、誘い込まれてますわね!」

 

「それでも、少しでも上に行くために! 向こうの誘いに乗る……!」

 

 向こうも仲間を倒されて、なりふり構っていられなくなったのだろうか、次の上へと登る非常階段を駆け上がり、今度は連絡通路でもある130階の実験室へと到着した。

 

「うッ!?」

 

 部屋に入ろうとした耳郎が立ち止まり、それに続いて麗日が彼女にぶつかりながら、中の様子を確認する。

 

「なんて数なん!?」

 

 部屋は柵に囲まれた十字路になっていて、俺達が向かうのは真正面の扉だが、その道を俺達の身長から腰ぐらいの、車輪付きのカラーコーンみたいな警備マシンがワラワラとごった返していた。

 

「でもそうなる事は、こちらも予想済みですわ!」

 

「ああ! 予定通り『プランA』でいこう!」

 

「よっしゃあ、俺もやってやるぜ! 頼む飯田!」

 

 しかし、轟達の情報を聞いて無策にココまで来た俺達じゃない。飯田が即興で作戦を考えてくれた。

 飯田のエンジンの勢いで実験室の中央に放り込まれた上鳴がマシンの群れに放電した…………が、完全防電対策でもされているのか、全く効かなかった。

 

「効いてないッ!!?」

 

 せっかく200万ボルトまで出したのに、貴重な範囲攻撃持ちを無駄にしてしまった。

 

「仕方ないッ! みんな『プランB』だッ!!!」

 

 飯田の号令で、今度は八百万にチャフグレネードを作って投げてもらい、通信を妨害してもらった隙に峰田がモギモギを投げつけて警備マシンの足を止める。そして、アホになってマシンから放たれたワイヤーに拘束されていた上鳴を、俺が切り開いて回収した。

 

「んッ!!?」

 

 と思ったら、マシンは4脚で器用にジャンプして峰田のモギモギを飛び越えながら俺を追いかけてきた。

 咄嗟に足で斬撃波を放とうとした直後、通路の向こうの緑谷が、ブレザーを脱ぎ捨てて飛び出した。

 

「フルガントレット……30パーセントッ! …………スマァァァァシュッッッ!!!!!」

 

「えッ!!?」

 

 今の緑谷じゃ絶対に自損する威力の攻撃に、警備マシンが全て吹き飛ばされていく。だが、いつの間にか緑谷の腕に着いていた、赤いガントレットみたいなサポートアイテムが反動を吸収しているみたいだった。

 上鳴を背負ったまま俺は、警備マシンがいなくなった通路を皆と走ってくる緑谷のガントレットを凝視する。

 

「デクくん何その腕!? スゴいやん!!」

 

「うん! メリッサさんバッチリです!」

 

「ソレっ、量産できないんですか!?」

 

「ゴメンね! まだ試作段階なの!」

 

 いったい、いつこんなプレゼントを貰ったのか物凄い気になったが、コレなら本当に緑谷が最終決戦兵器になれる。そう思いながら俺は皆と130階も突破した。

 

「下から警備マシンの駆動音が聞こえる! 上からは……ないね!!」

 

「よしっ、急ごう!」

 

 マシンの襲撃も受けたので、途中で耳郎の索敵も細かに行いながら、140階の連絡通路である吹き抜けのサーバールームを突き抜けようとした。

 途端、正面の自動ドアが開いて、警備マシンがワンサカと溢れ出てきた。

 

「峰田くんッ!!!」

 

「オラァァァァァァッッッ!!!!!」

 

 俺の掛け声で、ひと回り大きなモギモギをブン投げた峰田が、マシンが出ようとしていた入り口をバルーンで塞いだ。

 

「よしッ!!」

 

「まだ来るよッ!!!」

 

「上だ! 上にも出口があるっ!!」

 

「こっちよっ!」

 

 正面の出口は塞いでしまったので、吹き抜けになった上のフロアから、俺達はサーバールームを脱出する。残りのマシンも全員で難なく蹴散らし、メリッサさんの先導で150階の風力発電システム、タワーの電力を賄っている屋外フロアに出る事ができた。

 外に出た瞬間、俺達は強風に煽られた。

 

「風強っ!!?」

 

「どうしてココに?」

 

 吹き飛ばされないように、俺のすぐ足元へと近寄る峰田が叫び、緑谷も顔を押さえてメリッサさんを見る。風は強くなったり、弱くなったりとまばらだ。

 

「タワーの中を登れば、警備マシンが待ち構えているハズ。だからココから一気に上層部へ向かうの! あの非常口まで行ければ!」

 

 そう言って彼女が指差した遥か上方。タワーのエレベーターを通している中央のデカい柱に、外側には3棟の上層へと繋がる建造物が伸びており、その間を風力発電機である大型のプロペラが幾つも並んだ、更に上の先。非常口の小さな入り口のドアが見えた。

 

「あんな所まで?!」

 

 耳郎が驚いていたが、アソコまで登れれば200階は目と鼻の先になる。問題なのはハシゴの類が一切ないのと、さっきから吹いている風。

 

「お茶子さんの、触れた物を無重力にする個性なら……ソレができる!」

 

 150階の強風の吹くエリアで、体感した事もない無重力で飛ぶなんて怖いに決まっているだろうに、手を震わせる彼女の提案に委員長2人が非常口を見上げて言葉を漏らす。

 

「風が強い……順番に飛んだ方が安全だが……!」

 

「ヴィランに気付かれてだいぶ経ちますわ……切裂さん。轟さんからは何か?」

 

「……距離が離れすぎかな……通じない…………峰田くん、頭皮は?」

 

「まだまだ余裕だせっ!」

 

 散々モギる訓練をしていた峰田は、まだ余裕があった。そして俺に壁は意味を成さない。

 

「じゃあ、俺と峰田くんが先行して登るから……中央の柱に沿うようにして、メリッサさんを上げよう!」

 

「ううん、メリッサさんはデクくんに掴まって……!」

 

「わ、わかったわ!」

 

 麗日の指示で、俺達はすぐさま準備に取り掛かる。俺はアホになって背負っていた上鳴を耳朗に預け、刃で壁を蹴り上がり天井の近くまで登り詰め、峰田もモギモギで登ってからタワーの途中ぐらいで緑谷達を見下ろす。体育館γで特訓を始めた頃は「下は見ない下は見ない〜絶対見ない〜!」とか言いながら登っていたのに、彼の成長に感心してしまった。

 

「フルカウルを……3パーセントぐらいにして……ココ!」

 

 麗日がメリッサさんと、彼女をおんぶした緑谷を無重力にして、彼が地面を蹴り付けて飛び上がった。

 フルカウルも少しかかって、みるみる内に上昇する緑谷。速度もあって多少の風は逆らえていた。

 

 だが峰田のいる位置を2人が越えた直後、屋外フロアの別の建物の扉から警備マシンの大群が出てきた。

 

「あッ!?」

 

「ウソだろっ!」

 

「麗日さん!」

 

「お茶子さん!」

 

 タワーを登っていた俺達4人は思わず声を漏らしたが、下にいるクラスメイト達の判断はもう決まっていた。

 

「行ってデクくん!」

 

「ココは俺達がなんとかする!」

 

「ウチらが引きつけるからっ!」

 

「行ってください!」

 

「ウェイ……!」

 

「みんな……ありがとう!!!!」

 

 5人に背中まで押され、緑谷は下を見るのをやめて上の俺と、非常口を見上げた。峰田もモギモギで緑谷の後を追い始めた。

 2人をメインシステムルームまで送り届ければ、俺達の勝ちだ。自分達の役割を果たすべく、俺と峰田は動き出す。

 

 そこに更なる援軍まで到着した。俺が緑谷を見下ろしていた視界越しに、下のフロアで大爆発と氷山が巻き起こった。

 トランシーバーから轟の声が聞こえた。

 

『すまない切裂、遅れた!』

 

「いいや! ナイスタイミング轟くん!」

 

 轟と爆豪と切島が、飯田達と合流した。そのまま範囲攻撃2名が警備マシンを一掃し、撃ち漏らしを切島や飯田が片づけていく。

 

「かっちゃん! ありが───うわッ!!!?!」

 

「キャアッ!!!!!」

 

 緑谷がもう一度下を見てお礼を叫ぼうとした直後、いきなり止まっていた風力発電のプロペラが回り始め、緑谷とメリッサさんの2人がタワーの外に向かって吹き飛ばされた。

 

「緑谷ッ!!?」

 

「しまっッ!!?」

 

 咄嗟に峰田がビーズを伸ばしたが、少し遅かったか掠る事もできず、そのまま横に飛ばされた2人に、俺が飛びつくためにタイミングを合わせるよりも早く、轟が爆豪の爆破で向きを変えたプロペラに炎を放射した。

 せっかくの白スーツを左半分焼き払い、轟は炎の熱風で回転させたプロペラの風で、緑谷をタワーから飛び出す前に別のタワーへと押し飛ばす荒技を成功させた。

 

「アレじゃ壁にぶつかっちまう!?!」

 

「いや……!」

 

 下で叫んでいる峰田に対し、俺はタワーの天井にまで飛びつくと、下では緑谷のガントレット付きスマッシュによって、タワーの壁に大穴がブチ開けられ、そのまま2人は穴の中へと飛び込んだ。

 

「緑谷くんッ!!!」

 

 俺は天井を蹴り付けて、緑谷の飛び込んだ建物に飛び移りながら壁を滑り、まだ砂煙も立ち込める横穴に飛び込む。入るなり非常階段の踊り場に表示されていたのは198階の数字だった。

 

「緑谷くん大丈夫!? メリッサさんは!?」

 

「な、なんとか……!」

 

 メリッサさんに押しつぶされていた緑谷が、俺に返事をしながら立ち上がろうとしたが、ソレよりも早く階段を駆け降りてくる音に、俺の意識は移った。

 

「ッ!!!」

 

 顔に紫色の切れ込みみたいな刺青の入ったヴィランが、階段から飛び降りてきたのだ。

 

「胸糞悪いガキ共がッ!!!」

 

 叫ぶヴィランの腕から形成された刃と、俺の硬化した刃がぶつかり合って、火花が散った。

 

「クッソ!」

 

 ヴィランと鎬を削り合う俺は、後ろで立ち上がってメリッサさんの手を引いた緑谷に叫ぶ。

 

「行け緑谷ッ!! そのために俺は来たッ!!!」

 

「切裂くん……! メリッサさんっ!」

 

「切裂くん……気をつけてっ!!」

 

 俺の背後で、彼女を連れて緑谷が階段を駆け上がっていくのが聞こえた。

 その直後にヴィランの刃が、俺を押し飛ばそうと馬鹿力で押し付けてくる。

 

「ヒーローを気取ってんじゃねえぞッ!!!!」

 

「ヒーローなんだよッ!!!」

 

 ソレを押し返して再度、ヴィランと腕の刃を激突させる。火花が散ってヤツの刃が軽く削れた。

 

「チッ、オラァッ!!!」

 

 舌打ちをひとつ、両手も刃に変化させたヴィランが、左右から振り抜いてくるが、俺のもう片方の刃にした腕で、ソレを押さえ込む。

 

「へぇ、俺と同じ個性か?」

 

「クッ……! クソガキがァッ!!」

 

 ヤツの形成した刃に俺の刃が激突するが、いとも簡単に押し切れた。B組の鎌切より何倍も弱いわコイツ。

 

「なんだ、意外とヤワだな」

 

「グオぉッ!!?」

 

 ヴィランの刃に亀裂を走らせた俺は、両手の指をヤツの目の前で交差させた手の平を向け、放った。

 

「グハァァァァァァァッッッ!!!?!!?!」

 

 斬撃波こそ出さなかったが、1度に数発の斬撃を狙いつけて放てる俺の得意技に、非常階段ごとヴィランが吹き飛び、崩落した瓦礫に半身を埋めた。

 

「切裂っ、緑谷とメリッサさんは!?」

 

 そこにプロペラの枠の上を走って、ココまで登ってきたのだろう峰田が、開いた横穴から顔を出した。

 

「先に行った……! 下の様子は!?」

 

「みんなで警備マシン相手に大立ち回りだ! オイラ達で緑谷追うぞ!」

 

 A組のメイン火力である轟と爆豪がいるなら、下は大丈夫だろう。上への階段まで壊したが、壁を上がって緑谷に追いつこうとする峰田の提案に、俺は待ったをかけた。

 

「いや……このまま屋上に上がろう!」

 

「え!?」

 

 俺は、気絶しているヴィランの方を見る。強さから察するに、ただの捨て駒だろう。

 もうヴィランの目的は、達成されているのではないだろうか?

 

「コイツら……ココを根城にするつもりでもないでしょ!? わざわざ1階まで律儀に降りて帰るつもりもなさそうだし……目的を達成したらヘリか何かで飛ぶんじゃないか!?」

 

「おおっ、先回りだな!」

 

「ああっ! システムは緑谷くんとメリッサさんに任せよう!」

 

 まだ中にヴィランが残っている可能性はあるが、緑谷のあのガントレットがあるなら、大半以上の問題はなんとかなるだろう。

 俺と峰田は横穴から飛び出し、タワーの外側まで回り込みながら更に上へと登る。その途中、建物の中で銃声が、続いてスマッシュをした時の振動が響き渡った。

 

「なっ、なんだぁ!?」

 

「たぶん緑谷くんが中で戦ってる……!」

 

 緑谷がただのアサルトライフルでやられるなんて、想像もできない。まだ振動は起こっているし、俺が存在していなくても、彼ならやってくれるハズだ。

 タワーの最上階のフロアは下の階より大きく、ねずみ返しみたいな形状になっているが、峰田はともかく俺には関係ない。彼を俺にしがみつかせて、蛙吹みたいに四つん這いで這い回れば、簡単に登れた。

 

『 I ・アイランドの警備システムは、通常モードへと戻りました』

 

「「おっしゃあッ!!!」」

 

 1番聴きたかったアナウンスが建物内から響き渡り、俺は峰田とガッツポーズをとった。

 コレで警備マシンも止まっただろうし、オールマイトやプロヒーローを拘束していた装置も外れたハズだ。一気に形成逆転である。

 

「急ぐよ峰田くんっ! アイツらが逃げるっ!!!」

 

「おうよっ!!!」

 

 ねずみ返しも終わって峰田も俺から離れて壁をよじ登り始めた時、トランシーバーが轟の声が聞こえた。

 

『切裂っ! お前ら今どこにいる!?』

 

「峰田くんと一緒にタワーの外壁を登ってる! 屋上に上がって、逃げるヴィランを先回りするつもり! 緑谷くんとメリッサさんは、たぶんシステムルーム! さっきまで戦ってる音が聞こえたから、できれば合流してきてほしい!!」

 

『わかった! 俺達もタワーの中から向かう! 屋上で合流するぞ!』

 

 そこで轟との通信が終わるのと同時に、俺は屋上の縁に手がついて、峰田と同時によじ登った。

 

「あった! 見えたっ、ヘリコプターだッ!!」

 

 峰田の指差す先、だだっ広いヘリポートに案の定、真っ黒な輸送ヘリが1機停まってやがった。

 

「切裂っ!」

 

斬撃波(スパーウェーブ)ッ!!!」

 

 両腕から放たれた2発の斬撃波が、ヘリコプターを三等分に切断し、爆発した。

 夜中のヘリポートが爆炎に一気に明るくなり、見渡しが良くなった。見える範囲にヴィランの姿はない。先回りに成功したみたいだった。

 

「おっしゃあっ!!! コレでオールマイトも来りゃ、アイツらもオシマイだなっ!!」

 

「ああっ!」

 

 俺の返事で峰田が高笑いして、お互いに楽観的になり始めた、次の瞬間だった。

 

 炎に包まれたヘリポートの向こうから、馬鹿みたいに太い棘の様な柱が何本も伸びて、俺達目掛けて突っ込んできた。

 

「峰田ァッ!!!」

 

「危ねェッ!!!」

 

 俺と峰田はそれぞれ左右に飛んで、その棘を回避した。砂埃が巻き上がり、金属のひしゃげて壊れる音が、炎に混じって鳴り響く。

 

「な、なんだぁッ!!?」

 

 峰田が驚いて柱が飛んできた方向に視線を合わせると、爆炎の向こうに人影が見えた。

 

「やってくれたな……このガキ共……ッ!!!」

 

「ん!?」

 

 現れたのはパーティー会場にいたハズの、鉄仮面のヴィランだった。

 会場からココまで、いったいどうやって登って来たのかと思ったが、コイツらはエレベーター使えるのを、俺は忘れていた。

 その右手には血飛沫のかかった金属のアタッシュケースを持ち、左肩には肩が血塗れになった大人を1人抱えていた。

 

「ひ、人が……!」

 

「誰だ……人質か……?」

 

 俺と峰田の困惑に対し、ヴィランは逃げ足が無くなって狼狽えている部下に淡々と告げる。

 

「ボ、ボス……どうしますか!?」

 

「さっさと次のヘリを呼べ……! それにしても……このまま素直に俺達を見逃せば……こんな目には遭わなかったんだがなぁ……!!」

 

 ヤツは背負っていた男を乱暴に床へ投げ捨てた。うめき声を上げた男はヴィランの部下に拘束されて、後ろへと引き摺り下げられていく。

 その間にヤツはアタッシュケースを開いた中から、ヘッドセットみたいな機械を取り出した。

 

「なっ!?」

 

 反射的に、俺は斬撃波を飛ばしてヴィランからそのヘッドセットを取り上げようとしたが、ヤツは空いた片手を地面に付けると、そこから金属の壁を作り出して斬撃を防いだ。

 

「クッソッ!!!」

 

『後悔させてやる……!!!』

 

 次に見えたのは、鉄仮面を外してヘッドセットを頭に取り付け、急に声色が変わったヴィランから、青い稲妻みたいな光が瞬く光景だった。

 

「き、切裂コレ……ヤバくねえか……!?」

 

 ヴィランの足元に広がる、ヘリポートの床を形成する金属の板が、ひとりでに歪な音を立てて捲れ上がると、幾つも回転しながら俺達に向かって飛んできた。

 

「うわっ!!?」

 

「クッッ!!!」

 

 開けた不利な空間ながらも、峰田は跳峰田で器用に飛び回ってヘリポートの中を逃げる最中、俺は飛んできた鉄板を叩き落とそうと、片手を刃にして振り抜く。

 

 それを見たヴィランが目を丸めて、今度は意味深に笑い始めた。

 

『ん? ククククッ…………フンッ!!!』

 

 ヤツは金属を刃で弾く俺の方に手の平を向けて、軽く振った。

 

「うッ!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いきなり、麗日の無重力を受けたみたいに、俺の体が浮いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「切裂っ!!?」

 

 峰田が驚いて見上げていたが、俺の体は刃の腕を引かれるようにして、勝手にヴィランへと引き寄せられた。

 

「っ!!?」

 

 すぐに察した俺は、慌てて個性を全て切ってヘリポートの地面に転がった。

 

「ぐッ、うゥッ!! 峰田逃げろぉッ!!!」

 

 全身から血の気を引かせながらも、俺が叫ぶと同時にヴィランの足元から棘の柱が何本も伸びて、俺へと刺突してくる。

 

「ちっッくしょッ!!?!」

 

 俺は側転で飛び退いて棘を躱そうとしたが、続く2本目3本目と連続する棘の柱に、生身でどうする事もできずに再び硬化と刃を発動させた俺は、迫り来る柱を切断したが、その腕がいきなり縛られたみたいに動かなくなる。

 

「あっッ!? ガあぁッッっ!!!!!!」

 

 身動きの取れないまま目の前に迫る残りの柱に、恐怖で硬化も解けなかった俺へと柱が何本も叩き込まれ、地面に伏せられた。

 

「切裂ぃぃぃッッ!!!!」

 

「グッ…………ぐうぅ……ッッ!!!!」

 

『どうした? もう終わりかぁ?』

 

 峰田の悲鳴とヴィランの嘲笑う声が、俺の顔を押し潰そうとする柱越しに聞こえた。

 ミシミシと硬化している俺の体が、悲鳴を上げているのが伝わる。今、硬化を解いたらその瞬間スクラップにされるが、硬化している俺の体は言う事を聞かない。

 

「あ゛ァァあぁァアぁぁぁッッっ!!!!!!」

 

 ならばと、俺はウェイタースーツを突き破り、体から刃を何本も滅茶苦茶に突き出して柱を破壊した。

 

『ほう……器用な野郎だな……! だが……!』

 

 遮る物がなくなった俺は、背中の刃の伸縮で飛び上がり、個性を解除してヴィランから逃げようとしたが、今度はヘリポートの床下の金属のパイプやら、電線を束ねるケーブルやらが勝手に動き出し、俺に襲いかかった。

 

「クッソッ!!?! クッソッッ!!!! クッソぉッ!!!!!」

 

 瞬間的に刃と硬化を起こして、俺に巻き付こうとしてくるパイプとケーブルを切り払うも、自動で発動しているのか、俺の体はガタつきを起こして勝手に違う動きをし始めるどころか、人間の曲がらない方へと曲がり始めた。

 

「うッッ!!!?!」

 

 そうして、今度は反射的に個性を解除してしまった直後、ケーブルとパイプが俺に縛り付き、そのまま頭から地面へと叩きつけられた。

 

「ぐうゥぅぅゥゥッっ!!!!!」

 

 一瞬だったが、全身の硬化が遅れた。頭から流血しながら、俺は巻き付かれたまま何度も地面をバウンドさせられると、最後はガリガリと床を削るぐらいの勢いで引き摺られるようにして、ヴィランの前へと宙ぶらりんにされた。

 逆さまになった視界に、オールバックの茶髪で口元だけフェイスペイントしたヴィランの顔が、青く光る目で俺を値踏みするように見ていた。

 

「ハァ……ハァ……ッ!」

 

『フンッ、俺の部下より頑丈じゃないか……個性も上位互換と言ったトコロか……悪くはない。どうだ……自分の命が惜しかったら、お前も俺の下に付く気はないか?』

 

 俺は返事の代わりに、体から刃を突き出してヴィランを貫こうとしたが、その刃がいきなり押し止められるかのように、震えて動かなくなった。

 

「フゥーーッ!! グ……ッ、フうぅーーーッッ!!!」

 

 俺は全身に力を込めて、ヴィランの体へと刃を伸ばそうとしたが、ヤツはニヤニヤと余裕の笑みを浮かべると、俺の刃がいきなり別方向から力を込められて、次々と折れた。

 

「うぐゥゥッっ!!?!?!」

 

『交渉決裂か。まあいい……ヘリが来るまで、この装置の扱い方を調べる為にも、お前には暇つぶしになってもらおうか!』

 

 ヴィランがそう言って俺を縛っていたパイプとケーブルが、いきなり解放されたと思った直後、床から伸びた棘の柱に俺は打ち上げられた。

 

「グッっ、があぁ……ッ!!」

 

 周りの状況を見る限り、奴の個性は『金属操作』と言った所だろうか……とにかく金属を操れる個性なのだろう。

 

 最初は操る金属に触れてないと発動できなかったみたいだが、あの装置のせいで触れなくても操れるようになってしまったようだ。

 

 

 

 

 

 俺と切島の硬化で、明確に違う事がひとつある。

 

 

 

 

 

 彼の硬化は肌そのものを硬質化している。だから身体自体は人間そのものなのだ。

 

 それに対し、俺の硬化はB組の鉄哲と同じ様に、金属質に変化している。

 

 なんの金属なのかはわかっていない。なんせ切島と同じ様に俺の硬化自体も成長しているから、一概にこの金属と言えないのだ。

 

 でも昔、硬化中に近づけた磁石が体にそのままくっ付いたから、金属である事は間違いない。

 

 

 

 

 

 相性は最悪だった。

 

 

 

 

 

 硬化しなければ即死級の攻撃を浴びせられ、硬化中は金縛りにでもあったみたいに体を動かす事ができない。

 

 完全に俺はヴィランのされるがままだった。

 

「やめろ゛おぉぉぉぉぉっッッ!!!!!!!!!」

 

 幾度となく地面へと叩き伏せられ、空中へと撥ね上げられた俺の全身に亀裂が走り、硬化まで綻びが出始めた時。逃げろと言っていたハズの峰田が、その目に涙を溜めながら飛び込んでくるのが、見えた。

 

「み、峰……たっ……!」

 

「うおぉォォォォッっ!!!!!」

 

 彼はバスケットと跳峰田を使い分け、高速で跳躍しながら空中の俺を抱きしめて掠め取ると、うねる棘の柱にもモギモギを投げつけ、ヴィランにも捕えられない回避機動でヘリポート上に着地しようとしたが、自分よりも遥かに大きな俺を抱いたままではバランスが取れず、一緒に床を転がった。

 

「うわぁッッ!!!!」

 

「っッ!!!」

 

『チッ……大人しく見ていれば、手出しはしなかったんだがなぁ!!』

 

 そう言い放ったヴィランは、足元のケーブルとパイプに続いて、棘の柱まで伸ばしながら、床の鉄板や鋭く折れたパイプの一部を峰田と俺に向かって突撃させた。

 

「っッッ!!!!!」

 

「あっ!!?!」

 

 俺は咄嗟に峰田の襟元を掴んで後ろにブン投げ、硬化した体で身を挺して鉄の凶器を弾く。劣化したこの体で衝撃はもう逃がせず、口から血が出た。

 

「ガハっッ!!!!」

 

 更に刃にした腕で斬撃波を飛ばしたが、すぐさまヤツに壁で防がれた上、いきなり刃に圧力を受けて亀裂と鮮血が飛散した。

 

「があァァぁっッ!!!!!!」

 

『フッハッハッハッハハハッ! ココまで相性が悪いと、哀れだなッ!』

 

 そのまま体にケーブルを巻きつけられて、引き摺られるようにして再びヴィランの前へと転がされた俺は、ヤツに頭を踏んづけられた。

 

「ぐぅッ!!!」

 

『装置も馴染んできた……そろそろ終わりにしようか。役に立ってくれた礼だ……死に方は選ばせてやる。ジックリなぶり殺しにされるか、一瞬で終わらせるかだ……!』

 

 そう言ったヴィランの手には、馬鹿デカい拳銃が握られていた。普段だったら怖くもない豆鉄砲のハズなのに、硬化すら劣化し始めたこの状況下では、身震いすら覚えた。

 その銃が俺の体へと向けられた直後、ヘリポートから施設に入る出入り口の扉が、けたたましい音と共に吹き飛んだ。

 

「きッ、切裂くんっ!!!!!」

 

「そ、そんな……ッ!?」

 

 出入り口から出てきたのは、緑谷とメリッサさんだった。

 俺の惨状を見て驚愕する彼と彼女の後ろには、さっきまでヴィランに担がれていた男の人が見える。たぶん、鉄仮面の部下は巻き込まれたくなくてヘリポートから出入り口へと逃げたが、そこで緑谷と鉢合わせしてしまったのだろう。

 

「緑谷ぁ、助けてくれぇッ!!! 切裂がぁぁっ!!!!」

 

 泣き叫ぶ様に緑谷を呼ぶ峰田に、ヴィランが俺に向けていた銃口を彼に向けた。

 

「ッッッ!!!!?!」

 

 俺は硬化を解除して、頭を踏ん付けるヴィランの足を掴んで捻ろうとしたが、その銃口はすぐに俺へと戻ると同時に、発砲された銃弾が俺の腕を掠った。

 

「グアぁァァァっッ!!!!」

 

『フンッ、更に邪魔が増えたか…………オールマイトがココに来るのも、時間の問題か……!』

 

「切裂くん!? どうして硬化を……!?(頭に着けてるのは……例の個性を増幅させる機械か!?)」

 

「ダメなんだぁ! アイツには手も足も出ねえんだぁっ!!」

 

 泣きながら説明しようとする峰田に、ヴィランは無視して俺に銃口を向けたまま、顎を動かして緑谷を呼んだ。

 

『そこのお前。コイツの命が惜しければ、今すぐその後ろにいる博士を俺の元に連れてこい!』

 

「聞くな緑谷ァッ!!! あグッッ!!」

 

 叫びながら硬化していた俺の体に、再び銃弾が撃ち込まれた。弾が貫く事はなかったが、弾く事もできずに弾丸が体に突き刺さった。

 それでも、俺は頭から角みたいに刃を伸ばそうとして、逆にヴィランの靴を突こうとした。

 

『グッっ、往生際が悪いなァッ!!!』

 

「ッ! 峰田くんっ!!!!」

 

「行けえ緑谷ぁっ!!!!」

 

 ヴィランが更に俺へ銃弾を撃ち込んできたが、油断して俺に意識の向いた瞬間を利用し、緑谷と峰田は同時に動き出す。

 

『クッ!』

 

 振り向いた時にはもう動き出していた2人に、ヴィランは床から引き伸ばしたパイプで俺を拘束させると、周りから一斉に棘の柱を伸ばした。 

 

「うわッ!!?(触れてないのに金属が動いてる!? そっか切裂くん……! そうかっ!!!)」

 

「クッソぉぉぉぉっッ!!!」

 

 咄嗟に緑谷は柱を破壊しながら、ヴィランに向けて飛び込もうとする。峰田もモギモギを跳ねて空中へ退避し、柱を引きつけようとしたが、濁流の様に繰り広げられるヴィランの攻撃に、2人は逃げるだけで精一杯だった。

 俺は体から刃を伸ばしてパイプを切ろうとしたが、もう刃の切れ味すらヴィランの操る金属に敵わなくなっていた。

 直後、柱の動きを捉えきれず、峰田の小さな体が柱を掠って跳ね上げられた。

 

「ぐあッ!!」

 

 モギモギも手放してしまい、完全に空中で無防備な峰田へ、棘の柱が集中した。

 

「あ、ヤベ……」

 

「峰田くんッ!!!!!」

 

「峰田!!!!!!!!!!!」

 

 彼の気の抜けた声と、緑谷の声と、俺の悲鳴が重なって───

 

 

 

 

 

「TEXAS SMAAAAAAAAAAAAASH !!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 聞き間違えるハズなかった。

 

 峰田を押し潰そうとした鉄の柱を、いとも簡単に吹き飛ばし、彼を小脇に抱えて空中へ飛び上がるのは、No.1ヒーロー。

 

「もう大丈夫!!! なぜって!!? 私が来たァ!!!!!」

 

 最強のオールマイトが、俺達を助けに来てくれた。

 

「「オールマイトっ!!!」」

 

『オールマイト……!』

 

 峰田と緑谷の声が合わさり、ヴィランが表情を歪める。

 

「私の生徒を返してもらうぞ……ヴィランよッッッ!!!!!!!!」

 

 そう叫んだオールマイトが、目にも見えないほどの超スピードで棘の柱を蹴散らすと、拳で放った空気の弾丸をヴィランにブチ当てると同時に、次の瞬間には倒れていたハズの俺を肩に抱きかかえてヘリポートの出入り口へと運んでいた。

 

「おール、まイト……」

 

「待たせてすまない、切裂少年……っ! 怖かっただろうに……よくぞ耐えてくれたっ!!!」

 

 俺と峰田を出入り口の前、メリッサさんと男の人がいる場所に優しく下ろしたオールマイトの隣に、緑谷が着地する。

 

『クソッ……まあいい! デモンストレーションはココまでにしておこうか……!!!』

 

 そう言い放った瞬間、青白い光がヴィランを包み込むと、ヤツの周りに金属の塊が次々と引き寄せられ、まるで急速成長する植物みたいに大きくなっていく。

 

『この装置の価値を上げる為にも……オールマイト、貴様にはココで死んでもらおうッ!!!!!』

 

 きっと、今までのは本気でも何でもなかったのだろう。まるで自分自身が巨大なタワーの一部になろうとしているかの様な勢いで、見上げるほど大きくなった金属の大樹の中心で、ヴィランが金属の塊を操っていく。

 

 

 

「峰田くん……切裂くんをお願い……!!!!!」

 

 

 

 しかし、その程度で恐れる主人公じゃない。

 

「フルカウル…………15パーセント!!!」

 

「み、緑谷少年っ!!?」

 

 さっきよりも激しく緑色の雷光を纏った緑谷が、オールマイトの隣に並んだ。

 

「オールマイト……!(もう活動時間、ギリギリですよね!? 僕も手伝います!)」

 

「っ……HAHAHA !!! ありがとう、緑谷少年ッ!!!」

 

 こんな状況下でも笑っているオールマイトと、その眼に焔を燃やした緑谷が立ち並び、拳を構えてヴィランに飛び出す。

 

 先生もずっとマッスルフォームのままだったから、戦っていないとは言え活動限界もギリギリのハズだ。

 

 緑谷がどこまで頑張れるかが、勝負の鍵だった。

 

「峰田く……ゲホっ!」

 

「切裂……いいって……!」

 

 倒れたままの俺は、膝に頭を預けさせてくれる峰田に謝ろうと口を動かしたが、口内から血が逆流して咽せ返る。

 峰田に肩を掴まれて、緑谷とオールマイトがヴィランの繰り出す金属の塊を次々に破壊していく様子を見ていると、そこに更に援軍が駆けつける。

 

「峰田! すまねえ下で迷って……って、切裂ッ!!?」

 

 屋上の出入り口から上がってきた轟に爆豪、飯田、切島、八百万、麗日、上鳴、耳郎が合流した。

 

「バッカ……遅えよオマエらぁ!」

 

 もう大声を出すのもやっとな峰田の前で、倒れている俺の周りに皆が集まった。

 

「切裂君! なんて無茶を!!」

 

「こんな、ボロボロになって……!」

 

「峰田っ! アンタと一緒だったってのに、何があったの!?」

 

「こんなに弱ってる切裂くん……初めて見た……」

 

 轟は膝をついて俺とヴィランを交互に見ると、眉間に皺を寄せながらも冷静に答えた。

 

「アレを見るに……おそらくヤツの個性は、金属を操る能力だろう。切島と違って切裂の硬化は……金属そのものだ……!」

 

「ッ、マジかよ……!! 切裂、悔しかったろ……今仇取ってきてやっからなァ!!!」

 

「おい、クソブドウッ! 女共と協力して、ナマクラとアホ面守ってろッ!!」

 

「いいか轟君、爆豪君、切島君!! オールマイトと緑谷君の援護だっ、行くぞッ!!!」

 

 もう立ち上がる体力も残っていなかった俺は、彼らを見送る事しかできなかった。

 どうしようも出来ない悔しさに震えてると、峰田がポンと俺の肩を叩いた。その周りにクラスメイト達やメリッサさん達も集まる。

 

「大丈夫……! アイツら信じようぜ……!」

 

「ウェイ……!」

 

「ホント、無茶し過ぎなんだって……」

 

「オールマイトと緑谷さん達がいれば……きっと、必ず……!」

 

「デクくん……がんばれ……!」

 

「デクくん……!」

 

「俊典……!」

 

 俺達の見守る先で、ヴィランの猛攻を耐え凌ぐ2人の英雄と、その後を追う4人が、更に金属の柱を何本も伸ばして抵抗するヴィランと衝突する。

 

 そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『ウォルフラム』とか呼ばれたヴィランも、緑谷達とオールマイトが無事に倒した翌日。中止になるんじゃないかと思っていたエキスポが、無事に開催されていた。

 

「「「「「「「「「「いっただっきまーすっ!!!!!」」」」」」」」」」

 

「HAHAHAHAHAHA !!!!! せっかくA組のみんながいると聞いてね。 I・アイランドの思い出作りと、昨日頑張った君達に、ほんのお礼さっ! 思う存分楽しんでいってくれ!」

 

 人工島の綺麗な湖が広がった、エキスポの園内でなんとバーベキューができる、木造のテラススポットに集合していた俺達1年A組は、オールマイトが用意してくれたバーベキューの料理にがっついていた。

 マッスルフォームな先生のデカい高笑いが響き渡る中、昨日の大事件に巻き込まれていなかったクラスメイト達が、事件の中心にいた緑谷達に質問攻めをしていた。

 

「そんな大変な事になってたの!?」

 

「う、うん……僕達はたまたま、レセプションパーティーに呼ばれてたから、タワーの中に取り残されただけだったんだよね……」

 

 両手に食べかけの肉の串持った芦戸が緑谷へ勢い良く近寄り、思わず彼もたじろぎながら説明をしていた。

 

「でもっ、ソコからオールマイトを助けたんでしょ!?」

 

「そんな危険な状況下で、しっかりと判断して行動に移せたんだから……やっぱり緑谷は凄いよ」

 

「ヴィランもオールマイトと一緒に倒したんだろっ!!? スゲーぜ緑谷っ!!!」

 

「っ─────っっ──っ!(何度も頷いている)」

 

 肉を焼いているバーベキューグリルの前に並んで、肉の串を食べながら葉隠と尾白が緑谷の話に便乗し、肉を楽しそうに焼く口田もウンウンと頷いて、その隣ではテキトーに並んだスパイスを調合して、オリジナルソースを作ろうとしている瀬呂がテンション高く彼を称えていた。

 

「なにがスゲーぜ、だぁ! こちとらピンチの連続で、心臓ヒヤヒヤだったんだぞぉ!!」

 

「そうだそうだっ! 今回のヴィラン、マジでヤバいヤツだったんだぞっ!!!」

 

 そんな4人の話を遮るかのように、小さな手で肉の串を何本も持った峰田と、肉の串と一緒に用意されたパエリアを頬張る上鳴が叫んでいた。

 

 ちなみに、なんでバイト組の俺達3人もココにいるのかと言うと……店長のお姉さんが午前でバイトを切り上げさせてくれたからだ。

 今日が1番忙しくなるだろうに、人手はいいのかと俺は思ったが、元々エキスポの本番が始まる前のプレオープンの人員が足りなかったらしく、当日の今日は有り余るぐらいの人手が揃っていた。貸し出しだったウェイタースーツもボロボロにしてしまったが、俺達が事件に巻き込まれていたのを知るなり、気にしてないと言ってくれたし、むしろ島を守ってくれたお礼にとハグもされた。峰田も上鳴も、ご満悦だった。

 

「俺達はホテルに軟禁状態で、情報も断たれていた。余程の大事件だったらしいな」

 

「でも、おふたりとも無事で良かったですわ……」

 

「あの切裂がそこまで劣勢に追い詰められるとは、どんな奴だったんだ?」

 

「ん、それが……」

 

 複製腕で何本もの肉の串を持って、口の付いた腕で器用に肉を食べる障子の隣で、食べ終えた何本もの肉の串を並べるだけではなく、パエリアの皿も何枚も重ねていた八百万を見ていた常闇が、同じくパエリアを食べている轟に話しかけていた。

 

 あの戦闘後、急いでプロヒーロー達による後処理が始まった。

 個性で半壊したタワーの修繕と、ウォルフラムとその一味の逮捕。ヘリを呼ぼうとしていたヴィランも、緑谷が問題なく倒していたそうだ。

 怪我人として病院に運ばれたのは、俺と緑谷の2人だけ。オールマイトも活動限界超えていただろうに、気合いで耐えていた。

 緑谷はスマッシュこそメリッサさんの作ったサポートアイテムのおかげで無傷だったが、フルカウルの限界を余裕で踏み超えてたし、俺も硬化に耐え切れない程の重症だったのだが、リカバリーガールの代わりに医療系の個性のプロヒーローがいてくれたお陰で、彼も俺も入院だけは回避していた。

 

「上鳴……アンタも限界超え過ぎだよ、バカ……」

 

「へへっ……あっ、みんなのドレス姿! 写真に撮っとくの忘れてたぁ!!!」

 

「ソレはいいってッ!!」

 

 昨日の充電で、すっかり元に戻った上鳴の隣に、パエリアの皿を持った耳郎が並ぶ。そんな彼女を見て少し照れ臭そうにした彼が、思い出したように声を上げていた。

 今回、索敵ができる耳郎がいたのは大きい。おかげて警備マシンとの交戦は最低限で済んだ。

 上鳴はもう少し冷静になれば、もっと良い運用ができたハズなのに、もったいない事をした。

 

「ケロっ、でもみんな無事でよかったわ。お茶子ちゃんも…………お茶子ちゃん?」

 

「メリッサさん、大丈夫かな……」

 

「仕方ねえさ……親父さんも事情があったとは言え、ヴィランを手引きして……こんな事件起こしちまったんだからな……」

 

 いつもの振る舞いをしながら大口でパエリアを頬張る蛙吹の隣で、麗日は肉の串を食べる事なく持ったまま俯いていて、それを切島が何本も持った肉の串に、大口を開けて食らいつきながら彼女を慰める。

 

 怪我の処置をしている最中に緑谷から事件の全貌を聞いたが……博士は国に凍結させられていた自分の研究成果……つまり今回は、あのヘッドセットの機械を取り戻すため、ヴィランに盗み出させるという間接的な協力をしてしまったそうだ。

 しかし、あのウォルフラムも1枚岩ではなく、最初から狙いはあの機械だったのだろう。逆に博士は利用されてしまった結果、あの大騒動へと発展してしまった。

 そんな事知る由もなかったメリッサさんは、今はこの場所にはいない。肩を拳銃で撃ち抜かれて島の病院へと運ばれた、自分の父親である博士に見舞いに行っている。

 

 自分の研究を取り戻すためとは言え、ヴィランに手を貸すという博士のやった事は、許されるモノではないのだろう。

 オールマイトの親友でもある彼に、せめて何が情状酌量があるのを祈るしかなかった。

 

 

 

 

 

 これは俺の予想だが、あの装置はきっと……オールマイトを平和の象徴として維持してもらうための物だったに違いない。

 

 

 

 

 

 オールマイトと長年一緒にいたからこそ、彼のためを思っての事だったのだろう。

 

 

 

 

 

 でも、大丈夫。オールマイトと並ぶ緑谷の勇姿を見て、あの人にもきっとわかったハズだ。

 

 

 

 

 

 次の世代を担う『平和の象徴』の存在が……!

 

 

 

 

 

「んで、切裂は……なんであんな落ち込んでんだ……?」

 

「いや、ソレがよぉ……」

 

 そこまで考えている途中、口田と一緒になってバーベキューグリルの前で新しい肉を焼く砂藤が、峰田に呼びかける。

 右手に包帯をぐるぐる巻きにされ、額にもハチマキみたいに包帯を巻かれた俺は、みんなから少し離れた所でベンチにしゃがみ込み、まだ1本目で食いかけの肉の串を持ったまま、目の前に広がる人工島の湖を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今回、俺なんにも役に立ってなかった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 成果らしい成果と言えば、ヴィラン1人倒したのと、逃走用のヘリ壊して逃げ道を封じたぐらいだ。そのヴィランも大して強くなかったし、アレならメリッサさんと一緒にいた緑谷でも、難なく処理できただろう。対峙した時は、せっかくテンションの上がるミラーマッチだと思ったのに……

 

 何にも知らないから慎重にならざるを得なかったとはいえ、もう少し良い方法もあったハズだ。ヴィランがエレベーター使えるの忘れていたのも反省点だ。あのクソ硬い隔壁をブッた切れたら、また何か変わったかもしれないのに。

 そして、個性増幅装置を使われてからは手も足も出なくなった、ウォルフラムの個性。あそこまで相性が最悪に噛み合う相手の存在も、想像していなかった。

 

 オールマイトの到着が、あと少し遅れていたら……

 

 

 

 

 

 俺の判断で、峰田まで危険に遭わせた。

 

 

 

 

 

「ケッ! 相性が悪いぐらいで、情けねえ……ッ! 自分の個性が通用しなきゃ、なんにもできねえヒーローってかァ?」

 

「ちょっ、ちょっと爆豪さんっ!!!」

 

「爆豪君?!! 傷心している人に向かって君はなんて事をっ!!!」

 

 切島に無理矢理持たされた肉の串に齧りついていた爆豪が、俺の背中を見ながらそう言い放って、流石に怒った飯田と八百万に咎められている。

 だが、彼は委員長2人の言う事も無視して、俺に話を続けた。

 

「おいナマクラ……! テメぇ、そんぐらいの障害で、ヘシ折れるタマじゃねえだろ……ッ!!」

 

 

 

 

 

 爆豪の言う通りだ。

 

 

 

 

 

 今回の事件は、自分を省みる良い機会になったと思う。

 

 

 

 雄英に入ってから、個性が比較的自由に使えるようになって嬉しくなっていた反面、基礎体力を疎かにしていたかもしれない。

 

 

 

 中学時代のトレーニングジムでの、筋トレの日々を思い出せ。

 

 

 

 個性とは可能性だが……俺の個性を最大限に活かすには、体力と筋力も必要だ。

 

 

 

 あの3年生だって、個性がなくてもヴィランに耐え凌いでみせたんだ。ウォルフラムなんかよりも強力な、化け物クラスのヴィラン相手に。

 

 

 

 次に俺が目指すのはソコだ。

 

 

 

 

 

 こちとら、個性がなくてもヒーローになれるって、子供に夢与えた人間だ。

 

 

 

 

 

 トガちゃんだって、信じて待ってるんだ。

 

 

 

 やってやろうじゃないか。

 

 

 

「爆豪くん……ありがと……!」

 

 俺は爆豪に顔を向けず、肉の串だけを振って、そう答えた。

 

「チッ……! わかってんならその死んだ顔晒してねえで…………早く立てカス……ッ!!」

 

「かっちゃん……!」

 

 俺を慰めて去っていく爆豪に、緑谷が近寄ろうとしたが、罵倒を浴びせられているのが聞こえた。

 

「ヤ〜イバっ!」

 

 爆豪が離れていって、今度は俺と同じベンチに座ってきた芦戸が、食いかけの肉の串を俺に差し出してきた。

 

「全然お肉進んでないじゃない! せっかくオールマイトが用意してくれた良いお肉なんだからっ、ホラ♪」

 

「芦戸ちゃん……」

 

 俺が顔を向けると、彼女は首を傾げて俺の顔を覗き込んできた。黒い瞳を瞬かせながら、彼女が優しく笑う。

 

「ウジウジするのはヤイバ似合わないよ〜! ……強くなるんでしょ? なら、まずは食べないと!」

 

「ぅん…………うん!」

 

 感情が溢れ出してしまいそうなのを誤魔化す様に俺は笑って、彼女に差し出された肉の串にかぶりついた。

 

 

 

 こうして、大波乱を巻き起こした……後に『 I・エキスポ事件』と呼ばれる騒動は、オールマイトと未来を担うヒーローの卵達の活躍で、無事に幕を閉じた。

 それ以上の事件も起こる事なく、エキスポも終わった俺達はクラスメイト達と一緒の飛行機で、無事に日本へと帰国した。

 

 

 

 そして、家に帰るなり思い知る衝撃の事実。

 

 

 

 次も大変だってのに、間で彼等がこんな事件に巻き込まれていたなんて、読んでいる内は知る由もなかった。

 

 

 

 林間合宿まで、すぐソコだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次回『林間合宿1日目』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ウチの爆豪のアダ名集

 

 

 芦戸  『黒目』

 蛙吹  『カエル女』

 飯田  『クソメガネ』

 麗日  『丸顔』

 尾白  『尻尾』

 上鳴  『アホ面』

 切裂  『ナマクラ』

 切島  『クソ髪』

 口田  『無口』

 砂藤  『丸鼻』

 障子  『タコスケ』

 耳朗  『耳』

 瀬呂  『しょうゆ顔』

 常闇  『鳥頭』

 轟   『半分野郎』

 葉隠  『透明女』

 緑谷  『クソデク』

 峰田  『クソブドウ』

 八百万 『ポニテ女』

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