平和の象徴であるNo.1ヒーロー『オールマイト』の母校『雄英高校』は偏差値80ぐらいの超難関高。推薦含めて毎年10000を超える受験生が、たったの40しかない『ヒーロー科』の枠を取り合う。
勉強は元々得意ではないが、トガちゃんのためなら苦痛ではない。ジムに通うがてら勉強もして、尚且つ個性を伸ばすための秘密の訓練もする、中学生にしてはあまりにも忙しすぎる日々を過ごす事となった。
瞬く間に2年が過ぎ、中学最後の3年生となった時、俺は再び運命の邂逅を果たす。
というか、始業式が始まったすぐ後。新しい教室の席で時間を潰そうと勉強していたら、運命が向こうからやってきた。
「なあっ! オイラ『峰田』っ! お前も『雄英』志望なんだって!?」
巨峰やブルーベリーを思わせる紫色の髪の毛がチャームポイントな男子 『ヒロアカ』のメインキャラクターである『峰田 実』が俺の中学3年生のクラスメイトだったのだ。
彼は言うなれば、ごく普通の男子高校生……じゃなくて、まだ中学生だ。身長が1メートルちょいしかない事と、頭から髪の毛みたいにソフトボールサイズのゴムボールが生えてる事を除いてだが。
前にも言ったがこの世界、個性以外にも明らかに人間からかけ離れている身体をした 『異形型』と呼ばれている人種がいる。彼はまだ人に近いが、それこそ差別対象にされてしまうほど、人から離れた体型の者までいるのだ。ホントに、この世界はどうかしてる。
俺はトガちゃんと離れ離れになってすぐ、周りにも教師にも「雄英を志望する」と豪語していた。雄英は相当の有名校だから、どこからともなく情報が流れてきたのだろう。
彼と知り合ってから仲良くなるのは簡単だった。全国の男子青少年の欲望を忠実にして生きている男というのが、この峰田 実だ。俺はもうマンガのラブコメ程度じゃ満足できない民だ。話は合う。
そんな彼とエロ本交換などして友好を高めて以降、彼との話はだいたいR-18か雄英の話となる。
「峰田くん、雄英の模擬テスト受けた?」
「もろちんっ!」
俺の前でグッドサインをする峰田。ちなみに彼は背が小さすぎるので、話す時はだいたい机の上に乗せて座らせている。
「判定は?」
「オイラはBだったぜ!」
「良いね。俺はCだったから、もう少し頑張らないと」
「うぉっ、そりゃちょっとヤバいな……! 何がダメだったんだ?」
基本的にお茶目で、普段はエロスの事しか考えていなさそうな見た目をしているのに、頭は峰田の方が上だ。
それでいて、結構面倒見も良い。オープンスケベさえなければ女の子にもチヤホヤされそうなのだが、そのスケベが全てを災いさせてクラス女子から彼の評価は低い。
「そういやぁ、切裂はなんでヒーロー目指してんだ?」
彼の素朴な疑問に、俺は悪気もなくこう答えた。
「ヒーローやらなかったら、ヴィランになっちまいそうだから」
「なんだってっ!?」
驚いて聞き直してくる峰田に、俺は片手を刃にしてワキワキと開閉を繰り返してみせた。
「だってそうだろ? こんな個性……ヒーローよりヴィランの方が生きやすそうじゃん?」
「イヤイヤイヤイヤ、確かに初めてお前見た時は俺も思ったけどよ……ヴィランは言い過ぎだろ?」
顰めっ面で話す峰田に、俺は一切の悪気もなく話を続ける。
「きっかけは人それぞれさ。俺はまだ、ヒーローになりたいと思ってる。でも心持ちによっては、それすらも変わってしまうと思ってる」
俺は峰田の前で手を掲げて、ゆっくりと左右に揺らす。
「誰もがヒーローになれる可能性を持ち……
……誰もがヴィランになる可能性を持つ」
「コレ、俺の持論ね」
視線を前に戻すと、感心した様な呆れたような峰田と目線が合った。
「お前……意外と中2病心とかあるんだな……」
「個性なんて夢みたいな力があるからね。峰田くんは? どうしてヒーロー目指すの?」
俺からの質問に、彼は臆面もなく答える。
「モテたい! 女体に触りたいっ!!」
「その答えを待っていたよ峰田くん!」
息を合わせて拳をぶつけ合わせる俺と峰田。最近俺も峰田と同類だと思われて女子からの評価がやや右肩下がりなのだが、俺にはどうでもよかった。
個性を使って仕事にしたい以上、このまま普通の高校で、ヒーローの資格を取るのもアリだとは考えてはいた。『ヒロアカ』は峰田含む『彼ら』の物語であり、俺が居場所を奪うべきではないのだと。
しかし、この世界に俺が転生され、トガちゃんや峰田に逢えた事に、俺は大いなる意味があると信じたい。このまま『誰か』の席を奪ってでも、俺は雄英に憧れた。
なにより、トガちゃんとの約束を果たすためにも、雄英という最高峰の舞台は必要だった。
・・・♡・・・♡・・・
時間は瞬く間に過ぎ去って試験当日。夢にまで見た雄英高校を訪れた俺と峰田は、おびただしい受験生の波に流されながら受験会場へと向かい、筆記試験を行う。
どの教科も一筋縄ではいかないレベルの難問ばかりだったが、回答用紙はまともな答えで埋まったし、見直しも1回以上はできた。これで落ちたらどうしようもなかったといったところだ。
本題なのはココからだろう。今度はバスに乗せられて移動した俺達受験者は、雄英高校の敷地内にある市街地戦闘訓練施設に移送された。
今から始まるのは模擬市街地演習という名の実技試験。ココではヒーローを目指す者として、自分達の『個性』と『体力』そして『優しさ』を試される。
俺はバスに揺られながら、試験会場で筆記試験を仕切っていたプロヒーロー『プレゼントマイク』先生の説明を思い返した。
実技試験は市街地を模したA〜Gの7つの会場で行われ、受験生は受験票に記載されたアルファベットと同じ会場で試験を受ける。
市街地には4種類の仮想
更に、一定時間経過後にはポイントにならないクセに妨害だけはしてくるお邪魔虫として超特大ロボットの仮想敵まで用意されている。受験生は試験時間10分の間に、この中でどれだけ仮想敵を行動不能にできるかを競い合うのだ。
しばらくしてバスが止まって、他の受験者達と一緒にゾロゾロと降りた俺は、市街地訓練所のデカい入り口へと並んだ。
峰田とは、はぐれた。バス乗った時点で別々だったし、たぶん同じ学校のヤツとは極力ツルめない状態にしてるんだろう。峰田が一緒にいたら、俺も協力するしな。
だが、ココに来て俺はようやく、新たな出会いを得た。
視線の先には180cm越えの身長に口元はマスクで隠し、背中から生えた3対の腕、おおよそ学生どころか人間にも見えない男子『障子 目蔵』
その近くには、これまた身長はさっきの男子よりは負けるが、それでも高い。四角いメガネを掛けた、いかにも勉学優秀な優等生といった立ち振る舞いの男子『飯田 天哉』
左側には、まん丸とした瞳と顔。美人とはまた違う可愛らしさのある女子『麗日 お茶子』 これからの『ヒロアカ』の物語を彩るキャラクター達が、次々と姿を見せて俺は無表情ながら心を躍らせた。
そうそう、忘れちゃならないのがあとひとり。
その麗日の後ろにいたよ。緑色の癖っ毛モジャモジャヘアーに、目元にそばかすの付いた男子。水色のジャージ姿の体型は身長のせいで華奢に見えるが、よく見れば首筋から肩に向かっての筋肉で、明らかによく鍛えている痕跡が窺える。
『緑谷 出久』
この世界の主人公であり、『僕のヒーローアカデミア』は、彼がヒーローになるまでの物語だ。
そんな彼はバスを降りてから緊張が止まらないのか、体をブルブル震わせてキョロキョロと辺りを不安げに見回している。
それが見ていられなくて我慢できなかった俺は、人混みをスルリと掻き分け、彼の目の前へと現れる。
「君、大丈夫?」
「えっ!? はっ! ははっ、はいッ!」
突然声をかけられた事に、彼は俺の視線を合わせながら、物凄い上擦ったカミカミの声で返事をする。
そいえば、彼は『オールマイト』に今日個性を渡されて、まだ試し撃ちをしていない状態だ。しかも試験会場で独り言漏らして飯田に怒られてたし、メンタルガタガタの状態でここまで来ているのだ。
「そんな緊張してちゃ、出せる実力も出せないよ。ホラ、深呼吸して、リラ〜ックス……!」
「す、すーはーっ、すーはーっ!」
両手を広げて深呼吸の動作を見せる俺の言われた通りに、緑谷は目の前で全力の深呼吸をし始める。
「泣いても笑っても、ここが人生の大勝負だよ。持てる力を全力で出すんだ」
「は、はいっ! ありがとうございますッ!!」
少しは緊張がほぐれたのか、緑谷は先程の緊張に緊張を重ねた様子から一転、キリッと表情を固める。そんな彼に俺は笑いかけた。
「そんなかしこまらないで。俺達合格したら、同級生になるんだから」
「っ!」
彼は少し驚いて、良い笑顔を見せてくれた。
「雄英で会おう」
「はい!」
最後にひと言添えて、俺は彼の返事を背に演習場の入り口へと並び直す。
これで俺が落ちたら大爆笑モノだな。筆記でスレスレかもしれないのに。いったい何をやっているのか。
『準備はいいかリスナー共!!? 第2次試験ッッッ、はいスターーート!!』
プレゼントマイクの号令によって、実技試験はスタートの狼煙を上げた。
「え……ぇ……?」
「な、なに……?」
しかし、彼のノリについていけてなかったほとんどの者は、それが始まりの合図だと理解できず、立ち止まっていた。
「失礼っ」
動きだしていた俺は、呆気に取られて立ち往生する人混みをスルリと抜け出し、足を交互に刃へ変化させながら疾走する。踏み込む足幅が広がり、射出の加速もされて、徐々に人の足を超えた速度へと達する。
「お先にッ!」
すぐ後ろから、エンジンのマフラーから鳴ってるみたいな音を立てて、砂塵を巻き上げながら飯田が俺を追い抜いていった。彼の個性『エンジン』は、ふくらはぎに身体の一部として付いているエンジンで、人間離れしたスピードを出せるのだ。
とは言え、スピードで競争しているワケではないので、俺は彼が行った方向とは別の方へと走った。
加速するにつれ、1歩で数メートルの距離を踏み越え、俺は目標であるヴィランを探す。最初の相手はすぐに見つかった。
『目標発見、ブッッッコローーースッッ!!!』
緑色のミリタリーチックな装甲に身を包んだ仮想敵が真っ赤なモノアイを不気味に光らせ、えらく流暢に喋りながら俺に迫る。ガシャガシャと奇怪な音を立ててドデカいアームを振りかざすその身長は、俺を優に超えるサイズ。
しかし、奴の振り上げられたアームが暴力を生み出すよりも早く、俺は腕を刃にしてすり抜けざまに仮想敵の脚と腕と頭を切り裂いた。金属となった腕が、仮想敵の装甲を割るように切断していく。ロボット相手なら切れ味に容赦はいらなかった。
一瞬の残心を置いて俺は再び駆け出し、次の目標を探す。後ろで仮想敵の爆発する音が響き渡っても、視線もくれてやらない。
「うわーーーッ!?」
「キャァァァァァァっ!」
「助けてくれーーーッ!!」
試験開始から数分もしない内に、街の中からは至る所で悲鳴が聞こえた。個性社会の抑制で、ココにいるほとんどの子は個性を思い切り使った事のない者達ばかりだ。そんな子がいきなり自分よりも遥かに大きな仮想敵を相手取るのが無茶なのだ。腰抜かしているヤツまでいる。
そんなヤツらを襲おうとしている仮想敵も、俺は頭やら腕やら脚を撥ね飛ばして無力化させる。
「たっ、助かったぁ!」
「ありがとうっ!」
受験者の俺の声に手だけを振り返して、俺は仮想敵が集まっていた場所に、単身飛び込む。
刃の伸縮をバネ代わりにして大きく跳躍し、そのまま仮想敵の頭へと着地すると同時に脳天から片足の刃で串刺しにし、再度片足で跳躍して別の仮想敵へと飛び掛かる。
そうして次々と仮想敵を無効化させながら腕時計を見ていると、試験開始から5分が経過していた。それと同時に訓練所の中央辺りから、大爆発が起こった。
「おっ?」
大きく巻き上がって広がる煙の中からヌッと姿を現したのは、訓練場のビルよりも大きな超巨大仮想敵が、8個の赤いモノアイを光らせながら俺達受験者を見下して、ゆっくりと歩みを始めようとしていた。
「うッ、うわーーーーーッ!?」
「や、やってられっか!」
「ざっけんな殺す気かよ!?」
「デカ過ぎんだろ……」
「ビルの崩落に巻き込まれるぞ!」
「下がれ下がれッ!」
ビルを悠々と超えるサイズの巨大なロボットを見上げてテンションが上がる一方、俺も身の危険を感じて思わずたじろいだ。
「ヤバっ」
ほかの受験者が道路へと逃げていく中、俺は脚を刃にしてビルの壁を突き刺しながら蹴り付け、そのまま壁を蹴り上がっていく。子供の頃は何度も失敗して、傷だらけになった芸当だが、今は慣れたものだ。昔、学校の裏山にある土砂崩れ防止用のブロック塀を穴だらけにして、全校集会になったのも懐かしい。
屋上へと着地した俺は、飛んでいる仮想敵を叩き落としながら、今度は両足を同時に刃へと変化させた伸縮の勢いで、ビルの端から端へと一気に大きく跳躍する。屋上を吹き抜ける風を切り裂き、ビルの屋上から屋上へと飛び移り、巨大敵の視界から逃れながら次の目標を探して回った。
残り1分に迫った時だろうか、屋上を這い回っていた仮想敵を仕留めた直後、衝撃波と同時に鉄のひしゃげる音がビル群に響き渡った。
思わず振り返ってみれば、顔面を大きく凹ませて崩れ落ちていく巨大敵と、その手前に拳を突き出したまま自由落下を始める小さな人影。
緑谷が巨大敵を撃ち倒したのだ。
すでに仮想敵も粗方片付いた。人も何人か救えた。残り時間は1分を切った。
俺は仮想敵探しに踵を返し、さっきの巨大敵が倒れた近くへと向かった。ビルの屋上の縁に手をかけ、そのまま壁を斬りながら降下して現場へと向かう。そうしている内に制限時間の終了報告がフィールドのそこら中に設置された拡声器から流れた。
「おっとコレは……」
道路のど真ん中に、緑谷はうつ伏せで倒れていた。そこに野次馬になった受験者が集まってくる。
「アイツ、何だったんだ?」
「いきなり、ギミックに飛び出したりして……」
「増強型の個性だろうけど、規格外だ……!」
「けど、あれだけの個性持っておいて、どういう生き方すりゃ、あんなビクビクできるんだ?」
「ほかを出し抜くための演技じゃね?」
目を背けたくなる酷いモノだ。両脚と右腕は骨がなくなってしまったかのようにグニャグニャに変形している。特に右腕は真紫に変色し、見ているだけでコッチの身体が痛くなってくる。
俺は野次馬を跳ね除けて、倒れて気絶している彼の前にしゃがんだ。
「ねえ、誰か担架持ってきてよ。ないならこのジャージで……」
「その必要はないさ」
その野次馬から更に、俺の腰よりも峰田よりも身長の小さい、初老の女性が現れた。
白衣に注射器型の杖と髪留めを付けた、いかにも医療系の個性持ちの人に見えたその女性は、俺の隣まで来ると唇をニュ〜っと伸ばして、緑谷にキスをする。すると、たちまち彼の骨折と内出血している箇所が緑色に光り輝き、彼の怪我は消えた。まるで魔法でも見ているみたいに。
後ろで誰かが説明していたが、彼女は『リカバリーガール』 雄英の看護教論だ。
「さ、アンタ何もないなら、この子を運んどくれ」
「はい」
怪我は治ったものの、意識までは戻っていない緑谷を入り口に運び、試験途中離脱用の天幕に預けてから、峰田と合流するべく帰りのバスへと乗り込んだ。
天幕のベッドで、白目剥いて気絶している緑谷を見送って、俺はなんだかおかしくて笑ってしまった。
こうして俺達の入学試験は終わり、後は合格を待つだけとなった。
バスを降りて雄英の入り口へと戻った俺は、峰田と携帯で合流して帰路を辿った。
「切裂どうだった、テストは!!?」
「どうかな……ちょっとわからないや」
「へっへーんっ! オイラは楽勝だったぜ!!」
「その自信、羨ましいよ。実技はどうだった?」
「オイラのモギモギボールが火を噴いたぜッ! それより、可愛い子いたか!?」
「いたけど、峰田くんはダメ」
「ハァ!? どーゆー事だよっ!?」
「ヒミツ♪」
「お前アレだろッ、タイプだったから言いたくねーんだろっ!? オイラの方の会場にも可愛い子いたんだぜっ! なんかカエルみたいに……
そんなくだらないやりとりをしながら俺は峰田と別れ、1人家へと帰った。
「………………」
家に帰って、部屋に戻って、残ったのは不安と後悔だった。
わかっていたとは言え、彼らを蹴落として雄英を合格する事に罪悪感がないワケではない。トガちゃんとの約束のため、突っ走った結果がコレなのだ。
実技は絶対問題ないとして、そもそも筆記が危ないのだ。果たして本当に受かっているのかどうか、わかっていないこの状況が苦痛で仕方ない。
そんな筋トレすら手のつかない日が、1週間ぐらい続いた。
もし不合格だったとしても、普通科も希望してるからソレで雄英に滑り込んでやろう。そんな事すら考え始めていた矢先、雄英からの通知が届いた。
手に取った瞬間、中身が紙ではなく、コースターサイズの機械だと気付き、俺はようやく不安から解放された。
・・・♡・・・♡・・・
3D投影された、喋る白鼠の姿をした『根津校長』からの直々の合格通知を聴きながら、俺は峰田に連絡を取った。向こうも無事に合格したらしい。電話越しにギャースカ騒いで合格を喜び合い、散々溜めに溜め込んだ今日のオカズは何にするなど、品のかけらもない話へと変わっていく。
両親も俺の合格を喜んだ。前の人生じゃこんなクソ難関な学校に挑む事もなかったから、なんだか新鮮な気分だった。
同時に、3年間通っていた筋トレジムとの契約も切りに行った。店員さんと常連のお客さんも俺の合格を喜んでいたが、少し寂しそうにしていた。これからは来るのも難しくなるかもしれないが、休みの日には顔を見せたいと思った。
学校に登校すると俺は峰田共々、校長と担任に直々に呼び出されて雄英の合格を祝ってくれた。それだけ『雄英』というヒーローを志す者なら誰もが憧れる学校のネームバリューが大きいのだろう。担任はたぶん普段の行いを見ている俺らにそこまで期待はしていなかっただろうが、それでもソコは大人らしく祝いの言葉をかけてくれた。
で、教室に戻ると今度はクラスメイトから賞賛される。元々、強個性枠の俺は「やっぱり」とか「絶対」とか合格が決まっていたかのような口ぶりだった。峰田は普段の言動のせいで女子からの声援は少なかった。
ひとしきり騒いでから、ようやくまともに話のできる状態に落ち着き、俺は机に腰を下ろす峰田と対面する。
「いやー、それにしてもお互いに合格できてよかったな!」
「峰田くんが勉強教えてくれたおかげだよ。ヒーローも良いけど、先生も向いてるんじゃないかな?」
「えぇッ!? イヤだよっ、ガキの世話なんか! オイラはプロヒーローになりたいの!」
ブンブンと首を横に振ってから、今度は座ったまま胸を張る峰田に、俺は笑いかける。
「……それもそっか。峰田くん、どんなヒーローになりたいんだっけ?」
「そりゃあもうっ、女の子助ける為の専門のヒーロー事務所っしょおッ!!! 美人なお姉さんを事務員にして……サイドキックは全員女の子雇って……っ!」
机の上で欲望全開の夢をベラベラ喋る峰田を、俺は生暖かく見守る。周りの人間も「あんなのヒーローにして大丈夫か?」とか思ってそうな勢いだ。女子なんかもう、俺の机の周りから離れていた。
「んでっ、切裂とヴィラン退治に回るんだ……!」
「え、俺も?」
てっきり男は自分だけとか言いそうな勢いだったのに、なぜかソコに不純物である俺も追加されて、俺は首をかしげた。
「もっちろん! オイラ達、親友だろ? お前がいないと猥談できないじゃんか!」
そこまで叶ったら猥談なんかいらないだろうに。そうツッコミを入れたかったのに、嬉しさの方が勝ってしまった。
「ありがとう峰田くん!」
「だぁぁぁぁっッ!!? 抱きつくんじゃねえ気持ちワリィッッ!!!」
最初は『雄英』だけで繋がった関係だったが、気がつけば勉強や運動のみならず、個性や思想まで共有する間柄になっていた。中学3年生ではなく、1年生の内に巡り会いたいと思えてしまうほど、峰田と一緒にいるのは、気が楽だった。
最強の凸凹コンビとして、この関係が続けば良いと思えてしまったのだ。
峰田のパワーじゃ俺を振り解くなんて不可能だ。しばらくされるがままになってもらおう。
次回『個性把握テストと戦闘訓練』