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第三十六話
入院から、ひと晩が過ぎた。
まず退院直後のテレビのニュースで、治崎を護送していた警察車両が敵連合に襲撃を受けた事件が報道されていた。
この犯行時間10分にも満たない襲撃により、護送を担当していた『サンドヒーロー・スナッチ』が死亡。警察も重傷者多数だそうだ。
そして、護送対象だった治崎は連合に襲われて両腕を失っていた上、現場へ警察が到着した時、彼は失血死寸前になって発見されたそうだ。
ニュースに個性破壊弾に関する事は報道されてはいなかった。が、もしかしなくても死柄木は弾丸を手に入れて治崎に撃ちこみ、ヤツを無個性に変えただろう。個性の危険性や今までの所業を考えれば、因果応報としか言いようがない。
そして俺が欲した個性破壊弾と一緒に、トガちゃんはきっと治崎の血も手に入れたに違いない。彼女と連絡を取りたかったが、入院したせいで携帯はサーの事務所に置きっぱなしだった。
警察とプロヒーローの失態に世間からは優しくない評価が下されていたものの、一緒にニュースを見ていた相澤先生は緑谷や俺に「自分達のせいじゃないから、気に病むな」と事。それでも、緑谷の表情は暗かったが。
そんな、彼等にとっては後味の悪い事件を知ったその日、俺達は学校の寮へと戻る事が決まった。
インターン生の俺達は派遣されたリカバリーガールに治癒してもらって完全回復だが、ビッグ3の通形先輩だけはもう少し様子見だそうだ。
ベッドから動けるようになった緑谷が心配していたので、同じく体の言う事が聞くようになった俺は、彼について行く事にした。
緑谷自身としても、先輩に聞きたい事があっただろう。ワン・フォー・オールの事と、後継者の事。
先輩の病室に入ると、向こうから明るい声が響き渡った。
「おいっす! おはよう緑谷くん、切裂くん! なんか俺だけもう1日様子見入院だって! こんなにも元気なのにチックショウ!!」
「先輩……!」
個性を失ったハズなのに、普段通りの元気な先輩に呆気に取られていた緑谷の隣で、俺も息を呑んだ。
そこには、先輩のお見舞いに来ていたサーの姿もあったのだから。
「サー……!」
「ふむ。目を覚ましていたか緑谷、切裂……」
そう名前を呼ぶだけでも緊張した俺の視線の先、先輩の横たわるベッドの前に立っていたサーは、いつもの白いスーツ姿で黄色いフレームの眼鏡を手で押さえ、俺を見ながら今回の事件のあらましを教えてくれた。
「まず此度の事件における死穢八斎會だが、全国のプロヒーロー達の連携によって、無事各地の支部も含めて叩く事が出来た。指定敵団体から敵組織と確定された今、最早解体は免れないだろう」
「そうですか……よかった……!」
緑谷は不安を抱えつつも、八斎會がこれ以上動く事ができない事を知って、安堵の息を漏らした。兎にかく、これで未来に不穏を残す組織をひとつ完璧に潰せた事に俺も安心していた。
「ところで、あの少女……エリちゃんの容体は?」
「それが……俺に個性を使い切った反動なのか、熱を出してまだ意識が……」
俺の答えにサーは眼鏡を押さえたまま、少し表情を曇らせた。
「そうか……そちらの件は病院に任せるしかない。目覚めてからの処置も考えねばな……」
とにかく八斎會は壊滅、組織としても警察とメディアの圧力で解体する流れになったそうだ。
今回の襲撃で手に入れた資料から叩けば叩くほどホコリが出てきており、個性破壊弾の件も含めて罪状は余りにも多く、警察も全力で取り組んだとの事。
サーやセンチピーダー、バブルガールによる事件の後処理もひと段落ついて、悪の根はすっかり枯れたという話だ。
「切裂 刃、君は私の視る未来を変える力がある。今回の事件において、君は私と緑谷が治崎に殺される未来を変え、奴に連れ去られるエリちゃんの救出に尽力した。その件に関して、改めて礼を言わせてもらう」
「そ、そんな事……」
目の前で頭を下げてくるサーに、俺は尻込みする。俺が彼を助ける事ができたのは、最初から知っていたから。そして解っていたのにも関わらず、先輩を助ける事ができなくて申し訳ない気持ちの方が勝っていた。
「でも、ナイトアイ……切裂くんが未来を変えたって事は……ナイトアイの視ていた未来は……」
そんな言葉を詰まらせていた俺の隣で、緑谷は気がかりだった事象をサーに話し始める。
ずっと入院中で時間は有り余っていたから、到達していた話題の答えだった。俺がサーの未来を変える事ができるという事は、サーの『予知』はもう意味を成さなくなってしまう可能性の話だ。
「ふむ、その件に関してだが……八斎會襲撃の件で私自身の視た未来は、結末が全く別のモノに変化していた。それ以降に試したモノは、少なくとも今の今までは問題ない予知だった……だが……」
「だが……?」
俺の問いかけに、サーは言葉を選んでいるみたいに落ち着いて話し始めた。
「今朝視たミリオの未来が既に変わっていた。これで原因は特定できた」
「え!? いつの間に見られてたんですか!? どこが変わってるんですか!?」
患者様のベッドの上から上半身だけを起き上がらせて驚く通形先輩が、俺とサーを交互に見ていた。
「私が視えたのは、緑谷が神妙な表情でミリオと話す光景だけだった。そこには私も切裂も存在しない。2人だけの病室だ」
「え!?」
「えっ、待って……って事は……」
「もしかしてサーの予知は……!」
緑谷と先輩が俺を凝視する前で、俺は言葉を震わせながらサーに問い尋ねると
「恐らく、私が視た未来は治崎に私も切裂も殺された未来だろう。推測になるが、予知の内容に君が関わる事で全ての未来が不確定になる……という推察が出来るな。君達が初めてミリオと手合わせした時に視た未来も同様に、私が視た未来は君が介入する度に少しずつ変化していた」
「え……」
その言葉の内容に、俺は息を呑んだ。
俺がサーの予知に捉われないという事は、以前からサー本人が危惧していた事なのだが……俺自身に予知の個性が効かない。未来の中の俺が予知と違う行動をしまう事で、確定した未来を視られないだろうという可能性。
しかもそれが、俺以外の他人の予知の中でも、俺が関わった時点で不確定の未来になってしまうという可能性だ。
「根拠が明確化した話ではない。だが状況証拠は揃っている。君という存在に出会ってから私は予知の完璧性を失った、という事になる」
「………………」
俺はサーの告げる事実に、言葉を失ってしまった。
「あえて言おう、ブレイズ。これは君が気にする話では全くない。元々、私は予知を長く視る事を避けていたし、君が介入しないであろう未来を視るだけならば影響が出ないのはこの数日で確認済みだ。結局のところ、君は単純に私の個性との噛み合いが悪い、と言うだけの話だ。今後、仕事をする際には私の予知が確定しなくなると考えてくれればいい」
「そうは言っても……俺のせいでサーの個性は……」
俺が発しようとした言葉を、彼は力強い声で遮った。
「自惚れるんじゃない切裂 刃。君は私が予知が使えなくなるだけで、ヒーローを引退するとでも思っていたのか? 予知頼りの男だとでも?」
「いや、そんな事思ってないですけど……」
サーにジロリと上から睨みつけられ、俺はその内容を否定した。
彼は元々、個性で未来を視るだけのヒーローではない。豊富な経験からくる判断力、分析力も武器の1つだ。また、戦闘においても個性とは関係ない磨き上げられた肉体で、サポートアイテムを使い増強型の個性を相手にしても優位に戦えるほどの力もある。
決して力を侮っているワケじゃない。ただ、俺という存在が彼にとって有害になってしまっているのが、苦しかった。
「……君の特異性は大きなものだ。だからこそ、君のその力は私の手の届かない場所で困っている誰かの為に使えばいい。私は予知が使えなくなった訳でも、大怪我をした訳でもないのだ。あまり深く考えるな」
「……すみません」
ただ謝る事しかできなかった俺に、サーは眼鏡を整えながら更に言葉を続ける。
「どうした、ユーモアが足りていないぞ? 笑いたまえ切裂 刃。君は緑谷と違ってユーモアのセンスがある。ミリオに……ルミリオンに負けないくらい、多くの人を笑顔にできるだろう、君は」
「……っ! はい……わかりましたっ!」
「切裂くん……!」
貶されたというのに隣に並ぶ緑谷にも励まされ、俺はなけなしの笑顔を彼に向けた。サーの口元が少しだけ緩む。
「それでいい。
「はい! ……有難うございます!」
「はい……!」
俺は謝罪の気持ちではなく、感謝の気持ちで緑谷と一緒にサーへ頭を下げた。俺が思い悩まないように鼓舞してくれたのが、なんとなく伝わった。
最後にサーが見せた笑顔は史実でも見た事のないぐらい、とても優しい表情だった。時折見せる彼の、なんとも言えない視線が気がかりではあったが。
それでも、彼がまだ生きている事実に、俺は誇らしいぐらいの達成感を得ていた。
その後、サーや通形先輩と別れた俺達は速やかに手続きを済ませ、ミイラ男みたいな姿から解放された切島と、全身打撲や舌の切り傷からも復活した蛙吹。そして麗日、腕の包帯の外れた峰田とも合流し、退院となった。
通形先輩にワン・フォー・オールを譲渡しようとする緑谷の話は史実通り、先輩本人が拒否する事で終わった。エリちゃんの個性が使えれば、個性を失う前まで巻き戻せるかもしれないと希望的観測をサーは抱いていた。
俺もサーの話には同感だったのだが、個性が暴走する今の彼女にはどうにもできないし、史実でもその結果を見た事のない俺には、そうあってほしいとしか願うしかできなかった。
話の途中で緑谷は、エリちゃんの様子を気にしていたが、自分がいても状況が変わらないと相澤先生に説得され、大人しく雄英へと戻る事となった。
だが病院を出るなり俺達は地元の警官に出迎えられ、俺と緑谷、切島、峰田、蛙吹、麗日の6人は事情聴取に警察署へと同行された。
警察はマグネとトガちゃんの事に関して認知していなかったから、俺は一切答えなかった。
俺とトガちゃんの繋がりを知っているマグネ。彼女の台詞を思い返す限り、他にも連合側に俺と彼女の関係を知る人間がいる。
トガちゃんは、俺との関係をマグネが気付いている事を知らない。下手に不安を煽らせる結果になるかもしれない以上、彼女に聞く事はできなかった。
しばらく雄英と連合は、接触の機会がない。
トガちゃんと再会するタイミングを、俺は慎重に狙う必要があった。
・・・♡・・・♡・・・
その後、久しぶりにも感じる寮へと帰ってきた俺達は、夜中なのに待ち構えていたクラスメイト達全員に出迎えられた。死穢八斎會の事件自体、大きくニュースで取り上げられていたから心配しているのも無理はなかった。
俺達のいない間に何か大きな事件はあったか聞いてみると、物間がA組の寮を覗きに来て、そのままA組B組合同『部屋王』決定戦が始まっていたそうだ。
不在の俺達の部屋は発表できなかったが、本人達曰く中々に楽しかったそうだ。どうせなら全員が揃っている時にやってほしかったが、インターンの方が重要だったから仕方ないだろう。
大事件を終わらせた今、俺は勢いで返事をしてしまったマウントレディとの約束通り、峰田と一緒にラーカーズのチームアップをできないかと考えたが、それは叶う事はなかった。
今回の事件で、インターン先でビッグ3の個性喪失。そして再び活動を始めた敵連合。雄英はこれらの煽り受けて史実通り、1年ヒーロー科全体のインターン活動も中断してしまったのだ。濃厚だった割には、なんとも短いインターンだった。
それから数週間が経ち、マウントレディ率いる(リーダーはエッジショットなのに、彼女の方が目立ってる)ラーカーズも本格的にメディアに露出し始めた10月中旬。
エリちゃんの意識は目覚めたのだが、まだ精神的に不安定で個性がいつまた暴走してしまうかわからないため、面会はできなかった。ただ、あのあと相澤先生が何度か面会した話によると、俺のために個性を使った彼女の額のツノは熱が引いていくにつれて縮んでいき、今はコブぐらいの大きさになっているそうだ。
雄英の環境としては夏の残暑も完全に鳴りを潜め、並木道の紅葉が染まり始めた頃。夏服から冬服に制服の変わった俺達クラスメイトの前で、朝のSHRにいつもの寝袋に包んだ姿で現われた相澤先生が言い放った。
「え〜……文化祭があります」
「「「「「「「「「「「「「「「ガッポォオォイ!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」
ソレを聞いた瞬間 『学校っぽい!』と喜びを叫びながら机から立ち上がるクラスメイト達。インターンの中止から最近は暗いニュースが多く、憂鬱な気分になる事も少なくない。そんな俺達の雰囲気を吹き飛ばせる、期待していたイベントがようやく訪れた。
「文化祭!」
「ガッポイの来ましたっ!」
「何するか決めよー!」
「………………」
しかし、ワイワイと賑やかに話す生徒が大多数の中、不安げな表情を浮かべている者達もいた。
もちろん、それは緑谷率いるインターン組である。中でも切島は席から立ち上がって、相澤先生に問いかけた。
「先生、いいんですか!? この時世にお気楽じゃ……!?」
「切島……変わっちまったな……」
「でも、そーだろ!? ヴィラン隆盛の、この時期に!」
今まで体育祭や林間合宿など、イベントがある度に騒いでいた切島が不安を吐露する様子に、思わず口をさしてきた上鳴に彼はそう言い返した。
切島だって文化祭がやりたくないワケではないだろう。しかし、林間合宿を狙われた時と同様に、敵連合が雄英の油断する次のイベントを狙っている可能性だって無いハズはない。そして、もしもUSJや林間合宿に続いて3度目の襲撃があった場合、その時は被害の有無を問わず雄英は大顰蹙を買うだろう。切島だって、それぐらいの予想はついている。
彼の言い分は相澤先生も納得しているみたいだった。
「確かに、もっともな意見だ。しかし、雄英もヒーロー科だけで回っているワケじゃない。体育祭が『ヒーロー科』の晴れ舞台だとしたら、文化祭は他の『サポート科』『普通科』『経営科』が主役。注目度は体育祭の比にならんが、彼等にとっては楽しみな催しなんだ。そして現状、全寮制をはじめとしたヒーロー科主体の動きにストレスを感じている者も少なからずいる……だから、そう簡単に自粛とする訳にもいかないんだ」
「そう考えると、申し訳たたねえな……」
好きで事件に巻き込まれている身ではないとは言え、自分達が他科に大きな迷惑をかけている事を改めて認識した切島は、肩身を狭くしながら静かに着席した。
全寮制になって、俺達のクラスは毎日悪フザけとバカ騒ぎで盛り上がっているが、全校生徒の中には集団行動が得意じゃない者もいるに決まっている。個室があるからプライベートは保証されているとはいえ、男女問わず中々距離感が近くなってしまった事にストレスは感じる者はいるだろう。
そして学校に管轄されている以上、食事や入浴の時間も決まっている。寮制になって当然だが、外出の許可云々はもちろん、門限まで設けられてしまったのだから、好きな時に好きな場所に行けないのは苦痛でしかないだろう。
俺は回想でしか知らないが、文化祭の決定は険しい道のりだった事を知っている。世論もそうだが特に警察は大反対という姿勢を示し、警察庁のお偉いさんがわざわざ雄英まで訪れて根津に自粛を求めるほどだった事を。
しかし、根津校長が何とか対策を講じて厳しい条件を設ける事で、なんとか文化祭の開催は許可された。そう考えると校長の英断には、エリちゃんの事も含めて頭が下がる思いだった。
「ただ、今年は例年と異なりごく一部の関係者を除き、学内だけの文化祭となる。主役じゃないとは言ったが、決まりとしてひとクラスに1つは出し物をせにゃならん。今日は1限目のLHRではソレを決めてもらう……委員長、副委員長。あとは任せた……」
それだけを言って相澤先生は寝袋に入って教室の隅で寝転がる。最近はエリちゃんの面会に、中間テストでまたドベになった芦戸と上鳴の補習。あと、もうすぐ再会できる普通科の彼の指導もあったのかもしれない。とにかく、先生が忙しそうにしていたのを覚えている。
俺もクラスメイト達も相澤先生の行動には慣れきったもので、飯田と八百万が教壇の前に出るなり早速クラスの出し物決めが始まった。
「ここからはA組委員長、飯田 天哉が進行を務めさせていただきます! スムーズに纏められるように頑張りますっ!! では、まず出し物の候補を挙げていこう! 希望のある者は挙手を!」
「はい!」
「ハイ!」
「はーい!」
一斉に雪崩の様な挙手が始まるクラスメイト達の前に、あまりの変わり身の早さに2人も慄いていた。そんな彼らの前でも飯田は怯む事なく捌き始める。
「はい、上鳴君!」
「メイド喫茶! メイド喫茶にしようぜ!」
「メイド……奉仕ということか、悪くない!」
トップバッターの上鳴の提案は、いち読者である俺が現実でも見た事のない『メイド喫茶』 この意見に「悪くない」と言える飯田も飯田な気がするが、他科を労う意味ならある意味正解なのかもしれない。緑谷や峰田辺りにも着せてみたいし、メイド服。
「ヌルいわ上鳴! オッパ───ブヘぇっッ!!」
それに続いて峰田も提案するが、飲食店と言うよりは性風俗店である。ソレはお前が客として体験したいだけだろうに。
「重りになる物あるかしら?」
「バケツ使うか……?」
案の定、峰田は台詞が言い終わるよりも早く蛙吹から舌でビンタを受けた後、教室の後ろで簀巻きにされて逆さ吊りの刑に処されていた。インターンが終わって少し雰囲気が変わった様な気がしたが、峰田も蛙吹もいつも通りで安心してしまった。
ちなみに進行係の飯田と八百万もソッチ系の知識に疎いのか、峰田の提案が何なのかわかっていない。そのせいで黒板の出し物候補リストには『メイド喫茶』の下に堂々と『オッパブ』の名称が八百万の手によって記入された。初っ端からだいぶカオスである。
その勢いに乗った次に、麗日が肉球の目立つ手を広げて提案する。
「おもち屋さん~!」
「成程、和風で来たか!」
彼女の好きな食べ物だった。そうそうそうそう、そういうのでいいのよ。八斎會との死闘もあったんだから、インターン組としては落ち着ける提案もアリだ。
その次、切島の提案。
「腕相撲大会!!」
「熱いな!」
林間合宿でも寮でも、B組の鉄哲を筆頭に尾白やら砂藤やらも混じって定期的に行われる力比べ。客がだいぶ選定されてしまうが、切島らしい提案だ。
次、葉隠の提案。
「ビックリハウス!」
「分からんが面白いんだろうな、きっと!」
たぶん、お化け屋敷みたいな体験型のアトラクションがやりたいのだろう。飯田の返事もテキトーな気がした。
次、砂藤の提案。
「クレープ屋!」
「食べ歩きにもってこいだ!」
食べ物系としてはオーソドックスな提案だが、砂藤が監修すれば凄く良い出店になりそうな気がした。
次、芦戸の提案。
「ダンス〜!」
「華やかだな!」
普段の趣味である彼女の特技を活かした提案だ。俺も緑谷もインターン中から今日に至るまで、何度が彼女のダンスに参加してから体の使い方が向上した気がする。
次、緑谷の提案。
「ヒーロークイズ!」
「緑谷君らしい!」
いつか前のヒーロー名を決める時とは違い、悩む事なく即決したのか元気の良い彼が積極的に手を挙げるのも珍しく感じた。ただ、林間合宿のバスの中で体験したが、緑谷が監修すると問題がコア過ぎて本人以外、誰にもわからなくなりそうだ。
次、蛙吹の提案。
「カエルの歌の合唱」
「微笑ましい!」
A組全員で合唱する光景を思い浮かべると、確かに微笑ましい。爆豪が嫌々声を出す様子を想像すると、笑えてくる。
次、口田の提案。
「ふれあい動物園……!」
「癒されるな!」
確かに口田が頑張れば、メイド喫茶やオッパブなんかよりも遥かに癒される空間を作る事ができるだろう。どうやって動物を用意するかが問題だが。
次、轟の提案。
「手打ち蕎麦屋」
「大好きだもんな!」
お前も自分の好物やんけ。でも、轟らしいと言えば轟らしい。USJ前のツンツンした態度が、今になって懐かしく感じた。
次、爆豪の提案。
「
「まさかの殺し合い!?」
文化の祭りで殺し合うな。体育祭で散々やっただろうが。
次、常闇の提案。
「暗黒学徒の宴」
「ほほう!」
悪魔召喚の儀式でもやるのだろうか、ダークシャドウが喜びそうだ。飯田も考えるのをやめたみたいな声を出した。
次、耳郎の提案。
「コントとか?」
「なーるほど!」
どちらかと言えば恥ずかしがり屋な性格に分類される耳郎の答えた『コント』 彼女の趣味を知っている上鳴を筆頭に、何人かのクラスメイトが彼女に疑問の表情を向けた。
次、瀬呂の提案。
「アジアンカフェ!」
「センスが光るな!」
部屋のセンスでも上位に食い込む瀬呂が監修したカフェは、女子からの人気が出そうである。八百万の紅茶の技術と砂藤のお菓子作りの技術が合わされば、外の店にも負けないだろう。
次、尾白の提案。
「演武発表会!」
「君の得意分野だな!」
小さい頃からずっと武道を極め続けてきた、尾白らしい提案だ。同じバトル系の提案だからか、爆豪が面白そうな表情をしている。どんだけ戦いたいんだお前は。
インターン帰ってきてから、すぐ手合わせしてやっただろうが。轟と一緒に、俺のデモンストレーションに。
次、障子の提案。
「タコ焼き屋」
「コレも食べ歩きにはもってこいだ!」
コレも砂藤の提案とよく似ている。障子が複製腕で慌ただしくたこ焼きを作っていく姿を想像すると、ホッコリする。パフォーマンスとしても良いものになるだろう。
「あの……私の意見として『お勉強会』を……!」
「学生の本領だな! ちなみに俺は『郷土史研究発表』を提案するぞ!!」
委員長2人の提案も出て、教室内は大いに盛り上がった。相澤先生もすっかり熟睡している中、クラスメイト達の特徴がよく浮かび上がる意見の数々が、黒板に書き連ねらていった。
だが、盛り上がったのはここまでだった。
「ひと通り、みんなからの提案は出揃ったかな?」
「不適切、実現不可、よく分からないものは消去させていただきますわ」
そう言いながら八百万は『オッパブ』『暗黒学徒の宴』『デスマッチ』の3項目を黒板から削除した。
「あっ!」
「無慈悲……!」
「ハナから聞くんじゃねえ……ッ!」
三者三様の納得いってない態度が露わになる中、葉隠や障子、尾白の意見が飯田に告げられる。
「郷土史研究発表もなー、地味よねー?」
「確かに」
「別にいいけど、ほかが楽しそうだし……」
「総意には逆らうまい……!」
本当に本気で取り組みたかったのか、飯田は手を震わせながら『郷土史研究発表会』の項目を消す。
そこに続いて八百万にも意見の矛先が向けられる。
「勉強会はいつもやってるしな……」
「お役に立てればと、つい……!」
せっかくの文化祭で勉強なんて嫌に決まってるだろう上鳴の言葉に、彼女も渋々『勉強会』の項目を消した。
そこから更に意見を絞る事になったのだが、ここにいるのはヒーローに憧れる積極的の塊みたいな雄英の生徒20人、自分の提案を通そうとしてまるで話がまとまらない。
「食いモン系は1つにまとめられるくね?」
「蕎麦とグレープはガチャガチャしねえか?」
「だからオリエント系にクレープは違うでしょ」
「やっぱりビックリハウスだよ!」
「内容がわかんねえって!」
飯田の「静かに」という指示も無視して話し合いを始めるクラスメイト達の中、俺に声がかかった。
「ねー、ヤイバは何か意見ないの?」
すっかりみんなの提案を見ているばっかになっていたせいか、右前の席の芦戸が椅子から立つなり身を乗り出し、提案を出していなかった俺の机に両手をつけて顔を寄せる。
別に意見がなかったワケじゃない。
どうせ、何やるかは勝手に決まっていくハズなので、俺は無難な答えを選んだつもりだった。
「俺もダンスがいい」
「え……!?」
そう答えた瞬間、視界の先の芦戸は慌てた様に机から両手を離し、素早く俺から身を引いて自分の席に勢い良く座り直した。
「あっ、いや別にっ! 私がダンスだからって、そんな気をつかわなくたって……っ!」
足をバタバタ振って両手を俺の前に出して手の平をブンブン振り回す彼女を落ち着かせる様に、俺は話を続ける。
「前に、三奈ちゃんがダンス教えてくれたじゃん」
「へ───
俺の台詞に彼女の動きが止まった。
「ヒソヒソヒソヒソ…………(やってて思ったんだけど、あの足のステップの取り方やダイナミックな動きは、意外と俺や緑谷くんの個性に応用が利くと思うんだ。元々下半身周りの柔軟は入学した頃からずっと課題にしていたからさ。アッチの刃も試したい所だけど、準備が色々と必要だし……だから、この際に出しモンを利用して覚えちまおう)…………って、三奈ちゃん?」
───ハッ、うんっ! ……えと、なんだっけ!?」
そのまま喋り続けていたが、途中から聞いているのか疑わしくなった俺が問いかけてみると、彼女はピンク色の肌が紅潮しているのが解る程、声を上擦らせて頭から酸の煙を上らせる程、俺を前にして困惑していた。
向こうの席で、峰田が歯をギリギリさせながら俺を睨みつけていた事には気が付かなかった。
そのすぐ近くで切島が、俺と芦戸を見つめていた事にも。
その間にも出し物の話は進んでいたのだが、誰もが自分の案を推すだけで話は全く進まない。わーわーギャーギャーと口論するだけで時間は過ぎ、1限目終了のチャイムが鳴ってしまった。
皆を静かにしようとして、ハッと我に帰る飯田の隣で目が覚めた相澤先生が、自分の入っていた寝袋を抱えて教壇の前を通り過ぎながら俺達に告げる。
「実に非合理的な会だったな。お前ら、明日の朝までに決めておけ。決まらなかった場合……『公開座学』にする」
(((((((((((((((((((こ、公開座学……!?)))))))))))))))))))
相澤先生の恐ろしい提案に、クラスメイト達は一斉に震え上がる。瀬呂は「冗談だろ」とは言っていたが、先生のあの目はマジの目だ。
文化祭で公開座学なんてやったら晒し者だ。それそこ上鳴の呟く通り、タダの勉強会である。
「髭剃って髪まとめた相澤先生なら需要あるから……授業を全部大喜利にして各生徒にスパチャできるようなシステムにしたら面白そう……! ジョーク先生も呼んで……」
「切裂ちゃん。そんなトコ、風呂敷広げなくていいわ」
口元に手を当てながら、そんな事を考えていた俺を蛙吹が止めてきた。考えれば考えるほどなんだか楽しくなってきたが、絶対先生が認めてくれないだろう。
「みんな! 今日中に出し物決めようぜ!」
「「「「「「「「「「おーーーっ!!!!!」」」」」」」」」」
切島を危機迫った叫び声に、クラスメイト達は一丸となって出し物を決めるべく、自らの拳を突き上げるのであった。
・・・♡・・・♡・・・
その日の授業を終えた放課後。
1-A組のクラスメイト達は寮内で文化祭の出し物について、早速話し合いの場を設ける事にした。ただし緑谷、切島、麗日、蛙吹、常闇、峰田、切裂はインターン中の補習を受けるため不参加。爆豪も、興味ないと言い放って寝てしまった。仮免試験後の飯田の誕生日会と言い、イベント事に参加しようとしない彼の対応もクラスメイトは慣れたものである。
インターン組の7人は、話し合いの決定に従うとの事であった。ちなみに、ついさっきまで自分も参加したいと喚いていた峰田は、切裂と蛙吹によって連行されていった。
「みんな、落ち着いて考え直してみたんだが……先生が仰っていた他の科のストレス。俺達は発散の一助となる企画を出すべきだと思うんだ」
「そうですわね。ヒーローを志す者がご迷惑をおかけしたままではいけませんもの……」
クラスの委員長として最も責任を感じている飯田と八百万がそう言うと、周りに集まっていたクラスメイト達も頷いた。
「そうなると正直、ランチラッシュの味を知る雄英生には、食で満足させられるモノは提供できないと思うんだ」
「あっ、メシ系ダメって事?」
頭を押さえながら少し残念そうにする瀬呂の言葉に、飯田は口元に手を当てて思考しながら話を続ける。
「個人的には、だ。他科へとサービスと考えれば……」
「そう言われるとそうだな。俺達が楽しいだけでは、彼らに申し訳がない」
「悔しいけど……ランチラッシュには敵わねえ……」
障子と砂藤も飯田の言葉に、ウンウンと賛同している。特に砂藤はお菓子作りのみならず、I・アイランドや林間合宿での様子を見ても、A組きっての料理上手なのだが、そんな彼でもランチラッシュには勝てない。やはりアマチュアとプロの差は大きかった。
そういう結論に至ったA組は、提案リストの中から『お餅屋』『グレープ屋』『たこ焼き屋』『手打ち蕎麦屋』など、食べ物系の出し物を削除した。
残る提案を、テーブルに置いていた寮の共有ノートパソコンで見ている八百万の隣へ、葉隠が画面を覗き込んでくる。
「それじゃあ……!」
「体験系の出し物で該当する提案でしたら……『ダンス』が芦戸さんとヤイバさんで2票入ってますわ」
ほかにも、体験系なら『メイド喫茶』『ふれあい動物園』『ビックリハウス』『コント』が該当するが、動物園は衛生的に厳しい上、動物を制御できる口田に全ての負担が掛かってしまう。ビックリハウスは具体性が全く出てこない。メイド喫茶は女子に負担が掛かり過ぎてしまう上、男子の労力を持て余す事になる。コントに関しては、素人が実施してもストレスになってしまうとは瀬呂の意見だった。
「でも、ダンスだけだとちょっとインパクトがないかな〜」
「踊ってるだけだと、自己満になっちゃうしね……」
「素人芸ほどサムいモンはねぇぞ?」
尾白、葉隠、瀬呂の言葉に再び頭を悩ませるA組の生徒達。そんな様子を見て、ソファに座り込んでいた芦戸が足をパタパタさせながら寂しそうに呟いた。
「みんなで踊ると楽しいよ〜……」
彼女の言う通り、ダンスは大人数で踊ると何倍も楽しい。それは中学の頃から何度も経験してきた、説得力のある意見だった。せっかくの文化の祭りである文化祭。芦戸は、この機会に是非ともA組の皆と一緒に踊りたかった。
しかし、他の者達がダンスにあまり乗り気ではない事が雰囲気で伝わってしまった。結果として、彼女は自分の意見を強く言う事もできなかったのだ。
(ヤイバだったら、なんて言ってくれるかな……)
「「「………………」」」
絶対に彼なら自分の味方をしてくれると確信していた芦戸。誰もいない場所を見つめるその表情は、八百万や耳郎、葉隠が見た瞬間『彼』の事を考えてると確信できるほど、想い募った顔をしていた。
そんな肝心の彼がいない事に芦戸が悶々としていると、切裂に代わって彼女の意見を後押ししてくれる者が現れた。
「俺もダンスで良いと思う」
「超意外な援軍が?!」
普段から切裂と仲の良かった轟が動き出した事に、芦戸は目を広げて驚く。彼は座っていたイスから立ち上がって八百万と飯田の座るソファーに近寄ると、テーブルの上のパソコンで動画サイトを開いた。
「ちょっとパソコン貸してくれるか? 前に切裂がコレで『2億4000万』の練習をしていた時、別のチャンネルで見たんだが……」
(今チラッと映った『ジェントル・チャンネル』って……なんだ? まぁ、いいや……)
こんなチャンネル、共用パソコンに登録していただろうか? 瀬呂の一瞬の疑問は言葉に出される事なく、そのまま轟の話に流されていった。
「ああ、コレだ。なんて言うのかはわからねえが、このバカ騒ぎするヤツ」
そう言いながら彼がクラスメイト達に見せてきた画面に映るのは、真っ暗なステージに何本ものフラッシュが焚かれ、心音を刻む様な力強いリズムを繰り返し奏でながら、騒いでいる観客が何度も飛び跳ねている、いわゆるクラブハウスの様子を撮影した動画だった。
「轟から出る発想じゃねえ……!」
「パーティーピーポーになったのか轟!?」
「切裂に何か吹き込まれたのか?」
砂藤と瀬呂の驚愕に混じって、少しだけ障子が冷や汗を流す様子を余所に、彼は音楽とダンスで盛り上げる『ライブ』を提案してきたのだ。
「違え。ほかの科のストレスを発散させようという飯田の意見はもっともだと思うし、そのためにはみんなで楽しめる場を提供するのが適してんじゃねえか? 仮免補講からの連想なんだが……」
(((((((((((どんな補講だったんだよ……)))))))))))
最後の台詞のせいで、クラスメイト達は更に困惑する結果になっていたが、他科のストレスを発散と飯田の意見を踏まえ、皆で楽しめる場を提供するという彼の提案は意外にも素早く皆に受け入れられて、ソコからトントン拍子で話が進んでいく。
「成程、歌とダンスか……!」
「今一度言うが、素人芸ほどストレスなモンはねえぞぉ?」
動画で更にクラブの様子を調べようとする飯田に、絶対に失敗したくないのか瀬呂が不安な声を晒したが、そこに反応したのはやはりダンスの提案者だ。
「私、ダンス教えられるよ!」
奇怪な動きをしていた緑谷と切裂に、1日でステップをマスターさせていた芦戸がダンスを教えるという意見に、彼女の指導は確かだと上鳴が真っ先に賛成した。
コレでまずダンスを教える人間は決まった。次にそのダンスを形成させるリズム、即ち肝心の音楽を形成させる人間が必要だが、その指導者は部屋王決定戦でコレでもかと自分の趣味を見せつけた彼女に決まっていた。
「音楽と言えばー……!?」
「えっ……! えっ……何!?」
葉隠の声の先、少し頬を赤らめて困惑する耳郎を、共同スペースにいる全員が見ていた。
「耳郎ちゃんの楽器で生演奏!」
「えっ、ちょっと待ってよ!」
「なんで? 耳郎ちゃん演奏も教えるもすっごく上手だし、音楽してる時がとっても楽しそうだよ! 私、耳朗ちゃんの演奏聴きたい!!」
目の前で元気いっぱいな声で耳郎を推薦する葉隠に、彼女は個性であるイヤホンのジャック部分を両手で押さえて、カチカチと突き合わせる。
「芦戸とかさ、みんなはさ……ちゃんとヒーロー活動に根差した趣味じゃんね? ウチのはホントただの趣味だし、正直……表立って自慢できるモンじゃないっつうか……」
その自信のなさげな表情に、数人のクラスメイトが無理強いはできないと考えを改めようとしていた所へ、上鳴が彼女の前まで近寄った。
「あんなに楽器できるなんて、めっちゃカッケェじゃん!」
「───ぅっ!!?!」
轟には劣るが、それでも上の上であるイケメン面を至近距離で受けながら褒められ、彼女の中で動揺が走り、少し赤みを帯びていた頬が更に濃くなっていく。
そんな様子を間近で見ていた葉隠の表情は、決して他人には見せられないほどニヤけた面をしていたが、それは誰にも知られる事のない話であった。
「耳郎さん、人を笑顔にできるかもしれない技だよ! 十分ヒーロー活動に根差してると思うよ!」
そこに続いて、彼女と期末試験で仲の深まった男子生徒である口田が、珍しく自分から声を出してハキハキと喋りながら彼女に声援を送ろうとする。
そこに副委員長である八百万が、一旦2人を宥めようと間に入ってきた。
「おふたりの主張も、よくわかりますわっ。でも、これから先は耳郎さん本人の意思で……」
「ココまで言われて……やらないのも……ロックじゃないよね……!」
しかし、耳郎は最後まで恥ずかしがっていたが、それでも両手を頭の後ろに当ててカッコつけた様に、まるで気恥ずかしさを取り繕う様に、赤面しながらもクラスメイト達の推薦を受諾してくれたのであった。
「じゃあっ、A組の出し物は生演奏とダンスでパリピ空間の提供だぁ!!!」
「「「「「「「「「「おおぉーーー!!!」」」」」」」」」」
上鳴の最終決定に共同スペース内で歓声を上げるA組の生徒達。少なくとも、これで相澤先生の公開座学は無くなったので、ひと安心である。
そんな騒いでいるクラスメイト達から少し離れ、自分の座っていたソファーに座り直した芦戸が、足をパタパタ振りながら呟く。ただし、今度は不安ではなく、明るい期待をその声に込めて。
「ヤイバ……喜んでくれるかな……?」
思わずため息が出てしまう様な乙女の笑顔を見せながら、この場にいない彼の反応を妄想している芦戸。
そんな彼女の様子を、本人にも誰にも気付けないほど、コッソリと眺める者がいた。
「どう思う?」
「匂うね……!」
葉隠と耳郎である。
普段恋バナを求めてガツガツしている彼女が、自分の恋愛沙汰になると慌てふためく有り様は、2人にとってはこれ以上ないぐらい滑稽な光景であった。特に耳郎は、自分と上鳴との関係を前々から彼女にイジられていた傾向があるので、立場の優位性を保つためにも狙わない訳にはいかなかった。
芦戸にとって切裂 刃は特別な存在である。それは林間合宿から彼女の様子を見ていれば、すぐに察せる事のできる予想であった。
現に、インターンを終えた緑谷達が寮に帰ってきた時、芦戸が真っ先に駆け寄ったのが切裂なのだ。本人は大した事なかったと言った直後、峰田が「お前本当に死んだんだぞぉォォっッ!!?!」半ベソになってキレているのに便乗して、彼女もポカポカと彼を叩きまくっていたのも2人の記憶に新しい。
「文化祭……非日常……何も起きないはずがなく……!」
「イヤ、ウチとしては何も起こらないでほしいんだけど……」
出し物の意見が纏まった今夜は解散し、明日から細かい事を決めようと言う飯田の提案でクラスメイト達が散り散りになっていく中、別のソファーに仲良く並んで座った2人は、ご機嫌な芦戸を見ながら不安な言葉を口にする。
文化祭という規律に守られた空間で、日常から非日常に突入した時、人は大胆になれる。それは今までのヒーロー基礎学で身に染みている感覚だった。
もしかしたら、ココが世紀の大勝負なのかもしれないと、葉隠は芦戸の動向に期待していた。
ただ、そんな彼女に対して耳郎は、あの切裂相手に本当に上手くいくのだろうか不安を抱えていた。
そして、彼女達の予想は見事に的中してしまうのであった。
・・・♡・・・♡・・・
今頃、クラスメイトのみんなが文化祭の出し物を決定していると思いながら、雄英の校舎の補習室でインターンの補習を受けていた俺達へ、相澤先生が唐突に言い放った。
「エリちゃんが、切裂ちゃんに会いたがってる?」
真っ先に反応した蛙吹の返事に、先生は頷く。
「ああ、厳密には緑谷と通形、そしてお前を気にしている。要望を口にしたのは入院生活始まって以来、初めての事だそうだ」
「何の話だ……?」
「それがよ……かくかくしかじか……」
後ろでホークスのインターンに行っていて蚊帳の外にされかけていた常闇に、隣の席の峰田が大まかな話を説明をしている。
そんな中、俺は自分自身を指差して、もう一度相澤先生に問いかける。
「俺も……?」
「ハァ…………お前の命を救った後、エリちゃんは気を失った。だから、お前がどうなったのかを知らないんだ」
先生は俺を見てため息をひとつ、それから真面目な表情で告げる。
「彼女に、無事な姿を見せてやれ。それと、お礼を伝えるんだ」
「は、はい……!」
本来なら、事件を思い起こさせる物や人は遠ざけるべきなのだが、先生の言う通り俺がエリちゃんにお礼を伝えれば、彼女の個性も精神も安定に繋がるかもしれない。
「行こう切裂くん!」
「うん……!」
緑谷の呼びかけに、俺も強く頷いた。
「先生……私達も行っちゃダメですか?」
「オ、オイラも……!」
緑谷の隣の席だった麗日と、常闇に説明を終えた峰田が相澤先生に要望するが、先生は首を横に振った。
「悪いが人数が多すぎると、彼女も驚いてしまうからな……俺、通形、緑谷、切裂の4人が限界だ」
「そっか……」
「ちぇ、しゃーねーか……」
先生の述べた理由に、2人は素直に引き下がる。
エリちゃんの暴走を懸念すれば会う事すらリスクのある行為だが、心配はいらないハズだ。エネルギーはまだ尽きたままらしいし、万が一でも相澤先生がいる。
俺と緑谷によるエリちゃんの面会は、粛々と決定されていった。
ちなみに、補習から寮に帰ってきた俺達にも無事に出し物が『ライブ』になったという情報が伝えられた。芦戸と耳郎が頑張ったのだと思いたい。
翌日には相澤先生に案も無事に受理されたらしく、何かと有名な1年A組には他科のクラスも注目していたようで、ライブをするという話はすぐさま広まって、放課後には校内中の噂になっていた。
そんなワケで、翌日の日曜日。
俺、緑谷、通形先輩、相澤先生の4人はエリちゃんに会いに、数ヶ月前まで自分達が入院していた総合病院へと訪れていた。
手続きをサクッと相澤先生に済ませてもらい、俺達は主治医と看護婦さんの案内で、エリちゃんの病室へと足を踏み入れた。
「「「エリちゃん……!」」」
「あ……」
3人仲良く名前を呼びかけた病室の先、ベッドの上に子供用の患者服を着て、チョコンと座る彼女の赤い瞳と目が合った。
「会いに来れなくてゴメンね?」
「フルーツの盛り合わせ、よかったら食べて! 好きなフルーツある? 俺、当ててもいい? 桃でしょ! ピーチっぽいもんね!」
少し腰を低くして彼女に謝る緑谷に続いて、矢継ぎ早に話す通形先輩が差し入れとして持ってきた果物の盛り合わせのカゴを、エリちゃんに渡す。
両手で受け取ったそのカゴの中を覗いて、彼女は呟いた。
「リンゴ……」
「だと思ったよね! じゃあ、リンゴ剥こう。アップルっぽくね!」
テキトーすぎる会話を繰り広げる通形先輩を少し押し除け、エリちゃんの持つカゴからリンゴを取り出して先輩に渡した俺は、緑谷と同じ様に腰を低くして彼女と目線を合わせてから、その名前を呼んだ。
「エリちゃん……」
あの時はサーを守る事に全神経が集中していたつもりだったが、気付いたら今度は緑谷と一緒に彼女を助けようとしていた。
治崎との限界ギリギリの死闘で今でも記憶は曖昧なのだが、それでも彼女を助け出して緑谷に託したのは覚えている。
そして、血液すらも刃に変化してから、緑谷を助けるために全力を尽くし、その命を燃やし尽くした。
目の前の少女は命の恩人だった。
だが、俺がお礼を言うよりも早く、エリちゃんから反応が返ってきた。
「……だれ?」
「「「え?」」」
唐突な、想定外の反応に緑谷も通形先輩も思考を停止させる中、俺はすぐ気付いた。
「あ……ヒーローコス無しで会うの、初めてか……!」
「あ、そうかっ!」
全身を包み隠してしまう俺のヒーローコスチュームじゃ、誰だかわからないのも当然だ。初めて会った時も、次に再会した時も、彼女の精神は限界だったのだ。俺の声までエリちゃんは覚えていなかっただろう。
私服姿の俺はズボンから携帯電話を取り出して、写真の項目を開いた。
「俺だよ壊理ちゃん。ほら、コレコレ!」
少し困惑しているエリちゃんにそう言い聞かせながら、俺は彼女と初めて出会った時と同じ服装である、都市迷彩柄のヒーローコスチュームを着ている自分自身の写真を見せた。昔、峰田に撮ってもらったモノだ。
「あっ、コッチじゃなくて、コッチの方がわかる?」
「あ……あぁ!」
もしかしたら八斎會に殴り込んだ時の、マルチカム迷彩の方が良かったかと思った。
でも俺が携帯の画面を見せた瞬間、エリちゃんは目をキラキラと輝かせて、携帯を持っていた俺に思いっきり抱きついてきた。
「うぉっと!」
「よかった、思い出してくれたね!」
峰田を抱っこした時と同じぐらい、いや少し軽いだろうか。そんな風に感じる重さだった。
エリちゃんをベッドに下ろした俺は、そのまま人数分のイスを用意して緑谷と通形先輩の2人と並んで彼女の前に座った。
先輩はリンゴを切る用の包丁とまな板も用意していたが、俺も2つ割ったリンゴの片方を受け取り、自分の刃でウサギの形にした。目の前で俺の手の中でリンゴが勝手に切れていく手品みたいな光景に、エリちゃんは目を丸くしていた。
それで少し落ち着いてから、俺達3人は彼女の話を聞く事となった。
「ずっとね……ねつでてたときもね……かんがえてたの……たすけてくれたときのこと……」
彼女を助ける事で精一杯だった俺と緑谷は、名前を伝える事も忘れていた。教える暇もなく仲良く気絶してしまったのだから。
「でも……おなまえがわからなかったの……! ルミリオンさんしかわからなくて、しりたかったの……」
そこに緑谷がズイッとエリちゃんに寄せて、自分の自己紹介を始める。
「緑谷 出久だよ。ヒーロー名はデク! えっと、デクの方が短くて覚えやすいかな?」
「ヒーローめい?」
「あだ名みたいなモノだよ」
「デクさん……」
「うん、そう!」
洸汰くんとの対話でだいぶ慣れていたのか、辿々しいエリちゃんと何とか会話を繋げていく緑谷と、通形先輩の方を彼女は見ている。
「ルミリオンさん、デクさん……あと……」
そうして俺と視線が合ってから、彼女にゆっくりと自分の事を話した。
「俺は切裂 刃。ヤイバでいいよ……!」
「ヤイバ……おにーさん……!」
エリちゃんは俺を見てパチパチと瞬きしてから、名前を呼んでくれた。
その瞬間、俺の中を通り過ぎる電光。
「お兄さん……? 俺は……エリちゃんの、お兄ちゃん…………!?」
「き、切裂くん……?」
緑谷の不穏な声に、俺は我に返って首をブンブンと横に振る。
「ゴメン、思考がバグった……」
「えらく気に入られたね!」
通形先輩が茶化してくるが、こっちは彼女に『兄』呼ばわりされた動揺がまだ治らない。
俺は前の世界に兄弟なんていない。弟や妹どころか1人っ子だから、ムズムズした。
そんな挙動不審な俺を見ていたエリちゃんは明るくしていた表情を、また暗くして視線を落とした。
「わたしのせいでくるしいおもいさせて……ごめんなさい…………わたしの……わたしのせいでルミリオンさんはチカラをなくして……おにーさんは……!」
元々、1人で抱え込もうとする性格だとは、相澤先生から聞いている。そんな彼女を落ち着かせるように、個性を失った先輩がエリちゃんの頭を優しく撫でる。
「エリちゃん。苦しい思いしたなんて思ってる人はいない。みんな、こう思ってる……エリちゃんが無事で良かったって……! 気楽にいこう。みんな、君の笑顔が見たくて戦ったんだよ」
先輩の言う通り、ここにいるのは彼女を救うために全力を注いだ者達ばかりだ。
サーを助け、囚われたエリちゃんを解放した俺も……本当は通形先輩も助けたかった気持ちはあれど、もう振り返るつもりはなかった。
先輩の手が離れたエリちゃんの前に座り直した俺は、腰を落として彼女と目線を合わせる。
「エリちゃん……今日はね、君にお礼を言いたかったんだ」
「おれい……?」
彼女の問いに、俺は優しく頷く。
「君の力で……俺は命を助けられた。君のおかげで、俺は今こうして君に会う事ができたんだ……!」
「は、はい……」
少し動揺しているエリちゃんから、俺は視線を離さなかった。
「助けてくれて、ありがとう……! 君の力は呪われたものなんかじゃない……命を救ってくれた君は、俺のヒーローだよ……!」
「ヒーロー……!」
『ヒーロー』という単語は通形先輩と会った時に理解していたのか、ビックリしたように目を広げる彼女の瞳が、嬉しそうに輝いている気がした。そんな様子を見て緑谷と通形先輩も、後ろで様子を見ていた相澤先生も安堵の息を漏らしていた。
そこから唐突に、エリちゃんは俺の目の前で笑顔の練習を始める。といっても、さすがにすぐには出来るハズもない。今も手を使って口を開いたり頬を引っ張ったり、顔の表情筋を動かそうとしているのだが、やっぱり駄目だった。
「ごめんなさい……えがおって、どうやればいいのか……」
落ち込んでいる様子を見て通形先輩も緑谷も、事の深刻さを察する。こんな幼い女の子が、笑顔を浮かべられない現状を受け止めていた。
地獄に叩き堕としても、まだ治崎の呪いは残っている。俺達はまだ彼女を完全に救っていない。
楽しい事、笑うって事を教える役目がある。
そこまで俺が考えていた時、最初に動き出したのはやはり我らが主人公、緑谷だった。
「相澤先生。エリちゃん、1日だけでも外出できないですか?」
「無理ではない筈だが……というか、この子の引き取り先を今……」
「じゃあ……エリちゃんも文化祭、来れませんか!?」
個性を発動するための角が縮んでいるなら、暴走の可能性は低い。今年の文化祭が学内だけの催しなら、外部から接触される可能性も低い。そこまで知っていたからこそ出せた結論だった。
「……成程……!」
「ああっ!」
緑谷の提案に相澤先生と通形先輩が目を広げて反応した。そこに、よくわかっていないエリちゃんが疑問の声を漏らす。
「ぶんかさい?」
「エリちゃん、コレは名案だよ! 文化祭っていうのはね……!」
少し呆けている彼女の前で、先輩が文化祭についてのプレゼンテーションを始める。学校のみんなが集まって、みんなが楽しんでもらうための出し物の事や食べ物の事など、様々だ。
「あっ、リンゴ! リンゴ飴とか出るかも!」
「リンゴアメ……?」
「リンゴを、あろうことか更に甘くしちゃったスイーツさ!」
「さらに……!」
その中でも、食べ物の『リンゴ飴』に惹かれたエリちゃんが興味を示したのを皮切りに、トントン拍子で話が決まっていった。
相澤先生が携帯を開く一方で、緑谷が元気良く彼女の反応を確認する。
「分かった。校長に掛け合ってみよう」
「それじゃあ……エリちゃん、どうかな?」
「わたし、かんがえてたの……たすけてくれたときの……たすけてくれたひとのこと……」
リンゴ飴を想像して口元から垂れていたヨダレを拭いたエリちゃんは、少し頬を赤くして俺の方に顔を向けた。少しだけ、彼女から元気が溢れている様な気がした。
「おにーさんたちのこと、もっとしりたいなってかんがえてたの……!」
「イヤってほど教えるよ! 校長先生に良い返事がもらえるよう、俺達も働きかけよう!」
「「はい!」」
通形先輩の指示に俺と緑谷は同時に返事をする。学校側の不安要素は全く無いのだが、あの校長ならチーズをいっぱい渡せばすぐ納得してくれるだろう。最悪、口田の個性を使う手段も残っている。
エリちゃんが文化祭を訪れるのに、何の障害も無かった。
「俺、休学中だからエリちゃんとつきっきりデートできるよね!」
「……デート?」
「蜜月な男女の行楽さ!」
「みつげつなだんじょのこうらく……!」
「先輩、何言ってんですか……」
「あんまり変な事、エリちゃんに教えないでください」
少し厳し目の口調で通形先輩を諭した俺達は、主治医を通しての相澤先生の指示で、面会の撤収を始める。面会時間の終わりが近づいていたのだ。
あんまり長居しても、エリちゃんの負担になってしまうし、俺も緑谷もこのあとインターン補講の後に文化祭の会議まで待っている。やる事は多積みだ。
「それじゃあね……!」
「俺はまたお見舞いに来るからね!」
「文化祭で会おう!」
「まって……!」
すっかりリンゴの皿もエリちゃん分の数個を残して、自分達の座っていたイスを片付け終えた3人で元気良くお別れの挨拶をして部屋から出ようとした所で、エリちゃんはベッドに座ったまま俺達を呼び止めてきた。
「え……?」
振り返ると、彼女は俺の方を見ていた。
「サイン、ください……!」
「あ……!」
「サイン!」
「そう言えば……約束してたんだね! よく覚えてたね!?」
思わず声を漏らした俺に対して、緑谷と通形先輩が驚いていた。
そうだ、約束していたんだ。治崎と対面した時、緑谷から彼女の手を解く直前に勢いで伝えてしまった事を、彼女は覚えていた。
子供は基本的に欲しがらなかった物だし、保須事件で目立ったとは言えまだ仮免の無名のヒーローに近いと思っていたから、俺としては初めてのサインだった。
「で、でも、何に書いたら……」
「普通は色紙だけど……病院には……」
しかしサインと言われたものの、すっかり忘れていた俺は何も持っていない。隣の緑谷も考えてくれてはいるが、彼も用意していたワケではない。
そこに答えるのは、先程から終始俺達の様子を相澤先生と眺めていた、エリちゃんの主治医だった。
「色紙、ありますよ?」
「「「え!?」」」
俺、緑谷、先輩で声を合わせ、主治医の方に振り返った。
「入院中の子供を元気付けるために、ヒーローがお見舞いに来るサプライズとか、よくやりますし」
その理由に俺も緑谷も納得した。なんか外国でそんなニュース何回か見た事あるけど、この世界ならよくある事なのかもしれない。子供にサプライズは嬉しいに決まっているのだ。
「えーと、色紙どこにやったかしら……?」
「俺、探すの手伝いますね!」
少し悩みながら歩こうとしていた看護婦に、手助けしようと通形先輩が駆け寄ってそのまま病室から出ていく。
「俺は少し、主治医と話をしてくる。すぐ戻る」
相澤先生も主治医もエリちゃんの様子を見て問題ないと判断したのか、少し2人で席を外してしまった。
「ゴメン僕、ちょっとトイレ行ってくるよ」
「え? 緑谷くん、サインしないの?」
「欲しがってるのは、君のだよ……!」
そう言って、少し気遣ってくれたみたいな表情をして、緑谷も病室から出ていった。
「「………………」」
後に残ったのは、俺と彼女のふたりきり。騒がしかった病室の中が少し静かになって、窓の外の風が流れていく音が聞こえる。
少し心が落ち着けただろうか、ベッドの前にしゃがんだ俺は改めて彼女にお礼を伝えた。
「エリちゃん……本当に、ありがとう……!」
「……わたしも……たすけてくれて、ありがとうございました……!」
目の前の少女の純粋なお礼を前に、俺の心が揺り動かされる。最近は峰田や切島と訓練だったりバカ騒ぎばっかだったから、心が浄化されていく思いだ。
「でも……なんで、俺だけ『お兄さん』なの……?」
そう、少しだけ疑問に残っていた。
俺とエリちゃんじゃ、ひとまわりぐらい歳の差がある。
見た目も緑谷と大差ないハズだ。
俺の問いかけに、エリちゃんは胸に手を当てて答えた。
「にてるきがするの……やさしいかんじが……」
「似てる……?」
ゆっくりと頷いた。
「やさしくてカッコいい……ヒーローがいるっていってた、あのひとに……!」
そう言って、エリちゃんは僅かに……笑っていた。
「おにーさんみたいに……わたしも、なりたかったから……!」
口元を半開きにして、嬉しそうに歯を見せてくる。
彼女と同じ様に。
「わたしも、ヒーローになるの……あのひとみたいに……!」
「トガおねーさん、みたいに……!」
「おにーさん……?」
「…………ないてるの?」
次回『文化祭準備』