切裂ヤイバの献身   作:monmo

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第四十五話

 

 

 

 

 

 クラス対抗戦を終えてから、しばらくは平穏な日々が過ぎ去っていった。

 俺は緑谷の『黒鞭』が使える様に特訓しながら、爆豪や峰田を特訓に誘ったり、麗日や瀬呂、蛙吹からアドバイスなんかをもらったり。気がつけば12月に突入。冬休みが近づいていると同時に、2学期もそろそろ終わりを迎えようとしていた。

 

 爆豪と轟も仮免補講最終日の試験を合格し、無事に仮免を習得した30分後には帰り道で遭遇したヴィランをとっ捕まえたらしく、数日後には大々的にニュースにもなっていた。

 けど、その放送されたニュースが酷いの何の。天然とはいえ真面目な轟がインタビュアーに受け答えるカットばっかで、態度の悪すぎる爆豪は数秒ぐらいしか映っておらず、轟の端っこから見切れてばかり。切島や瀬呂、上鳴、峰田と一緒になって、ゲラゲラと煽ってやった。

 そんな日の授業はミッドナイト先生と、特別講師のマウントレディの組み合わせてインタビュー訓練を行ったり、久しぶりの彼女との再会で授業そっちのけになったり、インターンが再開されないかと話したり、平穏な日々を過ごしていた。

 

 その日の夜。特訓を終えた俺は、緑谷と一緒に遅めの夕食を摂っていた所に、先に食事を終えていた芦戸が通りかかった。

 

「緑谷〜、最近どうなの? あの黒いヤツ。今日のインタビューの授業で、ビュンビュン振り回してたじゃん!」

 

「ああっ! 暴走は対抗戦のアレっきりで……切裂くんに使い方教わってるんだ! 瀬呂くんや梅雨ちゃん、麗日さんにもアドバイスもらってて……!」

 

 クラス対抗戦での暴走を、かなり間近で見る事になった彼女には気がかりだったのだろう。緑谷はご飯を食べていた箸を止めて、今日の訓練の話をしながら芦戸の心配を取り払おうとする。

 緑谷の台詞で芦戸は納得していたみたいだが、彼女の口先が今度は彼の後ろのテーブルで蛙吹と夕食を摂っていた麗日へと移る。

 

「ふ〜ん……! ……抱きついた甲斐あったねェ……!」

 

「むぶっ!?」

 

 わざとらしい声で呟いた彼女の言葉に、麗日がご飯をむせらせて動揺している。隣の緑谷にもガッツリ聞こえていたから、彼も少し赤面していた。

 そのまま麗日をイジり続けようとする芦戸を俺が止めようとすると、そこに入浴後で共同スペースにあるイスに座りながら、尻尾を櫛で溶いている尾白が窓を見て口を開いた。

 

「おっ! また雪だ」

 

「ホントだー!」

 

 すぐ近くにいた葉隠も声を上げて注目が大きくなった方向を見ると、夜空からしんしんと粒の大きな雪が降っていた。この勢いで降られたら、明日の朝には積もっていそうだ。

 

「積もるかな〜っ!?」

 

 窓の外に映る夜の降雪に、芦戸だけでなくココアのマグカップを持って近くを通りかかった砂藤も、声を上げる。

 

「最近よく降るなー」

 

「ニュースで積雪情報確認しようぜっ!!」

 

 切島がそう言いながら、共同スペースのつけっぱなしだったテレビのチャンネルを変えていく。前に降った時はテンション高く寒風摩擦を始めていたが、さすがに今の時間に外に飛び出すほどイカれてはいなかった。

 テレビで雪に関するニュースにチャンネルを合わせると、そこには天気予報でなく今月の一大イベントに関する情報も流れていた。

 

『今年は都心もホワイトクリスマスが期待できそうです!』

 

「えー!? いいなー!!」

 

「ロマンチックっ!」

 

 今度はテレビを見ながらはしゃぐ2人の後ろで、耳郎が画面を覗き込みながら疑問の声を上げる。

 

「えっ、静岡も!?」

 

「いえ、コレは東京のお話みたいですわね」

 

 八百万の説明通り、画面では東京の都心や少し早いイルミネーションが紹介されていたが、ソレを見て耳郎は大きくため息を吐いた。

 

「そっか……来週クリスマスなんだ……!」

 

「雄英に来てから、時間の経過が早く感じますわね……」

 

 砂藤が淹れてくれたのか、マグカップのココアを飲みながら少し頬の染まった八百万が、感慨深い表情でテレビを眺めていた。

 彼女の言葉に俺や耳郎だけでなく、誰もがウンウンと共感している中、画面を眺める上鳴と峰田が仲良くソファに座って項垂れている。

 

「結局クリスマスは彼女できねえままかぁ……」

 

「せっかく苦労して入ったってのに……さすがはヒーロー科最高峰の雄英ェ……!」

 

「お前ら本当にブレねえな……」

 

 遠い視線のまま呪詛の様に呟く2人に、テーブルの尾白の隣に座った砂藤が呆れた様な声を漏らす。

 

「でも、今の生活で彼女作ろうとか考えるの、凄いよ。俺じゃ出会いとかあっても、なんて言うか2の次になりそうだし……」

 

「………………」

 

 ヒーローを目指しているから、大切な人を最優先にできない。ストイックな尾白からの意見に、隣にいた葉隠が言葉を出せずに彼の顔を見ている気がした。

 しかし尾白の言う通り、忙しいのは峰田も上鳴もわかりきっていたハズだ。毎日校舎と体育館と訓練所と寮のローテーションで、この先の冬にはインターンが待ち構えている。この寮にいる異性達が、俺達の目を保養する花園なのも事実だった。

 

「他科の女子との交流もねーし……文化祭はライブしてはしゃいだら終わっちまってたし……」

 

「切裂〜、終業式終わったら外にメシでも食いに……イヤ、でもクリスマスだからカップルだらけだもんな……」

 

 それでもまだソファーに座ってため息を吐きながら愚痴が漏れ続ける2人を、遠くから蛙吹と耳郎がちょっとだけ鋭い目で睨んでいるのが見えると、唐突に2人の座るソファーに葉隠が飛びついた。

 

「ねえねえ、そしたらさっ! みんなでクリスマスパーティーしないっ!?」

 

「クリスマスパーティーっ!?」

 

「それだぁっ!!」

 

 彼女の提案を聞いた瞬間、暗い顔をしていた峰田と上鳴がソファーから飛び起きるなり、何をやろうかと話し始める。

 サンタクロースとクリスマスツリーに、豪華な料理と大きなホールケーキ。プレゼント交換や耳郎の生演奏など、好き勝手に話題を広げていく3人に続々と周りのクラスメイト達が集まってきた。

 

「お料理と歌……立食パーティーのようなものでしょうか?」

 

「ヤオモモは、とりあえず参加してみよっか!」

 

 八百万のクリスマスパーティーは、庶民の俺達には想像もつかないぐらい豪華なのだろう。なんだかよくわかっていない彼女を耳郎が優しく宥める。

 そして、庶民だけれどもクリスマスパーティーに疎い者達も反応を示す。

 

「うわぁ、僕こういうの初めてかも! いつも母さんと一緒だったし」

 

「俺もよくわからねえが、具体的になにすんだ?」

 

 出張で常に母親しかいなかった者と、お祝い事になんか無縁にさせられていた者。緑谷と轟の台詞を聞くと、自分が恵まれている人間だと再認識させられた。

 緑谷の純粋に期待している様子を見て、彼の背後にいた麗日がホッと息を吐いていた。

 もしかしなくても、クリスマスで一緒になるような相手が緑谷にはいない事に、安堵しているのだろう。クソナードには余計な心配である。

 

「それは具体的にどのような催しか? 場所や時程は?」

 

「まだなんにも決まってなーいっ!」

 

 飯田がリーダーシップを取り始めようとするも、葉隠はまだワイワイ騒いでいるのを楽しでいるみたいだった。まるで文化祭の時の準備期間を彷彿とさせる。

 そこへ、唐突に緑谷が手を挙げて彼女に問い尋ねた。

 

「あっ、葉隠さん。それってA組だけでやるの?」

 

「え? そーじゃない?」

 

「なんだ緑谷っ、彼女でもいんのかっ!?」

 

「そ、そーじゃなくてっ!」

 

 上鳴のからかいにブンブンと首を振って動揺しながら、緑谷はひと息入れて恐る恐る提案した。

 

「できるなら……エリちゃんも呼びたいなあ、って……!」

 

 緑谷のひと言に、周りのクラスメイト達がニコリと微笑む。クリスマスパーティーは史実だと、ただの息抜きの話でしかなかったから、いったいどんな経緯を歩んでいたのか知らなかった。

 

「きっと……今まで楽しいクリスマスとか、過ごせなかっただろうし……」

 

「おお……!」

 

「いいね……っ!」

 

 切島や芦戸も彼に賛同する声を漏らしていると、そこへテンションの高い葉隠が割り込んできた。

 

「じゃあ、エリちゃんのためにも楽しく盛り上げなくちゃね!」

 

「俺、デコレーションケーキ作るぜ!」

 

「文化祭と同じ様にもてなしつつ、そして俺達も楽しむ! みんな、羽目を外しすぎないように節度のある計画を立てるぞ!」

 

 砂藤や飯田も続いてクリスマスパーティーに賛同する中、エリちゃんを招待したのは緑谷だったんだと確信した俺は、そんな彼の肩を掴んだ。

 

「そしたら……俺がエリちゃんと相澤先生に話してみる!」

 

「うんっ、任せるよ!」

 

 まるで俺が適任だと言わんばかりに、緑谷は俺の提案を受け入れていた。

 

「おい爆豪! 全員参加だかんなっ!」

 

「ア゛あァッ!? 勝手に決めんなやッ!」

 

「さっすがっ! インタビュー全カットマンは言う事が違えっ!」

 

 瀬呂と上鳴が共同スペースの端を通り過ぎようとしていた爆豪を巻き込みながら、俺達は共同スペースの真ん中で飯田の指揮の下、クリスマスパーティーについての本格的な予定が立てられ始めた。

 

 外の雪も溶けるぐらいの、白熱した会議となった。

 

 

 

 

 

 ・・・♡・・・♡・・・

 

 

 

 

 

 クラスメイト達とそんな話をした、翌日の休日。

 

 俺は先生とエリちゃんの住む場所である、教師寮を訪れていた。緑谷と爆豪の喧嘩を仲介して以来、エリちゃんの様子を見に行く事もあったから、さほど緊張感は湧かなかった。

 

「……というワケなんで、エリちゃんを招待したいんですが……どうでしょう?」

 

「クリスマス会か……24日は終業式だが、それ以外には特に大きな予定もない。いいんじゃないか?」

 

 俺達の寮と全く作りが同じの共同スペースで、まったくレイアウトの同じソファーに座りながら話す俺と相澤先生。他の先生達は出かけているのか、姿はなかった。

 

「良いじゃないか、楽しそうで! エリちゃん、クリスマス会だってっ!」

 

「くりすますかい?」

 

 そこにはもちろん、さっきまで共同スペースで遊んでいたエリちゃんもいたし、療養中の通形先輩の姿もあった。個性が使えなくなった以上、今は普通の科目だけに参加してなんとか単位を揃えている状態だそうだ。

 俺の右側のソファーに座った通形先輩に対し、エリちゃんは俺の座っていたソファーに飛び乗って並んだ。少しだけ先輩が寂しそうな顔をしているが、クリスマスに興味を示した彼女に、嬉々として説明している。

 

「みんなで美味しい物食べたり、歌ったり! プレゼントを交換したりするんだよねっ!」

 

「よかったら先輩も来ますか?」

 

 史実で先輩が来ていたかどうかは忘れてしまったが、それとなく俺は提案してみるも、通形先輩の反応は悩んでいるみたいだった。

 

「うーん……俺、自分のクラスに呼ばれちゃってるんだよね。エリちゃんの事を知ってるのは、君のクラスの方が多いし……両方に顔出すのも悪くないけど……」

 

 俺達の寮から先輩の寮までは、結構な距離がある。移動は不可能ではないが少し大変そうだ頭に手を当てて悩んでいる先輩に対して、隣に座るエリちゃんは機嫌良さげに鼻を鳴らしながら、俺の方に体を向けた。

 

「おにーさん……! わたし……えーぐみのひとのこと、もっとしりたい……!」

 

 彼女の明るい表情を見て、俺も先生も先輩も考えは自ずと決まっていった。

 

「そしたら、今回は切裂くんに任せるんだよね! ちょっと寂しいけれど、エリちゃんの事お願いね!」

 

「それもあるが通形、お前3年だろ。時間は有限……自分のクラスメイトの事も考えてやれ」

 

「せ、先生……?」

 

「先生って、めっちゃ優しい人ですよね!」

 

「おまえらな……!」

 

 相澤先生が気を遣ってくれている事に先輩と一緒になって感動を覚え、それを先生に睨みつけられてから先輩はどこからともなく取り出したクリスマスやサンタクロースの絵本や、カレンダーを取り出してエリちゃんに見せつける。

 

「エリちゃん! 当日は一緒にはいれないけど……せっかくだから、クリスマスのなんたるかを予習しておこうね!」

 

「くりすますのなんたるか……!」

 

 彼女の興味はイベント事に移ったのか、通形先輩の絵本やカレンダーを広げながら喋る話に、エリちゃんは目を輝かせながら聞き入っている。勢い余ってクリスマス以外の別の行事まで教える勢いだ。

 そんな2人はさておき、俺は相澤先生へと視線を戻して当日の催しを軽く説明する。

 

「先生、エリちゃんの服のサイズわかりますか? みんなでサンタの格好しようって話になったんで、エリちゃんにも着せようと思ってまして……」

 

「身長は110cmだった気がするが……彼女の私服を比較した方が確実だな。後で1着持っていくといい」

 

 彼女の部屋着に合わせれば、八百万も創造するのが楽だろう。気がつけばクリスマスではなく、年明けてイースターや節分、バレンタインまで通形先輩に教えられているエリちゃんを眺めて、俺は更に重要な話を相澤先生に説明する。

 

「はい。それと……プレゼント交換も考えてます。さすがにエリちゃんから出すワケいかないので、こっちで何か用意しますけど」

 

「ん、まあ……そこは彼女の意思次第だな。機会を見て本人と相談してみよう」

 

「ありがとうございます」

 

 そこまで先生と話し終えてから、俺は彼女の私服を借りるべくソファーから立ち上がる。そして、少し寂しそうな顔を見せるエリちゃんに、俺はもう一度顔を向けた。

 

「エリちゃん……楽しみにしてて……っ!」

 

「……うんっ!」

 

 彼女の明るい返事を聞いて、このクリスマスパーティーも絶対に良い物になると確信しながら、俺はエリちゃんと別れた。

 今回は文化祭と違って不安要素など何もない。彼女のために、思いっきり楽しむ事にしよう。

 

 

 

 

 

 相澤先生とエリちゃんの話を終えて俺が戻ると、お昼過ぎからは寮の中ではパーティーに向けての準備が始まっていた。

 まずは当日着るサンタのコスプレ衣装を作ってもらうべく、俺はサンプルで借りたエリちゃんの服をデザイン担当の瀬呂に見せる。

 

「ん〜、ざっとこんなモンか?」

 

「完璧だよ、瀬呂くん」

 

 彼女の私服を見てから、彼はササッと画用紙にエリちゃん用のサンタコスの描いてみせた。デザインの原案は女子達らしいが、それをエリちゃん用に合わせただけでも瀬呂は器用である。

 

「ヤオモモちゃん、コレお願いっ!」

 

「ふふっ、任されましたわっ!」

 

 史実で見た物と変わりない気のする衣装を確認した俺は、その絵を八百万に渡して実物を創造してもらう。

 

「ヤオモモ今回も、めっちゃ働いてもらってるからねー!」

 

「他の作業は俺達に任せてよ」

 

「エリちゃんやみなさんに楽しんでいただくためですもの! この様な催しに参加するのも初めてですし……何事も勉強ですから……!」

 

 通りかかった葉隠と尾白が運んでいたのは、俺達の着るサンタの衣装。爆豪用に背中から羽織れるタイプのヤツも用意されていた。人数分の衣装を作る負担も文化祭で慣れたのか、今回の飾り付け係のメインでもある八百万は疲れた様子もなく、むしろプリプリと張り切っている。

 

「ツリーの方は?」

 

「だいぶできあがってるよ!」

 

 そんな彼女が実家から送ってきたらしい巨大なクリスマスツリー……それでも小さいヤツを選んだらしいが、障子よりも遥かにデカいツリーに緑谷と麗日が一緒になって浮かびながら飾りつけをしている。

 

「こんなんかな?」

 

「麗日さん、てっぺんの星ちょっとズレてる」

 

 自然と距離の近い2人を、誰かが声をかける事なく眺めていた。ツリーの下側でモールや電飾を飾り付けていた障子も、マスク越しだが穏やかな表情で見上げている。

 ここに参加する余積は、ないだろう。俺は自分のやれる事を1番活かすべく、砂藤達と合流した。

 

「クリスマスつったら七面鳥だよな?」

 

「作れるの?」

 

 ある程度の料理はランチラッシュの出前に任せるつもりだったが、メインディッシュ以外にも頑張りたい品があるのか、共同スペースのキッチンで集まった砂藤とメニューについて話していると、メモ用紙にガッツリと作る料理の品々を描きながら、彼は俺を見て楽しそうに笑った。

 

「俺の部屋のオーブンがそのまんま使えるぜ! 他にも使えそうなモンがあるから!」

 

「さっすが! 飾り付けや衣装とかは人が足りてるみたいだからさ……俺も手伝っていい?」

 

「マジか、助かる!」

 

 俺の料理の腕は林間合宿の自炊で砂藤からも信頼されている。包丁係がいるだけでも作業は早くなるだろう。

 

「お、切裂君! 伝達役ご苦労様。エリちゃんは来れそうかい?」

 

「うん。プレゼントは、まだわからないけど……」

 

「そうか。事情が事情だからな……! となると、不足分の粗品も何か考えないとな」

 

 何にすべきかと顎に手を当てて考える飯田の背後から、一緒に飾りを運んでいた轟が顔を見せる。

 

「今の所、爆豪の分とで2つか?」

 

「えっ!? かっちゃんも来るの!?」

 

 その彼の台詞を遠くからでも聞き逃さず、ツリーの電飾を飾り付けていた緑谷が振り返った。

 あの男がクリスマスに外出するハズないし、どうせ寮の中にいるんだから強制参加は確定だ。周りの陽気なクラスメイト達も完全に、彼を巻き込むための臨戦態勢は整っているそうだ。

 

 辛い物、多めに用意してやろ。猛獣を罠に誘い込むためのエサでも作ってるみたいだ。

 

「それにしても、プレゼント迷うな……」

 

「持ってる物ならなんでもいいって言ってたけど……」

 

 壁や窓に飾り付けをしている切島と尾白が、作業しながらそんな声を漏らしていると、それを聞き逃さなかった葉隠が元気良く伝える。

 

「ゴミじゃなきゃ、なんでもいいでしょ! みんなっ、ラッピングいっぱいあるから、好きなの持ってってねっ! ただし、峰田くんは公序良俗に反する物は入れない事!」

 

「わかっとるわいっ!」

 

 名指しで指摘されて思わず叫び返す峰田。ミスコンであれだけの活躍をしたにも関わらず、まだ『オッパブ』の反響が残っているのだろう。

 そんな会話からプレゼントの中身についての話題が繰り広げられている中で、ツリーの飾り付けが終わって床に着地した緑谷が少しだけ申し訳なさそうに呟く。

 

「でも、なんか……いいのかな……?」

 

「え?」

 

 俺の顔の向いた先、緑谷は俯いたまま話を続ける。

 

「そりゃあ……みんなが楽しむのはもちろんなんだし、エリちゃんを歓迎してくれるのは凄く嬉しいけど……実際、エリちゃんと関わりがあるのは僕らだけだし、ちょっとみんなには負担かけちゃってるっていうか、その……」

 

「う……」

 

 確かに、緑谷の言う事には一理ある。これからインターンも始まる忙しい時期になるが、突然やってきた子供と関わるのも得意不得意はあるだろう。うちのクラスは優しいヤツらばかりだから心配はしていないが、少しプレッシャーになる者はいるハズだ。

 

「だからこそ、じゃないかしら?」

 

「「え?」」

 

 その迷いを断ち切ったのは、峰田と一緒に葉隠からラッピングを受け取っていた蛙吹だった。

 

「エリちゃんが無関係みたいに言うけれども、これからみんながインターンに行くって事は……誰かが『エリちゃん』みたいな子に会う可能性があるって事よ」

 

「そうそう! みんなハッカイサイの事件が他人事なんて、考えてないんだぜ……!」

 

「俺だって事件の後に、顔見る事になったけどよ……関係ないなんて思わねえしな……!」

 

「デクくんも……ほかのクラスメイトがエリちゃんみたいな子連れてきたら、めっちゃ楽しんでもらおうとするやろ? 心配いらんよ!」

 

 峰田や切島、麗日も一緒になって彼を励ます。

 

 浮かれすぎて忘れるところだった。

 

 彼らもまた、ヒーローなのだ。

 

「そっか……!」

 

「そうだよね……!」

 

 みんなの声を聞いた緑谷も、俺も自然と納得していた。

 

「なあ、ラッピングってどうやるんだ? 今までやった事ねえから……」

 

「あっ、僕も教えて欲しい」

 

「ケロっ、大きさはどのぐらいかしら?」

 

「梅雨ちゃん、オイラにも頼む」

 

 緑谷の心の中にあった蟠りも溶け、クラスメイト達と穏やかな気持ちに囲まれる中で準備は順調に進んでいった。

 

 

 

 

 

 ・・・♡・・・♡・・・

 

 

 

 

 

 そんなワケで、終業式も終わったクリスマス当日。

 

 朝からガッツリ雪も降って夜になった時はニュースの通り、外はホワイトクリスマスになっていた。

 寮の共同スペースの中を、無重力になって浮かび上がる大型のテーブルが、麗日によって引っ張られる。

 

「机はどの辺に置くー?」

 

「お皿はお料理が運ばれてから並べましょうか?」

 

「いいよー! もう並べちゃって!」

 

「男子の席とも合わせるから!」

 

 降り積もる雪にキャアキャアと騒ぎながら、テーブルと食器の準備を始めている女子達は、八百万の用意してくれたサンタ服に着替えた姿をしている。上は俺達の着るサンタ服と大差ないが、下は丈を攻めた短いスカート仕様だった。

 

「クリスマス最高……!」

 

「そうだね峰田くん。運んで」

 

 そんな女子達のサンタコスを見て、頭の上に両手を上げて料理の皿を運んでいた峰田が呟く。ただ、いつも通りの彼なのに誰も咎めなかったのは、蛙吹にしか目がいってなかったからだろうか。

 ちなみに峰田はもちろん、俺もみんなと同じサンタ服を着ている。男子用のは普通のズボン。俺のサンタ帽の先っちょには、包丁のオモチャが付けられていた。

 

 そんな俺達が女子の用意したテーブルに俺達の運ぶ料理が続々並べられていく途中、いきなり共同スペースの奥から陽気な声が響き渡る。

 

「メリークリスマス! みんな、良い子にしていたかい?」

 

「え?」

 

 振り返ると、そこにいたのは雪と同じ色合いをした大きな袋を担いで、顔のほとんどを覆ってしまうフワッフワッの髭。

 

 

 

 絵本で見たままのサンタクロースがいた。

 

 

 

「誰だーーーーーッ!!!!?!」

 

「いやッ! 誰だかわかるけどッ、誰だーーーーーッッッ!!!!!!!」

 

 よく見ればメガネをかけているから、飯田なのはわかる。妥協をしない性格なのはクラスメイト達もわかってはいたが、あまりのクオリティの高さにその場にいた全員が驚き、そして爆笑した。

 

「ガチサンタ、キタっ!!」

 

「誰だ本物呼んだヤツっwww!!!」

 

「飯田くん、凄いよね……」

 

「本職さながらですわ……!」

 

「同い年でこんなに似合う人っているwww!!?」

 

 飯田の前でギャアギャア騒いでいるクラスメイト達を見るのも楽しかったが、テーブルと食器が並べられた次に用意するものがあるので、俺はクラスの輪から離れてキッチンの方からやってくる砂藤や常闇達の方へと向かった。

 

「おーい、メインディッシュ用意するから、そこのスペース広げてくれや」

 

「あっ、ゴメン……って!」

 

 謝る緑谷の視線の先、用意されたのはデザートのパフェとかに使う様なガラスの容器を何倍にも大きくした様な器に、これでもかと飾り切りがされたフルーツの盛り合わせ。

 もうひとつは銀のトレーに並べられたマシュマロやクッキー、ベビーカステラに囲まれて鎮座する、チョコレートフォンデュの台がセッティングしていた。すでにチョコレートは流れ始めておりココからでもチョコの良い匂いがする。

 

「店っッ!!?!?」

 

「砂藤の私物だそうだ」

 

 緑谷のツッコミに対して、チョコフォンデュの土台をダークシャドウと一緒になって慎重に用意している常闇が冷静に告げる。そこにフルーツのカッティングを担当していた俺も続く。

 

「ごめん、気合いが入りすぎた」

 

「こんなの、店で頼んだら数万いっちまうんじゃねぇっ?!」

 

「果物の金額は数千円ぐらいだ」

 

 大きな七面鳥の乗った皿を複製腕で運んでいた障子が、余った腕で運んでいるサラダやら残りの料理の皿をテキパキと並べ、テーブルの周りが一気に華やかになっていく。

 

「最後の晩餐……!??」

 

「ホラ麗日、真ん中座って」

 

 ヨダレを垂らしながら、混乱してワナワナ震えている麗日を耳郎がテーブルの真ん中である、イチゴのデコレーションされたホールケーキの目の前に誘導する。

 

「峰田は梅雨ちゃんの隣ね」

 

「え? うぉっ、ちょ、待てよ!」

 

 耳郎のひと言により、本人の意思を無視して障子からクラスメイトへと胴上げで運搬されていく峰田。最後は蛙吹の舌に巻かれて彼女の隣に無理矢理座らされていたが、そこをそそくさと通りかかる爆豪が目に映る。

 

「あっ、爆豪みっけ!」

 

「襲えーっ!」

 

「ア゛ぁッ!? なにすんだコラッ!」

 

 芦戸と葉隠に襲われて揉みくちゃになりながら、爆豪はサンタ服を着せられている。女の子相手だからか、やたらめったらに反撃できずにいた。

 こうして問題児も合流し、共同スペースの大広間にクラスメイト全員が集合してから、パーティーの準備が整った。

 

「コーラ取って!」

 

「俺、ウーロン茶!」

 

「クラッカー用意した?」

 

「ココにあるぞ!」

 

「みんな準備はいーい?!」

 

「ハイ、せーのっ!」

 

 

 

 

 

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「メリークリスマスっ!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

 

 

 

 

 

 ドタバタしながらも、葉隠の号令に合わせて一斉にグラスを掲げる者と同時に、数人がクラッカーを弾いてクリスマスパーティーは無事に始まった。

 乾杯して料理を食べ始めてから数分後、寮の扉が開いて相澤先生がヌッと顔を出した。

 

「遅くなった。もう始まってるか?」

 

「ヤイバおにーさん……!」

 

 それに続いて、先生の足元からひょっこり中へと入ってきたのは、俺達と同じサンタ姿のエリちゃんだった。

 

「トリックオア……とりーと?」

 

「違う。混ざった」

 

 開幕一番、挨拶を間違えたエリちゃんに相澤先生が修正する中、俺や緑谷、麗日、蛙吹、峰田、切島が一斉に彼女の前へと集合する。

 

 

 

「「「「「「サンタのエリちゃん!」」」」」」

 

 

 

「かっ……カワイイっ!!!」

 

「似合ってるねえ!」

 

「おにはーそと! おにはーうち!」

 

「エリちゃん、それは2ヶ月先」

 

 通形先輩が張り切りすぎたのか、麗日と緑谷の前で全然違うイベントで騒ぎ始めるエリちゃんを俺が止める。

 そこに切島がキョロキョロと辺りを見渡してから相澤先生に尋ねた。

 

「通形先輩は、いないんスか!?」

 

「通形はクラスのみんなと過ごしてるよ。ホラ、行っておいで」

 

「うん!」

 

 先生の言葉に納得している切島を通り過ぎて、エリちゃんがクラスメイト達の集まるテーブルへと駆け出す。

 

「カワほわ〜!」

 

「タマゴにえ……かいた!」

 

「ソレはイースター!」

 

「エリちゃん! リンゴジュース飲む?」

 

「うん!」

 

 語彙力のおかしくなってる麗日は置いといて、芦戸の声に惹かれていったエリちゃんの背中を見届け、俺は相澤先生の前に身長の大きめのサンタ服を見せつける。

 

「先生も着ます?」

 

「……遠慮しておく」

 

 やんわりと断られてしまった。だが、俺はそんな目的だけで先生に話しかけたワケではない。

 俺はクラスメイト達にチヤホヤされているエリちゃんの、角の部分に注目していた。

 

「角、また大きくなってますね」

 

「ああ……前向きだよ。お前の言葉をちゃんと受け止めてる」

 

 クラス対抗戦の翌日、俺は先生や先輩と一緒に物間を引き連れてエリちゃんの所に行ってきた。

 『雄英の負の面』と教え込んだ物間が時折暴走しそうな所をシバきながら、相澤先生の実験に付き合わせた。彼の『コピー』でエリちゃんの『巻き戻し』を使えれば、彼女の個性の制御を教える手掛かりになるかもしれないし、通形先輩の個性を取り戻す事ができるかもしれなかったのだ。

 結果として物間のコピーでは彼女の個性を使う事はできなかったが、その時は緑谷に変わって俺が彼女に語りかけた。

 

 自分の命を救ってくれた事を、忘れないでほしいと。

 

 そうしてその日も、俺は自分の刃で彼女にリンゴのウサギを作ってあげた。

 

「お前の命を救った成功が、間違いなく彼女の支えになっている。今後とも、長い目で見守っていこう」

 

「わかりました……」

 

 彼女の個性を制御する訓練ができる日も、近いかもしれない。その時は、どうかそばにいてあげたいものだ。

 それまで、俺はエリちゃんのためにできる事をする。

 

 

 

 

 

「全力で……お兄ちゃんを遂行する!!」

 

 

 

 

 

「おいちょっと待て」

 

 先生に呼び止められるも、俺はズカズカと歩きながらクラスメイト達に囲まれているエリちゃんの所へと向かった。

 上鳴と轟の間に挟まれてカットフルーツを食べさせてもらう光景は、なんだかホストに接待されているみたいだ。周りの女子数名も、少し脱力した様子で彼女の事を見ている。

 

「エリちゃん、ケーキどう?」

 

「甘い…………ウフフ……っ♪」

 

 そこにケーキを切り分けた俺も加わり、フォークで食べさせてもらってから頬にホイップを付けたまま上機嫌な彼女の笑顔を見て、この場にいる全員が顔を綻ばせていた。

 俺とエリちゃんの席を交代した上鳴は、飲み物のコップを持ったまま耳郎に向かって声を発する。

 

「耳郎〜! 1曲歌えよ〜!」

 

「酔っ払いかっ!」

 

 怒りつつも満更でもなさそうにギターを持ち始める彼女は、クラスメイト達の視線の集まる窓の前に立つも、それまで不機嫌な顔をしていたサンタ姿の爆豪に指を差す。

 

「爆豪っ、ウチの歌ぐらい聞いてってよ。絶対に感動させてやんだから!」

 

「あ゛〜〜〜ッ、勝手にしろ……!」

 

 女子に無理矢理サンタ服に着替えさせられ、座席を間に挟まれて逃げ道を封じられている彼は、自暴自棄になったのか諦めたような返事をした。

 

「いいじゃねえか、バンドやった仲なんだから。それに腹減ったろ?」

 

 砂藤も彼の悪態を宥めながら、目の前でクリスマスソングを歌い始める耳郎に視線を向ける。そこにスルリとエリちゃんの席を抜けてきた俺が、彼の前に皿を差し出す。

 

「ホラ、爆豪くん。ピリ辛タンドリーチキン」

 

「いらねぇ───ムグっ!」

 

 俺が口元に押し込んだ骨付きのチキンを、爆豪は吐き捨てる事なくモゴモゴとそのまま食べ始めていた。辛さが足りねえと感想まで貰って、俺も砂藤もニヤリと笑ってしまうぐらいの達成感を得ていた。

 その内、エリちゃんを含めた全員が耳郎の歌の合いの手に乗り始める。文化祭では踊っていたから聴く事に集中できなかったが、他のクラスメイト達も聞き入っていた。

 

 彼女の生ライブが終わったら、次はいよいよプレゼント交換が始まる。全員でプレゼントを1箇所に固めて紐を括り付けてから、ランダムに選んだのをせーので同時に引っ張る方法だ。

 常闇の持ってきたバカデカい大剣がクッソ目立つ。あと、何個か信じられないぐらい重いヤツもあった。アレ誰のだ。

 もちろん、そこには俺のプレゼントも用意されている。手の平サイズの小さな箱だが、中身は誰に当たってもいいや。

 

 そうしてみんなのプレゼントを集積しようとしていると、麗日がエリちゃんの持っている包みに気づいた。

 

「あれ、エリちゃん何か持ってきてるん?」

 

「コレ……せんせーとルミリオンさんとそうだんして……がんばってつくりました……!」

 

 彼女が持っていたのは、自分で用意したというプレゼント。それを聞いたクラスメイト達は思わず、彼女の目の前で声を上げる。

 

「エリちゃんからプレゼント頂きましたー!」

 

「嬉しいわ、ありがとう!」

 

「スゲぇェェェェッっ!!?!」

 

「エリちゃんにできる事ができねえ爆豪wwwwww!!!!!」

 

「俺も用意してやったわ、クソがッ!」

 

「良かった、本当に……良かった……!」

 

「え? デ、デクくんっ!?」

 

 エリちゃんからのプレゼントにクラスメイト達が騒いでいる中、緑谷がなぜか涙ぐんで麗日に心配されていた。なんだ、キュートアグレッションか?

 

 こうして、エリちゃんのプレゼントも追加されてから、全員で声を合わせて紐を引っ張るプレゼント交換が始まった。

 芦戸と飯田がクソ重いのを引いてビックリしていた。プレゼントは誰が誰のとは全く聞いてはいないが、ずっと彼らと一緒にいた俺には一目瞭然だった。

 

 

 

 

 

 芦戸に当たったのは、切島のプレゼント。

 中身はダンベル。どおりで重いワケだ。本人から使い方教わってたけど、彼女の嬉しそうな顔が印象に残った。

 彼女はもう、俺がいなくても大丈夫だろう。

 

 

 

 蛙吹に当たったのは、峰田のプレゼント。

 中身はキーホルダー。しかも、峰田のモギモギと瓜二つな小さい紫色のパールが付いた代物だった。

 いったい何処でそんなモノ手に入れたのかと問い尋ねると、なんと近場のドンキ。つまり、峰田の人気をどっからか嗅ぎつけて、勝手に商品化されてしまったらしい。だから、商品名に『峰田』や『グレープジュース』の名前は使われていない。訴えとけ。

 ただ、当の梅雨ちゃんは嬉しそうにしていた。付属だったサンタカラーのマイクロビキニと網タイツは、即ゴミ箱に捨てられていたが。アレ、男に当たったらどうするつもりだったんだ。

 

 

 

 麗日に当たったのは、緑谷のプレゼント。

 中身はデフォルメ化されたオールマイトのぬいぐるみストラップ。いわゆる『ねつけ』だ。余程のレア物なのか、テンション高くブツブツブツブツと説明をする緑谷を前にしても、彼女はもう慣れっ子だった。

 

 

 

 飯田に当たったのは、八百万のプレゼント。

 中身は金塊。切島のプレゼントより倍以上重いと思ったし、飯田以外に当たっちゃダメなヤツだった。贈与税の暴力が過ぎる。

 

 

 

 尾白に当たったのは、葉隠のプレゼント。

 中身はぬいぐるみ。部屋王決定戦の時に彼女のベッドの上に置いてあったヤツだ。ちょっとくたびれてるから、抱き枕に使っていた物だと思うが……コレ尾白、寝れなくなるんじゃないか?

 

 

 

 上鳴に当たったのは、耳郎のプレゼント。

 中身はロックバンドのCD。さっきまで彼女が歌っていたヤツのだ。今時CDも珍しいが、パソコンのある上鳴なら聞くのは簡単だろう。無駄にうるさいぐらいテンションの上がっている彼を見て、耳郎が真っ赤になっていた。

 

 

 

 切島に当たったのは、障子のプレゼント。

 中身はたこ焼きソースだった。本人曰く、たこ焼き以外にもイケるとのこと。あの殺風景な部屋から何を出すのかと俺も気になっていたが、まさかの調味料とは予想外だ。

 もしかしなくても芦戸のプレゼントが欲しかったのか切島は苦笑いしていたが、今度のインターンでファットガム事務所に持っていこうと言っていた。

 

 

 

 口田に当たったのは、瀬呂のプレゼント。

 中身はアジアンテイストなカーディガン。頭が入るか瀬呂が心配してたが、問題ないそうだ。

 

 

 

 砂藤に当たったのは、爆豪のプレゼント。

 中身は業務用サイズの鷹の爪。砂藤以外に当たったら嫌がらせでしかないだろう。砂藤でもギリ嫌がらせだぞ。

 

 

 

 障子に当たったのは、エリちゃんのプレゼント

 中身はリンゴ飴だった。なんと彼女の手作り。興味を示したのか、砂藤が今度アップルパイを作ろうかと話をしていた。着々と彼女の世界が広がっていく事に、俺も嬉しく感じた。

 

 

 

 耳郎に当たったのは、上鳴のプレゼント。

 中身はバスケットボール。彼のドンキ部屋にあった物だ。彼女はバスケやる性格じゃなかったが、上鳴の物である事はすぐ察しただろう。鼻を鳴らして自室へと運び込もうとエレベーターに乗る彼女の姿が、印象的だった。

 

 

 

 瀬呂に当たったのは、芦戸のプレゼント。

 中身は派手な色合いのマフラーだった。これからの冬に使える物だが、どうやら新しい物を買いたいらしい。

 

 

 

 常闇に当たったのは、砂藤のプレゼント。

 中身はクッキーの詰め合わせだった。もちろん本人の手作り。市販品顔負けの綺麗な出来栄えにクラスメイトみんなで欲しがったが、後で全員に配る分も用意しているとのこと。気配りもできるシュガーマンは、今日も輝いている。八百万の紅茶も進みそうだ。

 

 

 

 轟に当たったのは、俺のプレゼント。

 中身はミニポーチ付きの十得ナイフ。さっそくヒーローコスチュームの装備に加えると、素で嬉しそうにしていた。

 

 

 

 葉隠に当たったのは、尾白のプレゼント。

 中身はノートとシャーペンといった、普通の勉強道具だった。貰った本人はこれ以上ないぐらい嬉しそうにしていが、尾白は自分だけ地味な物をプレゼントに選んでしまったと、なぜか彼女に謝っていた。

 もちろん、葉隠がそんな事気にするハズもなく、数分後には仲良く同じソファーに座ってカットフルーツのバナナをチョコフォンデュにして仲良く分け合っていた。

 

 

 

 爆豪に当たったのは、飯田のプレゼント。

 中身は普通の勉強道具だった。それにしても、葉隠はプレゼントの名刺を見ないまま、尾白だと確信して当てていた。飯田のプレゼントと内容物もほぼ同じなのに、どうやって当てたのだろうか?

 

 

 

 緑谷に当たったのは、麗日のプレゼント。

 中身は市販の切り餅のアソートパック。緑谷もすぐ麗日のプレゼントだと気付き、量も多いしせっかくだからお汁粉にしよう、みたいな事を言っていた。

 余談だが、食べ終わった後の餅の袋を彼が残していた事を、俺はだいぶ後になって知る事となる。

 

 

 

 峰田に当たったのは、蛙吹のプレゼント。

 中身は蛙の形をした手鏡だった。峰田の髪の毛は見ての通りモギモギそのものなのだが、一応ドライヤーとかで手入れはするらしく、彼女のプレゼントが当たってご満悦だった。

 

 

 

 八百万に当たったのは、口田のプレゼント。

 中身はウサギ型の白いスリッパだった。口田サイズだから少し大きかったかもしれないが、本人はプリプリしながら喜んでいた。

 

 

 

 俺に当たったのは、轟のプレゼント。

 中身はちょっとお高めな市販品の蕎麦だった。見た瞬間に轟とわかって、本人が不思議そうな顔をしていたが、コレをプレゼントに入れるヤツはお前以外ありえない。年越し蕎麦、決まったな。

 

 

 

 そして、エリちゃんに当たったのは、常闇の大剣。みんなハラハラしながら見ていたけど(特に尾白) 本人が嬉しそうにしているから、いっか!

 

 

 

 

 

 プレゼント交換が落ち着いて、ギターの調子の上がってきた耳郎がゆったりとしたバラードを歌い始める様子を、八百万や障子など大人しいクラスメイト達が聞き入っている中、俺達は別のテーブルでエリちゃんと一緒にババ抜きをしていた。どうせだから相澤先生も誘って。

 負けた人は、相澤先生の前でオールマイトのモノマネ披露。先生が負けた場合は、次にMs.ジョークに「結婚しよう」と言われたら「子供は何人欲しいか」と言い返す事にさせた。

 

 そんな余興も終わってから、それまでずっと俺の隣に座っていたエリちゃんがソファーから飛び降りると、相澤先生の元へと近寄って何かを受け取った。

 

「エリちゃん?」

 

「おにーさん、コレ……!」

 

 そのまま今度はテクテクと俺の前までやってきた彼女は、背後に隠していた小さな包み……ご丁寧ににリボンまで巻かれている煌びやかな袋を俺に渡してきた。

 

「え……?」

 

「お前に渡したいプレゼントだそうだ」

 

 相澤先生の付け足してきた台詞を、俺はまだ困惑したまま繰り返してしまった。

 

「えっ……! でも、プレゼントは……」

 

「だから、誰かじゃなくて『お前』に渡したいプレゼントだ」

 

「……♡」

 

 更に付け足した先生の台詞で、俺がどういう事なのか理解した直後、目の前でポッと頬を染めるエリちゃんの瞳が、眩しいぐらいキラキラと輝いていた。

 それを側から見ていた瀬呂が、上鳴や葉隠を巻き込みながら手を叩いて大笑いしていた。

 

「アッハハハッwww! エリちゃんやる〜ぅっ!!」

 

「ホラッ、お礼言わないと! 切裂くん!」

 

「あ、ありがとう……エリちゃん……!」

 

 周りのクラスメイトに茶化されながら、俺は彼女の前にしゃがみ込んでプレゼントを受け取る。好き放題に言ってくるが、本人の前だから「やめて」とも言えない。

 

「おにーさん……あけて……!」

 

「う、うん……!」

 

 渡されたプレゼントの中身は、障子と同じくリンゴ飴。しかし、彼の物と違って飴のダマが少ないし、塗り方も均一で宝石の様な輝かしさがある。

 相澤先生曰く、今まで渡されて1番嬉しかった物を選んだそうだ。リンゴ飴は文化祭が終わってトガちゃんとの密会の後すぐ、俺が自分で作った物をプレゼントしたから、お礼が返ってきたみたいで嬉しかった反面、ますます緑谷に申し訳なくなってしまった。

 

 俺は彼女の目の前でリンゴ飴をかじる。覚えのある飴の甘さに、リンゴの酸味が合わさって心地良い。

 

「お、おいしいよ……!」

 

「……うんっ♡」

 

 俺の感想を聞いたエリちゃんは満足した表情で、頬を真っ赤に染めながら早足で相澤先生の方へと行ってしまい、俺はリンゴ飴を持ったまま取り残される。

 そこに芦戸が、今になっては珍しく俺の顔の近くに寄った。

 

「で、どうすんの?」

 

「え、どうするって……」

 

 俺の問いかけに、イタズラっぽい笑みを浮かべたまま、彼女は囁いた。

 

 

 

「エリちゃんの事泣かしたら……私、承知しないからね♪」

 

「お、おい……!」

 

 

 

 それをお前が言うのかと叫んでしまいたくなったが、彼女の久しぶりに向けられた笑顔に、俺は何も言い返せなかった。

 

「瀬呂くんのプレゼント……オシャレでいいね……っ!」

 

 茶化されっぱなしの俺に救いの手を差し述べたのか、口田がプレゼントのカーディガンを用意した本人に見せて、瀬呂の事を褒めた。

 

「おっ? へへっ、それほどでも! 芦戸のマフラーも、結構良いぜコレ!」

 

「ホントにー? ありがと!」

 

 サンタ姿のまま派手なマフラーを巻いて自慢げに鼻を鳴らす瀬呂に、そのまま話題が服装のセンスへと移り変わっていく中、話に馴染めない緑谷が少し離れた所で眺めていた。

 

「みんなスゴいなぁ……前のインタビューの授業でもだけど……僕、見た目じゃ絶対売れないって言われたから……センスある人、尊敬するよ」

 

 そんな緑谷の呟きを上鳴が拾った。

 

「瀬呂にプロデュースしてもらったら変わんじゃね!?」

 

「え、僕が!?」

 

「緑谷地味めだから、案外化けるかも!」

 

 芦戸も乗り気になって緑谷のコーディネートを勝手に始めようとするが、彼の陰に隠れていた麗日が少しむず痒そうな声で言葉を漏らした。

 

「で、でも私は……地味めなままで良いと思うんやけどなあ……」

 

「そ、そうだよね……僕なんかが……」

 

「デ、デクくんはそのままでもカッコいいんやけど……!」

 

 

 

 

 

 一瞬、麗日が何を言ったのか理解できず、俺は顔をグルンと見返した。

 

 

 

 

 

「あっ!? いやっ! パンチとか、コスチュームとかっ!!!!!」

 

「あっ、ああ、うっ、うううううんっ! そ、そそっ、そそそそうだよねっ!?!?!」

 

 無意識だったのか、自分で言った事を慌てて訂正しながら、身振り手振りで必死に誤魔化す麗日を前に、緑谷までワタワタ落ち着かない態度を繰り広げる始末。

 お互いに俺の持ってるリンゴ飴よりも顔を真っ赤にして、頭から湯気を出すその光景にクラスメイト達は呆れながらも、どこか微笑ましく2人を見守っていた。

 

「オ゛イ゛ラ゛達はいったい何を見せられて───ムグッ!?」

 

 我慢できずに喋ろうとした峰田の口を蛙吹の舌が塞ぎ、そこに芦戸と瀬呂が俺の後ろに隠れた。

 

「ヒソヒソ……(いいから! いいから!)」

 

「ヒソヒソ……(もうちょっとだけほっといてやろうぜっ!)」

 

 そもそもこの男、パーティーが始まってからずっと蛙吹の隣に陣取っていたくせに、他所に嫉妬してどうすんじゃ。

 

 

 

 

 

 プレゼントを渡したエリちゃんや峰田が眠くなってくる時間に差し掛かった時。騒がしかったクリスマスパーティーもようやく鳴りを収め、エリちゃんと相澤先生を見送ってから俺達全員で後片付けが始まった。

 ツリーはしばらく置いておく事にして、テーブルの食器や壁と窓の飾りを撤収させて清掃を終わらせると、切島がサンタ姿のままソファーに大きく座り込んだ。

 

「それにしても『インターンに行け』だなんてなっ! 雄英史上、最も忙しねえ1年生だろ俺ら!」

 

 話の内容は朝のHRから唐突に告げられた、冬休み中のヒーロー科全生徒のインターン履修。つまり強制的なインターンだった。

 

「2人はまた『リューキュウ』だよね?」

 

「そやね。響香ちゃんは?」

 

「うーん、どうなるんだろ……」

 

 インターンに行った事のない者と、そもそも体育祭の時に指名をもらっていない者が不安の声を漏らす。その辺は雄英の先生達が考えている事だろう。

 

「………………」

 

 そんなクラスメイト達の話の輪から少し離れ、リンゴ飴のなくなった棒を咥えたまま俺は共同スペースのソファーの前で立ったままテレビを見ていると、クリスマスのイベント特集に移り変わって、普通のニュース番組が流れた。

 

「なぁ、切裂……インターンどうする? 『サー』の所に行くのか?」

 

「………………」

 

「切裂?」

 

 

 

 

 

 俺の見ているテレビには『泥花(でいか)市の悲劇より2週間。復興の目処立たず』とテロップが流れていた。

 

 

 

 

 

『事件から今日で2週間が経過しました。たった20人の暴動により、約30分程度で愛知県《泥花市》は壊滅に追い込まれたのです。この事件、ヴィランによるヒーロー失墜を狙った計画的反抗と見られていますが、街の声は……』

 

 少し前に轟と爆豪のインタビューが放送された時、教室で同じニュースを携帯で見た時に飯田が言っていた。泥花市の被害規模は神野以上だったらしいが、地方だったため死傷者は抑えられたと報道されていた、そうだ。市民からの声もヒーローを援護する色が強く、福岡でエンデヴァーが脳無を倒したニュースからも、人々の心構えが変わりつつあるのを感じていた。

 しかし俺が見ている画面の前で、敵連合に関する事を一切話さないニュースキャスターは更に言葉を続けた。

 

 

 

 

 

『なお、泥花市には《デトネラット社》代表取締役社長《四ツ橋(よつばし) 力也(りきや)》氏も居合わせており、両足切断の重傷を負うも一命を取り留めましたが……同伴していた《集瑛社(しゅうえいしゃ)》役員《気月(きづき) 置歳(ちとせ)》氏は片足切断、その他全身の裂傷を負い、意識不明の重体です……』

 

 

 

 

 

「………………?」

 

「切裂っ」

 

 足元で峰田に叫ばれて、俺はようやく気がついた彼に視線を合わせた。

 

「あぁ、ゴメン……なんの話?」

 

「だからインターンだよっ、インターンっ!」

 

 目の前でプンスカ怒る彼を宥める俺に、クラスメイト達の注目がテレビの方へと集まってきた。

 

「また、そのニュースか?」

 

「何か気になった事でもあるの?」

 

「ううん、なんでもない」

 

 障子や口田にまで声をかけられたが、俺は何事もなかったかの様な振る舞いで誤魔化した。

 すぐに去って行く2人を見送っていると、まだ近くに残っていた飯田が、緑谷へと質問した。

 

「ところで、緑谷君はどうするんだい? その……インターンは」

 

「サーの所に戻っちゃうのか……?」

 

 近くのソファーに飛び乗って座った峰田も俺の顔を見上げて尋ねてはいたが、俺はインターンが終わってからすぐあとに受けた、サーからの連絡を思い出した。

 

「あ、いや……」

 

「それがさ……」

 

 俺と緑谷は、峰田と飯田に声を揃えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えぇ〜〜〜ッッ!! クビーーーーーッッッ!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 寮の外にまで響き渡りそうな、これ以上ないぐらいの大きな声で峰田が叫んだ。

 

「うん……職場体験でお世話になったグラントリノもダメだから……今、宙ぶらりん……」

 

「そうなのか……」

 

 飯田も緑谷の話を聞いて少し困惑していた。

 インターンの再開が発表される前にサーの事務所に連絡を入れたのだが、通形が無個性になってしまった以上、現在事務所は事務作業がメインになってしまったらしい。サーからも、緑谷と一緒に「元々一般のヒーロー事務所とは、少し剥離した職場だ。貴様達はもっと外からの見聞を高めるべきだ」って言われてしまった。

 

 サーの言う事も間違ってはいない気がしたが、オールマイトの未来を変えられる可能性を持つ俺を手放したのは、少しだけ疑問に残った。

 それか、もしかして俺の大きな思い過ごしだったのだろうか。

 

 サーの真意は、結局最後までわからなかった。

 

 後で聞く事になるのだが、飯田は『マニュアル』の事務所にインターンを希望する。職場体験で迷惑かけてしまった事と、お世話になった事の恩返しがしたいそうだ。

 

「でも、任意参加だった前回と違って今回は課題だから、学校で紹介してくれるって!」

 

 緑谷の台詞を聞いて、同じくソファーに座っていた切島が通りかかった爆豪に呼びかける。

 

「じゃあ、爆豪はジーニストか!?」

 

「ああッ!? ……決めてねえッ」

 

 ベストジーニストは神野事件でオール・フォー・ワンの攻撃で重傷だったらしく、ビルボードチャートランキングの時もまだ療養中だ。

 爆豪的にはジーニストの事務所に行きたいのかもしれない。あんな8:2分けの髪型にされても、何か思う所はあったのだろうか。それとも、今までの学園生活を通して彼も変わったのだろうか。

 だが結局は、ジーニストが復帰しなければ彼の真意は何もわからなかった。

 

「でもまあっ、おめえ指名いっぱいあったしな! 体育祭で! 行きてえトコ行けんだろ?」

 

「今更、有象無象に学ぶ気ねえわ……!」

 

 吐き捨てる様に呟いた爆豪は、そのまま切島の前を素通りして洗面所へと向かおうとする。

 

「なら都合良いぜっ!!!」

 

 一方で俺の話を聞いた峰田は、元気良くソファーからピョンと飛び出して、俺の目の前で拳を突き上げた。

 

「オイラとマウントレディ……いいや『ラーカーズ』に行こうぜ!」

 

「あ、あぁ……もちろん!」

 

 こうして、俺のインターン先にも無事に決まったところで喜ぼうとした直後、食器の撤収から帰ってきた轟が緑谷と爆豪に向かって呼びかけた。

 

「緑谷、爆豪。もし、行くアテがねえなら……来るか? ナンバーワンヒーロー、エンデヴァーのインターン」

 

「ッ!? ……面白えェ……ッ!」

 

「えっ、いいのっ!? 助かるよっ!!!」

 

 その誘いに爆豪も驚いていたが、すぐに期待のこもった様な獰猛な笑みを見せて返事をする。緑谷も現ナンバーワンヒーローのインターンと聞いて、大きく頷いてみせた。

 

 ソレを聞いていた周りのクラスメイト達が騒ぎ始める。

 

「えーーっ!? エンデヴァーの!?」

 

「スゴいねっ!」

 

「ウチのビッグ3 がナンバーワンヒーローの所にインターンかよっ!!!」

 

 A組の中でもトップクラスの実力者がナンバーワンヒーローのインターンに行くなんて、テンションの上がらない者はいないだろう。

 だが、そこへいきなり異論を唱える者が現れた。

 

「ちょっとッ!! A組のビッグ3 はヤイバが入ってるんだからっ!!!」

 

 絶対にソコは譲らないと言わんばかりに芦戸が上鳴達に向かって叫んだ。

 

「えっ!? じゃ、じゃあ……誰だ?」

 

「爆豪は確定として……」

 

「いや、ビッグ3って個性の技術にも影響すると思うから……!」

 

 後ろで片付けから解放されてギャースカ騒ぎ始めるクラスメイト達に対し、轟は峰田と話していた俺の方を見て眉を下げる。

 

「切裂……そうか、お前はラーカーズか……」

 

「うん……でも大丈夫。俺も強くなってくるから……!」

 

 あからさまに残念そうな顔をする轟に、なんて言ってやったらいいのだろうか。エンデヴァーの事務所に興味がないワケではないが、ラーカーズに比べたらこちらに軍配が上がってしまう。

 地獄の轟くん家に顔を出すのは俺の精神衛生上避けるべきなのだが、緑谷以上に慕われてしまったからには覚悟を決めるべきなのかもしれない。

 

「また今度、お母さんのお見舞いに行こうよ……!」

 

「あ……あぁ、そうだな……! お前のプレゼント……大切にする……!」

 

 プレゼントした十得ナイフを見せた轟が穏やかに笑い、俺はそんな彼と約束してから、つけっぱなしのテレビを見る。泥花事件の話は終わり、クリスマスから大晦日などのニュースを眺めて大きく息をついた。

 

 

 

 

 

 ここから先はインターンが続く。やる事は大変かもしれないが、しばらくは普通の日常を迎えられると思っていた。

 

 

 

 

 

 窓の外は雪が降り積もっているが、俺は構わず寮の扉から出て携帯電話の画面を点ける。

 

「………………」

 

 トガちゃんの携帯は、今は繋がらない。敵連合の話がニュースに出てこないと言う事は、彼女達はあのヴィラン同士の潰し合いをなんとか勝ち残ったのだろう。今は山の中なのだろうか、それとも別の建物の中なのだろうか。電波の届かない所にいるみたいだ。

 

 少なくとも、トガちゃんの脅威は拭い去れて安心する自分がいた。

 

「………………」

 

 反面、この先の未来に対する不安と……彼女が今どうしているのか、心配だけが目の前の降り積もる雪の様に募っていった。

 

 

 

 

 

 物語の終わりは着実に、迫ってきている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次回『渡我 被身子:ライジング』

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