年もすっかり明けて3月、春休み真っ只中でそろそろ桜も花開き始める頃、絶賛インターン中の俺は『プッシーキャッツ』とのチームアップに誘われた。
元々は文化祭の頃から誘われてはいたのだが、雄英がインターンを再開してからすぐラーカーズに入ってしまった上、そこから『ヒューマライズ事件』と続いていたからヒマがなかった。
こうして始まったプッシーキャッツ達とのチームアップミッションだが、緑谷達が『ラビットヒーロー・ミルコ』の所で事件を解決したり、飯田達がファットガムの所でヴィランを倒していたのと違って、俺達の任務は平和そのものだ。
彼女達の主任務は山岳救助で有名なのだが、じゃあ普段は何もないのかと言われれば違う。いや、もしかしたら主任務はこっちなのかもしれないと思うほど、彼女達はキャンプや森林緑化活動……大自然と触れ合える運動に勤しんでいるのだから。
その日、俺達は夏休みの林間合宿以来となる『マタタビ荘』から少し離れた森の中に集結していた。俺達が夕食を作っていた、あの場所とよく似ている。
違うのは圧縮訓練をしていた地域と違って、天然雨林じゃなくて人工雨林。しかもまだ禿げ山も多い開拓の進んでいない自然の中と言った所だろうか。
近場には駐車場。ココに来た時は、マタタビ荘に駐車してあったトラック2台に乗ってきた。周囲にはロッジにペンションと本格的にキャンプ場っぽい。
「煌めく眼でロックオン!」
「猫の手手助けやってくる!」
「どこからともなく……やってくる……!」
「キュートにキャットにスティンガー!」
これから来る家族連れの子供や彼女達のファンに備えて、誰もいない場所で普段通りのリハーサルを始めるプッシーキャッツ。
しかし、この日は更に特別だ。
「猫の毛被ってやってくる!(切裂裏声)」
「かつ節唆られやってくる!(峰田裏声)」
「猫の手両手に合わせてキラリン⭐︎!(岳山裏声)」
「………………(爆豪)」
「「や・れ・よ!!!!!!!!!!」」
「ぐうッ!?」
俺達の動きに構わず直立していた爆豪に、俺と峰田は容赦なく飛び蹴りと頭突きをかました。
面白い様に吹き飛びながらも着地した彼は、間髪入れずに俺と峰田に向かって叫ぶ。
「ナマクラ、クソブドウッ! テメェら騙しやがったなァッ!!?」
「だって、ホントの事言ったら絶対来ないじゃん!」
事の始まりはラグドールさんからではなく、マンダレイさんからの真面目な電話。ヒューマライズ事件もひと段落した後に掛かってきた電話で心配された後、彼女からチームアップの依頼を受けたのだ。内容は勿論、森林緑化運動とキャンプのお手伝いである。
もちろん、俺がラーカーズに所属しているのは向こうも知っていたし、ラグドールさんは年明け辺りからずっと納得していなかったみたいだけど、あの真面目なマンダレイさんに「知子がずっと寂しがってるから、会いに来てあげて」と深刻な顔と声をされては、流石に行かないワケにはいかなかった。
もちろん、仕事はチームアップという名目なので、俺以外にもラーカーズを引き連れるのは当然だった。とは言え、全員で行っては事務所が回らなくなるので、会計士さんと相談して俺はまず峰田を推薦。彼も久しぶりのプッシーキャッツという事に、ふたつ返事で賛同した。そこに、ほんの数日前に似た様なチームアップの依頼をこなしていたマウントレディも続く。
あとはシンリンカムイがいれば良いかなと思ったのだが、合宿のマンダレイさんの言葉を思い出した俺は、エンデヴァー事務所にインターン中だった爆豪を連れて行く事にした。
「なんでンな事誘ったァッ!!!」
当然、まともに誘って彼がついて来るハズもないので、彼にしか頼めない当然緑谷にも頼めない、全盛期のオールマイトにも頼めない、国の未来を担うクッソ重要な極秘任務だって伝えたらホイホイついて来た。
わざわざ、エンデヴァー事務所のインターンも調整して参加してくれた彼の叫び声に、俺と峰田は平然と叫び返す。
「爆豪くん子供ウケ良いんだから!」
「チビッ子は仲間がわかんだよっ!」
「ブッ殺すッッ!!!!!」
返答代わりの爆撃をヒョイヒョイ躱す俺と峰田に、爆豪は唸り声をあげる。そこに、さっきまで俺達と同じくノリノリでポーズを決めていたマウントレディも割り込んでくる。
「落ち着きなさい3人とも! これから子供達も来るんだからッ!」
なんか良い様に発言しているマウントレディだが、こちとら子供の扱いは手慣れている俺と峰田は彼女にも物申したかった。
「マウントレディこそッ! 今日の相手はキタコレ族じゃないんですよッ!」
「えっ! えっ!?」
「そんな媚び売った声じゃ、チビッ子は動かねえぞ!」
「大体なんですか『キラリン⭐︎』って!? 語彙力幼稚園児ですか!?」
「なんか今日のあなた達トゲ多すぎないッ!!?」
言い返されるのは予想外だったのか、マウントレディまで狼狽する様子に後ろでラグドールさんが爆笑していたし、虎さんは無言でウンウンと頷いている。
「イイ歳した大人が言っていい台詞じゃねえぞっ!」
「峰田くんソレ、無差別爆撃ィッ!!!」
発言と同時に、今度はピクシーボブさんに追いかけ回されている峰田を眺める。まぁ、いきなりプッシーキャッツ達の名乗り口上を合わせると言い出したのは俺なので、咄嗟の台詞で韻を踏んでるのは良しとしよう。
そんなギャーギャー喚き合う俺達を見て爆豪をイラつかせているのは、仕事だけではない。
「だいたい何だこの服はァ! いつ作ったァッ!」
今、俺達が着ているヒーローコスチュームは、普段着ている物と大きくデザインがかけ離れていた。
この日のために、マンダレイさんとサポート科の人達にお願いして、わざわざコスチュームも全員分プッシーキャッツに合わせて新調したのだ。
「前にサンタの衣装作ってるし、なんならオリTも注文したじゃん!」
「サイズの事は聞いてねぇ……ッ!」
俺の返事に納得いってない様に唸り声を上げる爆豪だが、そこにピクシーボブさんから逃げ切って戻って来た峰田がマジマジと自分が今着ている服装を見て、感慨深く言葉を漏らす。
「オイラ、スカートって初めて履いたぞ……!」
俺のコスチュームのベースは、ほぼ完全にプッシーキャッツのヘソ出しミニスカート。柄はもちろん陸自迷彩で、普段被っているサポートアイテムのヘルメットに、彼女達の付けているネコミミ型のカチューシャが付属していた。
峰田も黄色のマントは残しているが、白のズボンの代わりに白いミニスカートを履いた、プッシーキャッツのヒーローコスチューム。少し小さめのカチューシャを付けてるし、インナーである紫色のタイツが眩しい。後で写真を1枚撮りして蛙吹にでも送ってやろう。
マウントレディは目出しアイマスクと角以外、プッシーキャッツ達と謙遜ない格好をしていた。元々プロポーションが抜群だし、プッシーキャッツ達とも体系が似通っているので、違和感なく着こなしている。パツパツスーツと違って素肌が露出するので、峰田よりも薄い紫色をコスチュームのメインカラーにしていた。勿論、巨大化しても破れる事のない、普段のヒーローコスチュームと同じ材質で作ってる。
そして爆豪は、腕の手榴弾型の籠手と頭の刺々しい髪飾り以外は、全て彼女達の流用だった。
そんな破廉恥みたいなコスチュームを、なんであの爆豪が素直に着ているのかというと、横にいるマウントレディの存在が大きい。状況の細部は不明だが、神野事件では彼女に最後まで助けられたのだそうだ。つまり頭が上がらないらしく、そんな彼女もチームアップで呼ばれたからにはデカいヤマだと本気で信じた爆豪の今がコレである。
もちろん俺達の格好は写真に撮ってグループに送信済みである。今頃、寮の中はカオスな事になっているだろう。
「にゃははっ♪ 服装もポーズも決め台詞もっ、ヤイバくんは完璧だよ〜〜〜っ!!」
「ラグドールさ───みゅっッ!?!!」
ここに来てからテンションがずっと高いラグドールさんが、俺に飛びついて頬擦りするなり頬へ唇まで合わせようとしてくる。ほんの数分前に久しぶりの対面を果たしてから彼女に抱きつかれて振り回され、マウントレディに助けてもらったばかりなのだが。
「あのー……これから子供も来るので、そういった事は控えてもらえないかしらぁ? 切裂くんの将来にも影響するので……!」
「アラ関係ないわ、ヤイバくんの責任はちゃーんととってあげるわよんっ。せっかくコスチュームまで気合い入れて揃えてくれたんだもの……あちきらも腕が鳴り過ぎてウズいちゃうにゃ♪」
「歳の差も踏まえないで若い男唆すのはヴィランのソレと大差ないと思うんですけど……イヤだわ、婚期を逃すと見境もなくなるんですねぇ……!」
「にゃはははっ! キミもあと数年経てば、あちきらの気持ちもすぐわかるよんっ。それに……小娘なんかに魅力で負けるにゃんて、思ってないからね〜っ♪」
マウントレディの声でラグドールさんは俺を解放してくれたけど、四白眼かっぴらいて彼女と鼻先スレスレまで顔面を合わせている。気のせいか、何か変なオーラも見えた。
「オイ、止めてこいよ……」
「無理」
「くだらねえ……ッ」
マウントレディが助けてくれるのは嬉しかったが、彼女もラグドールさんに振り回されているのを少し心配しながら峰田達と一緒に眺めていると、マンダレイさんが肉球のついたグローブをポンポンと叩き合わせて俺達を注目させる。
「はいはい! 爆豪君以外の動きは完璧みたいだけど……あと数分でお客さんも到着するから、本番はシッカリお願いね! 洸汰も準備オーケー?」
「う、うんっ!」
休みの日と言う事もあって、俺達から少し離れたところに洸汰くんもいた。相変わらずヒーローは緑谷以外苦手なのか俺の挨拶も控えめだったし、峰田が寄ろうとしても『ヘンタイヤロー』と罵られていた。女湯覗きの件がまだ響いているのだろう、ショックを受けながら俺の足元に戻ってきた。ただ、初めて見た時よりも、彼の表情は明るい様に見えた。
とにかく、ポージングから何まで即興で考えたし、天才マンとは言え爆豪が1発でプッシーキャッツのノリに乗れるとも思ってなかったので、マジでリハしといてよかった。
「最初の掴みはシッカリ頼むぞ」
「いーいっ!? ココ間違えたらマジでタダ働きさせるからねっ!!?」
虎さんやピクシーボブさんの言葉に、俺と爆豪も争うのを止めて真面目にポーズと名乗り口上を考え始める。峰田もジャグリングのために腕をブンブンと回しているし、マウントレディも頬を肉球グローブ越しに叩いて気合を入れ直していた。
そうこうしている内に、今日のキャンプとボランティアの参加者である家族連れの人達を乗せたバスと自家用車で来たファンが到着し、俺達の誘導でキャンプ地に集合した。
「煌めく眼でロックオン!」
「猫の手手助けやってくる!」
「どこからともなく……やってくる……!」
「キュートにキャットにスティンガー!」
「猫の毛被ってやってくる!」
「かつ節唆られやってくる!」
「ネズミをブッ潰しに……やってくる……!」
「猫の手両手に合わせて煌めけ!」
「「「「「「「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!! ダブルテイルズッ!!!!!」」」」」」」」
背後で爆発すら幻視させる完璧なポーズを決めて、子供達から歓声が湧き上がった。
本日のお客さん兼ボランティアの人達と挨拶をして、マンダレイと虎さんが親御さんや大人の人に今日一日の流れを説明する間、俺達で子供達の面倒見が始まった。
「ブレイズそいつだれ〜?」
「ブレイズのおともだち〜?」
俺、峰田、マウントレディはインターンでだいぶ子供達から認知されてきたが、爆豪は残念ながら違う。エンデヴァーのインターンじゃ、ファンサービスなんて学んでるのかどうかすら怪しい。
なので、彼が取り残されないためにも、ここは俺がひと肌脱ぐしかなかった。
「彼はオトモダチの『爆発さん太郎』さっ!」
「ウソ伝えんじゃねえナマクラぁッ!!!」
俺の隣で子供を相手していた爆豪がキレ散らかすが、悪意が無いのを感じ取れるのか子供はキャッキャッと騒いでいる。さっそく小さい子達から『さんたろー』って呼ばれて、遠くの方で峰田が爆笑していた。アイツ後で爆撃されるな。
なんでも、体育祭後のミッドナイト先生のヒーロー名決めから随分と経ったが、あの後もしっかり考えていたらしい。もう、コレだ! というのを決めたらしいのだが、緑谷はおろか俺にも教えたくないそうなのだ。
もしかしなくても、ベストジーニストに教えたいのだろうか。
そんな最初の面倒見はサクッと終わらせて、早速プッシーキャッツ主導の元で始まった森林緑化活動だが、まずはキャンプ場の落ち葉の清掃や近場の川から漂流した流木の集積。それからハゲ山に苗木を植える作業と続く。
土を耕すのはピクシーボブさんの『土流』があればあっという間だし、思った以上に早く植林は進んでいく。むしろピクシーボブさんの個性でどうにもならない作業や、遊びがメインになった。
「それにしても驚いたわっ! ウワサには聞いてたんだけど……本当に子供心掴むのが得意ね!」
「へへっ、少し前にもやったんで!」
マンダレイの感心する声に、峰田が子供達と一緒に落ち葉の塊を抱えて走り回りながら鼻を鳴らしている。その後ろには風で浮かせたり、圧縮して手の平に収めたり、物を運搬するのが得意な個性の子がキャアキャア言いながら、彼の後をついて来ていた。
前のチームアップミッションで、那歩島から少し離れた離島にある道場みたいなヒーロー塾で講演を行なったのだ。一緒にチームアップした葉隠と尾白の2人とも一緒に。
最初は尾白が地味な講演を始めようとしたのを慌てて止めて、俺は「俺に個性攻撃で膝をつかせたら、東京の遊園地に連れてってやる」と堂々宣言し、峰田は「オイラを捕まえたら超有名ヒーロー年間雑誌(女性ヒーロー限定の際どいシリーズ)をプレゼントする」って宣言し、そこに葉隠が「私を捕まえてみて!」と勢いに続いて彼らと戯れた。
ちなみに、ブーツも手袋も脱ぎ捨てた全裸になった葉隠は俺にも峰田にも捕まえられず、彼女を捕まえられたのは尾白だけ。その様子が子供にウケていた。動きを予測すればなんとなくわかるとは言っていたけども……それができるのはきっと君だけだ。
個性を能動的に使わせる事で色々な個性と触れ合ったり、島にある遺跡を冒険したりも凄かったが……最後の最後でトンでもないモノ見てしまったのが大きい。
俺と峰田はお邪魔虫になりそうだったから、遠くからコッソリ一部始終を見ていた。
落ち葉掃除もひと段落した頃になって、ピクシーボブが土流で落ち葉と土をかき混ぜながら、そこそこ大きめな大木を巨大化して何本も抱えているマウントレディに告げる。
「マウントレディも中々ね!」
「ええ……ちょっと、つい最近……似た様な依頼があったので……」
少しだけ歯痒そうに声を漏らして大木を運ぶ彼女を見上げながら、俺は隣で苗木を運んでいた爆豪に顔を向ける。
「爆豪くんもいたんでしょ? どうだった?」
「ケッ……現地の変な女のせいで、手間取ったがなッ」
なんでも、俺達が離島でチームアップしていた頃、爆豪は緑谷、シンリンカムイ、そしてマウントレディと一緒に山奥の集落へ植林しに行ったそうだ。
行きの山道で遭難しかけたらしいし、依頼を受けたシンリンカムイは重機扱いの目的でマウントレディを呼んだそうだし、最後は土砂崩れが起こって村の御神木を植え替える事になったそうだ。
「『チャリティー』の時と、どっちが大変だった?」
「あっちはバカ共が多すぎただろうが……ッ!」
なんの話かと言うと、クリスマスパーティーしてすぐぐらいに、オールマイトから毎年自分がやってるチャリティの手伝いがあるらしくて、俺、緑谷、爆豪、峰田、切島、八百万、麗日、蛙吹、耳郎、飯田の10人で、雪山の中で木を切る体験をした。
もうマッスルフォームになれないんだから、やめればいいのにとは思ったが、それでも自分を求めてくれるファンには応えなければと、伐採する量を1000本から500本にまで落として実施するそうだったが、俺がいた事もあってオールマイトは伐採数を変えなかった。
元々、森林伐採は得意だ。切島も爆豪も、緑谷も木を切るだけなら修行しながらでもできる。運搬は八百万や飯田、麗日がいれば残りのクラスメイト達でなんとかなる。蛙吹だけは途中で朽ち木の中で冬眠し始めて、耳郎と麗日にロッジへ送り返されてたけど。爆豪の「あのカエル女は何しに来たァァッ!」と叫んでいたのが印象に残った。
そっから伐採した木の加工してクリスマスツリーを作ったり、大きな積み木や滑り台などの遊具を作って全国の幼稚園へと送って幼稚園児と遊んでいたのだが、園児の爆豪への食い付きが1番強かったのだ。
そんな経験もあったので、俺と峰田は今回のチームアップに爆豪を呼んでも、なんの心配はしていなかった。
そんな爆豪と子供と一緒にハゲ山で苗木を植えまくっていたが、拠点から距離が離れてきたのでトラックを移動する事に決まった。道が狭いのでケツが向く様にバックで。
それを聞いて俺はラグドールさんに相談する。最初はベタベタしていたけれども、仕事モードになった彼女は真面目に対応してくれる。
「俺、動かしていいですか?」
「え? にゃは! そっかーヤイバくんの個性なら持ち上げられるもんねー! いいよー!」
ラグドールさんは笑いながら許可してくれたので、俺はトラックを操血刃で持ち上げ……ずに、輪止めを外して運転席に乗り込み、エンジンのキーを回した。
「峰田くん後ろ見てて。轢き潰されないでね!」
「わかってるよっ! はいオーラーイ! オーラーイ!」
本当はマウントレディか操血刃で持ち上げてしまえば良いのだが、私有地だから免許の必要ない俺はサイドミラーでちっちゃく見える峰田を確認しながら、移動したい方向にハンドルを回す。
「ねえ柔……アンタのトラックって
「あ、ああ……」
「ね? 言ったでしょ!? 彼……絶対ウチに引き入れるべきよんっ!」
プッシーキャッツ達は驚いていたが、特にエンストも暴走もしなかったトラックを見て、何かヒソヒソと話をするだけだった。
そうしている内に1両目の移動が終わってトラックから降りた俺は、2両目はさすがに操血刃で運ぼうとしたところを爆豪が割り込んできた。
「どけナマクラッ! 俺にやらせろッ!!」
「おっ、お前もやれんのかよっ!?」
「しかもコレ、さっきのと違って『牽引』だよっ!!?」
俺と峰田は止めようとしたが、爆豪はそんな俺達を睨み返す。
「舐めんなッ! 猫ババアどもの運転、横から見てたんだよッ!!」
横から見てただけで運転できるお前が異常だ。
周りはだだっ広い敷地で、一般の人達は別の禿げ山で植林活動してるから暴走されても危険はなかったが、それでも気になった俺は助手席に乗り込み、誘導は峰田が行った。
元々、免許欲しがってたのを話で聞いたのもあって、彼の運転の仕方は安定していた。
「凄いね爆豪くん。君ならすぐ免許取れるよ」
「フンッ! ……半分野朗から解放されただけでも、来た甲斐あったな……ッ!」
「え?」
大きく鼻息を吐いた爆豪の言葉に俺が問い尋ね直すと、彼は車を止めながら呟く。
「仕事中もテメェの事しか話そうとしねえし……終いにゃ家に招待されただけでもダルかったってのに……何故かいやがるんだもんなァ……ッ!」
「あー……」
インターンでエンデヴァー事務所に行かなかった俺は、年明けてから少し経った後。轟に声をかけて冷さんのお見舞いに同行した。
久しぶりに見た冷さんは生気が宿っていると思うぐらい、生き生きとしていた。お医者さん曰く、もしかしたら退院できる日も近いかもしれないと。
ただ……いきなり外暮らしも出来るはずないので、少しずつ体と精神を慣らしてからの退院になるから、まだまだ先は長いみたい。
それに、冷さんが退院するという事は、あのエンデヴァーの家で暮らす事を意味する。果たして本当にコレが正しい選択なのか俺には判断しかねる。
その日、轟はインターンがあったらしいのだが、俺を優先して予定を合わせてくれた彼に同行し、当たり前の様に轟の家で冬美さんの料理を頂く事になった。轟家に入るのはもう慣れたモノだが、その時に俺は初めて冬美さんの弟である『夏雄』さんと邂逅した。
轟の友達と聞いて、凄く驚いていたのは冬美さんと同じ。No.1になったとしても、未だにエンデヴァーが嫌いってのも彼と同意見だった。
そんな話を冬美さんと料理しながら交わしている間に、エンデヴァーに連れられた緑谷と爆豪と再会。そして物凄く久しぶり……と言うよりも、俺は初めてエンデヴァーと対面した。
パッと出の癖に轟を自主的に動かす程の影響力のある俺を見て、彼がどう思ったのかはわからない。冬美さんはハラハラしていたけれども、結局俺は最低限の挨拶ばかりして、エンデヴァーとの会話は殆どなかった。夏雄さんも結局はまだ彼を許す事ができず、俺は轟と緑谷の2人と喋りっぱなしだった。
それから、緑谷達は寮に戻ると言っていたので……俺はラーカーズの事務所に自分で戻るつもりだったので、4人を見送った。帰りにエンデヴァーのストーカーみたいなヴィランに遭遇したそうだが、緑谷達が秒殺して無事に解決したとの事。
それよりも問題だったのは、みんながいなくなってから、あの家の仏壇の前に立った事。写真に写ってるのは、小学生ぐらいの白髪の子供。轟家の長男という事は、本来なら夏雄さんよりも歳上で大人の姿だという事になる。
見れば見るほど嫌な予感が全身を駆け巡ったが、確信が持てなかった。
『轟 燈矢』に関しては、轟は知らないし、夏雄さんも冬美さんも話したがらない。エンデヴァーは論外。聞くとするなら冬美さんしかないだろうが、精神的に危険すぎる。
この子がどうして死んだのか、俺には最後までわからなかったけども、エンデヴァーが何か原因があるのは察した。
冬美さんが教えてくれたのは、エンデヴァーや轟と同じ、炎系の個性だったって事ぐらい。
だから、尚更疑問が残った。
エンデヴァーは確か、自分の炎の個性で体に熱が籠るから、冷却の効く氷の個性である冷さんと結婚して、轟みたいなハイブリッドを作ろうとした。自分の息子でオールマイトを超えるために。
でもエンデヴァーが関わったって事は、彼は轟と同じ様に父親から鍛えられていた事になる。
『燈矢』『夏雄』『冬美』で……彼にとって最高傑作な『焦凍』
名付けのパターンが中2人だけ変わっていて……轟とニュアンスが似ているのが、その亡くなった兄。
どうして炎しか使えない彼に、エンデヴァーが賭けたのか。
結局、答えはわからなかった。
爆豪とつたない会話をしてからトラックを降りると、そこには俺を待つ小さな人影があった。
「あ、あの……」
「洸汰くん?」
前にいたのは、仮免試験が終わった後に寮の中で再会した、洸汰くんだった。
前のつっけんどんな態度と違って、少し大人しいと言うか、しおらしい態度の洸汰くんの前に俺は動揺しつつも、彼の前に膝立ちになって視線を合わせる。
「あ、あの……キンタマ殴ってゴメンなさい……」
「いいさ、それより……」
気にしていたのか、俺もすっかり忘れていた出来事を思い返しながら、俺は懐からガサガサと漁って洸汰くんにプレゼントを渡した。
「洸汰くん。君にはコレを贈呈しよう」
そう言って俺が彼に渡したのは、年間の女性プロヒーロー達が乗った雑誌。ムフフな袋とじ付きだ。
「うわぁっ!? なっ、なんだよコレっ!!」
驚きで雑誌を真上に放り投げるも、洸汰くんはすぐに落ちてきた雑誌を両手で掴む。表紙は無名の新人ヒーローのグラビアだ。
「貰っとけ貰っとけ。袋いるか?」
「……!」
そのまま彼は俺から紙袋も貰うと、1両目のトラックにある自分のリュックの中へと入れるべく、駆け足で走って行った。
両親の健在な俺には、こんな不真面目な方法でしか彼を打ち解かす手段は持たない。
それでも、コレで彼が健全に成長してくれればいいと思いながら洸汰くんを見送っていると、不意に俺へ穏やかに声をかける者が現れた。
「あの子はもっと人に甘えるべきだと……我はずっと思っていた……」
「と、虎さん……?」
白目で感情の読み方がわかりづらい虎さんが、横に並ぶ。怒っているようには……見えなかった。
「信乃や我等ではどうしても距離が近過ぎた……それに、我等はヒーロー……今の洸汰には必要なのであろう。方法は邪かもしれぬが……」
雑誌の収納を終わらせた洸汰くんは、峰田や爆豪ではなく、マウントレディの所へと駆けていく。彼女は中途半端に大きくなって洸汰くんを含む数人の子供達を手の上に乗っけて、遠くの景色を見せていた。
「俺には両親がいますから……あんな方法しか知りません……」
「それでも、感謝している。前の我ーズブートキャンプの援助も助かった」
少し前の『我ーズブートキャンプ』の特別指導として俺、緑谷、爆豪、切島、上鳴の5人で呼ばれた時のチームアップだ。上鳴がテキトーな指導始めたから、俺と爆豪でシバき回してやったのを覚えている。
「そんな君に特別サービスだ」
「え?」
そう言いながら、虎さんは懐から携帯電話を取り出すと、写真を開いた画面を俺に見せてきた。
「我のファンにも内緒だが……」
画面に映っているのは、男勝りな雰囲気を纏った美形の女性だった。服装は普通な学校の制服だけども、ラグドールさんとはまだ少し違う吊り目の三白眼。身長がかなり高くて、ちょっと筋肉質で……
「……え?」
俺は虎さんを見て……もう一度画面を見て……もう1回虎さんを見て……やっぱり画面を見て……もう1回だけ虎さんを見て……
「タイに性別ごとホルモンバランスを変える個性の医療ヒーローがいてね……彼女に依頼したのだよ」
「そ、そうなんですね……!」
虎さんの説明を聞いて、俺は写真を凝視する。彼女のイメージカラーである虎柄はなかったが、確かに似すぎるぐらいに似ていたのだ。
なんて勿体無い事を、とは言わなかった。
「ど、どうして……?」
それよりも……ファンにも見せていないだろう極秘情報を、なんで俺に見せてくれたのかと問い尋ねようとした瞬間、俺は虎さんのデカくてゴツい肉球グローブにガシリと肩を掴まれた。
「知子の事を、宜しく頼む……!」
「あ……え〜と……っ」
もしかして、プッシーキャッツはこのために俺をチームアップに誘ったのかと、変な予想が頭を通り抜けた。
それから、植林活動も程々に進んで焚き火で焼き芋とじゃがバター作りとかも始まったが、竈門でカレー作りの経験のある爆豪が輝いていた。個性を使わず、子供達に火の起こし方を丁寧に教えている様子をプッシーキャッツ達と一緒に見ている。
火おこしに興味のなかった子供は、峰田やマウントレディと遊んでいた。そんな中で峰田は程々の大きさのバルーンに乗って、モギモギを10個でジャグリングしてる。本当に久しぶりにまともにファンサービスできて、泣きながら喜んでいた。
そんな様子を眺めながら目の前にいる無個性の女の子に、個性がなくてもヒーローになれると話をしていると、今度はマンダレイさんが隣に並んだ。
「ごめんね、いきなり誘っちゃって」
「いいんです……! むしろ……あの時はインターン断ってしまって、ゴメンなさい……」
頭のヘルメットを少し被り直した俺の謝罪に対しても、彼女は嬉しそうに笑っていた。
「ふふっ……本当、律儀な子ね。どうだったかしら? 山岳救助も大変だけども……やっぱりヴィラン退治の方が好き?」
「はい。でも……本当にヴィランがいなくなったら、こーゆーのもアリかな……って思ったりもするんです……」
それは本心だった。もしも敵連合との全ての決着がついたなら、どうしようかとは考える時があった。
そこには必ずトガちゃんがいて……俺も一緒にそばにいて……
彼女と一緒に、ヒーロー活動している世界がいい。
今こうやって個性と無個性の子の事を考えながら、みんなが笑っていける世界で。
「明るくて優しい世界……でしょ? 結構近いと思わない?」
「はい……!」
マンダレイさんの言う通り、目の前では子供も大人もヒーローも、笑っていた。爆豪ですら、口元に笑みを浮かべて。
「あんなふうに、みんなが手を取り合って、笑ってる世界なら……」
そんな世界を彼女と一緒に……
「あ……!」
今、結構……明確に見えた……
俺と、トガちゃんの到達点。
彼女の生きる、優しい世界のヴィジョンが。
『平和の象徴』じゃない。
俺が目指す『明るくて優しい世界』は……
「みんながみんな、誰かのヒーローになれる……そんな世界がいいです……!」
俺の言葉を聞いたピクシーボブさん、マンダレイさん、虎さんは目を丸めて驚きながらも、にこやかに笑っていた。
ただ、それまで大人の対応に戻っていたラグドールさんは、いきなり俺に両手を広げて抱きついてきたのだ。
「にゃはは♪ やっぱりウチに来ない?」
それに気付いたのか、いつの間にか元のサイズに戻っていたマウントレディが、反対側から抱きついた。
「ねえ……サイドキックの期間が終わったら、そのままラーカーズなんて……どう?」
彼女の言葉を聞いたラグドールさんの腕の力が強くなり、そのまま耳元で彼女は囁く。
「今ウチに来れば、3食プラス10時と3時のオヤツに添い寝……お昼寝つきだよ?」
「私の席を譲るつもりはないけれど……貴方だったらチャート1桁のトップヒーローも狙えるわよ……!」
マウントレディも反対側から囁いて、2人の胸に首元を埋められていると、そんな様子を遠くから見ていた、肩車で子供を乗せている爆豪が唸った。
「ババア2人で高校生を取り合うな、クソが……ッ!」
決して大きい声じゃなかったのに、マウントレディが吠えた。
「まだ20代なんですけどッ!!!」
「イヤ、どっちにしろアウトだろ……」
峰田の呆れ気味な声が響いても、2人は俺を離そうとしなかった。
虎さんとマンダレイさん、あと少し唇を尖らせながらも同情したような顔をしていたピクシーボブさんにひとしきり笑われてから、俺は救出された。
・・・♡・・・♡・・・
プッシーキャッツとのチームアップは、その後も何回か続いた。
俺達の活躍もすっかりメディアにも報道され『プッシーキャッツ、次世代の育成に奔走か!?』とか『いよいよ引退!?』『ラグドール未成年淫行!』など、好き放題に言われていたが、彼女達は気にしていないみたいだった。
そんな彼女達とのチームアップが終わってから数日後、始業式と同時にインターンの経過を披露する実践訓練が始まった。それぞれの磨き上げた技を、入試の時に散々戦った仮想敵を相手に自由に繰り出す。
1番最初に披露してくれたのは、峰田だった。
「見ろよコレ! 『選べる』ようになったんだぜっ!」
元々、バルーンで玉乗りをしていた時から察していたが、モギモギ同士を『接着』するのか『反発』するのか、選択できる様になったそうだ。自分以外の物には相変わらず『接着』の一方通行らしいが、彼なら幾らでも新しい使い方を考えだしてくれそうだ。
そのまま彼は数個のモギモギを纏めたまま空中に放り投げ、そこへ1個のモギモギを全力で投げつける。
「ジャンブル、からの……『ブレイク』ッ!!!」
花火みたいに空中でモギモギが拡散しながら、彼は手元のモギモギで天井も壁もない場所で鋭角軌道を取りながら仮想敵を拘束していく。
その拘束された仮想敵に向かって、操血刃で飛び上がった俺が残りの操血刃を伸ばして構える。
「
今までと段違いに攻撃範囲の増した斬撃波が、仮想敵を飲み込んで爆発を起こした。
とうとう操血刃から斬撃波を出せるようになった。どんどん俺の範囲攻撃が広がっていく。もうMAP兵器と言われても仕方がないぐらいだ。
「凄いぞ峰田少年、切裂少年! この調子で各々のインターンの経過を見せてくれ!」
オールマイト先生のお褒めの言葉も頂き、俺と峰田はクラスメイト達の成長を見る側に移る。普段は相澤先生がいるハズなのだが、今日は急用で朝から不在だった。
たぶん黒霧の事で何かあるのかもしれないが、俺の関われる範囲を超えている。相澤先生の闇を祓えるのは、プレゼントマイク先生かMs.ジョーク先生だけだ。
それから緑谷や爆豪、轟などのクラスメイト達の成長を次々と見てから、俺は緑谷の所に駆け寄った。
「緑谷くん! 黒鞭……凄い速くなったね!」
「うんっ! エンデヴァー事務所で実践を積んで……無意識でも出せるぐらいにコントロールできるようになったよ!」
仮想敵を捕まえた緑谷の黒鞭は、俺の操血刃でもギリ追えるかどうかぐらいの速度になっていた。一度に出せる量も圧倒的に増えている。
「でも……まだまだ、切裂くんには敵わないよ……!」
まだ腰の低い彼の前で、俺は首を横に振る。
「そんな事ない……結局、俺の個性じゃ飛べないからさ……」
操血刃が使える様になってから、すっかりこの便利すぎる能力に傾いているのが否めない。だが、ここまで圧倒的だと常闇の飛行能力みたいに、突き進めるだけ突っ切ってしまった方が良いのかもしれないと考えた。
それでも、螺旋刃斬人の様に原点に帰る思考も持っていたい。
頭打ちだろうか……?
いや、もっと伸ばせるはず。俺の血が刃になったように、まだ俺の気が付かない伸び代があるかもしれない。
Plus Ultraだ。
その日はみんなで鍋パーティーで、インターンやチームアップで面白かった出来事や、くだらない事件を話した。俺も久しぶりに集合できたクラスメイト達と大いに盛り上がった。
そっからB組も合流して闇鍋やったり、風呂場で我慢大会始めたりと、みんなで馬鹿みたいな事やって……久しぶりに仕事とは違う疲労を感じながら眠った。
こんな日がずっと、続くかと思っていた。
でも……
そんな日常が、簡単に終わりを告げた。
それから数日後だっただろうか、不意にトガちゃんからメッセージが届いた。
異能解放軍との戦いを終えて、死柄木が組織を取り込んで新たに設立した『超常解放戦線』のトップになり、彼が強化手術で眠りについて不在になった間。ドクターこと氏子から『マスターピース』について、1番脳無に拘っていた荼毘経由である程度知る事ができたそうだ。
嬉しかったのは、一瞬だった。
内容を見て……俺は戦慄した。
緑谷のワン・フォー・オールを狙っているのは察していたが、まさかココまでしてくるとは思わなかった。
死柄木 弔に、オール・フォー・ワンのオリジナルである『オール・フォー・ワン』を移植させたそうだ。
これで、ヤツが緑谷の『ワン・フォー・オール』を狙っているのは間違いない事が、確定した。
ただ、それでも、疑問が残った。
オール・フォー・ワンは間違いなく檻の中。アイツにオールマイトみたいな潔さなんて、微塵も感じない。
死柄木にそこまで与えて、本人はどうするつもりなのだろうか?
それから数週間経って桜の開花した3月後半。俺はクラスメイト達といつものように、寮から通学路を通って校舎へと登校していた。
「あ〜、春休みなのにインターンで1日も休みがないなんて〜!」
「そろそろ春休みが終わっちまうなぁ……」
芦戸が桜の花びらの舞う空を見上げながら嘆いていたが、そこに上鳴も感慨深く言葉を漏らしている。
「桜、咲いたね〜!」
「もうすぐ後輩も来るんだよな〜!」
「期末試験頑張んねえと……!」
「やめろ瀬呂!」
クラスメイト達の会話に続いて、上鳴の叫び声も響く中、芦戸と葉隠が少し駆け足で前に出ながら、楽しそうに騒いでいる。
「ミッドナイト先生のヒーロー情報学の授業、楽しみ〜!」
「ね〜っ!」
そんな台詞が、何故か俺には物悲しく感じた時、携帯から連絡が届く。
「今度のインターン、遠征だって」
「あら、本当ね」
麗日がインターンの日にちを何気なく言った瞬間、近くにいた上鳴が真っ先に反応する。
「梅雨ちゃん達も? マジで! 俺らも俺らも!」
「僕達もその日、遠征だよ」
「ええっ? 何だろうね?」
緑谷も前々から連絡を受けていたのか、周りのクラスメイト達も携帯でカレンダーを確認し始める。
「待って、ウチも!」
「俺もだ」
耳郎と障子の事務所も同じだった事で、さっきまで楽しそうに登校していた俺達の雰囲気が一転し、物々しさすら感じた。
「全員に一斉にインターン……?」
あまりにも出来すぎている様な展開に、携帯を開きながら峰田が首を捻った。
そのインターンは峰田と上鳴の反応の通り、ラーカーズに所属している俺にもしっかりと届いていた。
「………………」
自分の携帯を持つ手が、僅かに震えていた。
俺が開いているのはカレンダーの画面じゃなかったからだ。
此処から先は、全くもって知らない未来を歩む事になる。
最善を尽くせ。
ここまで一緒に強くなった、仲間を信じろ。
決着をつけて、終わりにするんだ。
奴らとの決着を。
『僕のヒーローアカデミア』という物語を。
次の戦いが最後になると、信じて。
俺は平然を装いながら、トガちゃんにメッセージを送った。
『プロヒーローが動き出すよ』
『戦う準備をして』
切裂ヤイバの献身 クラス対抗戦〜チームアップ編 完
ED曲 X Ambassadors - Torches
次回『終わりの始まり』
次の投稿日は土曜日です。