切裂ヤイバの献身   作:monmo

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第六話

 

 

 

 

 

 体育祭当日。

 

 花火が何本も打ち上がっている雄英高校の敷地内が、この日ばかりは一般の人々やテレビ局のマスコミでごった返している。体育祭はテレビでも生中継されるのだから、日本中が注目するココで活躍すればプロヒーローの目に留まって、指名を受けるのは間違いない。

 敷地内の中庭には警備のためのプレハブ小屋まで建てられ、警察に混ざって名の通ったプロヒーローまで警備に参加しており、時折ファンに声をかけられている。通学路には様々な屋台まで並んで、まさにお祭り状態だ。

 

 そのタダでさえ広い敷地内の、1番クソデカいスタジアム3つの内の1つにある、1年A組の控え室。

 俺達クラスメイトは上下雄英のジャージで待機していた。

 

「あ〜あ、やっぱコスチューム着たかったなぁ〜」

 

「公平を期すため、着用不可なんだよ」

 

 机の上に項垂れる芦戸を尾白が宥める。

 確かに、個性を補助するコスチュームとサポートアイテムがあるかないかで強さが変わりそうなクラスメイトもいるから、公平ちゃあ公平だが。不公平ちゃ不公平にもなる。索敵全般の耳朗とか筆頭だろう。

 

「予選の種目って、何なんだろうな?」

 

「何が来ようが、対応するしかない」

 

「ああ」

 

 砂藤や常闇も開催直前になって、ソワソワし始めている。障子はいつも冷静だ。

 雄英体育祭は『ヒーロー科』だけでなく、『サポート科』『経営科』『普通科』の4科が合体し、各学年ごとに各種競技の予選を行い、勝ち抜いた生徒が本選で競う。言うなれば学年別総当たり戦だ。

 競技種目の内容は、当日にならないと判明しないので、俺以外の人間は何が来てもいいように鍛えておくしかない。

 そんな緊張で張り詰めている控え室の中へ、飯田が元気良くドアを開けて入ってきた。

 

「みんなっ、準備はできてるか!? もうじき入場だっ!」

 

「スーッ、ハーッ」

 

「人人人人……ゴクン!」

 

 いつか入試で見た時みたいに、緑谷が大きく深呼吸を繰り返している隣で、峰田が古典的な方法で緊張を和らげようとしている。

 

「緑谷」

 

 そんな緊張状態の彼を呼んだのは、轟だった。周りに座っていた麗日と爆豪が、2人を見る。

 

「轟くん、何?」

 

「客観的に見ても、実力は俺の方が上だと思う」

 

「えっ、う……うん」

 

 いきなり上から目線に物を言われ、思わず緑谷は怯んだ。

 

「けどお前、オールマイトに目かけられてるよな」

 

「あ……っ」

 

「別に、そこ詮索するつもりはねえが……お前には勝つぞ」

 

 轟はそう言って真っ直ぐ緑谷を睨みつけた。周りにいた上鳴が2人を煽って、盛り上げようとする。

 

「おお……クラス最強が宣戦布告?」

 

「おいおいおい、急にケンカ腰でどうした? 直前にやめろって」

 

 しかし、彼の言い草に少し不穏な空気も感じただろう。切島が轟の肩を掴んで下がらせようとしたが、彼はその手を跳ね除けた。

 

「仲良しごっこじゃねえんだ。何だっていいだろ」

 

「轟くんが……何を思って僕に勝つって言ってんのかは分かんないけど…………そりゃ、君の方が上だよ……実力なんて、大半の人に敵わないと思う。客観的に見ても……」

 

 背を向けて歩いていく轟に皆の注目が集まる中、緑谷は震えながら、声を絞り出す。

 

「緑谷も、そういうネガティブな事言わない方が……」

 

「でも……みんな……他の科の人も、本気でトップを狙ってるんだ…………遅れを取るワケにはいかないんだ……!」

 

 切島の呼び掛けも無視して、緑谷は拳を力強く握りしめて、立ち止まった轟を睨んだ。

 

「僕も本気で取りに行く……!!」

 

 轟は返事をする事もなく、ドアから出ていった。飯田が思い出したようにクラスメイト達を呼びかけて、俺達をスタジアムのグラウンドへと繋がる通路へと誘導した。

 

『ヘーーイッ! 刮目しろオーディエンスッッ!! 群がれマスメディアッッ!! 今年もお前らが大好きな、高校生達の青春暴れ馬ッッッ、雄英体育祭が始まディエビバディッ!!! アーーーユーーーレディーーーッッッッ!!!?』

 

 館内放送用のスピーカーから、プレゼントマイク先生のマイクパフォーマンスでスタジアム内が盛り上がっているの片耳に、俺達は合流したB組と混ざって、薄暗い通路をゾロゾロと歩いていく。

 

「切裂」

 

「うぉ?」

 

 そんな真っ最中に、いきなり轟が俺の隣に並んで来た。このタイミングで話しかけてくるとは思わなかった。

 

「USJの時……俺はお前の指示で左の力を使った…………それは俺自身、そうするしかないと思ったからだ」

 

「あぁ」

 

 

 

「でも、お前に言われて左の力を使った時……死ぬ程嫌っているこの力が……不思議と、悪い気はしなかった……」

 

 

 

「………………」

 

「悪い、まだ考えがまとまらねぇんだ。このモヤモヤに整理つくまで、俺は左の力を使わずに、この体育祭で1位を目指す……!」

 

 そう、轟は一方的に話をしてきて、彼は俺の方に顔を向けた。緑谷を見ていた時は少し違う、瞳に光の宿った、決意の篭った表情で。

 

「だから、お前も全力でかかってきてくれ……!」

 

「……わかった」

 

 お前は手加減して俺には全力出させるんかい。とは、言わなかった。

 彼も変わろうとしている。でもそれは緑谷の役目だ。

 

『1年ステージ、生徒の入場だーーーッ!』

 

 通路を抜けた先が真っ白に明るくなり、思わず目が眩む。

 でも、その光は一瞬だけ。次に視界に飛び込んでくるのは、スタジアムを取り囲んで何段にもなっている広い観客席と、ソコを満員にする物凄い量の客とプロヒーローの人達。それと、連写の止まないカメラのフラッシュ。そして快晴の青空に、プレゼントマイク先生の実況が響き渡る。

 

『雄英体育祭ッ!! ヒーローの卵達が我こそはと、シノギを削る年に一度の大バトルッッ!!! どうせアレだろコイツらだろッ!? ヴィランの襲撃を受けたにも関わらず、鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星ッッ!!! ヒーロー科《1年A組》だろーーーッッッ!!!!!』

 

「わっ……あぁ…………ひひひ、人がすんごい……!」

 

「大人数に見られる中で、最大のパフォーマンスを発揮できるか…………コレもまた、ヒーローとしての素養を身につける一環なんだな……!」

 

 見渡す限りの人人人に、緑谷がもう緊張を始めて歩き方がおかしくなってる。飯田は冷静に分析しているが、ここまで人が多いと、一周回って落ち着きそうだ。

 

「めっちゃ持ち上げられてんな〜! なんか緊張すんな! なぁ、爆豪っ!」

 

「しねえよッ、ただただアガるわッ……!」

 

 さすがの切島も緊張しているのか、前を歩く爆豪に話しかけていたが、向こうはいつも通り堂々としている。教室の前で啖呵切っただけの事はあった。

 

 その後、鉄哲達のB組、普通科のC、D、E組、サポート科のF、G、H組、経営科の、I、J、K組も入場し、グラウンドの台上前に整列した。

 

『選手宣誓!』

 

 鞭の音が響き渡り、司会進行兼主審を務めるクッソ美人な女性……『18禁ヒーロー《ミッドナイト》』先生が開会式を進行していく。白いピチピチスーツの上から黒のボンテージ着込んだみたいなヒーローコスチュームは、未成年が見たら癖が曲がってしまいそうだ。あまりの色気に整列しているクラスメイト達がザワつき始める。

 高校に18禁ヒーローとはこれ如何にと常闇がツッコんでいたが、考えるだけ負けだ。

 そこから体育祭開催前の選手宣誓が始まった。

 

『選手代表、1年A組、爆豪 勝己!』

 

「えぇ!? かっちゃんなの!!?」

 

「あいつ一応、入試1位通過だったからな」

 

 緑谷が驚き、瀬呂が説明する中、クラス内にどよめきが走る。

 彼は返事をすることなく、無言のままミッドナイトの立つ宣誓台に上がった。

 普通に終わって欲しいとクラスメイト達の誰もがそんな事を言いたげにして、皆が固唾を飲んだ。

 でも、俺は思った。アソコに立ったらインパクトのひとつやふたつぐらい、残してやらないとヒーローじゃないって……

 

 爆豪は溜めに溜めて、静かになった会場の中で、言い放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『せんせー…………俺が1位になる』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 直後、A組の阿鼻叫喚の声と、他クラスからのブーイング、そこに会場の歓声とブーイングも合わさってスタジアム内が一気にカオスな状態となる。

 

「あっッッッッ、はっはっはっははははハハハハハハハハハハハッッッッッッ!!!!!!!!!」

 

「きっ、切裂くんっ!?」

 

 隣の緑谷が驚くのも構わず、俺は爆笑していた。この空気で言える胆力は、本物間違いない。凄まじい緊張感からの緩和。面白くないワケないのだ。

 

『せいぜい、ハネの良い踏み台になってくれ…………オイッ、ナマクラァッ!!! いつまで笑ってやがんだッ、ブッ殺すぞッッッ!!!!!』

 

 爆豪がマイク入ったまま、笑っている俺の名前を叫んでキレ散らかし、ミッドナイト先生に宣誓台から降ろされる。

 ちなみに、彼がつけた俺のあだ名は『ナマクラ』 みみっちいクセに、センスだけは1流である。

 

『さーてっ、それじゃあ早速始めましょっ! 第1種目は、いわゆる予選よっ! 毎年ここで多くの者が(ティア)ドリンクッ!! さて、運命の第1種目ッ! 今年は…………コレッ!!!』

 

 混沌とした宣誓が終わって、早速始まった体育祭。俺達の目の前に浮かび上がる投影モニターと、スタジアム内の電光掲示板に映った第1種目は『障害物競争』 ま、雄英の障害物競争がタダの障害物競争なワケがない。

 参加者は計11クラス全員参加のレースで、コースは会場の外周約4キロ。ソレを走ってゴールである会場に戻れば良い。

 もちろん此処は自由がウリの雄英高校。コースを外れなきゃ、個性はいくら使っても構わない。まさに雄英のヒーロー科のためにある様なルールだった。

 

『さあさあっ! 位置につきまくりなさいっ!!!』

 

 会場の歓声が盛り上がっている中、ミッドナイト先生の指示で俺達1年全生徒がスタート位置へと移動する。

 ゴールゲートと兼用するデカいゲートが構えられたスタート地点。スタジアムから外に出る通路は狭く……それでも40〜50人ぐらいは並べそうだが、全員が一斉にスタートダッシュしたら確実に詰まる。

 入学試験のスタートは隙をついてトップに出たが、今回の相手は曲がりなりにも雄英の生徒。入試の受験生だった者達とは、余りにも雰囲気が違いすぎる。

 周りの空気に圧迫されながらも、俺は自分の良いスタートポジションへと移動した。

 

「切裂〜っ? あれ、どこ行ったー!?」

 

 身長の低い峰田からコッソリ離れた俺は、前方に集まっている人混みを避け、会場側の後方に位置した。峰田のモギモギの個性も上手く利用すれば良い順位に行けそうだが、俺のスタート位置に峰田まで付き合う必要はない。

 最後尾に移動を終えると、ゲート上部の緑のランプが消えていく。誰もがそのランプがひとつずつ消えていくのを確認して、最後のランプが消えていく瞬間を見送った。

 

 

 

 

 

 挿入曲 林ゆうき - Jet Set Run

 

 

 

 

 

『スターーートッッ!!!』

 

 ミッドナイト先生の宣言したスタートと同時に、走り出そうとした前列のゲート先から冷気が立ち昇った。

 

「うわッ、なんだッ!?」

 

「つめたッ!」

 

「寒み〜〜っ!!」

 

「……ってぇッ、何だ!?」

 

「動けんッ!!」

 

「足がッ!! なんだコレッ!?」

 

「邪魔だ! 通れねえッ!!」

 

 スタートダッシュの代わりと言わんばかりに、轟が前列の足元を氷漬けにしたせいで、思った以上に前が詰まった。緑谷や峰田みたいな対処の仕様がないクラスメイトは、文字通りおしくらまんじゅうになっている。

 

『さーーて、実況してくぜッ!!! 解説アーユーレディー? イレイザーッ!!!』

 

『無理矢理呼んだんだろうが……!』

 

 放送席のプレゼントマイク先生と相澤先生の声がスタジアムに響き渡っている。相澤先生、口ではああ言っているが、嬉しそうだ。

 そんな状況下、俺のいる後列では前が進まずに怒声を上げる生徒が続出する。

 

「オイオイッ!!」

 

「ちょっと〜っ!」

 

「スタートゲート狭すぎだろ!!」

 

「イッテぇなっ!!?」

 

「なにやってんだー!?」

 

「進まねーぞッ!!」

 

『早速だがイレイザーッ、序盤の見所はッ!!?』

 

『………今だよ』

 

 叫んでばっかの生徒を無視して、俺は後方から大きく駆け出してから刃で跳躍し、通路の壁を突き刺しながら蹴り付ける。飛んだ先は反対側の壁を蹴り付け、八双飛びの要領で俺は通路に詰まっていた人混みを飛び越え、一気に前へと躍り出る。

 

『おーーーーッと、1-A切裂ッッ!!! 壁から壁へとジャンプしてゲート前を突破したァッッ!!! まるで忍者だぜッ、シヴィーーーーーッッ!!!!!』

 

『前が詰まるのを予測していたな。それにあいつは個性の使い方が上手い。あれぐらいの動き、造作もないだろう』

 

 プレゼントマイク先生と相澤先生に名指しで解説され、少し気が上がった。

 着地する先の地面は轟の氷で、鮨詰めから抜け出した生徒は滑りまくっていたが、俺は足を刃にしてその床に着地する。それも普段の足に沿って刃を伸ばすのではなく、足の裏をスケートのブレード代わりに伸ばし、スピードスケーターの要領で氷を滑る。

 前方では爆豪が爆破で飛び上がり、切島は硬化して氷と生徒を押し除けながら、八百万は棒高跳び用の棒を創造しながら大ジャンプして、轟の氷地帯を抜けていた。

 彼等以外にも、尾白は尻尾のジャンプで氷を回避し、芦戸は足の裏の酸で氷の上を滑って、常闇はダークシャドウの上に乗って滑空していた。ほかのクラスメイト達もみな、それぞれの方法で轟の氷を回避していく。

 着地の勢いも合わさって猛スピードでコースを滑った俺は、前方の棒高跳びしようとしていた八百万と、酸で滑っていた芦戸を一気に追い抜いた。

 

「うわぁっ!?」

 

「きゃあっ、切裂さんっ!?」

 

「ゴメンねっ、うおッとっ!?」

 

 一瞬だけ彼女達に顔を向けて前に戻した直後、俺は滑っていた足でブレーキをかけ、前方から乱回転しながら吹っ飛ばされてきた峰田を受け止めた。

 

「峰田くん!?」

 

「切裂ぃ……ナイスキャッチ……っ!」

 

 すぐさま彼を下ろして前を見ると、そこには入試で散々見た緑色の仮想敵が、数を成して待ち構えていた。

 

『ターゲット……大量』

 

「入試の仮想敵ッ!?」

 

『さあ、いきなり障害物だ! まずは手始め……第1関門……《ロボ・インフェルノ》ぉッッッ!!!!』

 

 緑谷が驚いている最中、コース上のスピーカーから流れるプレゼントマイク先生の実況が、障害エリアである仮想敵の群れの中に響き渡った。

 それだけではない。最初の障害として現れたのは、普通の仮想敵に混じって聳え並ぶ、入学試験の時の0ポイント超巨大お邪魔仮想敵。それも1体だけではなく、ざっと見るだけで10体はいる。

 

「……って、わッ!? 入試ん時の0ポイント敵じゃねえかッ!!」

 

「マジか!? ヒーロー科あんなんと戦ったの!!?」

 

「障害物ってコレぇッッ!!?」

 

「多すぎて通れねえっ!!」

 

 そういえば、他の科の試験はヒーロー科とは違うのだ。そりゃそうだろと自分で自分に言いたくなったが、それでこんな目に遭うほかの科は大変だと思う。

 

「一般入試用の仮想敵ってヤツか……せっかくなら、もっとスゲえの用意してもらいてえモンだな…………クソ親父が見てるんだから……!」

 

 推薦入試の轟は初めて見るみたいだったが、臆する事なく目の前の巨大敵に対し、地面に触れた場所から冷気を放ち、一気に包み込んだ。

 いつぞやの市街地訓練でビル一棟を氷漬けにした時ばりの勢いで、ビルよりデカい仮想敵が霜と氷塊だらけの氷像と化した。

 

『1-A轟ッ!!! 氷の個性であの仮想敵を一気に氷漬けだァーーーーーッッッ!!!! やっぱ推薦組は格が違ェェーーーーーッッッ!!!!!!』

 

『前よりも氷の範囲と速度が上がっている。体育祭に向けて、しっかり準備してきたな』

 

 足元から頭まで、一瞬にして氷漬けになってしまった巨大敵の股下を通って、轟は巨大敵地帯を突破していく。

 

「あいつが止めたぞ!」

 

「足元の隙間だ、通れるっ!!」

 

「スゲーーーッ!」

 

「今だっ!!」

 

 それに釣られて、ほかの生徒も我先にと轟の後を追おうとするが、彼は走りながら振り返って忠告する。

 

「やめとけ、不安定な体勢ん時に凍らした……倒れるぞ」

 

 轟の言う通り、巨大敵は重たい音を響かせながら、ゆっくりとこちら側に倒れ込んでくる。

 

「うわっ、待ってッ!?」

 

「こここここッ、こっちに倒れるッ!!?」

 

「にっ、逃げろーッッ!!!」

 

 この体育祭は、雄英のヒーロー科が未来のために自分の能力と個性をアピールする場所。勝ち残れば勝ち残るほど、自分を売り出せる機会は増える。

 だから、1位にならなくたって今この瞬間で1位より目立って見せるのも、立派な戦法だ。

 

 要は、この体育祭……目立った者勝ちである。

 

 後ろで大騒ぎしている生徒に目もくれず、俺は氷や機械の破片をバラ撒きながら倒れ込んでくる巨大敵の脚部から駆け上がる。更に、脚で大きく跳躍しながら敵の顔面、8つの赤いモノアイの光る目の前へと飛び上がった。

 

『おぉーーーッッと、1-A切裂ッ!!? なぁァァにやってんだァーーーーーーーッッッ!!?!! 潰されちまうぞぉォォーーーーーーッッッ!!!!!』

 

 プレゼントマイク先生の実況もよく聞こえなくなってしまうほど、風の吹き抜ける上空で、俺は今まで片腕ずつでしか形成させていなかった刃を、両手を合わせて発動した。

 腕の硬化する金属音と共に、伸びる2つの刃は途中でひとつに合わさり、それは大きく、分厚く、そして鋭い大剣へと変化した。

 

「ハア゛ァァぁあぁぁぁぁぁァァァァァァァッッッッッッッ!!!!!!!!!!」

 

 空中で身体全体を大きくしならせ、全身全霊の力を持って降り下された俺の大剣は、こちらへ倒れ込む巨大敵の脳天に命中し、振動と同時にその動きが止まった。

 衝撃で巨大敵に纏っていた氷が一斉に砕け、今まで倒れ込もうとしていた敵の巨体が、白い霜を散らしながらグラグラと不安定に動く。

 

「まだァァァア゛ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 俺は振り下ろした自身の大剣で、突き刺した巨大敵の頭から顔、首、腹、股下までを、激しく火花を散らしながら一直線に滑り降り、足下に着地。そして、何事もなかったかのように俺は敵の股下を駆け出す。

 

「あれ……?」

 

「なんだっ?」

 

「と……止まった……!?」

 

 いつまでも倒れようとしない巨大敵に、逃げようとしていた数人の学生が振り返る。

 

『アイツやりやがった……!』

 

 

 

 

 

 相澤先生の少し動揺した声が聞こえた次の瞬間、ビルを見上げんばかりの大きさを誇る仮想敵の巨体が、縦に真っ二つに割れた。

 

 

 

 

 

「ハアァァァァァァァァッッッ!!!?!?!!」

 

「えェェぇえェぇェエぇぇェェェェッッっっっ!!?!!?!」

 

「うわァァァァァァァァっっっっ!!!?!!?」

 

「割れたァァァァァァァァァァッッっ!!!!!?!」

 

『Foooooooooooooooooooooooo !!!!! 1-A切裂ッ!!!!! あのチョーーー巨大な仮想敵をッッッ、真っ二つにブチ割ッッたァーーーーーーーーッッッッッ!!!!!!!!!! って、おいヤベーぞ!? アレ来年の入試でも使うつもりだったのにッ!?!』

 

『ハァ……来年度の予算決議、荒れるな……』

 

 いや、知らんがな。

 

 会場どころか、選手もクラスメイトも全員、先頭走っていた轟すら振り向いて驚いていた。後で知ったが、巨大敵の金額を知っている人間は泡吹いてブッ倒れたとか何とか。

 正直、1位取るより上のインパクトは残したと思う。もうココでやめてもいいかなとも思ったが、さすがにソレは許されないだろう。

 俺は後ろで地鳴りを起こしながら倒れ込む仮想敵に目もくれず、動揺して速度を落とした轟を追って走り続ける。巨大な仮想敵の奥にはもう、次の障害へと進むコースしか伸びていない。しかも、真っ二つにされた仮想敵それぞれの片割れが、隣に並んでいた仮想敵を巻き込んだ。おかげで生徒達の集まっていた障害の中央が、大きい安全地帯と化してしまった。

 

「アイツが切り開いてくれたぁっ!!!」

 

「今だ進めぇェェェェっっ!!!」

 

 足の遅い巨大敵では、生徒に追いつけない。雑魚敵を次々と蹴散らしながら、巨大敵を横目に生徒達が次々と中央を突破していく。

 

『なんだなんだぁーーーーッッ、今年の1年はッッッ!!?!! 巨大敵を凍らしたり叩き切ったりッッッッッ!!!!! マジでシヴィーーーー連中が揃っちまったんじゃねーーのかぁぁーーーーッッッッッ!!!!!? コリゃ、最後まで見逃せないぞぉぉーーーーーーッッッッッッ!!!!!!』

 

 スタジアムの外なのに会場の歓声が爆音となって聞こえてくる。先頭走っている轟との距離も悪くはない。十分に追い抜ける。

 

 しかし、チラリと後ろを覗くと……ちょっと大変な事になっていた。

 本来選手側に倒れ込むはずだった巨大敵……轟の妨害を俺がジャマしたせいで、2位である俺のすぐ後ろが数珠繋ぎのデッドヒート状態になっていた。

 スピードに関係する個性の持ち主が、争いながら俺を追っている。飯田のエンジン音もすぐ近くから聞こえて、俺にプレッシャーをかけてくる。

 

『オぉイオイッ、第1関門みんなチョロいってよォ!? んじゃッ、第2関門はどうさッ!!?』

 

 プレゼントマイク先生の実況と同時に次の障害が見えてきた俺は、それでも速度を落とさず駆け続ける。

 

『落ちればアウトっ!!! それが嫌なら這いずりなッ!! 《ザ・フォール》ッッッッッ!!!!!!』

 

 次の障害物は、いったいいつこんなものを作ったのか、断崖絶壁のバカ広い大穴に、カルスト地形よろしく小さな足場がロープ同士で縦横無尽に繋がったエリアだ。

 

「ふんっ!」

 

 俺は短い足場同士は脚を刃にして飛び渡り、それで届かない足場は轟が凍らせた氷のロープを、今度は足の刃を2枚にしてロープに引っ掛けながら勢いで滑った。上りの時は地面を滑る間に両腕をスキーのストック代わりにして勢いをつけ、それでも足りなくなったら足の裏に小さな刃を大量に生成してスパイクの代わりにして走った。

 

「どけッッ、ナマクラッ!!!」

 

『おーーーーッッと、ココで順位が動いたぞッッッ!!! 2位の切裂を爆豪が追い抜いたぁーーッ!! だが依然、轟はトップを独走ッッ!!!! 追い抜けるのかーーーーーッッッッ!!!?!!』

 

 ロープの上を走っていると、爆発の勢いで飛んできた爆豪に真上を追い抜かれた。やっぱ素の速度じゃ彼には追いつけない。平地じゃないし、尚更だ。

 

『さあ、先頭は難なく一抜けしてんぞぉーー!?!』

 

 前走ってた轟はロープの上も氷で滑りながら悠々と突破。轟に続いた爆豪も、足場から足場へと空中を爆破で飛び越え、難なく突破。

 俺もあと何回か足場を越えたら、障害のゴールに辿り着く。息を切らせながら、次に着地すべき位置を確認していく。

 

 ココで地形に対応できない個性のヤツは一気に順位を落とす事となり、少し人数は減ったがまだ俺の後ろは今にも追いつきそうな生徒で溢れかえっている。前方の順位もまだ変わりそうもない。俺のすぐ後ろのヤツは飯田と……

 

「切裂ぃぃぃぃぃぃぃっっッ!!!!!」

 

「えっ、峰田くんっっっ!!!?」

 

 なんと峰田が、自分のモギモギを踏んづけながら、ロープを使わずに地形から地形を飛んで俺の後ろに着いてきていた。

 あいつロボ・インフェルノぐらいで、ジャージのチャック全開にしてスポブラ見せつけてた八百万に引っ付いていたはずなのに、コッチの方法が早い事に気づいたのだろうか。

 

「待てェェェェェェェェッッっ!!!!」

 

 しかも、サイズが小さいだけあって結構早い! アイツも勝つための準備を、しっかり用意してきた事に、俺は喜びを覚える。

 

「なぁぁに笑ってんだァァァァッッ!!!」

 

 峰田から投げつけられるモギモギを跳躍で器用に躱しながら、最後の跳躍で断崖地帯を突破。ついでにコースの終わりに繋がっている、氷漬けのロープは足で切断した。

 

「アァァァァァァァっッッっッ!!!?! オマエぇぇぇぇぇぇェェェェェェッッッッッ!!!!!!!!」

 

 最後のロープ上に着地しようとした峰田が、悲鳴を上げながら崖下へと落っこちていく。少し可哀そうだったが、彼ならモギモギでロッククライミングできるから、すぐ登ってくるだろう。自主トレ期間に死ぬほどやらせたし。

 

「き、切裂君ッ!! 君ぃ、なんて事をォ!!!」

 

「ゴメン飯田くんっ!」

 

 最後の足場からロープを渡ろうとしていた飯田が怒っていたが、これも戦法だ。返事だけして俺は振り返る事なく次の障害へと走った。

 ゴールに繋がるロープもひとつじゃない。すぐに後ろは追ってくるだろう。

 

『さあ……早くも最終関門!!! かくして、その実態は…………《一面地雷原》ッッッッッ!!!!!』

 

 最後の障害物は実況通り、辺り一面のオーソドックスな地雷原。そこに轟が、続いて爆豪が飛び込む。

 

『地雷の位置はよく見りゃわかる仕様になってんぞォ!! 目と脚、酷使しろッ!!! ちなみに地雷は競技用で威力は大した事ねえが……音と見た目は派手だから、失禁必至だぜ〜〜〜ッッッッ!!!!!』

 

『人によるだろ……』

 

 ココでようやく轟がスピードダウン。個性を使いすぎたか、後続との距離が近いせいで氷の足場を利用されるのを嫌ったか、自らの足で地雷を回避しながら走っている。

 

 そこに飛び込んできたのが爆豪。爆発の低空飛行で地雷原を回避しながら轟に迫った。

 

『ココで先頭が変わったァァーーーッ!!! 喜べマスメディアッッ!! お前ら好みの展開だーーーーッッッ!!!!!』

 

「テメェッ! 宣戦布告する相手を間違えてんじゃねえよッ!!! オラァッ!! 半分野郎ッッ!!!!」

 

「クッ!!?」

 

 先頭で爆豪と轟が争ってスピードダウンしている間に、俺は刃にした足で地雷原へと飛び込む。片足ずつ最低限の接着で、先の地面も見ながら交互に跳躍し、冷静に小ジャンプを繰り返しながら、着実に2人の距離を詰めていく。

 俺の後ろでは、飯田がスピードで地雷を振り切ろうとして、爆発に飲まれた様子が見えた。

 

『さあさあさあ後続もスパートかけてきたァ!!! だがッッ、引っ張り合いながらも先頭2人がリードかァッッッ!!!?』

 

 途端、後方で普通の地雷以上の爆発が起こった。

 

『後方で大爆発ゥッッッッ!!!?!? なんだあの威力〜〜〜ッッッ!!!!!!』

 

 地面に埋まっていた地雷をかき集めて起爆し、仮想敵の装甲で爆風に乗りながら地雷原とデッドヒートから抜け出した緑谷が、俺の見上げる上空を通り過ぎて、争っていた轟と爆豪の2人を飛び越えた。これで今4位になった。

 

『偶然かッ、故意かッ!!? A組緑谷ァァァ!!!! 爆風で猛追ィィッッッッ!!!?!?! ……つうか抜いたーーーーーッッッッッ!!!!!!! そして切裂が4位まで落ちたぁーーーーーッッッ!!!!!!!!』

 

 俺は速度を緩めず、爆豪と轟が緑谷を追う背中をを追いかける。このまま3人の争いを見届けて、4位で突っ込むのも面白かっただろう。

 だが、先程巨大敵を真っ二つにした事で俺はハイになっていた上、開会式でグラウンドへと出る時の轟の台詞を、思い出してしまったのだ。

 

 

 

 

 

 全力でかかって来いって……

 

 

 

 

 

「デクぅ…………俺の前を行くんじゃねぇェェェェッッッ!!!!!!」

 

「クッソッッ!!!(後続に道作っちまうが……後ろ気にしてる場合じゃねえっ!!!)」

 

『元先頭の2人、足の引っ張り合いをやめ、緑谷を追うーーーーッッッッ!!!!! 共通の敵が現れれば、人は争いをやめるッッ! 争いはなくらならないがなァァッッッ!!!!!!』

 

『何言ってんだ、お前』

 

 プレゼントマイク先生の意味わかんない実況を無視し、轟が作った氷の道目掛けて、すかさず俺は地面を両脚で踏み締め、超低空飛行で飛び出しながら両膝から爪先までを刃にした状態で、氷の上へと滑り込む。

 

「ッッッッセイっ!!!!」

 

 そこから更に両手の刃を振り下ろして伸縮させ、滑る勢いを加速させたと同時に、腕から肘を刃にして風の抵抗も最低限に減らすべく身を低くさせ、ボブスレーの弾丸みたいな速度で3人に突進した。

 

『おォォーーーーッッッッ!!!?!?! 切裂も前へ飛んだーーーーーッッッ!!!!! てか、速えぇェーーーーーッッ、なんだアリャーーーーーッッッッッ!!!!?!!?!』

 

「待てゴラぁぁぁぁぁぁぁぁあッッっッッ!!!!!」

 

「ア゛ァァぁッ!!?」

 

「クッッ!!!」

 

「うわァァっ!!? きっ、切裂くんっ!!?」

 

 轟が俺に氷を、爆豪が俺に爆破を放つが、俺の振り抜いた刃が爆風を切り裂き、轟の氷塊すら突進で破壊した俺は、そのままジャンプ台代わりに氷の上を飛び上がり、3人のすぐ後ろに躍り出た。

 大ジャンプから失速して、地面と逆さまになって落下していた緑谷と、俺との目が合う。

 

「ゴメンッッッッ!!!!!」

 

 着地寸前で彼は空中で体を一回転させ、巨大敵の装甲を地雷のある地面に叩きつけた。

 

「マジッ!!?」

 

 俺は空中で再び両手で大剣を生成し、地雷の爆発するタイミングと同時に、降り下ろした。

 

 そして起爆。

 

「「「「うぉォォォォォォォォッッッッッ!!!!!?!!?!!!」」」」

 

 俺の斬撃によって、地雷の爆風は滅茶苦茶に分散された。爆心からコースの進行方向上にいた緑谷はそのまま再度、地雷原から飛び上がった。

 彼はその勢いで地雷原を突破し、地面を転がりながらも立ち上がり、駆け出す。

 

『緑谷ァーーーッ!! 間髪入れず後続妨害ィーーーーッッ!!!! なんと地雷原即クリアーーーーッッッ!!!!!!』

 

 俺は切り裂かれた爆風の直撃を硬化させた体で耐え抜き、爆心地に着地するなり爆発の間を抜けて飛び上がり、地雷原の終わりスレスレを着地して走る。

 

『そして次に切裂が地雷原を飛び抜けたァーーーーーッッッッ!!!!!!!!!』

 

 しかし、ここで想定外の事が起こった。俺が爆風を斬り裂いたせいで、爆豪と轟が想定よりも吹っ飛ばず、すぐに復帰してきたのだ。

 

「ガァァァァッッッ!!!!!」

 

「チィィぃぃッッッッ!!!!!」

 

 言葉になっていない爆豪と、本気の目で俺と緑谷を睨みつける轟。2人の個性による疾走は、移動による恩恵を持たない緑谷と、彼の後ろを疾走する俺へすぐさま迫ってくる。しかし、先頭を走る緑谷は、もうゴールである会場の入り口へ入ろうとしていた。

 

『イレイザーヘッドお前スゲェェなァァーーーーーー!!!!! どーーゆーー教育してんだぁァァーーーーーーーーッッッ!!!!!??』

 

『俺は何もしてねえよ。ヤツらが勝手に火ぃ着け合ってんだろ……!』

 

 最初に緑谷が、数秒遅れて俺と爆豪と轟が3人同時に通路へと飛び込む。両隣を見遣れば、轟と爆豪が睨みつけてくる。

 

「クッソッ!」

 

「クッ!!」

 

「ッ!!!」

 

 これ以上蹴落とし合いをしていると、前に追いつけない。向こうもそう判断していたのだろう。俺達3人は、目の前を走る緑谷を追い抜く事だけを考えていた。

 

『雄英体育祭1年ステージッ!!! 序盤の展開からこの結末をだァァァれが予想できたァァァァァッッッ!!!!!』

 

『無視かッ!!!』

 

 ようやく相澤先生の大きな声も聞けた実況の中、俺は緑谷の背中に手を伸ばして駆ける。暗がりの通路の中、俺達の吐息と走る音だけが響く。

 

「「緑谷ァァァァァァァァッッッッ!!!!!」」

 

「デクぅゥゥゥゥゥゥゥッッッッッ!!!!!」

 

「ウォぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッッッッッ!!!!!」

 

『今ッッッ、1番にスタジアムに帰ってきたのはァァァァァァァァッッッッ!!!?!!?』

 

 4人一斉に叫びながら、スタジアムから差し込む光で、一気に目の前が明るくなって、何も見えなくなった。

 

 

 

「「「「あぁァァァァァァァァァァァッッッッっッッ!!!!!!!!!!!!」」」」

 

 

 

 もはや止まる事すら頭になかった俺達は4人全員、肉団子みたいな状体になってゴールのゲートへ飛び込み、スタジアムのグラウンドに転がった。

 

『あーーーーーーッッッッとォ、上位4名による同時のゴォーーーーーーーールッッッッッ!!!!!!!!!!!』

 

「はぁ……ッ、はぁッ! はぁ……ハァ……ッ!!」

 

「ゲホッ、ゴホッ! ハァ、ハァ……っ!」

 

「ぜーッ、ゼーッ! ハァ…………ッ!」

 

「ゼェ、ゼェ……ゲホっ、ゴホンッッ!!」

 

 限界を超えて走り続けた俺達4人は、立つ事もできなかった。観客席の視線が集まる中、グラウンドで寝転がりながら息を整えていた。

 

『さぁッ、注目の判定はッッッ!!?! VTRスターーーーーーーッットォォ!!!!!!』

 

「「「「───ッ!!!」」」」

 

 巨大液晶モニターに、俺達がゴールする瞬間が映し出される。4人全員が凄まじい形相になりながら、ゴールゲートを通過するその瞬間、映像がコマ撮りになった。

 

 4人全員がゴールの瞬間に手を伸ばしていた。

 

 誰かの汗の粒が当たっても、気にしてなどいない。泥だらけの緑谷に、ヴィラン顔負けの形相の爆豪、顔の半分以上霜に覆われた轟、ハイになって顔の辺りまで刃が出そうになっていた俺。

 それだけ執念でゴールゲートに1番最初に届いていたのは……緑谷の顔───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───よりも……大剣を解除した個性を中途半端に出しっぱなしにしていた、俺の刃と化した右腕だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ」

 

 俺の間抜けな声は、プレゼントマイク先生の大音量で掻き消された。

 

『1位はA組ッッッ!!!! 切裂 刃だァァァァァァァァァァァァッッッッッッ!!!!!!!!!!』

 

 モニターに映し出された表示は、2位が緑谷、3位が轟、4位が爆豪だった。

 会場は大きな歓声に包まれたが、ソレが俺に向けられているという実感はなかった。

 

「クソォッ!! デクにもッ、半分野郎にまで負けた……ッッ!!」

 

「あ…………あぁ、…………そんな…………っ!」

 

「………………」

 

 地面を殴りつけて悔しがる爆豪。愕然としてる緑谷。左手をずーっと見てる轟。

 俺が原因で作り上げたビッグ3の地獄絵図を見渡しながら、俺は天を仰ぎ……

 

「どうしよう……?」

 

 自分自身に問いかけていた。

 

 

 

 

 

 次回『騎馬戦』

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