呪術師と茘の者たち   作:有苑

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ラスト、行ってみましょー!


第14話 妓女と宦官 後宮と術師

いつもの執務室、壬氏(じんし)は信じられないほどに拗ねていた、体にキノコを生やして。

 

「いじいじ、うじうじ。」ドヨヨーン

 

その光景を、高順(ガオシュン)雅彦(まさひこ)麟扁(リュウヘン)は眺めていた。

 

「いつまでそうしているつもりですか?やはり引き止めればよかったのでは?」

 

「……何も言うな。」

 

「はあ…。」

 

「このお方とくれば……まだやってるよ。」

 

毎度起こる主人の不機嫌期に、いい加減慣れた様子の雅彦は溜息を吐く。

 

「……なっ、何が…あったんだ?これ…。」

 

一方、完全初見の麟扁は異常な光景に若干引きながらも雅彦に質問する。

 

「……聞きたいか?」

 

「…おお。聞きたい。」

 

雅彦は、その返答に大きなため息を吐き、話し始める。

 

「……猫猫(マオマオ)が解雇されて後宮を出てった。」

 

「……は?えっ…そんだけ?」

 

あまりの簡潔さに、麟扁は耳を疑う。

 

「しかも、最終決定権この方にあったし。」

 

「…嘘だろ、おいぃぃ。」

 

最終決定権は壬氏にある。これは、壬氏の一存で簡単に揉み消せるということ。にも関わらず、壬氏は自分が最も後悔する選択をし現に今、拗ねている。その事実に、麟扁は呆れることしかできない。

 

「……お前らも…何も言うな……。」

 

「…何であいつは解雇されたんだ?」

 

麟扁に質問され、雅彦は、事の経緯を話す

 

「先日、園遊会で起きた騒ぎの元凶が、風明(フォンミン)だったと判明した一連の騒動。…お前も聞いてるだろ。」

 

「ああ。」

 

「で、一族郎党皆殺しとまではいかなくとも、風明の親族は、財産や重さに差異はあれど皆肉刑に処された。」

 

「風明の一存とされてるから、完全にとばっちりだけどな。」

 

「それは異国出身の俺が、1番思ってる。…阿多(アードゥオ)妃に責任が問われなかったのは幸いだった。」

 

「…だな。」

 

「そして、風明の一族やその関係者は、後宮を去る必要がある。」

 

「それに猫猫が引っ掛かっちまったと…でも何で?」

 

「園遊会の時、猫猫は何でここに来たと言っていた?」

 

雅彦の質問に麟扁はハッとした様な表情を浮かべ、口を開く。

 

「…人攫い……。」

 

その回答に雅彦は頷き、続けた。

 

「売り飛ばされた先は、貿易商…件の関係者だったらしい。」

 

「なるほどな……。」

 

「2人とも…少し、よろしいでしょうか?」

 

2人の会話に、高順も加わる。

 

「どうか致しましたか?」

 

「いえ。いい加減どうにかしなければ、と思いまして……このままでは、仕事が滞ってしまうので。」

 

「確かに……。」

 

「その通りですね。」

 

「でも、一体どうすれば………。」

 

3人は、頭を悩ませる。

 

「猫猫が、今どこにいるのかも、分かっていないですし……。」

 

「少なくとも、小猫(シャオマオ)が花街出身で、緑青館に大きな伝手があることは確かです。」

 

「緑青館…どこですか?」

 

聞いた事のない場所の名に雅彦は疑問符を浮かべる。

 

「やっぱ知らないんだな、お前。」

 

「…外廷から外に出たことがないんだよ。」

 

完全に苦し紛れの言い訳である。

 

「緑青館っていうのは、花街にある老舗の妓楼だよ。店を取り仕切ってるのが、『やり手婆』っていう守銭奴でさ、ある意味悪名高い妓楼でもある。」

 

「ふーん、なるほどねえ。」

 

「伝手って、どれぐらい大きいんだ?」

 

「以前、李白(りはく)という男に紹介したのは、確か、三姫の1人だったはずです。」

 

「えっ……高順様、それガチで言ってるの!?」

 

高順の言葉に衝撃を受けた麟扁は驚愕という表情で聞き返す。

 

「そんな…凄いことなのか?」

 

「凄いも何も、一晩の酌で一般の給金ほぼ1年分の銀が消えるって言われてんだぞ!」

 

「そっ、そんなに!?」

 

「確か李白って奴、完全に一見様だったんだろ!?それなのに三姫って………アイツもう何なんだよ!」

 

『アイツ』とは猫猫の事であろう。無理もない、攫われて此処にやって来た薬屋の娘が持っていて良い伝手では無い事は明白だった。

 

「なあ、麟扁。伝手って言っても、料金は発生するんだろ。」

 

「そりゃあな。何しろ、やり手婆が仕切ってる店だ。借金になるなら、妓女にさせてでも返済させ………。」

 

「「あっ!」」

 

その瞬間、2人は同時に言葉をこぼす。

 

「どっ、どうかしたのですか?」

 

その光景に、高順は驚きを隠せない。

 

「高順様、猫猫がいる場所が分かったかもしれません。」

 

「一体、何処ですか?」

 

「緑青館だ、どうにかして呼び出すなり何なりすれば…」

 

「なるほど。ですが、一体どうすれば。」

 

「……そうだ!6日後に宮廷高官の宴がある、そこに緑青館の妓女を呼び出せば!」

 

麟扁の発案に高順も賛同する。

 

「確かに、宮廷高官の宴なら、壬氏様も出席されます……ですが、そこに小猫が来るという確証は……。」

 

「客を取っていない妓女を、三姫と一緒に呼び出せばいい。三姫全員を呼び出せる財力があると知れば、やり手婆ならそれ以上の稼ぎを求めて暇な妓女を全員寄越してくる筈だ。そこには猫猫もいる!」

 

「なるほど、分かりました。『宴を盛り上げるための余興』として、打診してみます。」

 

高順と麟扁、2人が議論をしているのを雅彦は眺めているだけだった。

 

(いつの間にか…決着がついていた……。)

 

「どよどよ…いじいじ…じめじめ……。」ドヨヨーン

 

その間も、壬氏の調子が変わることはなかった。

 

 

 

 

 

 

6日後

 

4人は、宴の会場に到着していた。

 

「さっ、壬氏様。此方にお座り下さい。」

 

「…はあ、分かっている………。」

 

雅彦は椅子をずらし、壬氏が座れるようエスコートする。

 

「まだ拗ねてんすか……。」

 

「一応、仕事はしてくれているんですが…余り………。」

 

「あの方の付き人かあ、高順様も大変だなあ……。」

 

その会話に、雅彦も加わる。

 

「そろそろ来そうですね。」

 

「…大丈夫でしょうか。」

 

「分かりません。でも、やれることはやりました。」

 

数分後、十数名の妓女が入場する。その直後、他の高官たちから感嘆の声が上がる。

 

「あれが……。」

 

「ああ。白鈴(パイリン)女華(じょか)梅梅(メイメイ)…緑青館の三姫だ。」

 

「…良く知ってんな。」

 

「生きてれば噂ぐらい聞く。そんだけ凄い連中なんだよ。」

 

「なるほどねえ。……あっ、猫猫居たぞ。」

 

「えっ、マジじゃん!よっしゃあ!」

 

それに気付いた麟扁はガッツポーズをして、大袈裟に喜ぶ。

 

「後は壬氏様が気付くだけだな。」

 

「…なあ雅彦。壬氏様、気付いてくれるよな?」

 

「…分からん。多分、今視野狭くなってる。」

 

2人が話していると、三姫を中心とした一部の妓女たちは、舞台に立ち、それぞれが舞踏をしたり、二胡を弾きを始める。猫猫を含めた残りの妓女たちは、酒を注いだり、人によっては象棋(シャンチー)を打ったりしている。

 

「麟扁。」

 

「どうした?」

 

「あれとか……あれ何?」

 

雅彦が指さす先には、台の上で、木片を動かしている高官と、妓女の姿があった。

 

「あれは象棋で、あっちは将棋だな。…やってみるか?」

 

「いや、やめとく。今日初めて知ったから。」

 

「そうか……というか、それぐらい知っとけ。付き合いでやることもあるだろうし。」

 

「……勉強しときます。」

 

「おう。……って、おい雅彦!猫猫が壬氏様の席に向かってるぞ!」

 

「マジか!何とかなりそうだな。」

 

後宮を管理する上司を元の調子に戻すために奮闘した雅彦と麟扁は、テンションがおかしくなっていた。

 

「失礼しますー。」

 

「1人にしてくれ。」

 

「ん?」

 

「1人になりたいんだ。」

 

「あれで気付いてないのかよ……いくら何でも視野狭くなりすぎだろ……。」

 

「猫猫は勘が良いから、気付いてくれるだろうよ……多分。」

 

 

 

その直後、猫猫は壬氏の目元の髪を避け、顔を見る。

 

「壬氏様?」

 

「ハッ!」

 

「おっ、」

 

その声に壬氏も気付き、反射的に手を伸ばす。しかし、猫猫は身を引き、その手を躱す。

 

「なぜ避ける。」

 

「妓女には触れないでください。」

 

「お前、化粧で変わるって言われないか?」

 

「よく言われます。」

 

「そもそも何でそんな格好を……。」

 

「アルバイト中です。」

 

「妓楼でか?」

 

「そうです。」

 

猫猫のその言葉を聞いた瞬間、壬氏の顔が青ざめ、声は震える。

 

「もしかして、お前……。」

 

 

 

「…ほらな。」

 

「まあ、そうだけどよお。壬氏様の焦りよう、会わないよりも危ねえことになってねえか?」

 

雅彦は2人の間に、猫猫が里帰りから帰って来た時と同じようなすれ違いがまた起こる事をひどく心配していた。それが起こった場合、始末に追われるのは己と高順だと分かっていたからだ。

 

「……アルバイトだったら売らないだろ、多分。」

 

 

 

「別に、個人で客を取ったりしてませんよ……まだ。」

 

その余計な一言は、壬氏を不安にさせるには勿体ないほどであった。

 

「まだ……………。」

 

 

 

「…取り敢えず一安心だな。」

 

「壬氏様、滅茶苦茶不安がってるけどな。…この後どうなんの?」

 

「そりゃあ、俺の時と同じよ。」

 

雅彦の顔には謎の確信が宿っていた。

 

 

 

「…なら、俺が買ってやろうか?」

 

その言葉に、猫猫は、困惑と怪訝が混じった顔を浮かべる。

 

「はあ?冗談で………いいかもしれませんね。」

 

「えっ……。」

 

その返事は、『後宮で働きたくないから辞めた』と思っていた壬氏を大いに困惑させた。

 

「もう1度後宮に努めるのも、悪くないです。」

 

「あ”ーっ、」

 

濁点が付いた溜息をしながら、壬氏は肘を机に落とす。

 

「…あそこが嫌で辞めたんじゃなかったのか?」

 

「はあ?そんなこといつ言いました?続けたいと打診したのに、解雇したのはそちらでしょう。」

 

「ん?」

 

その言葉に、壬氏は、理解が追い付かない。

 

「確かに面倒事は多かったですが、毒見役など、なろうと思ってなれるものじゃありません。いただけないのは、毒実験ができないことぐらいでした。」

 

「……ハハハッ。」

 

「ん?」

 

猫猫の言い分から、自分たちの間で起きたすれ違いを理解した壬氏は、安堵交じりの乾いた笑いをする。

 

「毒実験はさすがにやめろ。」

 

笑い交じりにそんなことを言う壬氏の顔は、猫猫はもちろんのこと、雅彦や麟扁から見ても明らかに子供のようであった。

 

「そうだよな……お前、そういうやつだよな。」

 

「何ですか?」

 

「『言葉が足りない』って言われないか?」

 

その質問に、猫猫はそっぽを向きながら答える。

 

「よく言われます……。」

 

「フフッ……」

 

壬氏は、改めて猫猫の方へ手を伸ばすが、避けられる。

 

「…だからなんで逃げる。」

 

「規則ですから。」

 

「少しくらいいいだろ。」

 

「ダメです。」

 

「減るもんじゃないだろ。」

 

「気力が減ります。」

 

「片手だけ、指先だけだ。」

 

猫猫の辛辣な返しに、壬氏は全力で食い下がる。その光景を、雅彦や麟扁はおろか、緑青館の三姫すらもが見守っていた。

 

 

 

 

「……何だこれ?」

 

「懐かしいなー、このやり取り。」

 

「お前マジか。」

 

物思いに耽っている雅彦に対して、こちらも辛辣な返しをする麟扁であった。

 

 

 

 

「…はあ、指先だけですよ。」

 

そう言って、猫猫は壬氏の方へ向き直る。すると、壬氏は右手の人差し指の背側を、猫猫の唇に掠める。そして、その人差し指の背側に口づけをする。その唇には、僅かに猫猫の口紅が残り、異様な雰囲気を漂わせている。猫猫は、照れたのか、羞恥心からか、顔を赤らめながら背ける。

 

 

 

 

「……あれは、初めて見た。」

 

「絶対壬氏様、猫猫のこと好きだよな。普通に。」

 

「本人たちは一切気付いてないけどな。」

 

「………マジでよく分かんねえ。」

 

 

 

別の場では、緑青館の三姫たちが、猫猫を茶化していた。

 

「あら、いつの間に。」「ウフフッ猫猫ったら。」「見てられないな。」

 

 

それに気付いた猫猫は気恥ずかしさからか慌てて弁明しようとするが、それどころではなかった。何故ならそこには壬氏以外にも3人の知り合いが居たからだ。

 

「ちょっ、姐ちゃん………高順様!雅彦に麟扁!…………えっ……えっ?」

 

その後、そこの席だけてんやわんやな状況になってしまい、宴がお開きになるまでの間、雅彦や麟扁は緑青館の三姫たちと挨拶を交わしたりしていた。

雅彦は、梅梅たちの猫猫への接し方を見て、この後追及されまくるであろうことに勘付き、心の中で労わっておいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、雅彦は寝床に寝転がり、考え事をしていた。

 

(猫猫と三姫たちの仲が、あそこまで良いとは思わなかった。近くにいる人たちのことを、もっと知ってみるべきかもしれない。)

 

そう雅彦が考える中、一番最初に挙がった名は、麟扁だった。

 

(俺は麟扁について、部分的にしか知らない。それも幼少の頃ばかりだ。…幼少期、呪霊が視える上、無意識的に呪力を扱えることにより、周りから気味悪がられたこと。そんな中、浩然(こうねん)様に構ってもらうことが多く、慕っていたこと。……よくよく考えれば、それぐらいしか知らない。それに、不可解なことが1つある…明らかに、壬氏様への態度が軽いこと。上司相手にそこまで言っていいのか、という気持ちに時々なる。明日にでも、聞いてみるか………。)

 

そんな事を考え、雅彦は床に着いた。

 

 

 

 

 

翌日

 

執務室にて、雅彦は椅子に座っている壬氏へ言葉を投げかける。

 

「壬氏様、お聞きしたいことがあります。」

 

「何だ?急に改まって。」

 

雅彦は息を整え、口を開く。

 

「麟扁は、何者ですか?」

 

「……どういう意味だ?」

 

「いえ。私はある日突然、麟扁を相方(バディ)として紹介されました。そして、今まで共に呪霊を祓ってきました。それは、これからも変わりません。ですが、私は麟扁についてほとんど知りません。よろしければ、あいつの…相棒の生い立ちについて、教えていただけないでしょうか。」

 

壬氏は少しの間手を口に当て、頷いた。

 

「……分かった。あいつの生い立ちだな。……あいつは、(リュウ)の一族だ。」

 

「麟の一族?」

 

初耳の単語に雅彦は聞き返す。

 

「それとお前、皇帝の血を引く者のみが身につけられる意匠を知っているか?」

 

「鳳凰と、麒麟…でしたっけ?………あっ!」

 

「…そう、そして、それに関する字を授けられる一族もまた…皇帝の血を引く者のみ。」

 

「では、麟扁は…麟の一族は、皇帝の血筋?」

 

「……部分的には、だ。正確には、数代前の皇帝から分かれた血筋。その上、水産業に関して多大な功績を残したことによって、『麟』の字を授けられた。また、その読み仮名は仏教において水を司る『八代龍王』から取られている。」

 

「そっ、そんな凄い一族なんですか……それと、麟扁は普段執務室には居ませんが、その理由は?」

 

「現在、麟の一族は外廷と後宮の水質管理、そして水産業や他国との貿易をしている。麟扁の仕事は、水質管理だ。」

 

「…そういった理由なのですね。」

 

「それと…これは、あいつの生い立ちとは少しズレてしまうかもしれんが……ちょっとした、あいつの苦労話だ。」

 

「何でしょうか?」

 

「あいつには18の頃、嫁になる予定の娘がいた。」

 

「…えっ、本当ですか!」

 

「ああ。だが、結婚の数週間前に亡くなってしまった。」

 

「……何故ですか?」

 

「当時の流行病だと言われているが、正確なことは分かっていない。そして、その影響で麟扁は一時期塞ぎ込んでしまった。まあ、昔から仲良くしていた幼馴染のようなものだからな、無理もない。」

 

「そう、ですか…………。」

 

「…余りにも衝撃的だったか?」

 

「ええ、まあ……はい。」

 

「…だろうな。あいつに何か、色恋沙汰でもあったら、手伝ってやれ。」

 

「…分かりました。……尽力いたします。」

 

 

 

 

 

その夜、雅彦は後宮の塀の上に座り、風にあたっていた。

 

(あいつも……苦労してたんだな……。再来週にもなれば、猫猫がやって来る…自分のことを話す、覚悟しておかねえとな。………あと3か月もすれば、ここに来て1年が経つ……後宮………踏み入れた瞬間から、気持ちの良い場所ではないことぐらい分かっていた。憎悪、嫉妬、悪意の巣窟。それを晒す者と晒される者たちが同一の空間に存在している。さらに逃げ出すのを防ぐために建設されたこの塀、視覚的にも逃げ場がない。その精神的負担から、この空間に住む者たちから発生した呪いは外に出ることなく留まり続ける。それが人に危害を与え、不審に思う者たちが増える。より強大な呪いが産まれる。……呪術師にとって見れば、これ程までに完璧な悪循環は他にない。最悪な場所だ。)

 

雅彦の頭に、いくつかの場面がフラッシュバックする。

 

雅彦を牢から出すときの壬氏の顔。初めて出会った時の玉葉(ぎょくよう)妃の顔。その傍らでスヤスヤと眠る鈴麗(リンリー)公主(ひめ)の顔。白粉によって子を亡くした時の梨花(リファ)妃の顔。麟扁が水の呪霊を殴り飛ばす直前に見せた顔。麟扁から聞かされた、芙蓉(ふよう)妃が後宮を去る時の顔。浩然が亡くなった事件を推理しきった時の猫猫の顔。阿多(アードゥオ)妃が後宮を去る間際の里樹(リーシュ)妃の顔。その後、阿多妃と里樹妃が、お互いを見つめ合った時の2人の顔。つい昨日見た、壬氏と猫猫が話している時の顔。

 

(でも、そこは俺が守りたいと思ったたくさんの人たちが生きている場所。俺のことを認めてくれる、唯一の場所。……俺だけでいい。壬氏様も、高順様も、玉葉妃も、鈴麗公主も、猫猫も、麟扁すらも…苦しんで欲しくはない。苦しむのは俺だけでいい。地獄を見るのは俺だけでいい。呪術師という狭い世界で生きてきた俺にとって、己の存在意義に結論を出せなかった馬鹿な俺にとって、此処は…………極楽なのだから。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、都の花街に、美しい貴人が現れる。

 

「アハ~ッ!」

 

やり手婆も目が眩むほどの金子と、それとなぜか……虫から生えた奇妙な草を持ったその男は……

 

「ハッハー!ヤッハー!」

 

1人の娘を所望した。




終わったーーーーーー。
麟扁の過去、思ったよりも壮絶でしたね。
後宮を極楽と思ってしまう雅彦は何というか……



これにて、第1クール終了となります!
どうだったでしょうか?私は呪術師要素を混ぜづらくて、辛かったです。
この後、【オリキャラ・設定、スペック一覧】を更新しますので、見ていってください。


次回もお楽しみに
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