呪霊側の術式とか考えないとマズイマズイ。
(俺は現在、
「とはいえ、3食寝床付きな以上、贅沢なことは言えないな。独房は2食しか出てこなかったし。」
「雅彦。」
「
「いえ、どれほど勉学に励んでいるか、気になっただけです。あと、ご報告に。」
「勉学に関しては、取り敢えず後宮は、いち早く知っておきたかったので。…ある程度は理解できたと思います。」
「ええ、後宮はあなたの主な仕事場になるでしょう。どこが誰の宮かなどは、知っておくべきことです。では、試しに、後宮に住まう、上級妃、四夫人のご説明をお願いできますか。」
「はい。まず1人目が、【貴妃・
「はい、その通りです。順調そうですね。…もう1件、ご報告したいことがいくつかあります。」
「なんでしょうか?」
「まず1つ目に、貴方には、自分の身分や立場を偽っていただきます。具体的には、名前、年齢、出身地、家柄などです。」
「そんなに改変して、大丈夫なのでしょうか?」
「無論、
「承知致しました。壬氏様の下で正式に働くには必要なことですよね。」
「2つ目に、本来、貴方は壬氏様専属の呪術師という形で活動してもらいますが、表向きは、私、高順の部下として、行動していただきます。」
「何故ですか?」
「実は…壬氏様は位がとても高く。突然現れた、周りから見れば、どこの馬の骨かも分からない人間である貴方が『壬氏様専属の部下』をしているなど、周りから怪しまれ、あまつさえバレてしまう可能性があるからです。」
「…確かに。私を簡単に牢から釈放できるようなお方の立場など、想像できませんね。」
「ええ、それについてはご理解いただけると、非常に恐縮です。ご報告は以上です。あと数日もすれば手続きも終わりますので、それまでお待ちください。」
「承知致しました。」
…………数日後
「ここが、俺の家だ。」
そう言って連れてこられたのは、朱色を基調とした外壁と、金色の屋根瓦からなる、とても豪華なお屋敷だった。
家の前には、白髪の初老のお婆様が待機しており、壬氏の上着を脱がせ、家の中へ誘導する。
「ここの侍女をしている
「よっ、よろしくお願いします。」
「そんなに、緊張しなくてもいいのよ。高順から事情は聞いてるし。まさか、あの子が罪人を雇ってくるとわね。一時はどうしようかと思ったけど、あなたなら大丈夫そうね。部屋を案内するわ。」
「えっ、あっ、ごっ、ご迷惑をお掛けします。」
(壬氏様のお屋敷は、執務室と私室の2つの棟からできていて、俺は仕事柄、出かけることが多いが、一応は執務室側で勤務することになってるらしい。執務室での仕事は、書類の運搬と処分、あとは掃除などだ。壬氏様曰く『やりたければ、やれ』とのことだ。私室側のアレコレは全部水蓮様1人でやっているらしい。)
「前に何回か雇ってみたんだけど、なかなか続かなくてね。」
「そうなんですか。」
「見知らぬ下着がタンスの中に入ってたら誰だって、嫌よねえ。しかも、糸や毛皮ではなく、髪の毛で縫われていたんだから。」
「えっ?…………はいっ?…………たっ、大変ですね。…………本当に。」
(そりゃあ、クビにしますわ。何が怖いって…なんでそうなったのか、想像に難くないのが怖い。)
「ええ。…大変よ。…坊ちゃんたちは、もう執務室に向かったから。着替えて、早く行ってきなさい。」
「分かりました。私は1度離れに戻ります。」
「あなたの部屋は、あそこよ。」
そう言って、水蓮は奥から3番目の部屋を指さす。
「もしかして、私は、住み込みという形で勤務するのですか?」
「ええ。本来なら、下女や官女しか許されないのだけれど、特別にね。衣服や荷物の運び込みは終わってるらしいから、入って大丈夫よ。」
「承知しました。では、ひとまずはこれで。」
お辞儀をし、自分の部屋といわれた場所へ向かい、着替えを済ませる。雅彦が着用しているのは、小豆色を基調とした。ほかの人たちよりも、若干丈が短いものだ。
「みんな変っていうけど、割と動きやすいし便利なんだよなあ、これ。」
そんな独り言をつぶやきながら、着替え終わると。雅彦は執務室へ小走りで向かった。
「おお、来たか。」
「改めまして、これからよろしくお願いします。壬氏様。…手始めに、私は何をすればよろしいでしょうか」
「そうだな…では、この書類の処「壬氏様!」っ、どうした。」
壬氏が喋っている途中、青い衣を着た、恐らく宦官であろう男が入ってきた。
「玉葉妃が…玉葉妃の破水が始まったとの報告が。」
「それは、本当か!…分かったすぐ向かう。高順。」
「はい。」
「あっ、あの、私はどうすれば?」
「お前はまだ、玉葉妃との面識がない。だから、行かせるわけには。…では、ここにある書類を処分したら、一旦、私の家に戻っていてくれ。」
「しょッ、承知致しました。」
「頼んだぞ。」
そう言って壬氏と高順は執務室から出て行ってしまった。
(今度は『私』どっちが本当の一人称なんだ?まあ、間違いなく『俺』だろうが。そう考えると俺と同じか、理由は違うかもしれんが。…取り敢えず、言われた通りに、行動するか。処分だから焼却だよな、焼却場って、どこだ?…聞くしかないか。)
「申し訳ございません。」
「どうした?」
「焼却場に行く道を教えていただけますでしょうか。」
「お前、知らないのか?」
「すいません。最近入ったばかりで。
「分かった。焼却場はな………」
「ありがとうございます。」
「おう、またな。」
雅彦は落ち着いた足取りで、焼却場に向かって歩いていく。
(あんな宦官いたか?確か、高順様に新入りの部下が付いたとは聞いていたが、まさかアイツが?…まあ、いいか。そんなこと。)
「ここが焼却場。じゃあ、あそこが軍部か。」
「ねえ、あの人ってもしかして。」
「うわあ、知ってる。急に入ってきたんでしょ。」
「アイツ、何者なんだ。」
(んん…滅茶苦茶みられてるな。というか、情報が出回るの早すぎるだろ。さっさと帰ろ。というか、この様子、高順様の位も割とバカにならないだろ。)
屋敷に帰る途中、見知らぬ、青を基調としたか衣を纏う官女とすれ違う。
(ん?なんだ今の?残穢?いや奇妙な匂いか。不思議な人もいるもんだな)
壬氏の屋敷に到着
「ふう。取り敢えず、言われた仕事は終わりかな?………逃がすか!」
刹那、雅彦は庭の陰にいたナニカに掴みかかる。
「リズシカジャゲエ”エ”」
「フンッ!」
右腕に呪力を込め、殴る。呪霊は5mっほど吹っ飛んだが祓うことはできなかった。
(後宮の呪霊もそうだったが、ここら辺にいる奴ら地味に硬いんだよな。…でも、人質がいるわけじゃない。帳は降ろしてないから、時間はかけられない。さっさと終わらせるか。)
足に呪力を込め、3mほど飛び上がり、呪霊の頭を右手で掴む。
「”
右掌から枝が生え、ゼロ距離で呪霊の頭蓋骨を粉砕する。
(だが、裏を返せば、ただただ地味に硬いだけ。それ以外は並以下だし、その硬さだって、貫通できる技があるなら意味もない。)
「さて、帰りますか。」
「あら、雅彦。どうしたの?」
「それが…玉葉妃の出産が始まったとの事らしく。壬氏様は玉葉妃の宮へ行ってしまいました。私は、玉葉妃との面識がございませんので、書類を処分をしたら、この棟に戻ってよいと言われたので。」
「そう。じゃあ、坊ちゃんたちが帰ってくるのは遅くなりそうね。」
「そうですね。…何か手伝えることはありませんか?力仕事ぐらいはできます。」
「そうねえ、じゃあ…………」
その夜
かなりくたびれた様子の壬氏といつもどうりの高順が帰ってきた。
「帰ったぞ。」
「おかえりなさい。疲れたでしょう、お食事はもうできてるから、用意しますね。」
「壬氏様、お帰りなさい。」
「ああ、雅彦。大丈夫だったか?」
「ええ。書類の処分は終わりました。そのあとは、水蓮様のお手伝いを。」
「そうか…良かった…。」
「…出産は、無事に終わりましたか?」
「ああ、無事に終わった。ただ、専門家である助産師がいないと、なかなかにキツイなあ。」
「左様ですか…良かった。」
「それに関しては、お前のおかげだ。」
「いえ、私は…助けられませんでしたし、それに………」
「だとしても、だ。呪霊の被害にあって失踪、死亡した。何かしらの陰謀か何かに巻き込まれたり、加担している訳ではないと分かるだけで、玉葉妃の不安もある程度は和らぐ。」
「だと…良いんですけど。」
「明日から、本格的に呪術師の仕事をしてもらう。俺たちからも、出来るだけ支援をしていくつもりだ。それと、お前が去勢する必要はない、一応、建前としては宦官だが。」
「そっ、そうですか。」(良かったあ。)
その後、食事をして、雅彦は床に就いた。
(明日からか。俺も周りも、死なないといいけど。…多分、無理だよなあ」
そんなことを考えながら。
終わったあああああ。
やっぱりだけど、戦闘描写がすっげえ少なくなっちゃうわ、これ。どうしよ。
まあ、次回から呪霊退治が主になると思うので、楽しみにしていてください。