「“
何かを掴むような動作をした後、一気に引き抜く。その手には《特級呪具・
〈雅彦の術式“
「さあ、行くぞ…“
その大剣を振るうと、斬撃が発生し、2体の呪霊に直撃する。左腕と右腕が、それぞれ1本ずつ切断された。
「グジャカグギジョガガガガ…ア”ア”ア”ア”ア”」
「ボウキボウキボウキボウキボウキガ…ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”」
〈2体共、呪力を使い。欠損した部位を回復させようとするが、出来ない。呪力が底をついたのか…否。これこそが≪特級呪具・布都御魂剣≫の効果の1つである。この
「悪いな。本当は今の一撃で仕留めるつもりだったんだが、外しちまった。…はあ、はあ、…じゃあな。」
ジャギイインッ
次の一撃は結局片方の呪霊にしか命中せず、もう片方の呪霊は初撃が致命傷だったようで、ひどく苦しんだ後、散って逝った。
(…あれ…俺…こんな、命中精度悪かったっけ?………やばい、……眩暈もしてきた。)
眩暈はどんどんひどくなっていく。雅彦は、眩暈を落ち着かせるために、足元を見た。そこには、赤黒い水たまりが少し、出来ていた。…程なくして雅彦は倒れた。
(あれ?…いつの間に。…これ、せなか?…さいしょの奴…当たってたんだ。…でも、痛く…なかった。…アイツ!…もし…かして、麻痺系…の、術…式持っ「おいっ、大丈夫か!おいっ、」だれ、だ?知らないひとかげ…どうして…俺を起こそうと…)
そこで、雅彦の意識は途切れた…。
(「何故だ。…何故お前のような
「っは!…ここは…俺の部屋?」
雅彦が目を覚ますと、そこは…いつもと変わらない天井だった。ただ、何かが違う。
(なんだこの違和感…明るい!……えっ、今何時?もしかして…昼過ぎてる!?ヤバい、執務室行かなきゃ。)
「イ”ッテー!」
起き上がろうとしたその時雅彦の全身、主に背中に激痛が走る。
(…そうだ!背中…)
背中に手をまわし、状態を確かめる…すると背中に、何か布のようなものが巻かれていることに気づく。
(包帯?…誰か、処置してくれたのか…体も拭かれてる…
雅彦はなんとか起き上がり、一旦、上半身だけ着替える。部屋の扉を開け、廊下に出て、執務室へ向かう。
「ぐッ!…イ”ッテえな。…仕方がない。我慢だ、…我慢。」
道中、柱などを伝い息も絶え絶えになりながら、雅彦は執務室の扉を開ける。
「
「な………。」
「んん………」
「どうか、しました…か?」
「…何故来た!寝ていればいいものを。」
「いえ、仕事ぐらいは…しなければと…思いまして。」
「今日は休暇を取らせてある。取り敢えず休め!」
「そんなに…心配…されることも、ございませんので。」
「そんな言葉、誰が信じられる。……何故あんな重傷を負った?」
その質問には、壬氏の横にいた、
「背中を切りつけられていたようで、そこから出血し、貧血になって、倒れたようです。」
「お前は…その背中からの出血に気づかなかったのか?」
「どうやらソイツが、麻痺系の術式を所持していたようで、気絶する直前まで気づきませんでした。」
「…何だ?その、術式というのは。」
(あれ?…説明してなかったっけ?そうだっけ?」
「術式とは呪術師や、一部の呪霊が持つ。特異な能力の総称です。例に漏れず、私も所持しております。」
「なるほどな。もう少し、いや、もっと深く掘り下げてほしいところだが、今はいいとしよう。…その呪霊は倒せたのか?」
「ええ。その後、似たような奴が、さらに2体襲ってきましたが、何とかなりました。すべて撃破した後に、気絶したのは…不幸中の幸いです。」
「そうか。…やっぱりお前、強いんだな。」
「…いえ。私は、あまり強くありません。…確かに、私の術式≪櫻朴操撃≫は乾家相伝の術式の中で、最も強いものです。ですが、「待て。」…どうか致しまたか?」
「話に水を差すようで悪いが、相伝の術式とはなんだ。普通の術式と何が違う?」
「そこですか…術式は遺伝することがあります。それはつまり、呪術師の子や孫も呪術師になりやすいということです。私の住んでいた異国では、呪術師の家系が、いくつか存在します。そんなものがある理由は、単純に、自分たちの持っている術式を独占するためです。…特定の一族が独占している術式。それが、相伝の術式というものです。」
「案外、単純なんだな。」
「自分たちの利益しか考えてないんですよ。あの老い耄れ共は。」
「そっ、そうか…」
(ん?…引いてる?何故だ?)
「…話を戻します。もう一度言いますが、私の術式は、乾家の相伝の術式の中で、最も強いと言っていいです。しかし…単純に、私が弱い。…というか、才能がない。」
「『弱い』って、お前、確か
「単純な戦闘力の話じゃなく、技術面の話です。実際、この国に来たのが俺ではなく、もっと強い人だったら、助かった命もあったんですから。」
「…具体的に、誰だ?」
「助産師の方や、村の娘…全員助かったでしょうね。
「いやいや、少なくとも
「治療するんですよ。」
「どれだけ腕のいい医者だったとしても、助かる可能性は
「呪術師の中には、呪力を用いて負傷した身体を回復させることができる術を身につけている者がいます。私たちはその術を≪反転術式≫と呼んでいます。」
「その術は、どれくらいの傷なら治療できる?」
「助産師の方なら切断された腕や足、顔なども修復させて、2時間もすれば、普通に歩けるくらいには回復させられるかと。」
「そこまで強力なのか!」
「当然。≪反転術式≫を使用できる術師は限られてきます。それに、自身を治癒するならともかく。他人を治癒できる程、高水準な≪反転術式≫を有している術師は、ごく一部です。」
「そんなものを身につけた呪術師が来る確率よりも、お前より弱い呪術師が来る可能性の方が、よっぽど高いだろ。」
「まあ…そう、ですね。」
「だったら、そんな奇跡を望むより、お前がこの国に来てくれたことを喜びたい。」
「左様…ですか。」ガクガクガクガクガクガク
「…やっぱりお前は…………………寝ていろ!高順!」
「はい。」
雅彦は、高順に抱きかかえられる。
「ちょっ、壬氏様!おまっ、お待ちを!壬氏様!」
「有無は、問わぁあんッ!」
雅彦はそのまま自分の部屋に運びこまれ、丁寧に寝かされる。その光景を、水蓮は面白そうに眺めていた。
「高順、今すぐ配属の準備をしておけ。」
雅彦の部屋から出て、扉を閉めてから壬氏はそう言った。
「承知致しました。」
雅彦が全回復したのは、それから3日後のことであった。
「もう、大丈夫です。グッジョブ。」
「だと、良いんだがな……」
「はあ………」
「うふふ、そうね。」
終わったああああ。
まさかの櫻朴操撃の強みと、雅彦の過去がちょっと判明!…ただのクソ家でした♪
布都御魂剣の効果、どうでした?思ったよりも強かった?弱かった?感想くれると嬉しいです。弱かったら、上方修正します。まあ、強くても上方修正するんですけど。個人的にパンチが足りなかったので。
日本神話の武器の名前を冠する特級呪具なんて、なんぼ盛ってもいいですからね♪
ちなみに、≪覆水不変≫は“覆水不辺”のもじりなので、誤字ではないです。
次回もお楽しみに。