自由病   作:original

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天国と地獄

 雲一つない晴天の日だった。周りは一帯平原、あるかないか分からないような風がさっと私の頬を撫でた。

 

 特別目的がある訳ではない。強いて言えば風の吹くままに、まぁ散歩だ。なんせ、こうも何も考えずに外を歩くというのも最近なかった。少なくとも、死ぬ前は。

 

 どうやらここは“天国”という所らしい。キリスト教で呼ばれるアレなのだろう、確かにここには環境が全て整っている。死んだというのに生きている時よりも心地が良いというのは何とも皮肉な話だ。

 

 天国では死や苦痛、悲しみ等が完全に存在しないらしい。確かにこの世界に来てからというものそのような存在に出会ったことはなかった。とは言いつつもこの世界に来てからまだ人間の世界で言う七月程らしいが。人間が勝手に決めた時間という概念がこの世界でも扱われていることに最初は多少驚いたが、この世界には人間世界にいた頃と同じ環境のものが多く存在している為かその驚きも徐々に薄れていった。

 

 この世界では、色々な事に気付く事が出来る。例えば今話した通りだが、人間である私を対象としている為かこの世界には人間世界にあったものが数多く存在している点。また、時間という概念で言えば、この世界には朝や夜という概念がないに等しい。これまた聖書通りと言えば話は早いのだが、日や月の光が必要のないほどの温かく優しい光に満ちているからだ。そこに存在しているだけで心は何処か穏やかで、心地がいい。

 

 さて、話を生きていた頃の私に移すとしよう。生きていた頃の私はしがない一美術家だった。絵を描くことに生涯を費やし、娯楽を慎み、ただ自身の求めるがままに絵を描いた。故に私は絵以外の悦びを知らなかった。この世界に来ても真っ先に手にしたのは絵だった。

 

 ただ、最近感じたことがある。絵を描くことが億劫になって来たのだ。というのも、この世界には私以外に存在する人間がいない。天使と呼ばれる存在はいるが、私が言うことに肯定しかしない為かどこか私は信頼していない。その為、私の絵が評価される機会がないのだ。それでも最近まで絵を描いていたというのだから絵を描くこと自体は好きなのだろう。自分の満足のいくように、誰かの為ではない自分の心を満たす為。そう思っていても、それでもやはり、評価を全くされないというのは虚しいのだ。

 

 神よ、私は傲慢な人間だ。傲慢が罪だというのなら、私を地獄にでも送るがいい。地獄の方がここに居るよりもよっぽどいいさ、こんな苦痛よりもマシだ。

 

人よ、祈るのはやめにしないか。ここに来る為に祈るのならその人生を全うしなさい。

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