私はふと自由を求めたくなる時がある。たとえそれが想像した、あるいは創造した世界の中であったとしてもだ。其れ即ち自分の中に住み着く自由を放ち、想像の共同体として創造させたくなるのだと。
説明は不要であろう、ここは私の脳内のようなものだと思ってくれればいいのだから。
繊細な風が私のほつれ毛を弄ぶかのように吹いては消えていく。絵を描いてみる、背後で鳴る汽笛の音と焼け果てた柿色の光に覆われて。
「この世界はもうとっくのとうに滅んだはずだろう。だからこそ始まったんだ。始まりがあるから終わりがある。その逆が起こりえる世界なら…」
先程まで真白の自由を持っていたキャンパスに次々と多彩な自由が塗られていく。絵を描いている男の手は次第に絵の中に吸い込まれていき、気が付いた頃には男の姿はその世界にはなかった。
「さて、少し想像について触れるとしようか。」
そこは月の光に照らされた喫茶店だった。少し古臭い木製の椅子に腰かけた男は、淹れられたばかりの珈琲を淑やかに味わうとゆったりとした口調で話し始めた。
「想像というのは、実際に経験したことのない事象等を頭の中で思い浮かべること…とここでは定義しようか。」
何処からか来た風の音が窓をカタカタと鳴らす。
「想像が創造される世界に想像された創造には意味はあるのか。その問いに頭を悩ませてみれば、この世界にまた想像が創造されていく。」
男はふと目を閉じる。この世界に身を任せるかのように椅子の背もたれに靠れる。
風ひとつない夜だった。空を覆う無数の星に私はふと問いかけてみる。
「意味を求めるが故に正解を知るのか、正解を求めるが故に意味を知るのか。君はどっちだと思う?意味のない正解がこの世には多すぎる…そうは思わないかい?」
その時、遠くに見えた月が睨みつけるように血走った眼をこちらに向けた。
「世界の想像は真であり、想像の世界は偽であると君はそう言い切れるかね?君の世界に創造の想像を想像する創造が正解かい?」
私はふと呟いてみる。
「君は知る意味のない正解を求める偽の存在なのさ。」
その時、何処か遠くの星が消えた。
「世界に終わりが近づいているのだろう。この世界を少々創造し過ぎたのかもしれない。」
男はそう呟くと、紅蓮に燃え揺る夜空を眺めてみた。熱く吹き抜けるこの風は、終焉を迎えるこの世界に歓喜するかの如く、我を知らずとばかりに轟轟と吹き荒れる。
Elpisは焼き果てたあの空を未だ降下し続けていた。