自由病   作:original

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蟻、時々人

【蟻】

 

 蟻は思った、道端を歩いていて。

 

 我々が日々、何気なく生きているこの世界には、確実に“上位”の存在がいる。

 

ここで言う厳密な上位というのは、フィジカルや知能、仕事の生産性等ではない。寧ろそれらを統括した文明を持った存在ということだ。

 

 蟻は再びだだっ広い陸地を歩き出す。我々にとって、食事となる糖を追い求めて。

 

 その時だった。蟻の目の前に、というよりは上空から何かがゆっくりと降ってきた。蟻自身の何十倍、何百倍もあろう何かが。蟻は探りを入れるかのように触角を動かして、たまにはちょっとばかり触ってみたりした。特に動きもなかったその何かは、暫くの時間が経つとゆっくりと上空へと浮き上がっていった。

 

 蟻は内心莫大な恐怖を抱きながらも確信した。上位の存在は、確実に我々の想像を超えている。その存在を認識・把握した所で、その存在の上には立つことは出来ないのだと。

 

 蟻は煩わしいとでもいう様に触角を動かして、巣穴を見つめる。

 

 この考えを仲間たちに話したところで何になる?

 

 蟻は再び歩みを始めた。 ただ単に諦めなのかもしれないが、今この私にできるのは働くということだけなのだから…。

 

 その時、蟻は“上位”の存在に踏みつぶされた。

 

 

 

 

【人】

 

 「あぁ、神よ。我々は何故争うのです。我々は何を正解として生きていけばいいのです。」

 

教会の中、一人の女がマリア像に向かい呟いていた。月の光が照らすその教会の中にはその女のみならず、一人の男が座っていた。男は女の呟きを聞いて、空を見上げ目を瞑る。

 

 神はいるのだろうか…。

 

その男もまた、悩みを抱えていた。

 

 

 神がいるのだとして、我々はその存在を認知することは出来るのだろうか…。その存在を認知・把握した所で、我々がその存在を超えるときは来るのだろうか…。

 

実際、その男は神を信じてはいなかった。神というのはただ単に人が創った空想上の存在で、言ってしまえばこじつけ。もし神が実在するならば、その存在は人なる形をしているのか…。

 

蟻や蛸、蝸牛。人とは相対した姿形である。そして、その存在達は今現在人類を越える文明を持つことは出来ていない。

 

動物達には動物たちのコミュニティやエリア、限界があるように、人にも人の限界がある。そして、動物のコミュニティは人のコミュニティに内含されている。

 

 つまり、動物がそうであるように、我々人類は神たる“上位”の存在を理解することは極めて不可能に近いのではないのだろうか…と。

 

 

 男は暫く瞑っていた目を開き、視線を再び女へと向けると、軽く一礼をしてその場を去った。

 

 

 教会の外、男は解放されたかのような妙な感覚を感じつつ、ふと目線を下に逸らす。

 

 

 そこには一匹の蟻の死体があった。

 

 

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