「No.XSP00142、こちら異常なし。」
「――こちら通信塔331、了解。」
地と宙を介するその一連の流れの通信はまるでテンプレかの如く、その流れを淡々と続けていた。
指数関数的に増える人類に伴う食糧危機、各国間での戦争に瀕していた人類は誰からどう見ても破滅の一途を辿っていた。そこで一般に“上層部”と言われる人類は連合国間宇宙移住協定【Hack】を秘密裏に締結し、新たに居住可能な星を求め宇宙空間内を彷徨っていた。
「さて、異常はないそうだね。私はそろそろ昼食でもとろうかね。どうだ樫木君、たまには一緒に。」
「えぇ、是非。」
「樹上官、ここは?」
「屋上だが。ここに来るのは初めてかね?」
「い、いえ何回か。ですが、昼食というとテラスか社内食堂かと。」
樫木がそう言うと、樹はフッ…と何処か嘲笑うかのような笑みを見せ、空を見上げた。
「あそこは混んでいるうえに雑音が多くてな。ここなら限られた人しか来ないうえに考え事もしやすい。どうもこう、空を身近に感じられて好きなのだよ。」
「なるほど…。 それで上官、私を昼食に誘った理由というのは?妙な詮索かもしれませんが如何せん普段上官は一人で昼食をおとりになりますから。」
そう問いかける樫木をまるで気にしてないかのようにカロリーメイトを齧った樹は、昼食を持ち立ったままの樫木を迎い入れるように横の椅子に座るよう促す。
「――まぁ、座りたまえよ。私は君の意見を聞きたいだけだ。」
「と、言いますと?」
「樫木君はこんな話を知っているかね。数世紀前、とある星【A】は遠く離れた宇宙のとある星【B】からSOS信号を受信した。SOS信号を受け取った【A】はその信号に応えることはなく、ただ経過を見届けた。その結果、【B】は暫くして星ごと爆発を起こして消滅した、という話だ。」
「えぇ、この業界では有名な話ですね。確か、【A】が【B】のSOS信号の受信に対して、わざと応答しなかったと聞きますが…。」
「あぁ、【B】からのその信号がSOS信号である以上、応答してしまった【A】にも危険が及ぶ可能性があるからな。 そこで樫木君、【A】のこの対応についてどう思う?」
「―そうですね、私自身としてはとても賢明な判断だったと思いますが…。」
「もちろん、その通りだ。次に、この一連の流れから得られる情報は?」
「まず第一に、どのような緊急事態であっても賢明な判断は大切であるということ。次に、【A】におけるSOS信号を【B】が知っているという事は、【A】以上の知能を持った存在が【B】にもいるという事…くらいですかね…。」
「うむ…やはり樫木君と話せて良かったよ。 実を言うと私も昨日まで同じ考えを持っていてね。だが最近、別の考えを持ち始めたんだ。」
「…というのは?」
「実際、その受信した信号がどれほど離れた場所からの信号だったかは定かではないが、仮に信号伝達速度を光の速さと同じだと考えた時、遠く離れた星からの信号をリアルタイムで受け取ることは可能だと思うかい樫木君。」
「確かに…その信号の受信に成功している時点で、【A】の星の文明でも受信できる程の速度且つ特定の周波数の電波を送ることが必要となりますね…。となると、かなり発達した文明なのか、【A】の文明の成長速度等を理解していることになりますね。」
「あぁ、そうなるね。そこで私は一つの仮説を立てたのだが…そろそろ時間だ。職場に戻らなければ…。」
樹はそう言うとスッと立ち上がり、再び空を見上げる。
「我々に、人類にそう長く時間は残されていないのだからね…。」
「No.XSP00142、応答求むっ!」
樫木と樹が昼食から戻ると、昼食前とは打って変わって緊迫した空気がその場を包んでいた。
「どうした? まさか…」
「えぇ、No.XSP00142からの応答がなくて…。GPS上では予測軌道を変わらず移動中なのですが…。」
「応答を求めてからの時間は?」
「凡そ4分程返答がない状態です。」
「探索機内カメラは?」
「それが、接続が切れていまして。」
「なるほど…。」
「――通信塔331へ。」
「応答ありっ! No.XSP00142へ、要件どうぞ。」
「―我々は先ほどとある通信を受信いたしました。内容を今から送らせていただく。」
「通信塔331、了解。」
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「――未来は破滅へと進む…。」