自由病   作:original

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観測社

 はるか遠くから吹いてきた風は、再びはるか遠くへと消えていった。

 

2000歩程歩いた“観測者”は、ふと前に目をやった。疲れ果てた目に映る変わることのない砂漠。煌煌と照りつける太陽は不思議と冷たかった。

しかし今歩いている所が何処かなんて観測者には関係はない。ここは観測し終わった。ただ、次の地を目指し観測をするのみ。

 

ザッザッ…ザッザッ…

観測者の歩みの音と、微かに吹く風の音が寝ては覚め、寝ては覚め続ける。

 

 

あれから1000歩程歩いた頃だろう。風がまたいつものように囁く。

 

 

そこは田園だった。畦道に立ち止まった観測者の横には黄金に輝いた稲穂が吹く風を受けカラカラと音を立てながら笑みを浮かべる。

 「やっとか…。」

観測者はペンとメモ帳を取り出すと、その場に座り込みその場の情景を書き記した。

 

田園

晴天 気温23度 夕方

目標体なし

 

観測者は再び歩みを始めた。

 

教室
 

晴 気温12度 夜

目標体なし

 

 観測者は記録を終えると、ポケットにメモ帳とペンをしまい周りを見渡してみた。椅子と机が規則正しく並び、影に誘われたこれらは黒板に向かい静寂を貫いていた。

 

曇 気温72度 早朝

目標体なし

 

 そこは海だった。海の上で歩みを進める観測者の下を虹が泳いでいく。空を見上げれば曇天に恨みを持ったかのような草木が崩落を進めていた。

 

食堂

晴天 気温2度 昼

目標体なし

 

 食欲を誘う匂いが一体に立ち込めた食堂を歩きながら観測者は黙々と観測を続ける。

キッチンを見てみると、ファンが怠慢を知らぬ存ぜぬで回り続けていた。どうやらこの食堂内に立ち込めるこの匂いはここから出ているようだ。

 

教会

雨 気温26度 夜

目標体なし

 

 キリストの像だったのだろう、彼の姿は既になく、寂しいと泣きじゃくる十字架の声だけが教会に響いていた。彼の姿が教会のステンドガラスから零れた月明かりに照らされた。神の子と言われた彼は憎悪を露わにして笑みを浮かべていた。観測者は足早にその場を後にする。

 

墓地

雨 気温24度 夜

目標体なし

 

 数千もの木が地面に刺さった墓地に出た。その光景は圧巻なもんで、遠くの亡き泣き声に耳を傾けてみる。

 「お月さんにでも尋ねてみれば来るのは中央分離帯。」

観測者は空を見上げ手を合わせ一礼、その場をゆっくりと去った。

 

晴 気温60度 早朝

目標体なし

 

 空を歩くというのは何故もこう心地のよいのだろうか。穏やかな風が頬を滑り、フワッとした歩き心地。周りでは不安感が観測者を讃えていた。観測者は些か不本意、笑みを浮かべた。

 

観測室

雨 気温24度 夜

目標体発見

 

 「これにて観測は終了となります。ありがとうございました。」

 

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