夢を追い続けた彼らは、人類の希望である捜索艦【Elpis】を夢の園へ走らせた。彼らの夢は夢の神髄を知ることだった。
希望とは何か。終焉とは、そして夢とは何か。疑問を持つことさえ甚だしい程の探求心が人類を夢へと導いていた。
薄暗い空間の中、Elpisは降下を続けていた。降下を続ける先に見える僅かな光。その先にある夢の園に人類の求める答えがあるのだろう、そう信じてやまない人類の胸には期待と興奮が交じり合っていた。
「S型ボルレッティリィライン+値に発散開始、二重臨界濃度0.750を越えます。」
「臨界数値が理論値より僅かに高いが構わん、このまま降下を続けよ。」
第一副艦長の指示に一気に現場の緊張が高まる。夢の臨界地に近づくにつれて、セイルが歓喜するかのように靡き始めた。
「スプリット、第1臨界点到達、臨界地突入します!」
報告を受け、第一副艦長が眉を顰める。
「確か第1臨界点のテーマは希望。 果たして我々は知る事が出来るのだろうか…。」
[第1部 希望]
瞬間、薄暗かった艦内に光が満ちた。
「S型ボルレッティリィライン+値に大幅に発散…二重臨界濃度、0.880です…。」
「……二重臨界濃度、0.880――。 0.85が幸福の周波、幸福の限界値は0.900…まさかここまでとは…。」
艦内にいる全員がその光景の中で、その光景の主人公として、その場の時の流れを感じていた。
第一副艦長はおもむろに胸ポケットにしまっていたメモ帳を取り出すとこう書き記した。
Elpisは変わることなくゆったりと降下を続ける。次なる答えを探して。
「S型ボルレッティリィライン0に収束開始、-値に発散開始します。二重臨界濃度0.78を切ります。S型からG型変更まで、5、4」
「次は、存在…。ご教授願おうか、神の考える終焉とやらを―」
「スプリット、第2臨界点到達、臨海地到達します!」
[第2部 終焉]
艦内に満ちていた光が掌から零れる様に去っていく。艦内の空気が淡青色に流れる中、艦員の一人が口を開く。
「StoG、G型ボルレッティリィライン-値に僅かに発散、二重臨界濃度、0.025~0.771。」
「0.025~0.771というのは?安定がしていないのか…幸せと不幸せの境界値とは…。」
外の様子に睨みを利かせていた艦長はそう言うと、さらに強く周りの様子を観察し始めた。
Elpisが降下を続けて数秒が立ち、周囲の様子が淡青色から段々と赤く、暗く、冷たくなり始めた。セイルも心なしか大人しさたるを覚え始める。
「そうか、終焉か。人類は幸せと不幸せを感じることさえ傲慢かね。」
周囲の景色がまるで墨でも塗ったかのような結晶を作り始める。
物憂げにそう呟いた艦長は、そっと目を閉じた。
[第3部 夢]
微か仄暗い夕暮れがその身を攫った。目の前に見える人の影にどこか懐かしさを感じた。
「夢は、希望を持って始まり、傲慢を取巻いて終焉を迎える。」
その時、呼応するかのような道先であの声を聴いた。
Elpisは焼き果てたあの空を未だ降下し続けていた。