女子学生が「AHO」なことをしています【完結済】   作:ナツコソビオレ

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本田さん、変人に出会う

 最近、より切迫している、お金がない状況。

 フリー募集のパーティ狩りにのっかるか、よほど効率のいい採取をするかくらいしかもう挽回できないレベルに達しつつある。

 先日、即死城にはぎとられてというもの、もはやTシャツにバザーの初期装備ソードというありさまである。

 もはや人に見られるのは耐えられん!

 と、いうことで。

 冒険がてらと、普段いた最初の街から遠く離れて日本風の街に来たのだが。

 

「なんだいあの行列……」

 

 街のクエスト受注NPCの建物ではない。

 お店でもない。

 なんか小さな建物のあたりに、数十人の壁が並んで立っている。

 

「あらあら、この町のアイドル、ヨシノちゃんを知らないとはとんだ情報弱者ですわね!」

「…えっ誰」

「アテクシ、アテクシも知らないですって! なんて愚かな初心者なんでしょう!」

「いや普通に怖い…」

「アテクシはワグナクトリス!此の街でもっと美しく!有名なお貴族様でしてよ!」

 

 やばい、間違いなくそんな階級このゲームにねえ。

 

 いわゆるなりきりキャラであろう。

 ついこの間も見たな…ニャンニャン言うなりきり系を。

 いつの間にか配信されてないだろうな…。

 そういう不安もあり、ちょっと怖い。

 

 初期の町から離れると、だんだん変なの率が上がってたりするんだろうか…。

 

「あ、あなたを待つ列だったりしましたか…じゃあ早めに退散を…」

「とぉんでもない!あれは名物NPCヨシノちゃんにプレゼントを渡したい下僕たちの行列ですわよ」

「NPCに貢ぐの…どゆこと…」

 

 そういえば、のんびり採取してる間に聞き耳立ててると、それしてる人が多い気はしたが。

 

「おやおや、目立つと思えば本田さん」

「……えっギル……オージンさん…ですよね…なんでいるの」

「件の、ヨシノさんの好感度を上げようと思いましてね」

「なんでどいつもこいつも・・・」

「フ!初心者ですわね!いいですわ、そこまで謎なら説明してあげますわ!ちょっといらっしゃい」

「はぁ…」

 

 行列ができるようなイベントの邪魔しないように移動するのかな。

 しかも説明ちゃんとする気らしいぞ。

 いい人なのか狂ってるのか、よくわからない人材だ。

 そんで釣られるままに移動。

 ギルマス、内緒のヲタ活動よく知らないが頑張ってね…。

 

「ホホホホホ!私の手作りクッキーが食べられるなんて幸運ですこと!」

 

 初めて見た…こんなのも作れるんだね。

 

 生活区画。

 

 つまりユーザでハウジングできる開放エリアに案内されたわたし。

 かなり懇切丁寧にNPCに関して教わる。

 どうも、街に一人の単位で特殊なNPCがいるらしい。

 

 これらは要は、自律思考持ち会話可能AIで、態度から生活から気分次第なのだという。

 好感度を上げると家に入れてくれて、人間かと思うほど受け答えにスムーズに答え、全肯定で甘えてきたりする…らしい。

 さらにペットの最高級育成アイテムなど、現状ガチャとここだけでしか貰えないアイテムがある。

 骨抜きにされたガチ恋勢、アイテムのレアさに目がくらんだ攻略勢、物珍しさに寄ってきた一般勢。

 どれにも刺さる強力な集金性で、いまだにそれを待つ列がこのようにできる人気コンテンツなのである。

 

 らしい。

 

「それとは別に…お貴族言う割にすごいこじんまりした、かわいい家なのが気になって気になって…」

「家建てられるだけでもすごい取り合いなの!支払いも高いの!」

 

 増加コンテンツに人が群がるのはわかるが。

 家庭菜園できる庭と平屋、2部屋のキッチンの見えるおうち。

 ひとり慎ましく生きてる感じで、貴族というより没落貴族のイメージに上書きされる気がする。

 

「…だって、身の回りの世話を誰かがしてくれて庭作業や食事の支度しないイメージじゃない、貴族って」

「召使ならいるもん!」

 

 何やら操作しているのが見える。

 そして出てくるのは……。

 

 吸血ゾンビ。

 オーガー。

 出た瞬間眠っている幼女。

 

 おれたちゃ怪物三人組か?

 

「……雑用すらできないじゃん」

「私のかわいいペットと召喚獣なの!」

 

 サマナーか。

 

 決して強い職ではない。

 しかも悪用する存在のせいで肩身も狭い。

 悪用というのは、先日見た通りの、いわばテロだ。

 ただしソロで旅をするのに寂しくないという点はとても大きいらしく、サブ職設定率はトップクラス。

 人がいる分不満やバグ発見も多く、機能修正と変更で名前が出続ける定番としておなじみ、という困った職だ。

 

 そしてメイン職としてやってるのはほぼソロ専。

 …いや言うまい、私もやってること…それに近いのだ。

 

「ま、なるほど、教えてくれてありがとう! っということでそろそろ…」

「あら、お帰りですか」

 

 自称貴族さんの料理の影響なのか、ステータスに幾分プラスされてる表示がある。

 これがあるうちに、ちょっとバトルしてみたいなと思ったのだ。

 が。

 どう帰るのだろう、ドアを開ける操作がわからない。

 

「手間取ってるのかしら? 初心者さんは大変ですわねえ」

「あれ…あっちの街だとすぐ出れるのに」

「ふっふっふ…おっホホホホホホ!」

 

 なんかやったのかオマエ!

 

「出れないですわよねえ! ロックして出られないようにしていますもの!」

「なんだよ! そんなに寂しいのか没落貴族ちゃんは!」

「没落じゃないです!すごい貴族なんです! 説明してご馳走もして、アテクシだって代金の請求くらいはする権利がございますわ!」

「……ああそういう」

 

 完全に没落貴族としか言いようがない。

 やり口が切羽詰まった詐欺の手口だ。

 

「何が欲しいのよ、初心者呼ばわりだったらそんなレアない判定だろう?」

「初心者ですもの、初心者ログインボーナスは受け取ってなさいますでしょう? およこし!」

 

 なるほど。

 それで家に呼んで閉じ込めやがったか。

 後悔させるか泣かせるか、どちらにしてもどう出たらいいものか…。

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