女子学生が「AHO」なことをしています【完結済】   作:ナツコソビオレ

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本田さん(仮名)は静かに暮らしたい

「よかったなぁ、マジ君も付き合ってくれて」

「ごめんね、マジだけまだクエストの時期じゃないのに」

「あとでやる予行演習だと思えばいいさ、まあ手順変わらんけど」

 

 うまくマジくんのいる時間でよかった。

 いや、よくいる上位ではあるのだが、人数制限とか死亡確定ダンジョンだったり、なかなか呼べなかったんだよね。

 彼がいれば、確定で小石ちゃんの機嫌がよいし、居ると知れば呼び出せる。

 ダシに使う意図ではないが、空気づくりの逸材という式はできてしまった。

 

 

 さて、今回の目的は、というと。

 限界突破!である。

 

 このゲーム、初期環境のレベル上限値であるレベル49で、レベルキャップ…つまりそのままではレベルを上げられなくなる状態に陥ってしまう。

 これを開放して、次のキャップまで経験値を手に入れられるようにするのが、今やっている限界突破クエである。

 

 一人は寂しいので、同じキャップで止まってる小石ちゃん、あと没落貴族もそうらしいので捕まえて、念のため空気調整としてマジ君を投入。

 一応、エロに興奮しないよう念押しはした。

 以上の五人で今回はお送りします。

 

 …人数合わない?

 

 そう、今回、もう一人なぜかいる枠がある。

 誰かというと…。

 

「いやぁ、こういう空気って今になると本当に新鮮だねえ、これだけでご飯食べれるねえ」

「…ほんとなんでいるんだろ…忙しくないんですかね」

「息抜きなしで生きられる人間はいないっていうしねえ」

 

 服飾にかけてこの世界最高の職人、ミカ=イトシヒ。

 レベルなんて稼ぐ必要も上げる必要もないだろ、きみ。

 なんか気に入られたのか、一行に混じっている。

 

『私に関しては勘違いって言ったじゃないですか』

『でも、そこに実りそうで実らないオイシイ空気があるよねえ』

『そっちが目的ですか、まさか』

『このゲーム、せっかくシステムがあるのに結婚式ガチで少ないんだよねえ…ウエディングドレス作りたくても止められるんだ、厳しいねえ』

『…それを勘違いしなければ私で狙ってたとか言いませんよね…』

『水星は遅れてるねぇ、女同士だって歓迎なんだけどねえ』

『ほんとその話広げるのやめて!』

 

 耳打ちで続けられる攻防。

 どうやら趣味の行き詰まりが嫌なタイミングでかみ合ったらしい。

 ギルド内に色恋の気配がないのが寂しいのかな。

 ま、この人は趣味はどうでも人の上に立ってるぶん節度はあるだろうからいい。

 

 問題は…。

 

「それにしてもいい雰囲気ですわね、まるでこいびグエっ!?」

 

 ざくっ。

 

「何しますの!?」

『何があってもスルーだといったろ貧乏貴族!』

「なんであっても死にそうなほど切りつけるようなことですの!」

 

 こいつだ。

 失敗だった。

 こんな興味津々で突っ込んでこられると、最終的にキレられるの私なんだが。

 

「すまんな必要なゾンビ石のドロップ先かと思った」

「こんなところで出ません!」

「……こっちはこっちで楽しいかもしれないねえ」

「ミセモノジャナイヨー」

 

 どいつもこいつも油断ならない。

 

 限界突破には、試練クエストというものがあって一定の敵を倒してさらに離れたいくつかの場所のアイテムを回収して達成する必要がある。

 砂漠、平原、東の果て、海の孤島…。

 みんながやることなので、世界の果てなのに販売店ができていたり賑やかな観光地巡り状態。

 特定の敵を退治するのが一番の難所であった。

 

「没落貴族、ちょっとブリキアーチャー隠れてるとこがないか近所見てこい」

「そんなひどいですわ!あの全く会話してる二人を進展するかしないかドキドキで眺めるのが今日の楽しギャア!」

 

 ざしゅっ。

 

「やめてください しんでしまいます」

 

 麻痺攻撃で大の字になって転がる没落貴族。

 ミカギルド謹製のつよ装備をお借りしてるので、今日は火力が違うぞ。

 

 和んでるように多少輪を外れてマジ小石組が狩りをしているが、実はちょっと違う。

 実は以前、マジと私がペアで狩りしていた時に、聞きつけた情報が元であった。

 マジくん、わりとAIのNPCに興味があるらしいのだが、混雑と待ち時間はいや。

 あと必要なアイテムが全く分からないという話をしていた。

 

 それを小石ちゃんにリーク。

 小石ちゃん、徹夜で調べて今レクチャーと効率のいいアイテムを、試練と同時に集めているのである。

 涙ぐましい恋愛の努力。

 マジくんを釣った手段もこれだから、実は結構本気で行きたいんだろうな…。

 

「アイテムだけでいいなら、ネクロんに言えばそんなもの32枚持ってるぜと言ってすんなりくれそうだけどねえ」

「…誰ですそれ…知らない人にねだるのは…」

「いや、君たちがこないだ、ねーさんと言って遊んでいたのだから知らないはずはないのだがねえ」

「ねーさんそんな名前なの!?」

「ネクロナイズド・ミク・カラードが本名だねえ」

 

 うわ中二というか、趣味のわかる名前。

 

「今は全く別の姿だから見られないけど、当時はゴスロリ衣装に飛びついてみたり相当病んだ雰囲気の見た目に拘ったり激しくてねえ、懐かしいねえ」

「見る目変わるなあ……そっかぁ」

「今もずっとアイテムコレクターしてるから、言えば何でも出てくるはずだねえ」

「まぁ記憶の片隅に残しておきます」

 

 想定外のとこで、想定外の人の秘密を知ってしまった。

 あまり知りたくなかった話を…。

 

「それと関係ないけど、この離島に今日もうすぐフィールドボスが出るねえ、ちょっと観光したいねえ」

「いいじゃないですか、区切りついたらみんなで移動するよう伝えますよ」

「わりとボス分配報酬がうまいから、そこそこ人も来ると思うけどはぐれないようにねえ」

「りょーかいです」

 

 何の気はない、平和な狩場。

 何の変哲もない遊びの最中。

 こんな日があってもいい。

 脱いで稼ぐような日はもうこりごりだよ、まったく。

 

「でも二人は心配ないですわね、いつもとなりギャー!」

 

 ざくざくざく。

 

「…ほ、本当にかんべんしてですわ……」

「こっちがいい気分で締めっぽい空気作ってるでしょうが!」

「そんなこと…わからないです…わ…」

 

 まったく、次は手加減せんぞ。

 

 そうして、観光がてらでやってきたボス戦。

 一定時間でたまに殴って報酬をもらうゲームである。

 

「でっかぁ」

 

 陸上なのに、頭だけ出して潜って移動をしていく巨大サメ。

 さすが、古参の言う美味しいボスだけある。

 一周キャラが囲んでパーティしてるのか、というくらいの人数がいた。

 間に混じって、サクサク殴って離れて…を各自やる。

 

 そこに。

 

「………げ!?」

「おや?」

 

 そりゃ、いつかあり得る話ではあるが…。

 最初に組んでた、追放されたあのパーティの一人が、となりにいた。

 

 

 気まずい…とても気まずいよ…。

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