女子学生が「AHO」なことをしています【完結済】   作:ナツコソビオレ

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言葉にならない本田さん

「どうも」

「久しぶりだねえ、やめたんじゃないのって、お友達話してたよ?」

 

 べつに、こっちとしての印象が悪いとして、相手がずっと攻撃的なわけではない。

 別れるまでずっと普通に接していたのだ。

 

「せっかくやってるんだったら、顔見せても、戻ってきてもよかったんじゃない?」

「…まぁ、しばらくはゲームの雰囲気を楽しんだりもしたかったので……」

 

 先に帰ってる、用事があるとみんなに言っていてよかった。

 この話題に触れるとひと悶着あるやつ、居たかもしれん。

 

「あの時はずっとはしゃいでたのに、なんかおとなしいねぇ、どうしたの」

「はしゃぎすぎて、寝てないからですかね…数日」

 

 怖い。

 あの後、やらなきゃいいのに調べてしまったんだよね、追放されたみんなのいるギルドとか、いろいろ。

 

 『オール・ド・ファンタズム アライアンス』

 

 PKとフィールド狩りのマナーもろもろ、ボスのご遠慮なしのMVP獲得率などなど、トップクラスに悪名轟かせるギルドだ。

 

 しかしこのギルドの悪名の一番は、そこなど比較にならない。

 

 かつてユーザギルド間のバトルロワイアルイベントがあり、商品として与えられるのはランドメイクできる島、というものがあった…らしい。

 このゲームの目玉コンテンツの一つとして当初から予告があったランドメイクであるが、これ以外でお披露目されたことはない。

 彼らは、その権利を持った後、即、入り口の港を最高ランクの当時内部データでしか存在しなかった敵とボスの出現エリアに設定。

 偶然物見遊山に行った何人か以外、ギルドの人間しか立ち入りができないようにした。

 

 なぜできないかというと、新規クリエイティブ島はチュートリアルが長く、必ず聞かないといけない。

 これが動画付きで五分近くあり、その間、キャラ判定自体はずっとクリエイティブ島の港に棒立ちで判定が残っているのだ。

 そこに最高クラスの敵とボスがずっと徘徊しているということは…。

 それに何もできずにその時間耐えられなければ死亡して戻される、ということである。

 チュートリアルも、途中終了でやり直しだ。

 

 幾度もバグだとして修正希望が飛んだらしいが、これに関しては運営回答は全くない。

 つまり、これら強敵を排除されている状態でチュートリアルを終えるよう協力を求めるか、敵がいない状態のときにチュートリアルを完遂した人だけが島の内部に拠点をもって自由移動できる、という仕組み。

 それをあらかじめわかっていたように、そんな配置をして誰も入れない島にしたわけだ。

 うわさ話によると、中では超レアを落とす雑魚やボスだけ出現するように設定され、このギルドのメンバーの強さと資金力は計り知れないとか…。

 

 うまい汁を吸いたければ戻れ、という話なら、わからないこともない。

 しかし、目の前の彼の言葉は、そんな軽いものとは思えない。

 これの傘下の古参ギルドでも、その島になんて入れてくれなかったようだから…。

 

 

「…まぁ、なんとかうまくやってます…」

 

 探るような、なんでもない世間話を繰り返し、帰ることだけを考えて生返事。

 ただそれを繰り返すしか、できることはなかった。

 二度と関わりたくないとだけ言いたかったが、何事もなくサヨウナラすれば、向こうからしつこく関わってくることはあるまい。

 こっちは、あっちから見て取るに足らない初心者なんだ。

 

「出来れば帰ってきてほしいけどなあ」

「…か、考えておきます」

 

 やかましい帰れ。

 ディスプレイの前では半泣きで毒づいているのを知っているのか。

 

「ま、今日もこれからまた集まりがあるんで、そろそろ帰るけど」

 

 ほっとする。

 

「ポーションくんない?」

 

 !!

 

 心臓が高鳴った。

 嫌な記憶だけしかなかった。

 

「か、回復ならちょっとありますが」

「いやいやスキルポだよ、余ってんでしょ」

 

 それをどうしたら取れるか、知ってて言ってるよね、当然。

 そういえば知らないんだよ、設定でpvpオンにした後の戻し方。

 開いたところも忘れちゃったしさぁ。

 

「…いや、その……!」

 

 助けて。

 

「だって、友人って言ってたあいつにはポーション上げてたんでしょ?抜けるときの挨拶でくれたって、あいつギルマスに渡してたよ」

「それは…」

 

 あの最初のPKのことだ。

 手切れ金になってたのか…。

 

「そうだ、今遊んでるお友達いるんでしょ? 挨拶に行こうか俺」

 

 やめろ。

 それだけは絶対勘弁してくれ。

 これの関係者かメンバーだと、今のギルドのみんなに思われるなんて、まっぴらごめんだ。

 追放されて手は切れてるだろう?

 

「いや…じゃあ、とってっていいです」

「いいじゃない、好きだよ素直で聞き分けがいいかわいい子」

 

 ざっくざっくと遠慮なく切り刻まれる。

 ほんと数秒だ。

 防御職で体力に自信あるほうだけど、まあ簡単に殺される。

 

「あるねぇ、じゃあお申し出通り貰ってくよ」

 

 いいよ、二度と来るな、さっさと帰れ。

 

「おや、いい防具持ってるね、始めてすぐなのにすごいじゃん」

 

 !?

 

 ミカさんから借りた、狩りの間だけ出しとくと言われたやつである。

 前と同様、最高の成功じゃないから世には出さないといわれたやつだ。

 

 やめて。

 

「高そうじゃん、貰っていいよね、これ」

『それだけはやめてください、友達との関係にかかわるんです、借りものなんです』

 

 しんでても耳打ちは届く、はず。

 必死に訴えてみる。

 

「開始してすぐもらえるもんなら、ちょっとプレイすればまた手に入るよねえ、僕を知り合いに合わせたくなさそうにするんだもん、傷ついちゃったから口止め料でもらうよお」

『頼むから、おねがいだから、それはやめてください…本当に……本当に…!』

 

 いう。

 

 どうしようもないけど言う。

 なすすべもない私が言う。

 

 泣いた。

 

 悔しくて、どうしようもなくて、あいつが立ち去ってもすぐはリスタートできなかった。

 

 しばらく。

 涙が止まるまで。

 

 ゲームから出て、ディスプレイから離れて、ベッドに突っ伏して泣いた。

 気が済むまで、あとに残さないよう泣き喚いた。

 それでも、アイスと水はうまかった…。

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