女子学生が「AHO」なことをしています【完結済】   作:ナツコソビオレ

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本田さん…いや朝霞さんは、今どうなっているのかうっかり公式掲示板を覗いてしまいました。
相変わらず言われ放題なので、いま、ふて寝しています。
2~3日で回復すると思いますので、回想でお茶を濁させてください。


開始の日の思い出に悶える夢

―――汚された。

 

 夏休みに入ったばかり。

 とても、とても光り輝く毎日を、期待して信じていた。

 世の中って、やっぱり、こんなもんなんだ。

 

 フローリングの上に丸裸にされ、投げつけられたようにおなかに引っかかる程度にかかるタオルケットだけ。

 もう諦めて対処放棄。

 どう見ても、何かの事件現場で一人取り残されたやつだ。

 感じるのは、たまらない脱力感。

 陽の光の反射を受けた天井の一点を見るだけ。

 もはや身体を動かすことにすら余力が割けない。

 

「んじゃ、お茶持ってくんから~」

 

 若そうな、この状況に極めて明るい女性の声。

 いや、誰かはもちろん知っている。

 目の端にチラッと、とても幸福感に満ちた笑顔があった気もする。

 

 あと、パンツ被ったままですよ。

 しかも私の。

 

 

 そうだ、あれは悪魔だ。

 そうでなければ、夏休み初日で、こんな闇は訪れない。

 何が、切っ掛けだったんだろう……。

 

 

   ――――――――――――――――――

 

 ピンポーン。

 

 呼び鈴が鳴る。

 旅行カバンを抱えて、近所の友達の家にやってきたのだ。

 悪友の千力ノ口さん…通称チカちゃんの自宅である。

 たまに持ち回りになるが、だいたい現場となるのはここ。

 ここでは、我々グループの重要行事「スタミナの儀」が、週末行われている。

 

 それは何か?

 なぜに旅行カバンか?

 

 それは、泊まるから、という単純な答え。

 元は、ブラウザゲームが目的として集まっていたのが始まりだった。

 ゲームを、みんなでやるワケである。

 ただし、集まってゲームをして騒ぐのではない。

 むしろ、みんなすぐ寝る。

 じゃんけんをしてから。

 

 じゃあ、何のために集まったのか。

 理由は、そのゲームの性質。

 いわゆる基本無料ゲーの、かゆいところ。

 やっているゲームこそ違えど、基本的に、基本無料ゲームの根本は共通する。

 これらは多くが、自由に全ての時間を使っては遊べない、というルールを持つ。

 行動力、またはスタミナなどと称されるその数値。

 そこを使い切ると、移動であったり行動が出来なくなる。

 大体のものは時間によってそれらが回復、そしてまた行動は可能。

 簡略して言うと、休みながら目的地に進み続ける旅スタイルがそういったゲームなのだ。

 

 そういった「待ち時間」。

 それが人によっては大問題で悩ましい。

 進まなくてもどかしくなり、そこでさらに自由に遊ぶため課金を促すのが基本無料のスタンス。

 だが学生にそんな課金をずっとは続けられない。

 

 そこでこの集まりが始まる。

 

 持って来た、各々のゲームの入った端末をテーブルに置く。

 みんな寝る。

 振動するベルト式の健康器具をじゃんけんに負けたものがセットし、2時4時6時に起こされる。

 起きた担当は、各端末の溜まってるスタミナ、行動力を速やかに消費する。

 そして寝る。

 バトンタッチ。

 

 簡単ながら、じつに条件の難しい安心と信頼の交代制作業分担。

 

 一学期の間、これをまぁ飽きることなく続けていた…。

 …が、ひょんなことで、ゲームのためにするのは終了。

 お泊りの風習だけが結果残ることとなって、現在に至る。

 夏休みで人数も欠ける事となったので、それも休止予定だったのだが、なぜか続行。

 その知らせを受けて、私はやってきたのであるが。

 

『はい~な、お米屋さん~?』

 

 インターホンの声は間違いなく本人。

 

「夢です」

『おうけぃ、買おうじゃないか』

「売らないです…」

 

 カチャ。

 リモートで鍵が開いたらしい音がした。

 

『今さ~風呂だから、勝手に部屋いっといてんな~』

 

 出るの早いけど、お風呂から話してるわけじゃないよな…?

 わずかな疑問をよそに、まぁそれでは、と、お宅に侵入。

 

「…おじゃましまーす」

 

 奥のほうからする、家族の気配をよそに、もはや見知った玄関横の階段で二階へ。

 

 持って来た旅行カバンを、そっと置いて腰を下ろす。

 行くまでと部屋で、少し罠がないか注視したが、無くて安心だ。

 あらためて部屋を見回してみる。

 

「思ってみると、飾り気がないというか…」

 

 自分の部屋と比較してだが、じつに素朴。

 あるべきものがない気すらする。

 

「君の部屋が異常なんよ?」

 

 !?

「なんか物少ないな~とか、おもっとるのだろう?」

「…まぁだいたい合ってるけど…」

「やはり性格は部屋に出るんだよなぁ、うむ」

「…服装にも出るよなぁ」

 

 隠す仕草のカケラすらない下着。

 頭からだらしなく垂れるバスタオル。

 友達相手でも、最低限の体裁はあなたにはないのですか。

 とは思いつつも、ガン見。

 風呂上りの下腹部あたりを割と、ガン見。

 

「やっぱり、あの違いが顔の大きさだけの同じ人形で3列埋めるのおかしいんよ~?」

 

 一方、見られる事そのものに全く物怖じはせず、流れるように会話を進めるチカ。

 大人なのか無頓着なのか無警戒なのか。

 だが、その瞬間、反射行動しかないような夢の瞳が輝いた。

 

「いえいえあれはちゃんとメーカー別でプライズ品は直営店限定カラー台座を後ろに並べてましてさらに表情を動画ライズで企画した特別品をコンプしていてしかもひとつはそれをモデルにしたきぐるみを再商品化した別商品でCD付属のやつのプレミア価格は…」

「おぅけい私が悪かった!!!!」

 

 すかさず静止。

 10分は軽くトリビア垂れ流される夢のヲタモードをチカが察知したらしい。

 息継ぎをいつ、しているのか聞くほうが不安になるという、まさに恐怖の変身。

 趣味に関わるところを見つけると瞬間でテンションが沸騰状態になる、あれである。

 その筋の方には結構な覚えのある習性だろう。

 

「…でなぁ、今、ゆめっちには言いたいことがあるんだよね私」

「何でしょう?」

「イヤらしい目で見てるよね君」

 

 !?

 そんなことないよ!

 とも言えないこともないかもしれない。

 だが、とにもかくにも、言葉に詰まってしまう。

 

「お友達相手にオカズをお腹いっぱい堪能して、自分ひとりニヤニヤしてるのずるくなぁい?」

「そこ『は』してません!」

 

 顔に出さないことに関しては自信があります。

 

「そんなこと言っといて、家に帰ったら私のこれを思い出して友人のエロ妄想するのか!ゆめっちは!」

「しないです!!」

「だって視線が極めてねっとりと、ずっと私のパンツ見てるんだよ? 信じられないよねぇ」

「……そこは、無防備すぎて仕方ないって言いますか…」

 

 友人同志はそこらへん、さらりとスルーするとこですよねふつう。

 

「たっぷり見た分何か請求したくてたまらないわけだが…さて、ゆめっち」

「お金なんて持ってきてませんよ、体一つですよ」

 

 思えばこの一言が、悪夢の引き金だったのだ。

 

「なら」

「なんです?」

「そっちもみせろや!!!」

「なんでぇ!?」

 

 あまりのことに、何一つ動きも取れず。

 どこまで本気かも何も距離感がわからず。

 気が付けば全裸ですよ。

 

 下着まで全部取りますかね普通……。

 

 しかも、途中、いっつも何ぶら下げてんだ本物かよ揉ませろオラア!とか…。

 すごい乱暴にめちゃめちゃされた気すらする。

 

 記憶がもう何もかも封印したいという考えしか浮かばず、ロードを拒否している。

 セーブ地点まで巻き戻しはリアルではないんですか?

 そうですか。

 

 ―――――――――――――――――――――

 

「で、何してんの?ほらほら冷たいぞう?」

 

 何の立場でそんなさわやかに言うのか。

 そんな気持ちもありつつ、ほぼ反射で目の前のグラスを手に取り、飲み干す。

 薄めの麦茶だが、だからこそ今に似合うという気持ち。

 おいしい。

 

「それとして、ゆめっちは恥じらいってのがないよね」

「お互い様なんだよ!」

「………かにゃ?」

 

 ふざけた返しだ。

 この上機嫌がことさら不機嫌を復活させる。

 

「スカートかなんか掃け! あとパンツ返せ」

「ええ~?これ私の帽子だよ~?」

「違います」

 

 全力でふざけてやがるぜ。

 怪しげな健康器具がもしもあったら、確実に使われていたことだろう。

 他二人のストッパーがないと、こいつはここまでするのか。

 そう恐怖する。

 

「もっと正確に言うと、戦利品!」

「どっちでもいいです。というか汚いですからお願いですから」

「え~…」

 

 言いながら、相手は頭の下着をひっぱりさらに深く被るようなそぶり。

 お前は風呂上がりだろ…汚いのやめろ。

 

「なんかさ、ゆめっちが暴行の事件にあったみたいな様子だったよね」

「半歩間違うだけで限りなくそれに近そうなことをした人が、目の前におられましたがな…」

「まじかよ…」

「まじです」

 

 一応、注釈すると、部屋にはその二人しか居ない。

 両者とも、かなりわざとらしく、相手を睨むように直視する。

 

「おかしいなぁ、そんな事件があったら私だって気付くのに…」

「どういうこと、なんでしょうね…」

「つまり!犯人はこの中にいるっ」

「…そりゃいますね…」

「つまりあれだワトソン君」

「夢です」

「寝ればほら、勝手に誰か喋って解決するやつ」

「…かなり、色々、まじってきたな…」

「と言うことで、寝て寝ておっちゃん」

「…おっちゃんでもないです、夢です」

 

 仮に寝たとしたら、さらに取り返しが付かない目に遭う気しかしないのでもはや即却下。

 一晩があったら何されたものか。

 今日は帰ろう。

 

「でさ、やっぱ大きいと触り心地って言うか安定感が違うよね」

「忘れさせてよ!!!」

 

 夢だったらよかったのに。

 全力でバスタオルで隠しながら体を丸くして、そろそろ友達としてのじゃれあいとしても、限界は来るぞ。

 さっさと服を着ろってだけなんですが。

 一部、まんざらでもない感情がありそうなのは、明日の燃えるごみに捨てます。

 家からも、私の見えるとこからもなくしてくれ。

 

「ところで本題なんだけど」

「やっとかい」

「ゆめっちはネトゲしたことあるのかい」

「……ま、FPSにのめりこんだり、いろいろやったりした環境はなくもないかな」

「合格ぅ~!」

 

 なんだ。

 

「おめでとうございます、あなたは百万人から選ばれて当選しました!」

「最高に胡散臭い攻略サイト横の広告みたいなこといってんね!?」

「まぁ、正確には私がなんだが」

「…どちらとしても、まったく意味が分からないですね」

「ちなみに景品もあります、こちら!」

「でっかい箱!?」

 

 適当な言葉遊びから外れたことに素直にびっくりする。

 

「バーチャルスペース完全対応、無線給電3Dゴーグルでーす!」

「こんなの持ってたの!?」

 

 高そうな、大きくて辛そうな、性能すごそうな装着型のディスプレイだ。

 なるほど、これを見せたかったのか。

 

「いつの間にバイトなんてしたんだい…」

 

 週末はスタミナの儀をだいたいやってたから、私生活ほとんど見ているものと思っていた。

 

「ま、付けてみ付けてみ」

 

 さっくり開封して、裸にヘッドセットの姿にされる。

 なんの刑罰だ。

 バッテリー入りだからだろうけど、付けると結構きつい。

 椅子にもたれて使わないと、長時間はきついかな。

 

「これやるよ」

「んな!?」

 

 高そうなこんなのを!?

 どういう風の吹き回しですか。

 

「ただ、条件はあるんだけど」

「…たいていの条件は、今されたことの示談金で済む気はするがな!」

「そうはいかん」

 

 にやりとわらうチカちゃん。

 こわいなぁ。

 また、別の理由付けて触ってきそうなのが。

 

「君には、これからこれに登録してもらう」

「…AHO?」

 

 なんか馬鹿にされてる感じ?

 

「海外初のネトゲなんだけど、頭文字だけ取るとアホなんだよね…これだけは仕方ないよね」

 

 なんか危機にでも瀕しているゲームなのか。

 印象のあまりよくない名前。

 

「周年キャンペーンのプレゼント企画で、登録者全員対象に広くやってたやつでコレ当てたんだよ私」

「すごいね!?」

「でも、ゲームやってるからにはそれ用のディスプレイって持ってるもんじゃん?」

「…たしかに」

「新しいのを使おうと思ったけど、箱からして重すぎるし…誰か誘ってこれも押し付けよ…おっと」

「おい!」

 

 押し付けようって言ったか?

 

「私専門にしないで、そういうの他二人も呼んであげなよ…」

「海外で悠々自適してるのはパス! 寂しく引きこもれる奴じゃないと、夏休み中ずっとは遊べないじゃん」

「…わりとひどいことを言われているぞ、今現在」

「でもでかける予定はないと言ってたよな、今現在」

「はい」

 

 二人とも旅行だったか。

 それで押し付ける相手が他にいなかった…か。

 結局貰ってしまった。

 そんなわけで目の前で登録もした。

 

 

「何やってんの、ゴーグルの、ずっとつけたままで」

「ゲーム設定してんのよ、うちのパソコンでアカウント作ってもらったから、ついでに家に帰ってすぐできるよう設定してんの」

「……不思議なくらい親切だ…」

「帰って始めたら驚くぞう? 『自分』が知らない世界に立ってる感じが」

 

 ……そうだ。

 後になってみれば、この時点で予告されていたんだ…。

 散々眺めて触って、ここで私の身体らしい見た目を、見ながら作っていやがった…。

 ここで気づいていたのなら…。

 

「楽しいぞぉ…二人だけで世界の注目の中心に行って最高の存在になってやろうぜ!」

 

 まぁ、あんな楽しそうなセリフを笑顔とともに言われたら、疑って空気を濁すのもちょっと勇気がいるというものだ。

 そうなることはなさそうだけど…。

 楽しかった時間はあった。

 

 だから感謝は、している。

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