女子学生が「AHO」なことをしています【完結済】   作:ナツコソビオレ

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カタキ

   ――――――――――――――――――

 

 演説の終了直後のことである。

 

「正義はいらない…か」

「ずいぶんな言われようで」

 

 その場にはいないが、配信などの手段で見ることはできる。

 自警団は各自で、それの様子を見ていた。

 

「どうも、遠回しに断られている気がしますが」

「どう思うね、ギトスジ君は」

「僕は、彼女を助けに行きます」

「そのこころは?」

「彼女は、僕の正しく求めるものではなくとも、正義を行い、導いているものだと思えるからです」

「…きっと、その言葉を彼女は嫌うだろうなぁ」

 

 自警団リーダーは、少し含み笑いを持って、言った。

 

「どうであっても、人を間違いではない方向に導く人を失うのは僕にとって許せないし、その意味で彼女は得難い人材ではないでしょうか」

「相変わらず固いなあ」

「ギトスジはこういうときも素直じゃない」

 

 周囲は口々に笑う。

 ギトスジ自身は、その意味が分からない。

 

「私はな……惚れた」

「はぁ!?」

 

 突然のリーダーの言葉に、何人もが面食らう。

 

「正義ではない、私はな、惚れた女を助けるために戦場に行くのだ、今回」

 

 ギトスジ君には全く話の関連が見えない。

 が、数人、気付いたものがいる。

 

「…ゆえに、今回は自警団はすべて自由に動いていい!私は感情で動いて、好きなものを守りたいから自由にやるだけだ!それでも構わないやつと、あの彼女を同じように好きなものだけ一緒に来るといい!」

 

 なるほど。

 自警団としてでなく、彼女が好きなだけの団体として動くと言う方便か。

 本音かどうかは問わず、それとして受け取る。

 その結果、自警団は本件に限り、本田さんファンクラブとしてその時ログインしていたほぼ全員が参加したのである。

 

   ――――――――――――――――――

 

 さすがは対人上等のスタイルでPKKしてた自警団。

 躊躇わないで、適正に固まりを切り崩しながら相手を狩っている。

 正直言うと、近寄りがたいままの存在なので、距離置いてほしかったんだけど。

 

「ずいぶん、変なのが仲間っぽいねえ初心者さんは」

「いつの間にかファンクラブでもできてたりしたかもねぇ…モテすぎて困っちゃうわね、私」

 

 ノーニくんを目の前に、軽口叩いて睨んでるつもりでいる私。

 まさか本当にファンクラブみたいな状態で、私を守りに来ているとは思わない。

 ぶっちゃけ言ってしまえば、私を一度は殴りに来た正義面したいじめっ子ぐらいの感想だもん、私から見て。

 

「まぁ、あんなのは俺だけでやれるレベルだから、ほっとして先に死んでもらうよね、初心者!」

 

 あの時、私を瞬間で殺した攻撃が降り注ぐ。

 これも、剣士用のテーブルゼロ産装備だろう。

 剣に関してはテーブルゼロの武器でも数が当然多いから把握はできない。

 

「…生きてる!?」

「だけじゃなく、もう…終わったよ、ノーニちゃんさ」

「君がねえ!!」

 

 もう一度同じ攻撃。

 しかし。

 

「なんでまともに減ってねえの!?」

「…倍化!ためる!人殺し!人殺し!人殺し!人殺し!」

「なんでだ!!」

 

 あらんかぎりスキルを叩き込む。

 お互い真っ向から、真顔でぶん殴り続け、我を忘れ。

 

 立っていたのは私。

 ノーニくん、最後まで何かわからず倒れてしまった。

 

「タネ明かすとね…これ、たぶんバグなんよ、ノーニくん」

 

 もう、ばらしていいだろう。

 

「ドゥエティのスキルにオートカウンターの効果増があるんだけど、これ持ってカウンターしたときさ、モーション出ている間の硬直に見えるのに別のスキル発動可能の状態になってて、ノーモーションでデイレイもなく、いくらでも連続で入るんだよ…絶対調整ミスとかじゃなくバグだよ、これ終わった直後でも修正入る」

「ユメージさん、よく見つけましたね、そんなの」

「デバフを隙見て叩き込むのが私の戦い方だからねぇ…バタバタ連打してたら鏡の国の敵にデバフ入ってる、まずあり得ない状況見つけちゃって、後は実験してすぐよ」

「なるほど…完全耐性の敵だけの変則ダンジョンでそういうのを見つけたということですか」

「だからノーニくん、そっちの腕が悪かったわけじゃ絶対ないから、落ち込むなよな」

 

 奥の手の正体、というやつだ。

 オートカウンターが出たらスキルボタン連打でお得意のデバフが見た目でわからないままドカドカ出ている。

 しかも耐性無視の可能性まであるんだよね…攻撃と防御と移動と攻撃速度まとめて理論上付与できる最低まで落とせる。

 バグじゃなくて何なんだ、これ。

 

 ブッ壊れだよ!

 

 当初見込んでいた全体化より、こっちがはるかにヤバかったです。

 

「こっちも、リーダーしてたオオイをうちのリーダーが仕留めて終わったようです」

「ありがたいけど…私、言いたいこと言ったの見てて…ここにいたりするの?」

「ここにいるのは、正義を振りかざす集団ではなく、みんなユメージさんに惚れた人たち、だそうですよ」

「…狂信者じゃん…」

 

 むしろドン引くわ。

 

「ですので、あくまでご本人をお守りする団体です」

「……あの、何度も言って本当に申し訳ないけど、本当にマジで言ってる?」

「うちのリーダーが恋した相手なので、間違ってないです」

「さらっというなよ…全員が惚れてるとか恋してるからとか…」

 

 一応初恋もまだの乙女なんですけど!

 嘘混じってるけど、それでもまだ恥じらいのある学生さんですけど!

 …いや、ここでそんな弱み見せたら、付け上がられる方向かもしれん。

 

「それでですね、お取込み中、悪いのですが…」

「…え!?……え、なに」

 

 ケイさん、でしたっけ。

 いつものの、なんか生き残り。

 

「私、ミカさんから全体の連絡と状況把握の引継ぎを承っているので、これから作業に入りますね、ユメージさん」

「…………あ、そうなんだ」

「はい」

 

 回復の知り合い少ないから付いてきてほしいところなんだけどな、本当なら。

 だが、そういう行動だとすると、やりたいことがある。

 

「じゃあ、ケダモノ、すまないけどちょっと彼女に同行してもらっていいかな?」

「…しょんなぁ↑~」

「今だけ、ちょっと一つ急いでやんなきゃいけないんで…ギトくんともう一人くらい、来てくれると嬉しいね」

「もちろん」

「もっと多くてかまいませんが?むしろ全員、付いていくためにここにいるので」

「あんまり多くて目立つのもなんだし、隠れられるのだけならもっと多くていいけどさ」

「なら、そのメンツだけ用意しますよ、愛する御大将」

「…その言い方辞めて」

「あ゛あ゛~!!なんか、知らない間にライバル増えてるニャ↑~!?」

「ケダモノはちょっと空気読んで」

「ぷしゅ↑~…」

 

 そうして、一気に間髪入れず、私にも把握できない隠れた数人と、独自の思い付きをやるため離れる。

 ケイさんは本体合流して仕事するのが役目だと言い切ったし、残った非戦闘員もちゃんと運んでくれるだろう。

 

 見張り頼んだよ、ケダモノ。

 

『今のユメージさんの位置だと、オルアラのメインの隊はそのまま右奥にいるみたいです』

『了解、ありがとう』

 

 情報を頼りに動く。

 遠くに商人組合の傭兵が前線で戦っているのを見ながら、するすると迂回していく。

 

『右、あんまり敵に遭わないけど、もっと奥かな』

『そ、そんなことはないはずです』

 

 チラチラ話しかけつつ、どんどんと進む。

 実際、薄い。

 もっと、当初の全体マップの左にあたる中立か漁夫狙いに警戒して防壁でもおいてると思ったのだが、同盟でも知らない範囲で結んでたのかな…?

 その漁夫狙いも、いまだに離れている様子で、ちょっと不気味。

 

『…いま、どこですユメージさん』

『右の境目ギリギリなら目立たないだろうって、やってるよ』

『そ、そうなんですか』

 

「そろそろやってくよ、全力でやってね自警団」

「ユメージさんの親衛隊ですよ、僕らは」

「そんな悪夢みたいな攻撃的な親衛隊、どこにいんだよ!でもまぁ、信頼してるからね!」

「「「はい!」」」

「それじゃ、みんなお待たせえ!!敵の一番倒したいやつが来たよお!!」

 

 もうこれでもかと目立つ勢い。

 叫んで突撃する私と親衛隊。

 

『ユメージさん!いったいどこにいるんですか!?』

『オルアラ本陣の裏だよ!』

 

 やられたなら、私自身がやり返して後悔を塗りつぶすんだ!

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