女子学生が「AHO」なことをしています【完結済】   作:ナツコソビオレ

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戦地にて

「遅くに失礼します、ハクヤクさんにシテンさん」

 

 くたばれ。

 形にこだわりがあるのか、ずいぶんきれいに奥側に並んでくれて、勘違いしようがなくて助かる。

 

「あいつの報告は一体何だったと言うのだ!?」

「わかってますよ、あんたらが仕掛けてた作戦ってやつ」

「そうだとしても、もう終わっているはずだろうが!」

 

 何言われても、もうやりたいことはやるくらいしか考えてないから、仕方ない。

 想像以上に人が少なく、どこかに重点的に兵隊を派遣して削りにいってる状態なのがわかる。

 何なら、今さっき慌てて自分たちを守る兵隊を作戦のために移動させたのかな?

 そうだったら失敗したね、そっちも。

 私が射程に入れられたのはハクヤクさんだけだけど、遠距離重視の魔法職ならデバフ優先で入れりゃ、今の私にはなんてことはない。

 即時仕留めて、すぐ逃げてやろう。

 

『いったい何してるんですユメージさん!?』

『ちょっとまって!』

 

 耳打ちが何度か入るが、さすがに今忙しい。

 親衛隊に詠唱時間のリセット食らって、前後挟み撃ちになった魔法職に足止めのスキル当ててしまえば、もはやレベル高かろうが勝ち目はない。

 何かを言わせる暇もないほど、勢いで倒した。

 

「そっちは?」

「シテン、討ち取りました!」

 

 大金星だね、ギトくん。

 

「さて逃げるよー!」

 

 表示マップ右にはたくさん溜まっているはずなので、できる限り左方向へ向かうように離れる。

 だがまぁ、騒ぎが起きたら独自に動く人だっているし、死ぬ前に指示飛ばせる時間があったりはする。

 要するに出口はよほどでないとふさがれたり、囲まれたりする。

 …向こうはどうやってさらっと脱出して行けたんだか。

 

「時間をかければかけるだけ不利になりますから、逃げるに限りますよね」

「そりゃそう…か」

 

 そういって突き進む覚悟はして走るが、全員ではない。

 

「ちょっと、まとまって行動を…」

「しんがりという立場は必要ですから、早く進んでください!」

「早く早く!」

 

 これまさか…漫画で見たことあるぞ?

 こういう展開…。

 

「ちょっと、囮置いて先に行けってんじゃないでしょうね!?」

「脱出としんがり、後からくるのを止める担当ってだけですよ!」

「ギトくん!」

「止まってみんな死ぬわけにはいかないんです!」

 

 流されるまま走るが、見捨ててる。

 みんなで突き進んで蹴散らして帰る、無双なゲームはできなかったのかい?

 一人減る…二人減る…。

 生きていれば幸せだと、本当に親衛隊みたいなことを言って消えていくのを見て、何も言えない。

 

「では、僕もここで」

「ギトくん!」

「必要なことができるのは、うれしいものですよ」

 

 走っていく。

 前を切り開こうとして、回復がもうないのも黙って倒れたのもいる。

 後ろから当然来る追手は誰かが振りほどかないと、いつまででも増える可能性がある。

 思いついたままやった結果はこれである。

 相手にダメージは与えたが…。

 そしてなんとか、抜けた…と、思う。

 誰も残ってやしない。

 このまま、先陣だった商人組合側の実質本隊に潜り込んでいくといいのだが。

 

『何していたんですかユメージさん』

『おかげさまで、相手の裏はかけたよ』

『……どういう意味ですか?』

 

 ミカさんから引き継いだという、ケイからの耳打ちは、しばらくずっと流れていた。

 やっと、落ち着きはしないが会話はできる。

 

『えーと、オルアラの人のサブ垢だよね、ケイさん』

『何を…』

『ルシテアさんから一度だけ、昨日話しかけてきてたんだよね…いつものに、私が居れた人で情報流しているのがいるから、位置がバレバレになる重要な役はできないって』

『私だと言う確証は…!』

『ルシテアさんの言うことを私は一応信じるだけで、私には言い切れるものはなんもないよ?ただ……』

『なんでしょう』

『今ので、マップ右に敵が集まるの、ケダモノをわざわざ離れさせて情報流れにくくした結果すごく見事に騙せたの、なんでだろうね』

『なるほど』

『ケイさんに居ないよと言うたび、左回りしてた私から見て目の前の敵が減ってるようにすら見えたよ…たぶんハクヤクさんと対等に話せるくらいには、ケイさん繋がってるか本人かだなと私も今は思ってる』

『……確信は、今もないままですよね』

『してたとしても、私は別に誰にもそうだろうとは言わんよ、だってルシテアさんが選んでんだもん』

『あの人のこと、ずいぶんと強く信用しているのですね』

『あんな雑に人助けと勧誘してたら、百人すぐ埋まってるのがいまだ小ギルドってのは、相当入れた後に選んでるはずよ?』

 

 ま、想像だけで語っているが、間違ってはいないと思うのを仮定として出す。

 

『自立支援して手放してるか、見る目にとても自信があって切ってる二択と思ってるけど、支援ずっとするような姿は見てないのね、私も…だから、残すのを厳選してるという見解』

『よくもまあ、そんなに相手を立てて信じているような言い方を…』

『違ってたって、あの人が悪い人とは思ってないからいいじゃないさぁ』

『わたしは切られないように、入っている時間を調整しているだけですよ、同じギルドの人がスパイしてるかどうか監視するのを主に』

 

 ……ああ、そっか……。

 マリア、つまりチカちゃんが複垢使って動いてるのから、オルアラにばれてたのか。

 それで裏切ってなお居座ってるのかもしれないと、疑われて同じギルドが監視で似たタイミングで出るように探る…その役目でこのキャラがいると。

 それ、つまり丸々今白状したんだけどいいのかね。

 いや、私は、チカちゃんがどう動いているのかに関しては、しらを切り通すけど。

 でも……リアルの話とか、チカちゃんの追及に来ないってことは、知らないのか?

 またはチカちゃん側も、ケダモノ…ベルテには開けっぴろげでも、意外と他には防壁を張ってたりしたのか?

 聞きてえ…でも、絶対に突っ込んでこっちからチカちゃんのほうに話持っていけねえ…。

 

『じゃあ、そのついでで、このスパイ的なものに今回かじを取ったって…話をしてるってことでいいの?』

『そんなことは言った覚えはないです!』

『…ま、どっちでも今更いいよな』

『そちらから仕掛けておいて!』

『あとね、当然だけどミカさんから、そんな引継ぎないって話も受けてるから、どのみちこれで言い負かしたって駄目よ?』

『……そう…』

『ま、これで内緒で警戒する必要なくなったし、やっと小石ちゃんカップルとも合流できるから、もう内情の話は終わりよ、仲良くやろうぜ』

『……そんなに怪しんだ末にい?』

『怪しんだ末に』

 

 さらっというが、苛ついているだろうか。

 

『…私が折れたとかそういうのじゃありませんが、どのみち、こっちの陣営はもう負けてますからね、目で確かめてみたらいいですよ』

『ほいほい』

 

 悪い予感はしてるし、何よりまだ横の漁夫狙いが動いてないから、余力持って勝ってないと負けなんだよね…。

 それはわかってる。

 

 

 しかし。

 

「うわぁ、これは確かに、やってられんのかもしれん…」

 

 実質的な本隊にやっと、今更初めてたどり着く。

 本来なら、私ずっとここにいるべきだったんだよね…士気を上げるって目的で。

 たどり着いてみれば、もう総崩れだ。

 何とか乱戦のようにはなっているが、奥にオルアラがまだ余力を持って控えているのがわかりすぎる。

 急襲で、もう終わってるはずと言われたのを思い出して、ああ…あの時点でもうこの流れだったのかと気が沈む。

 

「すまんねぇ…みんな、本当に、頑張ったね…」

 

 倒れている皆に、声をかけて歩く。

 

「私のためと自惚れはしないけど、確実にしくじり続けたとは思ってんだ…」

 

 誰に言ってんだと思うが、周囲の、敵も味方もない皆に言ってるつもりだ。

 

「だから、せめて華になるように、最後までやりきって、目立って終わるようにするよ、私はせめて、みんなの楽しみに傷つけたくないから」

 

 ひとつ、目立つエモート付けて、今更だけど切り込んでいく。

 

 途中で回復が入るが、よく見るとケイさん。

 スパイだなんだ言われても、役割してくれるのか。

 

 そして、いつの間にか横に、ケダモノもいた。

 無言だが、そのまま戦線に入って全周囲に戦いを仕掛ける。

 

 あっという間に回復と、何よりスキルの魔力が尽きるだろう。

 でも、私が残ってる間は対戦しているというバトロワ成立して、最後の自陣営の勝利者調整なんて白けたシーン見せないでいいんだ。

 

 やりますとも。

 

「本田さん…」

「どした?抱きしめてラストシーンして欲しいかいケダモノ」

「してくれるニャ?」

「配信してんだろ?一応、揃って死ぬシーンはかわいく頭撫でられるか、撫でるかくらいしてやるさ」

「……楽しみニャねえ……」

「笑うなって」

 

 自分でも似合わないって思ってるから。

 

「でも、その前に、やっぱり勝ちたいかニャ?」

「そりゃぁね?」

「どうしても?」

「みんなの楽しかった思い出になるように、派手にやりたい気持ちはずっと消えたりはしないさ」

 

 後悔としてずっと、抱え続けることをさらっと白状した。

 なんでか、してしまった。

 

「……わかったニャ、さっきのデレのご褒美、全力でわっちから差し上げようかニャ↑~!」

「なにする気……?」

「我を奉ずる民、全員、出番が来たニャよお!!」

「!?」

「この理想的なツンデレ!このわたしの愛情にご褒美あげたいすべての民は、クララボ学園の人気の威信にかけて!お祭りを開始するニャ↑~!」

「は…?は…!?」

 

 いきなり何を言い出しているのか、理解が全然できていない。

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