女子学生が「AHO」なことをしています【完結済】 作:ナツコソビオレ
あれからだいたい二カ月くらい。
かつてのギルド戦も、話題優先で聖剣対決戦争だなんだと名前も脚色を付けて、楽しい記憶としてみんなの中に都合よく溶け込んでいた。
「皆さん、今日は集まっていただいて、本当にありがとうございます!」
島クリエイトの権限は、多くの人が望むとおり、本田さんが勝利して商人組合の好む形に作られていく形になった。
大体の人が初めて踏み入れる、ユーザーが好きに作ったこのゲームのマップの中身。
なんでもできると言うものではなく、そこそこ金がかかったりするのは、まぁミカさんが当たり前に出した。
様々な器具、街並み、高台にそびえる城と大聖堂。
しっかりと形ができてきたところで、今日、この島で初めての結婚式が執り行われることになった。
「今日、一人だけ本当に来てほしかった人が来られませんでしたが、この声はきっと届いていると思います」
新郎、マジボルケーノ。
新婦、小石アイテイル。
そうしてほしいと思ったそのまま、二人は順調に仲良くなったようだ。
大まかに形ができて、そこから各所から捕獲したモンスターを登録、そして放すことでフィールドの魔物を設定。
お金などの対価ではなく、こうやってみんなでやっている風のこともできることに、皆熱狂した。
いいレアを落とすレアモンスターを持ち寄り、地域設定をクリエイターに頼んで放ち、この島はもう、そこそこのレアで稼ぐなら優先で来るべき場所になった。
端っこにはダンジョンも高難易度で取り揃えており、初級から上級まで居場所次第で多くが楽しめる。
生産職が望んでいた、マップ設置器具の集約は希望のまま行われ、その近くに必要な材料を持つモンスターが出ることで、快適さがとんでもないことになったと好評らしい。
レア持ちばかりで初心者にもやさしい難易度のフィールド。
そこに気軽に売買を持ちかけたり、アドバイスできる環境。
生産職があちこち行き来しなくても上級アイテムを作って、その場で売れるスペースたち。
かなり、バランスそのものを変えたと言ってもいい。
順調に毎日のようにアップデートし、希望をかなえ続ける本田さんは口々に感謝されことになる。
島の名前が本田島、またはホーンドアイランドと呼ばれるくらいに。
しかし。
あのギルド戦の祝勝会として商人たちが企画した集まりに欠席するという連絡があったあたりから…。
直に、本田さんを見たものがいない、という噂があった。
ある程度のクリエイト権限などは、彼女の作ったギルドにいるサブマスも果たせるようで、リア友の面々、ライバーの数人も手伝えるようなので、やっている。
精力的なメンバー、セイノは細かい調整をしたり修正したり、この島の操作ができて直接会える存在としてかなりの立場として扱われだしている…らしい。
そのセイノも、しばらく本田さんは見ていないと言う。
ただ、仕事はずっと行っていて要望を叶え続けているとも。
「…忙しいのに嫁が会いに来てくんなぁぃ…ひどいニャねえ」
「ほんと、本田さん、たまには感謝の言葉くらい言わせてほしいのにねえ」
関わっていた面々も、こんな感じ。
高台の城のようなものも、どうにもギルドがたくさん本拠として占有できるエリアが作られているようで、拡張予定はまだまだあるようだ。
それと、ほんの数日前、オルアラの島にしか出ていなかった強力なモンスターも潜む超難易度ダンジョンも作っていたらしい。
毎日通って、更新を眺めて発表する第三者まで今はいるようだ。
平和で、交流をたくさん行えて便利な居場所。
それを作り続け、それでも特に出てこない本田さん。
昨今は、もう伝説の生き物みたいな扱いになっている。
システムに取り込まれた、なんて噂すら出るくらい。
「やっぱりここに戻ってきてもいないか」
「何かあったとしても、別のキャラのことで気にしたりしないと言って安心させてやりたいのですが…」
「あら、おふたり、本田さんと何かありましたのかしら?」
「いえ、別に」
「なんでもないことですよ」
いつものギルドも、前後で変りもなく営業しているようだ。
正体を知って気が引けているのではない。
逆に、気を使わせているくらいの感じだ。
マジくんと、今も準ギルド員のように出入りしている貧乏貴族は、今も内情は知らないままらしい。
それはつまり、怪しい行動をしてもいないと言うことなのだろう。
あの三人組は…まぁ、ずっと変わらず、ふらふら遊ぶのが楽しいのだろうし、私とは一時関りがあっただけだと思う。
そして
「まだ、彼女は見かけられないままなのかね、ギトスジくん」
「作業がずっとし続けないといけないものなのではないですか?」
「それとしても…我々も、彼女がいないことには親衛隊のようなこともできないから困るだろう」
「…まだ、そのノリ続けるおつもりだったので…」
「彼女の反応次第だよ。当然だ」
自警団は、少しは義務らしい堅苦しさを変えられていると思いたいものだ。
あのまま、普通の時間に付きまとわれてもこっちは怖いだけなんで…。
で。
「本田さん!私たち、このゲームで一番今楽しんでるかもしれないよ!きっとまた会いに来てね!」
新婦が集まったみんなの前で、そういってブーケを投げる。
そんなに遠くには飛ばず、この日のためにこんな衣装一式用意したミカさんが拾いそうになったが、よけて生産ギルドの誰かが拾ったらしい。
「…大丈夫、見てたから、伝わってるよ」
獣人が一言、それに応えるようにつぶやいた。
届きはしないが、それでいい。
幸せそうでいいなぁ。
それだけでいいのだ。
「ゆめっち、じゃ、この後どこ行こうかね」
「ぽよぽよ、なんかちっこいのー」
「まぁまぁ、同じくらいですよ、背の高さは」
「氷の世界、まだ行ったことあまりないから、踏破したいんだよね」
「オッケー!」
なんだかんだ言ってケダモノの見た目は嫌いじゃなかった。
ので、色を変えて白くしただけのほぼケダモノ同一の見た目のクリエイト。
それの名前は、モーニ=ン=ユメミル。
中身の名前は、朝霞夢。
件の英雄、本田さんの中身である。
レベルも伝説の武器もないが、リア友とたまにはこうやってこのゲームをして遊ぶ。
そんな、楽しみを持った学生。
彼女たちは、今もたまに、そこに居たりするのである。
完。
といったことで、もし、通してお読みいただいた方、これを読んでくれた方がおりましたら、本当に、心からありがとうございました。
こんなものですが時間の無駄となっていなければ幸いと思います。
本当は夏休み中リアルタイム進行のように書いていって八月末で丁度終わる予定でしたが、全くそんなことはできなかったです。
もし、読んでダメなことがあまりにあったりしたら教えていただけると次に反省を生かしたいと思います。
それと、この後に「見なきゃよかった」という無駄な話を一話、そのうち書くと思いますが、本当に見て損をすると思います。
それでは。