女子学生が「AHO」なことをしています【完結済】   作:ナツコソビオレ

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酷い目に合う本田さん

 tips

 

 召喚

  魔法使い系上級職の一つ、サマナーのスキル。

  範囲ダメージ攻撃スキルの召喚「コールボム」は通常この呼び名では使わない。

  単体のモンスターを味方NPCとして召喚、戦わせるスキルである。

  特定の装備と特定の触媒、消費アイテムを組み合わせて召喚スキルを使用することで、確実に「失敗」させることができる。

  これにより敵対したままの、いわゆる敵mobを特定テーブルからランダム召喚する「ファンブル」が起きる。

  これには複数のフィールドボスが含まれるため、特定の時間発生で週当たりの出現では数の限られたフィールドボスを意図的に出すことも不可能ではない。

  街中や農場で発生させることで放置中の操作キャラクタを意図的に排除する行為が横行したため、今では出現可能な場所の制限が設けられている。

  ギルドの管理地でMVP権利を確定させたボス狩りを行いたい場合もあるという批判も出たため、このスキル自体に制限は今も行われていない。

  が、現在も悪意と思われる使用はなくなっておらず、公共の場で強力なmobの召喚放置などは俗称「テロ」と呼ばれている。

  

                AHO攻略サイト「AHOになるための場所」より抜粋

 

          ――――――――――――――――――

 

 

「やってられるか!こんなもんッ!!」

 

 やけくそだ。

 倒れてすぐ自警団のやられた死体が消失。

 復活のために、猶予もなくセーブ地点に帰ったのはわかる。

 わかるがな。

 ほぼ初対面だったからと言って、次に殴られるのが私とわかっいて捨てていくかね、あんちくしょー!

 こっちに専用スキルがなきゃ、とっくに死んでるんだわよ、私だって。

 なんか、デバフは通ってるからポーションがぶ飲みで耐えてるけど…。

 いや、なんで耐えているんだ私。

 逃げないのか私。

 

「大丈夫ですか?」

「わかんないけど、とりあえず逃げて初期装備組は!」

 

 余裕あるな、我ながら。

 数分前まではガチ泣きしてたんだが…。

 

   ――――――――――――――――――

 

「まてまてまて!ヤバイって!ゴリゴリえぐられてるッて!」

 即死しないのはありがたいと、とりあえずポーションがぶ飲みをはじめた本田さん。

 様々なスキルを連発し、盾ガード、範囲ガードスキル、バフ及びデバフスキルを投げまくるが、早々に気づいてしまった。

 この山…。

 いや、地形をすり抜けて半分埋まっている何か。

 ずっと液体を吐いて気持ち悪いと思っていたが、こいつ、攻撃に腐食の特殊属性がある。

 何か?

 それは、とてつもない速さで、鎧などを劣化させ、耐久を削る嫌がらせの攻撃である。

「買ったばかりの!なけなしのライトプレートが!何某小説のエルフ連れた自由騎士の鎧に似てたから気に入って買ったライトプレートがぁ!!」

 ヲタ知識披露を無駄に挟みながら、泣き叫ぶ本田さん。

 

   ――――――――――――――――――

 

 

 そして。

 買った翌日、馬鹿みたいに消耗して壊れかけになっている鎧を、もうヤケだと自分に言って。

 

 ………脱いだ。

 

 もういっそ命よりこっちのほうを生かすと自棄になり、脱ぎ捨てた。

 採取した毒草も投げつけて命中低下も付与できるのを知ったから、もう、運にかけるほうが気持ちとしても幾分楽。

 ちなみに攻撃に関しては、もはやダメージにもなりはしない。

 ミスと1とが繰り返されるばかりで、さすがに1人では永遠に倒せないだろう、これは。

 もはや、なんで死なないのかと問われるレベルなのだが、逃げられないのと動いて被害がさらに広がる懸念が足かせで動けないのである。

 

 運がいいのか悪いのか、実はポーションはある。

 早々に逃げた自警団君の落としたものである。

 

 このゲームの死亡復帰は、経験値ペナルティとともにアイテム消失を確立でするという追加ペナルティが存在する。

 セーブ地点で復帰の場合、その場に手持ちを落とす確率、武器など装備欄が盗まれる、落とすという判定が発生する。

 装備については回収NPCにお金を払うと戻るかも、という保険もあったり、消失しない課金アイテムがあったり商売っ気が見て取れる。

 さっきの自警団はアイテム使用欄にあったポーションを軒並み落としていたので、拾って私が飲んでいる。

 

 ある意味腹いせだ。

 

 量がありすぎて、拾った後重量オーバーで動けないのも…ある。

 金持ちはいいよなぁ、自警団のバックアップでいっばい配布されてんだろうな。

 しかし、それであっても、命中低下の毒草は、さっきとってた自分の手持ちだけなのだよね。

 寿命は近いな…私。

 いまだに何かを吐き続けて山に埋まっている巨大な何かに草とスキルを投げつけながら、げんなりした。

 

 そこへ。

 

 3861

 4108

 

 なに? 今見えた数字。

 

「何してる、オマエ」

「山に絡まれて、人の多いとこに行かないようなんか耐えてまーす」

 

 目的も意味もない。

 そうは言えないのだ。

 ほんと意味わかんないもん。

 

「オマエか仲間が呼んで端っこで退治中なのだろ?」

「ソロです!採取中です!あと攻撃あたんねえ!」

「召喚した奴がわからない?」

 

 いきなり声がして、誰かも知らずありのままぶちまける。

 何か状況に関して知識がある人っぽいが、自分だけで手いっぱいだ。

 

「とりあえず何とかしてぇ…ずっとこの液体吐きかけられるの、やっぱやだよォ!!」

「装備外して遊んでいるように見えるがな」

「溶かされてんだよ!貧乏人なめんな!」

 

 顔も見てない初対面にぶちぎれる意味がわからない。

 

「攻撃していいんだな」

「ダメな場合ある!?この状況で!?」

「ダメージ貢献MVPが欲しいから全力でやるな、とはよく言われる」

「関係ねえよ!どこの上級エリアだよ!それ!」

 

 実際、後半はそういう状況にもあたるのだろうとは思う。

 が、こっちはHPが万単位のメタルスラ〇ム相手みたいなものなので、条件でとやかく言えるものか。

 

「………なら手早く仕留める」

 

 少し間を置いた声が聞こえるのと同時に、また4桁のでかい数字が連続で表示されていく。

 同時に。

 

「当たらない…食らわなくなった?」

 

 ガンガンとダメージを与える謎の声と、それにダメージプラスで特殊効果があるのだろうか。

 今のうちだ。

 

「何してる」

「何って、ポーション作ってんだよォ!足りないんだよ!」

 

 手持ちが危ないかな、という状態になっていたので、もうなりふり構えない。

 集めてた草で回復用のポーションを作って、この際消費することにする。

 ダメージ食らいながらでは、発動までの消費時間で自動失敗してしまう。

 生き延びたいなら今しかない、必至だ。

 ただし見た目は…おなじみ装備解除のほぼ裸アバターで腰振りながら棒をくるくる回しているモーションを敵の真ん前でしている姿。

 

 なめ腐ってる。

 絶対遊びでやって舐め腐ってると思われるよこれ。

 

 ボスの目の前で裸で踊ってるようにしか見えねえもん、私自身が。

 泣くほど必死なのにさ。

 システム音の大成功判定の特殊エモート「わぁ、できたぁ!」が特にむなしい。

 そして、たまに当たった時には遠慮なく回復。

 合間に挑発とデバフを入れてどこかに行かないようにするのと協力は欠かさない。

 

「無事ですか!ガードの方…何してんですか!?」

「ポーション作ってんだよ!」

「どうして!?」

「イきたいからだよお!あんたは何してんのよ!」

「応援、連れてきましたよ!」

 

 まじで!?

 やった!

 これ終わりそうじゃないの!

 

 そして、そこからも頑張った。

 みんなで、みんなで頑張った。

 直接攻撃が届かないガケ越しの遠距離攻撃ができる位置にこの敵がいたこと、そうなればボスの攻撃目標がほかに移らず私だけに行くこと。

 これが判明し、もともとは厄介な、このギガスケールプラチナラストヌデルデスワームは見事にスマートに退治できた。

 最初に助けてくれた誰か、応援で数人やってきた自警団、そして後から弓を持って遊びに来た初心者や観客。

 しかし、曲がりなりにもボスだ。

 討伐報酬として、通常の敵と違いインベントリ…いわば手持ちの持ち物袋に直接貢献報酬というものが貰える。

 なら…どうせなら、耳打ちで世話になってたギルドの誰かを呼べばよかった。

 頭が回らなかった。

 

 そんなわけで。

 

「被害が出るのを防いでくれたようで、大変な活躍をしてくれたと受け取っているよ、ありがとう」

「僕が推薦しますんで、このままどうですか自警団に入るのは」

「……ま、まぁ、もうちょっと、いろいろ遊んでやりたいことがあるんで今は即決できないかなぁ?」

「そうですか」

 

 冗談じゃない。

 心の中では突っ込みで蹴りを入れるモーションすらしている。

 ゲームの中で規律作って縛り付けるような場所にいられるものか。

 わしは今機嫌が悪いんや。

 

「我々としても、解決だけではなく実入りまであって大変満足している」

「…ない……」

 

 偉そうな、たぶんギルドの偉い位置の人の賛辞など知りはしない。

 それどころじゃなく…。

 ないのだ。

 みんなして、ボス報酬出てるのがわかって、にこにこしているが…。

 

「どうしました」

「ないんだよぉ…ボス報酬私に来なかったの…!」

 

 仕組みはこうらしい。

 

 ボスと戦うと報酬が個別にインベントリに入る。

 戦ったかどうか、というのは、ボスに与えたダメージによる判定。

 それは、出現からずっとではなく、一定のもらえる判定の時間が存在する。

 ちらりと触って帰ったり、そういうのには配布されず、仮に5分なら5分何もしなければもらえる権利が消えるらしいのだ。

 そういえば倒れる前に急に弓を持つ外野増えた気もするなぁ。

 私は攻撃はあきらめて殴られるだけ、回復連打、たまにダメージの発生しないデバフスキルを叩き込んでいた。

 

 

 つまり…。

 

「丸損以下じゃないかぁ~!!やってられるかぁ!!」

「まぁまぁ、ポーションの代金は請求しませんから」

「されてたまるかよ!!!!」

 

 傷口に塩を塗る自警団なんて大嫌いだよ!

 

「…あの」

「なんだいお嬢さん」

 

 泣き言言い放題の私に、情けないと言いに来たのか、観客がひとりやってきた。

 会ったことはない。

 

「なら、これあげる」

「…ありがと、べつにそういうの期待していったわけじゃないから要らないものでいいよ」

「うん」

 

 そう言われ、何やら卵を一つ貰う。

 そこを一つ受け取ると、哀れさに見かねたのか、周囲の観客、戦闘参加者、自警団からも、何かしら適当にアイテムをくれだした。

 握手会か何かかね?

 でも、ちょっと嬉しかった。

 それにしても、助けてくれた人…お礼も言えないままだったけど一体何だったんだろう。

 チラチラ見てはいたけど、あれは崖から超火力出してた、たぶんガンナーだったと思う。

 いいところでMVP取って去っていっただろうから、お礼はすでにしているようなものだと思うが…。

 

 

 最後に。

 

「…頼んだものとは全く違うアイテムだらけですが…」

「ですよねー」

 

 いらないボスドロップとしてもらったものなど、一部を生産ギルドに納品しようとしたのが、おおよそ断られた。

「いったいどこに行って…こんな一か所で取れそうもないアイテムを」

「わかんにゃい……」

 

 

 

     本日の任務、失敗!

 

 

-後日の補足。

 

 あの後、あの平原の崖地帯に敵に殴られながら裸で踊るエロ女が出るという怪しいうわさが語られるようになった。

 観光客も出没するらしい。

 もはや伝説となったような形である。

 ……もう、あそこには行けない。

 

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