問題児たちが異世界から来るようですよ?~God's Paradox~   作:秦ともひろ

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第一話

 

 

 

 

『に゙ゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』

 

上空4000mから落下した四人と一匹は、落下地点に用意されていた幾重に張られた緩衝材のような膜を通って湖へと着水する。

 

幸い水膜で勢いが衰えていたので、全員無事であった。

 

「し、信じられないわ!まさか問答無用で引き摺り込んだ挙句、空に放り出すなんて!」

 

「右に同じだクソッタレ。場合によっちゃその場でゲームオーバーだぜコレ。石の中に呼び出された方がまだ親切だ」

 

「⋯⋯⋯。いえ、石の中に呼び出されては動けないでしょう?」

 

「俺は問題ない」

 

「そう。身勝手ね」

 

二人の男女はフン、と互いに鼻を鳴らして服の端を絞る。その後ろでは、三毛猫を抱えた少女と蒼士が岸へと上がっていた。

 

三毛猫を抱えた少女は服の端を絞りながら呟く。

 

「此処⋯⋯⋯⋯何処だろう?」

 

「さあな。世界の果てっぽいものが見えたし、どこぞの大亀の背中なんじゃねぇか?」

 

「それは素敵なことだな。そうだったら象にも感謝しないとな」

 

学生服を着た金髪の少年の言葉に蒼士も同調する。このとき少年は話が分かる相手がいると思っていなかったのか、興味深そうに蒼士を見ていた。

 

何にせよ、彼らの知らない場所であることは確かであった。

 

服を絞り終えた少年は軽いくせっぱねの髪をかきあげながら、

 

「まず間違いないだろうけど、一応確認しとくぞ。もしかしてお前らにも変な手紙が?」

 

「そうだけど、まずは”オマエ”っていう呼び方を訂正しなさい。―――私は久遠飛鳥よ。以後は気をつけて。それで、そこの猫を抱きかかえている貴女とその横にいる貴方は?」

 

「⋯⋯⋯春日部耀。以下同文」

 

「柑凪蒼士だ。まぁ、気軽に蒼士とでも呼んでくれ」

 

「そう。よろしく春日部さん、蒼士君。最後に、野蛮で凶暴そうなそこの貴方は?」

 

「高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子揃ったダメ人間なんで、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれお嬢様」

 

「そう。取扱説明書でも作ってくれたら考えてあげるわ、十六夜君」

 

「ハハ、マジか。今度作っとくから覚悟してな、お嬢様」

 

 

心からケラケラと笑う逆廻十六夜。

 

傲慢そうに顔を背ける久遠飛鳥。

 

我関せず無関心を装う春日部耀。

 

なんか近くの草花を摘んでは眺めている柑凪蒼士。

 

そんな彼らを物陰から見ていた黒ウサギは思う。

 

 

(うわぁ⋯⋯⋯なんか問題児ばっかりみたいですねぇ⋯⋯)

 

 

召喚しておいてアレだが⋯⋯彼らが素直に協力する姿は、お世辞にも想像できそうにない。

 

黒ウサギはこれから先のことを憂い重いため息を吐くのだった。

 

 

 

「で、呼び出されたのはいいけどなんで誰もいねぇんだよ。この状況だと、招待状に書かれていた箱庭とかいうものの説明をする奴が現れるようなもんじゃねぇのか?」

 

「そうね。なんの説明もないままでは動きようがないもの」

 

「⋯⋯。この状況に対して落ち着きすぎているのもどうかと思うけど」

 

「まぁ、しばらくしたら出てくるんじゃないか?」

 

 

 

(⋯⋯⋯⋯はぁ)

 

黒ウサギは悩んでいた。もっとパニックになってくれていれば飛び出しやすいのだが、場が落ち着きすぎているせいでタイミングを計れないのだ。

 

(まぁ、悩んでいても仕方がないデス。これ以上不満が出る前にお腹を括りますか⋯)

 

全員から苦言を呈されそうで少し怖いが、此処は我慢するしかない。

 

意を決して飛び出そうとしたとき、ふと十六夜がため息混じりに呟く。

 

「―――――仕方ねぇな。こうなったら、そこに隠れている奴にでも(・・・・・・・・・・・・)話を聞くか?」

 

物陰に隠れていた黒ウサギはその不意の一言に、驚きのあまり飛び跳ねた。

 

四人の視線が黒ウサギに集まる。

 

「なんだ、貴方も気づいていたの?」

 

「当然。かくれんぼじゃ負け無しだぜ?そっちの二人も気づいてたんだろ?」

 

「風上に立たれたら嫌でもわかる」

 

「見つけてください、って言ってるくらい気配ダダ漏れだったからな」

 

「⋯⋯⋯へぇ?面白いなお前ら」

 

軽薄そうに笑ってはいるが、十六夜の目は笑っていない。四人は理不尽な招集を受けた腹いせに殺意のこもった冷ややかな視線を黒ウサギに向けていた。

 

「や、やだなぁ御四人様。そんな狼みたいな怖い顔で見られると黒ウサギは死んでしまいますよ?えぇ、えぇ古来より孤独と狼はウサギの天敵でございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは一つ穏便に御話を聞いていただけたら嬉しいでございますヨ?」

 

「断る」「却下」「お断りします」「無理」

 

「あっは、取りつくシマもないですね♪」

 

バンザーイ、と降参のポーズをとる黒ウサギ。

 

しかしその眼は冷静に三人を値踏みしていた。

 

(肝っ玉は及第点。この状況でNOと言える勝ち気は買いです。まぁ、扱いにくいのは難点過ぎますけど)

 

黒ウサギは巫山戯ているように見えながらも、四人にどう接するべきか冷静に考えを張り巡らせている―――と、春日部耀が不思議そうに隣に立ち、

 

「???」

 

「⋯⋯えい」

 

「フギャ!!」

 

耳を力いっぱい引っ張った。

 

「ちょ、ちょっとお待ちを!触るだけならまだしも、まさか初対面で無遠慮に黒ウサギの素敵耳を引き抜きにかかるとは、どういう了見ですか!?」

 

「好奇心の為せる業」

 

「自由にもほどがあります!」

 

「へぇ?このウサ耳って本物なのか?」

 

「フギャ!!」

 

今度は十六夜が掴んで引っ張る。

 

「ま、待ってくだ」

 

「へぇ、どうやって生えてんだ?これ」

 

更に蒼士が右から掴んで引く。

 

「⋯⋯⋯。じゃぁ私も」

 

「っぁぁ―――――――――――――!」

 

今度は飛鳥が左から。

 

左右から力いっぱい引っ張られた黒ウサギは言葉にならない悲鳴を上げ、その絶叫は近隣に木霊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――――あ、あり得ない。あり得ないのですよ。まさか話を聞いてもらうために小一時間も費やしてしまうとは。学級崩壊とはきっとこのような状況のことを言うに違いないのデス」

 

「いいからさっさと進めろ」

 

半ば本気の涙を眼に浮かばせながらも、黒ウサギは話を聞いてもらえる状況を作ることに成功していた。四人は黒ウサギの前の岸辺に腰を下ろし、彼女の話を『聞くだけ聞こう』という程度には耳を傾けている。

 

黒ウサギは咳払いをし、

 

「それでは良いですか、御四人様。定例文で言いますよ?いいま「そういうのいいから早く」っ!ん〜〜、ようこそ、”箱庭の世界”へ!我々は御四人様にギフトを与えられたものだけが参加できる『ギフトゲーム』への参加資格をプレゼンさせていただこうかと召喚いたしました。」

 

そこからは、黒ウサギの説明が始まった。”箱庭”についてや、ギフト、ギフトゲームについて、そしてコミュニティについてのことが説明された。

 

「―――――――と、このようにギフトゲームでは自身の持つもの、金品や土地、権利やギフトなどを賭けて競っていただきます。もちろん勝つことができれば、高価な品物や、貴重なギフトも手に入りますが、負ければ当然―――ご自身の才能も失われるのであしからず」

 

黒ウサギは愛嬌たっぷりの笑顔に黒い影を見せる。

 

挑発的とも取れるその笑顔に、同じく挑発的な声音で飛鳥が問う。

 

「そう。なら最後にもう一つだけ質問させてもらってもいいかしら?」

 

「えぇ、もちろん。どうぞどうぞ♪」

 

「先程の話を聞く限り、『ギフトゲーム』というのはこの世界の法そのもの、と考えても良いのかしら?」

 

お?と驚く黒ウサギ。

 

「ふふん♪なかなか鋭いですね。しかしそれは八割正解の二割間違いです。我々の世界でも強盗や窃盗は禁止されてますし、物々交換なども存在します。ギフトを用いての犯罪など以ての外です。――――が、しかし!『ギフトゲーム』の本質は全くの逆!勝者のみがすべてを手にするゲームとなっております。」

 

「そう。中々野蛮ね」

 

こうして黒ウサギは一通りの説明を終えたのか、一枚の封書を取り出す。

 

「さて。皆さんの召喚を依頼した黒ウサギには、この世界におけるすべての質問に答える義務があります。が、それら全てを語らせていただくには時間がかかります。新たな同士候補でもある皆さんを、こうして何時までも野外に出したままにしておくのも忍びないので、ここは我らのコミュニティでお話させていただきたいと思います。⋯⋯よろしいです?」

 

「待てよ。まだ俺が質問していないだろ」

 

ここまで清聴していた十六夜が威圧的な声で質問をする。これまでの軽薄な笑みが完全に消えていることに気がついた黒ウサギは、構えるように聞き返した。

 

「⋯⋯⋯どのような質問です?ルールですか?ゲームそのものですか?」

 

「そんなのはどうでもいい(・・・・・・)。腹の底からどうでもいいぜ、黒ウサギ。ここでお前にルールを問いただしたところで、何かが変わるわけでもねぇ。世界のルールを変えようとするのは革命家の仕事で、俺達プレイヤーの仕事じゃねぇ。俺が聞きたいのは⋯⋯たった一つ、手紙に書いてあったことだけだ」

 

そうして十六夜は何もかもを見下す目線で一言、

 

「この世界は⋯⋯⋯面白いか(・・・・)?」

 

「―――――――――」

 

他の三人の視線も集まる。彼らを呼んだ手紙にはこう書かれていた。

 

 

『家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨てて箱庭に来い』と。

 

 

それに見合うだけの世界かどうかこそ、この四人の真に聞きたいことなのだった。

 

「――――――Yes。『ギフトゲーム』は人を超えたものだけが参加できる神魔の遊戯。箱庭の世界は外界より格段に面白いと、黒ウサギは保証いたします♪」

 




始めまして、秦ともひろです。

最近投稿し始めて、まだ至らないところがあるとは思いますが、なるべく定期投稿を心がけますので、今後も当作品をよろしくお願いします。
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