汐見市生活課!   作:ケン3ヴァルデン

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向き合う時!

 

夜が明け始める街の中――

晴臣と真琴は並んで歩いていた。

朝焼けの気配が街を少しずつ染めていくなか、ふたりの間にはどこか照れ臭く、言葉にしづらい空気が漂っている。

 

晴臣は何かを決意するように小さく息を呑み、横を歩く真琴に向き直る。

 

「……“タネ”のこと、今度こそちゃんと教えてほしい」

 

その言葉に真琴は少しだけ目を見開いたが、すぐにふっと口元を緩めた。

 

「うん、いいよ」

 

拍子抜けするほどあっさりと、彼女は答える。

 

そして、歩みを止めることなく話し始めた。

 

「ユメの“タネ”はね、文字通りの“種”なの。まだ芽吹いていない、でもいつかどこかで、確実に“何か”として生まれてくる。……ただ、それだけの存在」

 

言葉を選ぶようにしながらも、真琴の口調は淡々としていた。

 

「副作用、というか……付随して起きる現象として、あの緑の光があるの。あれはね、コントロールできないの。ユメ自身にも、誰にも」

 

晴臣は黙って頷き、真琴の言葉を逃すまいと耳を傾ける。

 

「しかも、あの光は生きているもの、死んでいるもの……生と死の境にあるすべてに影響する。触れれば、壊れる。命であっても、魂であっても、例外なく」

 

そこまで話すと、真琴はすっと晴臣の前に回り込んだ。

立ち止まり、顔を上げ、覗き込むように晴臣を見つめる。

 

「……ねえ、もう気づいてるよね?」

 

首を少し傾け、瞳にわずかな光を宿して。

その瞳は何かを問いかけるように、何かを試すように、まっすぐに彼を射抜いていた。

 

真琴の問いかけに、晴臣は一瞬、息を呑んでその場に硬直した。

 

制御不能なはずの緑の光――

それを自分は、たしかにさっき“意志”で呼び出した。

しかも、あれほど破壊的だと説明された光をまとってなお、自分の体には何の異常もなかった。

 

指先を見つめる。あのとき、確かに光は自分の内から湧いた。

破壊のはずが、どこか護るような感覚さえあった。

 

混乱と疑問が心を占めていく中、晴臣はおそるおそる口を開いた。

 

「…なぜ俺は無事だったんだ?」

 

真琴は少しだけ目を伏せた。まるで、その答えが彼を傷つけるかもしれないと躊躇うように。

 

「……正直に言うと、わたしにもわからないの」

 

声は静かだった。けれど、曖昧さの裏には確かな誠実さが滲んでいる。

 

「“タネ”に意思があるのかどうかも……その“意思”が、誰かと繋がったり、宿主を選んだりするのかも……全部、まだ不明なの」

 

真琴は口元に手を添え、少し苦しげに言葉を続けた。

 

「でも――ただの偶然とは思えないよ。君があの光を制御できたことも、君が無事だったことも」

 

彼女の瞳が、再び晴臣を真っ直ぐに見つめる。

 

「もしかしたら、“タネが芽吹く前に”選ばれてしまったのかもしれない」

 

風が吹き、朝焼けの光がふたりの影を長く引き伸ばした。

その先にある運命の形を、まだ誰も知らないまま――

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