迷宮とエッチなハーレムを求めて   作:銀の城

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読んでくれている皆さん
誤字報告に感謝します。


ロザリー①

「またのお越しを心よりお待ちしております」

 

「世話になったな」

 

 三割引きが効いたロザリーに付いてきたのは、面接の時に着ていたメイド服と顔を隠せるベールだった。ベールに黒い布を使っているのは顔の痣を目立たなくさせるためらしい。確かにベール越しには痣が見えないような気がする。痣と重なる左側がちょっと色が濃くなっているかも?

 

「そのベールは前が見るのか?」

 

「生地の薄いものを使っているので、日常生活やお仕えする分には支障はありません」

 

 向こう側はすけすけらしい。

 いつかそのスケスケの生地で服を作ってやろうか。べびーどーるだっけ? エッチなやつ。

 

「今日はもう遅いから、家を見るのは明日にしよう。暗くなる前に宿も探さないと」

 

 バルタークの宿に荷物を置いたままクベリークに来たから、明日は回収しに一度戻る必要もある。ちょっと面倒だ。

 

「それならあそこにしませんか。ほら、港に面した通りに大きな宿があったでしょう? 気になっていたんです」

 

 クラリスさんまだちょっと奥様が抜けてないな。かわいい。

 しかしクラリスさん? あそこの宿屋はすごく高そうでしたよ。宿っていうか、ホテルって感じでしたよ? 本当に泊まるんですか?

 断られることはないと思うけど、大丈夫かな。貴族御用達とかだったりしない? いや、貴族は『フィールドウォーク』で移動するから宿には泊まらないか。

 

「クラリスがそう言うなら、あそこにするか。ロザリーもそれでかまわないか?」

 

「はい。私も奥様のおっしゃる宿に興味があります」

 

 賛成多数により可決。あの高そうな宿に泊まることになりました。

 一旦港のほうに出てきて海沿いに冒険者ギルドへ向かう。その途中にあるのがこの非常に大きな宿でございますよ、クラリスさん。

 

「これは大きな宿屋ですね」

 

「そうでしょう? 通りかかったときからずっと気になっていたの」

 

 女性陣が非常に喜んでいる。大事だよね、流れに逆らわないことも。

 クラリスとロザリーが話していると従者とお嬢様って感じがしていいな。クラリスは本物のお嬢様で、ロザリーも元メイドだし。ただ、ベールをしてるのが貴族のクラリスじゃなくて、メイドのロザリーなんだよな。そこが俺のイメージとちょっと違う。

 ベールをつけてご尊顔を拝することかなわぬご令嬢と、付き従うように日傘をさす従者。美しい。想像だけでご飯三杯行けちゃう。

 

「部屋を借りたい。三人部屋だ」

 

 宿屋の一階は何というか普通だった。バルタークの宿屋を広くしただけ。ホテルの一階によくあるイスとテーブルがたくさんあるサロンみたいな場所がない。受付もボーイとかではなくエマーロ族の男だ。バルタークの宿にもいたな。定住を嫌う種族でみんな旅亭ギルドに所属していたはず。定期的に宿を転々としてるんだっけ?

 

「三人部屋は千ナール。食事は百ナール。お湯は五十ナール。どうする?」

 

「全部頼む。朝食はどうしたらいい?」

 

「今払うなら朝にカギと交換で札を渡す」

 

「まとめて払うよ。お湯を二つ、空の桶を一つ頼む」

 

「わかった。部屋が千ナール、食事が三人分で朝晩だから六百ナール、お湯は二人分の百ナール、桶の分はサービスしよう。初めて来てくれたお客さんだ、全部で千百九十ナールでいい」

 

「助かる」

 

 高いな。三人分ともなると結構するぞ。

 明日は家を借りるだろ。そして、家具を買う。だけどその日のうちに納品はされないだろうから、さらにもう一日ここに泊まる。

 うー。金が飛んでいく。家のいろいろがすんだらしばらくは金策しよう。今決めた。明日には忘れてそうだけど。

 三人部屋は四階の角部屋だ。文字が読めないけど四四六番のプレートがかかっている。

 

「それじゃあ食事の前に改めて自己紹介しておこうか」

 

「ええ。そうしましょう」

 

「畏まりました」

 

 俺とクラリスはそれぞれのベッドに腰かけている。ベールを外して素顔をさらしたロザリーは部屋で一人立ってる。従者っぽい。こっちにおいでって誘ってもいいけど、今はいいか。

 

「俺は由良隼人。故郷の風習で順序が逆だけど、由良が苗字で隼人が名前だ」

 

「私はクラリスです。以前は家名と継嫡家名を持つ貴族でしたが、奴隷になった時に失いました」

 

「ご丁寧にありがとうございます。改めてロザリーと申します。農家の次女で地元の貴族の家へ奉公に出ておりましたが、奴隷となりこの度は旦那様に買っていただきました。これからよろしくお願いします」

 

「よろしくたのむ」

 

「よろしくお願いしますね」

 

 ロザリーは農家の出身なのか。なら原作みたいに庭にハーブの畑を作ってもらえば俺が『農家』のジョブを得られるな。本当にいい買い物だった。

 

「奥様は元貴族ということでしたが、旦那様と婚姻して貴族に戻られるのでしょうか?」

 

 クラリスと顔を見合わせる。これから一緒に暮らすことになる相手だ。余計な誤解はさっさと解いておこう。

 クラリスは話そうとしたけど、俺が恥ずかしいから決闘の話は避けて、兄に脅されてクラリスが継嫡家名を失い、将来貴族になる可能性が高い俺の下に来た話をした。

 あと、はったりを利かせるために奴隷商で夫婦のふりをしたことも。

 

「それはそれは。奥様は大変な目に遭われたのですね」

 

「えっと、あのねロザリーさん。私は別にハヤトさんと婚姻はしていないから、奥様ではないのよ?」

 

「しかし奥様、旦那様はそうは思っていないご様子ですが」

 

「うむ。俺が貴族となり、クラリスを奴隷の身分から解放した暁にはユラを名乗ってもらう。ただ、クラリス・ユラは少し語感が悪いか?」

 

 異世界だからな。日本ですら結婚で苗字が変わると馴染まない人もいたし、こればっかりはどうしようもない。この世界は結婚のときに苗字を改名できるのかな。

 

「私は素敵だと思いますよ」

 

 ロザリーはいい娘だ。これからもクラリスが逃げられないように、一緒に追い込んでいこうね。クラリスが俺の求婚を受け入れてくれるくらいに。

 顔を真っ赤にして慌てているクラリスは本当に可愛いね。ベッドの上だけの睦言だと思っていたのかな? 俺は結構本気だよ? 『色魔』の上位ジョブには異種族と子をなせるスキルがあるらしいし、手に入れたら真っ先に孕ませるつもりだよ。今は言わないけど。

 

「明日の予定だけど、朝から貸家を探す。家の条件はとにかく広い事。これからパーティーメンバーが増えたときに手狭じゃ困るからな。家が広くなるとロザリーの負担になるけど、大丈夫か?」

 

「ご配慮いただき感謝いたします、旦那様。ですが、侍女として働いた経験もあります。一般的な邸宅であれば一人でも十分管理できます」

 

 ロザリーの笑顔がまぶしい。すごい自信だ。そして、そんな自信を持てるようになるメイドの仕事が少しだけ気になった。どんな激務なんだろう。

 

「そ、そうか。まあ今後のパーティーメンバーも奴隷の予定だから、人手が必要ならロザリーが教育してくれ」

 

「畏まりました」

 

 夕食の時間になって食堂に向かう。ここでひと悶着というか、ロザリーのメイドらしいところが出た。ご主人様と同じテーブルで食事を取ることはできないと言い、これに対して頑ななのだ。

 俺はその辺の理屈というか、心持ちというか、姿勢が理解できないのでさっさと席についてほしい。あと、奴隷になってから普通にテーブルで食べていたクラリスが顔を青くしてるから。

 クラリスの待遇が奴隷に対するものではなかったことを今知ったわけだ。奴隷の食事は床や別室だったりするからな。

 

「わかった。なら命令する。ロザリーはここで俺たちと一緒に食事をするように」

 

「畏まりました」

 

 結局俺が命令する事になった。クラリスを奥様と敬ってくれているから、主の俺でなくても彼女の命令も聞いてくれると思うけど、クラリスがそういうタイプじゃないからな。今も小さくなって俺の顔色を窺いながら食事してる。

 

 ねぇクラリス。俺ってそんなに怖そうに見える? 今まで手を上げた事なんてないでしょうに。お仕置きするならキスだよ。

 

 せっかく高い食事代を払っているので俺はここでも肉を選ぶ。後でロザリーが教えてくれたけど、ここのお肉は迷宮産の物を使っているらしい。どうりで美味しいわけだ。肉の買取もしているから、ウサギ肉が余ったら売りに来よう。

 

 クラリスとロザリーは野菜の定食だ。百ナール相応なんだろうけど、肉より安いイメージがあるな。ほら肉くえ、肉。拒否された。

 ロザリーはベールを付けたまま食事をするのに慣れているな。全く汚す様子がない。

 

 食事を終えて部屋に戻る。

 受付で受け取った水の入った桶はロザリーが持っている。積極的というより、仕事人って感じだ。言われなくても自分の仕事に従事する感じ。かっこいい。

 

「先に言っておくけど、クラリスとロザリーの体は俺が洗うから。これは俺の趣味でロザリーが優秀な侍女でも譲らない。いいな」

 

「畏まりました」

 

 ロザリーさんそれしか言ってなくない? 全肯定なの?

 

「私はロザリーさんに洗ってほしいです」

 

「却下」

 

「奥様、どうかロザリーと呼び捨てに」

 

 クラリスの要望は却下。全否定だな。でもクラリスが折れやすいのも悪い。もっと強く断ってくれれば俺が折れるのに。体を洗うのはやめないけど。

 

「二人を洗う前に俺を洗ってもらうか。クラリスはどうする? 俺の体を洗ってくれる?」

 

「・・・・・・ロザリーにお願いします」

 

「お任せください」

 

 ちょっと葛藤したね。お願いしたら洗ってくれそうだ。でも強制はしないよ。いつか自分から言ってくれると信じてるよ。

 ロザリーに全身を洗ってもらう。俺は何もしない。背中も、胸も、息子も全部ロザリーにキレイにしてもらった。ロザリーに全く動揺が見られない。ちょっと悔しい。

 

「次はロザリーを洗う。ロザリーにキレイになってもらってから二人でクラリスを洗う」

 

「奥様が先でなくてよろしいのですか?」

 

「クラリスは最後だ。俺が我慢できなくなるからな」

 

 立場的にはロザリーの言う通りだ。だけど、クラリスを洗った後に我慢できる自信がない。だからクラリスを洗うのは最後。メイドのロザリーを先に洗うわけにはいかないから俺が最初なのだ。

 

「ハレンチです」

 

「・・・・・・かしこまりました」

 

 おや? ロザリーさんちょっと顔が赤いのでは? 俺を洗うのは平気だけど、性的な事にはそこまで慣れていないのかな。

 

「ロザリー。こっちに」

 

 褐色のエルフが裸になる。小麦色の肌が非常に艶めかしい。クラリスが顔をそらす。俺がロザリーを洗うとこを見たくないのかな。そんなことしていると、重要なことを見逃しちゃうよ。

 

「ロザリーよく聞いて。俺はクラリスを愛しているけど、すごくスケベだ。これからもロザリーには俺の情欲を受けてもらう。いいね?」

 

 見逃すのではなく聞き逃す。クラリスには聞こえないようにロザリーの耳元で囁くように話す。君も俺のセクハラ対象ですよ。

 褐色エルフのメイドなんて属性過多じゃ俺から逃げられないから覚悟するように。背中から腕を回してクラリスよりも大きな胸を探る。さくらんぼの色はクラリスと一緒だね。

 

「ん。覚悟はできております。このような貧相な体でよろしければ好きにしてください」

 

 貧相だと? どうやらクラリスと同じように自覚が足りないようだな。自分がどれほど欲情を煽る体をしているのかを。クラリスが控えているが、ここで目一杯ロザリーをいじめておこう。

 胸を執拗に洗い、足の付け根をこれでもかと煽る。唇は無視して体全体にキスを落とす。ほーら。だんだん声が漏れてきたぞ。

 

「ん。ふぅ、ふぅ。あっ」

 

「よし、キレイになったな。次はクラリスだ。こっちにおいで」

 

 中途半端に火照ったロザリーはそっちのけでクラリスを洗う。焦らしプレイは初めてだけど、うまくいったかな? 凛とした顔が惚けて甘くなってるぞ。

 

「ご、ご主人様。お相手はベッドの上で致しますから、今は体を洗ってください」

 

 だめだめ。背中を洗うのはロザリーに任せて、胸を丁寧にきれいにしてあげるからね。玉のようなきれいな肌に汚れひとつ残さないよ。

 クラリスはさくらんぼとお豆が弱いから喘ぎ声が漏れないように口を塞ぐ。舌を舐りながら上も下も攻める。背後にロザリーがいるから逃げられないしね。いつもは俺が後ろにいるから、体を洗う時に口も含めて三か所を同時に攻めるのは初めてだけど、気持ちよさそうだね。

 血が煮えたぎってきた。いい加減我慢の限界だ。俺は助兵衛な男になる。

 クラリスを抱き上げてベッドに移動する。

 

「クラリス。今日もかわいいよ。愛してる。ちゅ」

 

 焦らしたロザリーが見てるからね。これから自分がどんなことをされるのか。それをクラリスを通して感じてもらう。

 ほら、ロザリー見えるか? 俺が何をなめて、どこを触って、どうやってクラリスに愛を囁いているのか。もっと近くに寄って観察してもいいんだよ?

 

「ん。んっ! んあ。あの、あの、ダメなんです。なんだかいつもと違うので、すこしまってほしいですぅ。からだがあつくて、しんじゃう」

 

 おいおいまじかよきみぃ。煽りの天才か? こんなに欲情したオスを前にそんなことを言って、我慢できるはずないじゃないか。

 水気たっぷりの壺に棒を差し込んで、お豆をつぶす。右手は山をつかみ、左手はさくらんぼを摘み取る。

 

「まって、ほんとにまって! んん! あっあっ!」

 

 早々にクラリスがてっぺんを越え、気持ちよくなって放心する。次はロザリーだ。ベッドの脇でボーっとしているロザリーの腕を引っ張ってベッドに引きずりこむ。気が付いた時にはもう遅い。唇をもらう。

 

「んっ。ロザリー、クラリスが受け止めきれなかった分は君に注ぐから。覚悟してね」

 

「は、はい。おまかしぇくだはい」

 

 噛んだな。かわいい。ロザリーのさくらんぼをクラリスと食べ比べしてやる。

 既に体は受け入れ準備万端だ。ドロッと汚れた息子をそのメイドの矜持できれいにしてもらおうじゃないか。

 そんな拙い動きじゃ息子は喜ばないぞ? ん?

 その夜はとても充実したものになった。どさくさ紛れにロザリーとクラリスをキスさせたらすごい興奮した。いっぱいでた。

 

 

 二人部屋の時はダブルベッドだったから二人でも寝られた。三人部屋は一人用のベッドが三つあるだけだから、一つのベッドで三人が寝るのは難しい。

 難しいというか狭い。だからクラリスが気絶したら右のベッドに運び、ロザリーが気絶したら左のベッドに運び、最後に一人残ったベッドで眠りについた。

 

 二人を相手にする行為は初めてで、とても興奮しました。興奮のあまり行為の最中に手に入れた『色魔』のジョブをセットしてさらに攻め立てたのだが、二人がちっとも起きてこない。頑張りすぎたかな。

 

 二人が眠っている間に、水魔法で空の桶に水を出して顔を洗う。

 体は洗ったけど、服は着替えがなかったから昨日のままだ。ちょっと気持ち悪い。

 

 二人が起きてからは朝食だ。料金は既に払っているので鍵と交換して札をもらう。

 クラリスはまだ疲れから回復していないのか、食事をする姿に元気がない。ロザリーは逆に元気そうだけど恐縮しっぱなしだ。メイドとして主より先に眠って後から起きてきたことを恥じているらしい。

 メイドに対する矜持が高いな。でも、その矜持をグズグズにしたくなるよね。

 

「二人でも足りない? もっと相手が必要? でも下手に増えるとご主人様の愛撫が過激に・・・・・・」

 

 クラリスさんがぶつぶつ言ってるけど、なんだろう。昨日はいじめすぎたかな? 自重して次に『色魔』を使うのは、人が増えたときにしようかな。でも無理じゃね? クラリスはすごくエッチなんだもん。

 ロザリーは逆に静かに食事をしてる。ミュートにした動画を見ているような。

 かすかに食器とスプーンがあたる音が聞こえる。

 

 食事を終えたら今度は家探しだ。この街は家の管理を商家が担っているらしく、八つの区画にそれぞれ商家がある。商人ギルドで紹介状をもらって七区の管理をしている商家にお邪魔した。出迎えてくれたのはお年を召したご老人だ。鑑定によると六十三歳。すごい。この世界で会った人の中で最高齢だ。

 

「商人ギルドから紹介されて来た。これが紹介状だ」

 

「確認させていただきます。・・・・・・なるほど。随分大きな邸宅をお探しのご様子。であれば確かに当家が適任でしょう」

 

 最初に冒険者ギルドに相談して、商人ギルドに行くように言われて、商人ギルドで家の要望を伝えてここを紹介されたのだが、聞いている話とちょっと違う?

 

「各区画を商家が管理していると聞いたが、大きな家が他の区画にはないのか?」

 

「各区画には特色のようなものがありまして、一区と三区が海に面している商業区画になっているのに対し、私共は西側の広い土地を七区として管理しております。広い土地を贅沢に使い、庭付きの家を紹介できるのは当家だけでございます。必ずやお客様の要望にお応えできるでしょう」

 

 ふむ。言われてみれば似たような家が集まっていたような気もする。あれは区画の違いでもあったのか。

 そして西側は高級住宅街が広がっていると。ここの商家はそこの管理をしているわけだ。どの世界でも地主は強いな。しかし、西側か。迷宮は近いけど、冒険者ギルドは遠いな。市場も。

 

「西側か。迷宮に近くて移動は楽だが、市場が遠くなるな」

 

「買い物は私にお任せください」

 

 そうか。別に俺が直接買いに行く必要はないのか。今はロザリーがいる。彼女にはもともと家事全般をまかせるつもりで来てもらったんだ。買い物も家事の範疇か。でも遠いだろ。やっぱりロザリーを『冒険者』にするか。お前を冒険者にしてやろうか〜。

 

「そうだな。ロザリーがいれば全く問題ない。それじゃあ家を案内してくれ」

 

「かしこまりました」

 

 西に向かって歩くと遠くに大きな外壁が見えてくる。魔物が街に入ってこないように街の西側を覆っている。

 人が立ち入らない迷宮が栄養を求めて魔物を吐き出すんだったな。その対策で大抵の街は周囲を壁で覆われている。

 

「外壁に近い分高い位置にあるから街がよく見えるな。絶景だ」

 

 この街は西に向かってなだらかな登りになっている。振り向けば街並みを一望できて、その向こうには海が見える。いい眺めだ。早朝なら朝日も相まってもっと良くなりそうだ。

 

「本当にいい眺めですね。でも、毎日この景色を眺めていたら飽きてしまいそうで少しもったいないですね」

 

「だったらクラリスがこの景色に飽きないような、刺激的な毎日を送ればいいんじゃないか? 俺も頑張るからさ」

 

 例えばベッドの上とか。

 朝日を見る前に刺激的な夜を過ごせば、何度でも感動できるかもしれない。クラリスの腰に右手を回して抱き寄せる。左手はおとがい。キスのワンシーンのように見つめあう。

 最初はよくわからなさそうな顔をしていたクラリスの顔が真っ赤に染まる。刺激的な毎日の意味が分かったらしい。両手を俺の胸に当てて引き離そうとするけど、力が足りないね。むしろよけいに感動的な場面になっちゃったよ?

 

「おやおや。長年この仕事をしておりますが、これほど熱烈なご夫婦は初めて見ました。よい主に仕えておいでですね」

 

「末永くお仕えいたします」

 

 さすがに唇にキスをするのは控えたけど、額と瞼と頬に口づけをした。かわいいクラリス。これからも大切にするからね。

 

「は、はれんちです」

 

 おっと。これ以上は俺じゃなくてクラリスが我慢できなくなりそうだ。受け入れの合図の甘い声が漏れてきた。最後にぎゅっと抱きしめて左手を重ねる。やってみたかったんだよね、恋人つなぎ。

 

「待たせてすまない。家はこの先かな?」

 

「いえいえ。よいものを見せていただきました。これほど妻に会いたいと心から思ったのは随分と久しぶりです」

 

「あー。失礼だが奥方はお亡くなりに?」

 

「まさか! 元気ですよ。今朝も寝坊助の息子たちを起こすために嫁たちと箒を振り回していました」

 

 ご老人は随分と楽しそうに朝の出来事を話す。よい家庭を築いているらしい。ぜひとも夫婦円満の秘訣を聞きたいね。

 

「いえね、長年働いていると仕事中は家族のことを忘れてしまうのですよ。ですが、お二人を見ているとつい、若いころを思い出してしまって。新婚のころはいつも妻のことを考えながら仕事をしておりました。懐かしい思い出ですよ」

 

「これは俺の父さんの話だが、ある日突然愛を囁くと母さんのかわいいところを見れるらしい。俺はいつになっても見れなかった。曰く、夫婦の秘密らしい」

 

「なるほど。お父上の薫陶を受けて育ったのですね」

 

 ちなみにその日は晩御飯が豪華になるから、小さい頃は「毎日言ってくれないか」と思っていた。だからクラリスに毎日愛してると伝えているのに、クラリスからは言ってくれない。ベッドの上で「大好き」は聞き出せたから今度は素面で言ってほしい。

 

「こちらがおすすめの物件です。十人程が住める庭付きの邸宅で部屋数は六。庭門に木札を立てておけば馬車売りが立ち寄ってくれます。売っているのは牛乳とチーズ、注文すれば割高ですが、パンなども持ってきてくれます。井戸は遠くてもよいという条件でしたが、お間違いないですか?」

 

 すごいですね。ファンタジー系の田舎の邸宅って感じだ。腰ほどの高さに積まれている石垣が敷地の境目かな? 庭門は木でできた簡素なもので、俺でも作れそうだ。ベルが付いてるのは来客が分かるようにか。ポストもあるぞ。

 

「馬車売りが来るのはいつ頃ですか?」

 

「早朝から一軒一軒荷を下ろしながら来るので、正確な時間はわかりません。ただ、最後の家に着くのは昼頃になるそうです。四軒となりになります。ご覧ください。ほら、あの赤い屋根がそうです」

 

 荒れているけど庭に畑の跡があるな。鍬がないから家具と合わせて買ってこないとな。種はどこで買えるんだろう。後で商人に相談してみるか。

 おや、あそこに見えるのは同業者ではないか? 街から歩いて迷宮に行くのは大変だぞ。パーティに『冒険者』がいないのか?

 

「あれは迷宮に挑む者たちだと思うが、迷宮はあの先にあるのか?」

 

「ええそうですよ。馬車も出ていますが、お金に余裕がなかったり、節約したい者たちがあのように歩いて西の門から迷宮に向かいます」

 

「毎朝馬車が通るなら少しうるさいか?」

 

「まさか。あの者たちがあそこを通っているだけで、馬車はもっと北にある街道を通ります。ここからでは馬車の土煙も見えませんよ」

 

 ならいいか。せっかく海の見える邸宅だ。静かに暮らしたいからな。

 

「こちらが家の鍵になります。それでは中をご案内しましょう」

 

 鍵を開けてもらって家に入ると直ぐにリビングだ。今は何もないけど。

 奥に扉が二つと階段がある。六部屋と言っていたから二階に四部屋あるのか。リビングがこれだけ広いなら二階の部屋も期待できる。

 

「一階にはリビングとキッチン、トイレ、浴室、物置部屋。二階には個室が四部屋、大部屋一つと小部屋三つとなっています」

 

 今浴室って言った? ここにお風呂あるんですか?

 

「浴室と言ったな。風呂場があるのか」

 

「ございます。といっても浴槽はありませんが」

 

 奥の扉を開けると、さらに外に通じる大きな扉の付いた部屋がある。ここが浴室か。本当に部屋があるだけだ。あ、壁に穴が空いてる。

 

「こちらの穴は外にあるドブに繋がっています。水はここから捨ててください。隣のトイレも水洗になっていますが、ここは井戸から遠いので前の住人は数日に一度、まとめて流していたそうです。それだと詰まってしまうこともあるので、できれば毎日流すようにお願いします」

 

 トイレが詰まるか。

 体験したことはないけど、家にあったな、詰まりを直す道具。名前は知らないけど(ラバーカップ)。家では「キュッポン」とか「トイレのアレ」とか呼んでたっけ。

 この世界では詰まりはどうやって直すんだろう。気になるけど想像するだけで気分悪くなるな。だって排泄物だもん。うんことおしっこ。

 

「お任せください」

 

 ロザリーが凛とした声で言う。

 任せるって何を? トイレの詰まりも直せるってこと? どういうこと? なんでもできる子なの?

 違うわ。井戸から水を汲んでくるほうだろ。常識で考えろよ俺。そうだよね? まさかトイレの詰まりも直せるの? だめだ。ベールで表情が読めない。

 

「ロザリーがそう言うなら、その時は任せる」

 

 何を任せるのかわからないけど。

 次は二階だ。

 立場的に俺が一番広い部屋を使うことになるから、ここにどでかいベッドを置いてみんなで寝る。異論は認めない。

 小部屋は言う程狭くない。一つは奴隷用の部屋にして鍵付きの戸棚を人数分用意しよう。後の部屋は・・・・・・まあいつか使うだろう。

 この家は遮蔽セメントを使っているから、絨毯を設置して『フィールドウォーク』用の部屋にするとか。土足禁止にするつもりだし。

 

「この家も遮蔽セメントを使っているよな?」

 

「もちろんでございます。私共の管理する邸宅はすべて遮蔽セメントを使っております」

 

 『冒険者』の『フィールドウォーク』は結構本人の倫理観頼りなところあるしな。こういう大きな家は大体遮蔽セメント造りか。

 

「庭は好きにしてかまわないな」

 

「近隣から苦情が来るようなことがなければ」

 

「あったのか」

 

「前の住人の趣味は燻製造りでした」

 

 煙たかったのか。匂いもすごそうだな。

 俺はロザリーに小さな畑を作ってもらうだけだから大丈夫だろう。

 

「よし、ここに決めた。クラリスとロザリーもかまわないか?」

 

「はい。良い物件だと思います」

 

「家の管理はお任せください」

 

 クラリスも気に入ったか。

 ロザリーは全肯定だからよくわからない。掃除用具を豊富にそろえたほうが喜んでくれるかな? 

 この後は家の契約のために商家に戻るだろ。そしたらバルタークの宿を引き払いに行く。これはこっそり『ワープ』を使おう。

 帰ってきたら家具を買ったり、服を買ったり。早く金策しないとやばいよ〜。

 




色 魔
  条件 一晩に二人以上の異性と同時に性交渉を行う
  効果 精神中上昇 知力小上昇 MP小上昇 
 スキル ※性欲増強 禁欲攻撃
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