迷宮とエッチなハーレムを求めて   作:銀の城

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誤字報告感謝します。



ロザリー②

「ん? 兄ちゃんじゃないか、おかえり。昨日は結局帰ってこなかったが、いい家は見つかったのか?」

 

「ああ。クベリークに家を借りたよ。今日は部屋に置いてきた荷物を取りに来たんだ」

 

 バルタークの宿屋。

 普段は使わないボーナス呪文の『ワープ』を使って、荷物を置いたままの宿に帰ってきた。クベリークに向かった時のように『冒険者』を乗り継いで送ってもらう事もできたけど、『冒険者』に頼むと結構な金額になるんだよな。運賃が決して安くないんだよ、往復ならなおさら。その点『ワープ』なら料金はタダ。

 だけど俺はまだ『冒険者』のジョブを持ってないから、他人に目撃されないように使う時はひっそりこっそりと。本日の停車駅は「迷宮」ってね。迷宮の中なら見られても『ダンジョンウォーク』と勘違いしてくれるから。

 

「そうか、それはよかったな。ほら、部屋の鍵だ。忘れ物は全部処分するか、宿屋の所有物になる。気をつけろよ」

 

「わかってる」

 

 宿の鍵付きの戸棚には俺の服とクラリスの服、あとは小物が入ってる。いつかは家を借りるつもりだったから多くはないけど、生活していたから少なくもない。運ぶために持ってきた荷物鞄がパンパンになるくらいはあった。

 あ、これクラリスの肌着だ。

 ・・・・・・。

 いや、何もしないよ? ほんとうだよ? だって俺はクラリス本人を何度も抱いているし? 肌着どころかその隠された向こう側を好きなだけ見れるし?

 ・・・・・・なんか、言い訳してる姿が既にキモイな。鞄の奥底にしまっておこう。服を押し込んで鞄を閉める。

 

「すこし、名残惜しいな」

 

 異世界にエッチなハーレムを求めてやって来た俺が、初めて女の子を抱いた部屋だ。ベッドはもちろんこっちの椅子も、そっちの窓辺も、恥ずかしがるクラリスに色んなことをしたっけな。

 ・・・・・・今日も夜になったらクラリスを性的に襲おう。ロザリーとクラリスを一緒に攻めるか、ロザリーと一緒になってクラリスを攻めるか。悩みどころだな。クラリスとキスさせたときはまんざらでもなさそうだったし、実はロザリーってレズなのかもしれない。

 重くなった鞄を持ち上げて一階に降りる。

 

「今日まで世話になった」

 

「またいつでも来てくれ。と言いたいけど、生憎もうすぐ移動することになってな。兄ちゃんがまた来る頃には俺は別の宿だろう」

 

「こんな時期にか? それは大変だな」

 

 今は春の八日だから、例えると学校が始まって一週間で転校って感じか。新生活始まってすぐなんて大変だな。

 あ、違う。ギルドは会社だ。会社なら急な出張もおかしくないか。大変なことに変わりはないけど。

 

「いいや、おめでたさ。そのせいで人手が足りなくなったらしい。急いで来てほしいってさ」

 

 なんと、赤ちゃんか。それなら仕方ないな。ここで金貨の一枚でも投げられたらかっこいいけど、今は新居を構えたばかりで俺も入用なんだ。すまんな。

 

「それは確かにめでたい。じゃあな」

 

「またな」

 

 宿を後にして迷宮に向かう。迷宮は『ワープ』を隠すのには適してるけど、この荷物だと逆に怪しいか。うーん、早く『冒険者』のジョブが欲しい。あ、武器屋。

 せっかくだから、クベリークに戻る前に装備を見ていくか。入用と言っておきながら舌の根も乾かぬうちに買い物をしようとするなんて、俺はひどいやつだ。考えなしにもほどがある。でも装備は見る。武器屋に掘り出し物はないかな〜。

 

「掘り出し物を探しに来たけど、そう簡単には見つからないか。ん?」

 

 なんだあれ。

 

鑑定

 盗賊のグラディウス

 

 空きスロットがないからハズレの武器だけど、なんか付いてるな。「盗賊の」と付いているからには盗賊専用の装備か。原作には「盗賊のバンダナ」があって、『盗賊』が装備すると能力があがる特殊な装備だった。でも盗賊にしか使えないから、バンダナは買取拒否されてたよな。

 

「店主、そこの片手剣を見せてくれるか」

 

「おお、これに目を付けるとは流石です。こちらは先日仕入れた片手剣で、魔法の威力を高めてくれる聖銀装備のように特別な効果のある武器です」

 

「特別な効果?」

 

「はい。こちらのグラディウスは装備すると誰でも身体能力が上昇するのです」

 

 それはすごい。だけど、そんなすごい装備あるか? それに誰でもって言うけど、この剣めちゃくちゃ盗賊って付いてますよ。本当に身体能力が上がるとしても、原作の盗賊のバンダナと一緒で『盗賊』限定なのでは?

 

「それはすごいな」

 

「どうぞ手にとって見てください」

 

鑑定

 探索者のグラディウス

 

 まじか、名前が変わっちゃったよ。装備する人のジョブに合わせてくれるなんて盗賊のバンダナの上位互換じゃないか。

 もしくは盗賊のバンダナみたいな専用装備と比べると上げ幅が小さいとか。

 

「なるほど良い武器のようだ」

 

 ジョブに関係なく能力が上がるのは確かにすごい。だけど、この武器の性能はどうなんだ。今持ってるエストックよりも上なら即買いだけど、下ならいらん。エストックにスキル付けたほうが絶対にいいし。

 

「しかし俺はエストックを持っているからな。買い替えるほどの品ではないか」

 

「さようでございますか」

 

 試すようなことを言ってみたけど、反応がよくわからん。そんなにあっさりあきらめないでよ。もう少し性能比較とかセールスポイントとかないのん? ねぇ、ありませんのん?

 俺の武器にするかは置いておいて、いい武器なら買っておきたい気持ちがある。でもあれもこれもと買うとラストエリクサーになっちゃうんだよな。

 ・・・・・・ロザリーの武器にするのはどうだろう。俺はロザリーのジョブについてあれこれ画策しているけど、武器について考えていなかった。過度に強い武器を持たせるのは、たぶんだけど彼女は嫌がる。メイドでいることに強い矜持を持っているようだし。

 うん。彼女にぴったりな気がしてきた。そうでなくても買う理由になるからよし。

 

「俺よりもパーティーメンバーにはちょうどいいか。いくらだ」

 

「ありがとうございます。こちらは五千ナールになります」

 

 五千か。鋼鉄の少し下くらいの値段だな。性能込みでその値段なら武器本体は鉄くらいの強さってことかな? うん、俺が使うよりロザリーにちょうどいいな。

 

「わかった。他にも見せてくれ」

 

 三割引きのためにもう一つ品が必要だ。なにか掘り出し物はないか。

 どう? 店の奥にしまっている品はない? え、ない? ないかぁ。そっかぁ。

 適当に鉄の剣で空きスロットがある物と一緒に買った。

 次は防具屋だ。ここでは室内用の靴が欲しい。靴屋で作ってもいいけど、時間かかるだろうし、オーダーメイドは高くなる。だったらもう防具でいいじゃん。『防具商人』相手なら三割引きが効くしね。

 

「ブーツはじゃま。サンダルか、丈の短い靴はないか」

 

 名前は皮の靴だけど、ひざ下まで覆うロングブーツなんだよね。まあ防具だから脛を守るデザインなんだろう、だぶん。

 これじゃあサンダルしか選択肢がないな。サンダル三人分と、ロザリー用に皮の靴を買うか。他に靴がなくて今は硬革の靴を履かせてるし、これと交換してもらおう。

 全てアイテムボックスに入れて店を出る。

 街を出て迷宮からクベリークの自宅に『ワープ』で飛ぶ。迷宮の外には誰も居なかったし、誰にも見られなかったよな?

 こそこそしていると見つかったとき心臓に悪いから早く冒険者になりたいね、ほんとに。

 鍵を開けて中に入る。まだ掃除してないし、サンダルに履き替えなくていいか。旅行鞄はリビングに置いて、二人と合流しよう。

 

「二人は・・・・・・街にいるな。あっちの方向か」

 

 パーティを組んでいると仲間の位置がある程度わかる。クラリスとロザリーには家具を選ぶのを任せたから今いるのは家具屋かな。

 鍵をかけて家を出る。

 仲間の位置がわかる感覚は言葉にしにくい。ひどく感覚的なのに、妙な確信がある。こっちだよと見えない何かに引っ張られるように進む。なんか商店街から離れていっている気がするぞ。

 とうとう商店街というより職人街と呼べる場所に来た。なんでこんなところに?

 近いぞ。この建物か? あ、居た。

 

「クラリス!」

 

「ご主人様。お早いお帰りですね。クベリークまで行って帰ってくるのだから、もっと遅くなると思っていました」

 

「荷物を取ってくるだけだからな」

 

 『ワープ』を使って直接飛んだからね。『冒険者』に運んでもらうよりは早く合流できるよ。

 

「商店街じゃないようだけど、ここには何のために?」

 

 ロザリーが職人相手にあれこれ注文しているように見えるけど、もしかしなくてもオーダーメイドでは? それって店頭価格よりもお高くなるのでは? 今すぐ路頭に迷うとは言わないけど、余裕もないよ?

 

「それが、ロザリーの納得する家具が見つからなかったんです。椅子は兎も角、十人程が食事のできる机だと直接職人と話して作ったほうがいいと言われて」

 

 それでここまで来たのか。

 

「ロザリーと話して、どうせなら店を通して注文せずに全部ここで直接職人さんに依頼することにしたんです」

 

 ・・・・・・全部? 店を通して注文? それって結局オーダーメイドなのでは? どゆことなの?

 

「えっと、店には置いてなかったのか? その、鍵付きの戸棚とか」

 

「はい。注文するための見本が置いてありました。ですが家に合わせた物がいいとロザリーが細かく注文したのです。それで店員さんが職人さんを紹介してくれました」

 

 ・・・・・・俺は勘違いをしていた。日本生まれ日本育ちのせいか。商品は店に並んでいるものだと思っていた。そんなわけないじゃないか。時代と世界を考えろ。家具はオーダーメイドが当たり前なんだ。

 

 でもそれって納品に一日どころじゃすまないよね。もっとかかるのでは?

 

「私は中古品でも良いのではと言ったのですが、旦那様や奥様にはふさわしくないとロザリーが言うものですから。正直なところ、私も誰が使ったか不明な品は避けたかったので。ロザリーの言う通りに」

 

 ちくしょうー!

 その気持ちがわかるから反論できねぇー!

 俺も中古品より新品が欲しいもの。だけど、このままだと納品まで一泊どころじゃすまないんですけど!?

 

「ところでクラリス、納品にはどれくらいかかるんだ?」

 

 もしかして明日には納品してくれたりしない?

 

「ベッドフレームを含む寝具は今日中に運び込んでくれます。二日後に食器棚、五日後に鍵付きの戸棚を三つ、今ロザリーが話しているのが机と椅子です。聞こえてくる会話によると二日後になるようですね」

 

 ロザリー! お前は最高のメイドだ!

 明日どころか今日中にベッドが搬入されるなんてお前は天才か? お前を買う決断は全く間違っていなかった。今夜は思いっきり気持ちよくしてあげるからね!

 

「そうか。ところで全部でいくらかかったんだ?」

 

「七万ナールです」

 

「なんだって?」

 

「七万ナールです」

 

 ・・・・・・。

 ・・・・・・あの、それって俺が渡した額をオーバーしてませんか。そもそも注文できなくないですか。それに値引きした家賃と同額なんですが。

 

「し、支払いは?」

 

 声が震える。なんかいやな予感がする。原作で料金の支払いについて触れてなかったっけ。あれは、そう、衣装の支払いだ。

 

「え? 支払いは納品の時ですよ」

 

 そう。支払いは商品を受け取るときで、主人公ミチオが注文の段階でお金を渡すのは信頼の証だとセリーに指摘されるんだ。流石はご主人様ですと。

 おろろ? げろろ? かはっ。

 

 だ、大丈夫だよ? まだお金はある。無一文じゃない。それに相手が商人なら割引が効く。まだ慌てる時間じゃない。

 

鑑定

 職工Lv3

 

 がふっ! し、職人は『職工』です。職人は『職工』というジョブに就くようです。

 ねえ、『カルク』のスキルがあると思いますか? 俺は思わない。だって職人は作る人で売る人でも買う人でもないから。だ、ダメもとで値引きを使ってみるか? というか、効いてください、お願いします。

 

「それじゃあ支払いを済ませるとしよう」

 

「良いのですか?」

 

「うん」

 

 いい。ここで支払えばまとめて三割引きが使える。と思う。

 それに先払いをすると職人からの心証が良くなっていい仕事をしてくれる。かもしれない。

 マジで頼む! 値引き効いてくれぇ。

 

「ロザリー、注文はどうなってる?」

 

「旦那様。いま終わったところです。二日後に納品していただけることになりました。机は二つ、椅子は六つ。机は大きすぎる物より、中くらいの物を二つ、椅子は長椅子を四つ、旦那様と奥様の椅子を一つずつです」

 

「そうか。わかった」

 

 ロザリーよ。お前は最高だ。

 きっと俺がかっこつけて懐具合を共有しなかったことが今回の大きな出費の原因だろう。よく考えればロザリーから俺を見たとき、奴隷を買い、高価な宿に泊まり、邸宅を借りた貴族の嫁(奴隷)を持つ男だ。お金に余裕がないなどとは思うまい。

 そうだ。今回のことは勉強代だったのだ。俺が悪かった。金額を指定しなかった俺が悪い。ロザリーは悪くない。

 今夜はベッドでロザリーを思い切りいじめるけど、俺が助兵衛なだけで今回のことは一切関係ないからね。本当に関係ないから。それはそれとしてめちゃくちゃいじめるけど。

 

「ここで支払ってしまおう。いくらになった?」

 

「支払いは納品の際で良いと思います」

 

「いい。かなり細かく注文したんだろう? なら、こっちも誠意を見せるべきだ」

 

「ご立派でございます。家具を全てこちらの職人に依頼し、大口の注文となったことで少々の割引をもらい、その分をさらに良い物にしていただきました。粘り強い交渉の結果、十万ナールになりました」

 

 わーお。家賃と同じ値段だね☆

 わァ・・・ぁ・・・。

 値引きが効かなかったら家賃より高いですぅ。

 土下座するから、なかったことにならない? ならない?

 

「わかった。親方、侍女が世話になった。これでいいか」

 

「は、ははい。このような場所にわざわざ足を運んでもらって、ありがたいことで」

 

 なんか貴族と思われてそうな対応だな。まあそれはいい。で、値引きは? 三割引きは? なんとか言えやぁ!

 

「確かに。金貨十枚ちょうどいただきまして。誠心誠意心を込めて仕上げたいと思います、はい」

 

 ・・・・・・。あ、ああ。ご丁寧にどうも。よろしくお願いします。払った額にふさわしい仕事を期待しています。

 ロザリー。今日はマジ覚悟しとけよ。『色魔』を使って全力で行くぜ。

 

「それでは旦那様、掃除用具を買いに行きましょう」

 

 貴様! まだ俺から絞り取るというのか! この悪魔め!

 ・・・・・・はああぁぁ。そうだな。掃除をしないと家具を搬入できないもんね。徹底的にキレイにしてね。その間に俺とクラリスは迷宮に行ってくるから。

 

 行ってくるから!

 

 

「誤算だった。こんなにも人がいるとは」

 

「わぁ。すごい人ですね」

 

 主人の俺がメイドの買い物に着き従うという奇妙な買い物は終わった。流石に掃除用具はそこまで高くない。箒や雑巾、バケツを買って帰り、クラリスに魔法で水を出してもらった。

 今頃ロザリーは家中くまなくキレイにしてくれていることだろう。

 一方俺とクラリスは迷宮に来ていた。当然お金を稼ぐためだ。キャラクター再設定も『結晶化促進六十四倍』にポイントを振ってある。

 目的地は「十二番」の迷宮。六階層にいるニードルウッドのボス、ウドウッドをボコボコにするためだ。ドロップアイテムのリーフは通常ドロップで、その上買い取り額がボスの中でも高額だ。魔結晶に魔力を溜めつつドロップアイテムでも稼げる美味しいボスなのだ。だから来たんだけど、すごい人だ。十組くらいいるかな?

 

「うーん。外でこれなら迷宮の中はもっといる? 逆に外にこれだけ人がいるから中にはいない?」

 

「いないと思いますよ? ちょうど昼を過ぎたころですから、皆さん休まれているのです」

 

 なるほど。そういえば昼ごはん食べてないな。お金のショックで空腹も忘れてた。クラリスも言ってよ。いつも昼ご飯食べてるじゃん。ロザリーも言ってよ。ロザリーは言わないか、メイドだし。

 しかし困ったな。こんなに人がいることはちょっと考えればわかることなのに。この間抜けめ! このままじゃ迷宮に入れないぞ。

 

「俺のミスだ。一回街に戻ろう」

 

「え、別にこのまま迷宮に入っても大丈夫ですよ?」

 

「だめだ」

 

 そう。こんなにたくさんの人がいる迷宮で、クラリスに鎧装備を着けさせるわけにはいかない。クラリスの胸を鎧の上から鑑賞していいのは俺だけだ。防具屋で大至急ジャケットを買ってこよう。か、金がぁ。でもスケベのためなら、おれ、がんばりゅ。

 困惑しているクラリスに耳元で鎧とジャケットの話をする。前にもしたね、この話。

 

「本当ですか! やった」

 

 くぁ、かわいい。

 そんなに鎧装備に不満があったのか。ここまでキレイな笑顔を見せるとは思わなかったよ。ごめんね。

 パーティーメンバーは女性だけのハーレムにする予定だから、ここで一気に鎧装備は全部売っちまうか。

 だ、け、ど。

 次に買う装備をどうするかだよな。一つ上の竜革にするか、同じ硬革にするか。個人的な趣味趣向になるけど、防具はそろえたい。あべこべ装備は嫌いなんだよね。鑑定で見たときに防具が揃っているのが気持ちいいんだよ。

 あーでもない、こーでもないと考えている間に防具屋についてしまった。キャラクター再設定で価格交渉にポイントを振ってと。

 

「硬革の鎧を売却したい。四つだ。それとこの硬革のジャケットを二つ買う」

 

 三割引きと三割上昇でほぼ同額。少しだけ多く俺が支払った。

 結局防具の性能よりも自分の趣味嗜好を優先してしまったな。まあここは竜革の価格が高かったと言い訳しておく。実際高いし。俺の金貨が全部飛んでいくくらい高い。

 あれ、ちょっと待って。足りなくない? おいマジか。とうとう竜革の防具が買えなくなっちまったぞ。ふ、震えるぜ。足が。

 

「それじゃあ迷宮にもどろう。往復させて悪いな」

 

「大丈夫です! これがジャケットなんですね。確かにこれなら体の線が出ないので恥ずかしくないですね」

 

 うん、かわいい。クラリスの笑顔に力をもらった。頑張ってお金を稼ごう。

 鎧からジャケットになったことで、乳袋から普通に服を押し上げるおっぱいに変わったね。男目線だとそんなに違いはないかな。強いて言えばフェチの差か。俺はどっちも好き。

 気持ち早歩きで迷宮に戻る。戻ってくると休憩を終えたのか、迷宮探索者たちはいなくなっていた。みんな迷宮に入ったのかな?

 

「こんどこそ迷宮に入る。今日の目的は十二番迷宮の六階層。ここでウドウッドを倒してリーフを手に入れる。で、後はいつものように周回します」

 

「六階層ですか」

 

 ついこの間戦っていたのが三階層。いきなり倍の階層が目標と言われて力んでるな。

 

「戦いながら強さを測るから大丈夫だよ。無理そうなら階層を落として周回します」

 

「周回はやめないのですね」

 

 やめません。今一番お金を稼ぐ方法なので。

 前にも言ったけど、俺たちは主人公ミチオと違って魔物とのエンカウント率が低い。道先案内人のロクサーヌが居ないからね。

 主人公ミチオはドロップアイテムがアイテムボックスにあふれるほど拾ってたな。素直にうらやましいです。

 その点ボスはシンボルエンカウントで、ウドウッドは確定ドロップだ。俺には鴨が葱を背負っている様に見える。いいよね、確定で何度も会える敵って。

 

「クラリス、六階層までの魔物の確認をしようか」

 

「はい。一階層からチープシープ、スパイスパイダー、コラーゲンコーラル、コボルト、ナイーブオリーブです」

 

「うん。コラーゲンコーラルとコボルトはよく知る相手だからいいとして、一階層のチープシープのボス、ビープシープはスキルでこっちを眠らせてくる。スキルを止めるには「詠唱中断」のスキルが付いた武器が必要だけど、俺たちにはない。だからボス戦では一発もらう覚悟をしておくように」

 

「・・・・・・」

 

 あれ? クラリスの顔色が良くない。なんでだ?

 うーん。あ、ボスの攻撃か。クラリスはなんだかんだここまで被弾ゼロなんだよな。俺がタンクを受け持っているせいもあるけど、クラリスが攻撃にさらされる頻度は低い。

 ハチノスは後ろ蹴りが危なかったけど、クラリスの武器は槍で、ボスと距離があるから避けやすかった。避ける隙もない確定一発は怖いか。だけど一階層だし、コラージュコーラルのヘッドバットよりは弱いと思う。

 まって、違うわ。睡眠武器を『獣戦士』が持つように、眠っている相手への攻撃は威力が上がるんだ。ということは結構痛い? 痛いのは嫌だよな〜。

 

「クラリス。こればっかりはどうしようもない。幸いビープシープは一階層のボスでそれほど強くない。それより攻撃を受けて目が覚めたらお互いを起こすことに注力しよう」

 

「が、がんばります」

 

 騎士団の訓練ではフランシスに泣かされていたらしいから、そこまで痛みに弱くないと思ったけど、強くぶたれたことはないのかな?

 

「行こう。まずはボス部屋を探す」

 

 十二番の迷宮、一階層、魔物「チープシープ」

 

鑑定

 チープシープLv1

 

 早速来たな。まずは遠慮なくスキルを使っていく。ダブルスキルだ!

 まずは『オーバーホエルミング』で接近。続けて『スラッシュ』を叩き込む。効果が切れる前にもう一撃! 回転切りだ! あ、二撃目を打ち込む前に『オーバーホエルミング』の効果が切れる。

 回転切りより切り返しの燕返しの方が短い時間で二撃を打ち込めるか。かっこいいんだけどな、回転切り。

 

「一階層は二撃か」

 

 ダブルスキルとスキル攻撃の二撃か。オーバーダメージの可能性もあるから、次は『スラッシュ』を二回、試してみるか。

 

「クラリスも戦っておく? チープシープとビープシープはスキル攻撃の違いだけでほとんど同じはずだから」

 

「わかりました」

 

 一回戦ってもらう事にした。ボス部屋までの魔物は全部俺が倒すから、ここで魔法を使っても大丈夫だろう。魔法も使った全力戦闘でよろしく。

 

「―、―、ファイヤーボール。たぁ!」

 

 詠唱中の攻撃も、詠唱後の攻撃も、キレイに繋がっている。クラリスもかなり詠唱戦闘に慣れたな。

 魔法二発と槍の嵐で羊は煙になった。

 

「問題なさそうだな」

 

「なんだかすごく弱いですね。ボスとばかり戦っていたからでしょうか」

 

「確かに落差があるかもね。だけど、油断はしないように」

 

「はい」

 

 魔物を倒しながら迷宮を練り歩く。何度か試したけど『スラッシュ』を二回と通常攻撃を一回で倒すことができた。『オーバーホエルミング』を使わない分、MPが温存できるな。

 しかし、ボス部屋が遠い。迷宮の名前と違わぬ迷路だ。一度でもボスと戦えば『ダンジョンウォーク』で簡単に移動できるのに。

 ボスはいねが〜。あ、待機部屋だ。

 

「人はいないか。それじゃあこのままボスと戦う。心の準備はいい?」

 

「はい!」

 

 ボスの部屋に突入する。煙が集まってボスのビープシープが現れる。

 

鑑定

 ビープシープLv1

 

 戦い方はいつも通りだ。俺が正面でクラリスが背後を取る。

 

「スキル攻撃には気をつけろ!」

 

「わかりました! ―、―、ファイヤーボール!」

 

 ダブルスキルでガンガン頭を殴る。

 スキルを使ってくる様子はないか? 階層が低いほど魔法やスキルの頻度は低いと聞いてるけど、ゼロではないはず。でも原作で一階層のニードルウッドが水魔法を使ったことはないよな。

 おっと、今俺を見てないな?

 

「クラリス下がれ!」

 

 後ろ蹴りがクラリスを狙って打ち込まれる。俺の合図で距離を取ったクラリスには届かない。

 動きがハチノスに似てるな。同じ四足歩行で攻撃方法もほぼ同じか。これならハチノスと戦った時の経験が活かせる。

 

「うお!」

 

 突進を盾で受け止める。ハチノスLv3と比べると威力は低めだな。左手の衝撃も少ない。大丈夫だ。

 

「せい!」

 

 ダブルスキルで止めを刺す。

 ボスは煙となって消えた。

 

「低い階層の魔物はあまりスキルを使ってこないとは聞いていたけど、思っていた以上だな。まさか一回も使ってこないとは」

 

「いつもより緊張しました」

 

「まあ、ほどよくね。俺も頑張るけど、これからも攻撃をもらわないなんてことはないから」

 

「はい」

 

 俺が覚醒して完璧なタンクになったとしても、今後上の階層で出てくるボスの範囲攻撃は対処できないしな。『オーバーホエルミング』と『詠唱中断』のスキルが有れば行けるか?

 それってかっこよくない? 魔物のスキルをビシバシ止めるタンクとかめっちゃかっこいいじゃん。ちょっと目指そうかな。

 

「次の階層はスパイスパイダーですね」

 

 来たか。毒持ちの魔物が。

 原作の解説によればスパイスパイダーは毒持ちで、低確率で相手を毒状態にする。

 一応解毒薬はギルドで五つ買ってきた。アイテム名は「毒消し丸」。

 正直、毒消し丸を買うか迷った。スパイスパイダーの毒の付与率はすごく低い。周回するのではなく一度突破するだけの階層だから「いらないんじゃね」と思った。だけど買ってきました。

 低確率って意外と馬鹿にできないんだよな。肝心なところで0.1%とか引くんだよね。ゲームではよくあること。俺知ってる。

 

「クラリス、スパイスパイダーは毒持ちだ。毒になる事は稀らしいけど、念のために毒消し丸を渡しておく。これ、リュックかポケットに入れておいて」

 

「わかりました」

 

「それとこれはいつものスケベじゃなくてまじめな話だ。相手に薬を飲ませるときは強引にすること。場合によっては口移しもする。命がかかってるからね。わかった?」

 

「わ、わかりました」

 

 大丈夫かなぁ。ちょっと顔が赤いよ。

 全部俺のせいなんだけどさぁ。

 死因が毒はいやだなぁ。クラリス、ちゃんと口移ししてね? まじめな意味で。

 




異世界八日目
主人公 由良隼人ーゆらはやと
    男 18歳
装 備 エストック 鋼鉄の盾
    竜革の帽子 竜革の鎧 竜革のグローブ 竜革の靴

奴 隷 クラリス ♀ 15歳
    魔法使いLv15→16
装 備 ダマスカス鋼の槍
    硬革の帽子 硬革の鎧→硬革のジャケット
    硬革のグローブ 硬革の靴

奴 隷 ロザリー ♀ 18歳
    村人Lv1
装 備 村人のグラディウス
    竜革の靴

ジョブ 探索者Lv33
    英雄Lv30
    魔法使いLv33
    剣士Lv23
    錬金術師Lv20
    村人Lv16
    戦士Lv13→14
    商人Lv10
    僧侶Lv10
    色魔Lv1

所持金 約二十三万→約五万ナール
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