デカパイシスター
クラス代表戦、当日。
一夏は試合会場となっている第3アリーナへと向かっていた。
道中鈴と鉢合わせになり、鈴が突っかかってくる。一夏は鈴とどう接したらいいのか分からず、ただ鈴の罵倒を甘んじて聞いていた。
そして、最後に鈴は『勝ったら自分の言うことを相手に聞かせてやる』と一方的に言い、鈴は足早にアリーナへ向かった。
そして、クラス代表戦が始まる。
トーナメント表を見ると一夏が最初の試合だった。
千冬によると、ISはスポーツなのだから、こういうのは最初にまず魅せる必要があるらしく、一夏は自動的に最初の試合になるらしい。
そして、一夏の1回戦の相手は2組のクラス代表、鈴だった。
鈴はすでにアリーナの所定の位置に着いていたが、一夏はピットで白式の感触を確かめながら、鈴のISの情報を見ながら、真耶の解説を聞く。
鈴のISは『甲龍』と言い、近接格闘型の第3世代ISらしい。
武器は未知だが、鈴の右手にある青龍刀が何とも仰々しい。
三国時代の武将を彷彿とさせるようなものだった。
「あれで殴られたら、痛そうだ。」
一夏は苦笑いしながら、そう言う。
ピットのスクリーンに映し出された鈴の表情は険しく、イラついているのが分かる。
そして、何故、イラついているのかも、知っている。
だが、一夏はこうするしかなかった。一夏は自己嫌悪に陥り、ため息を吐く。
だが、今から試合だ。気持ちを入れ替えなければならない。
一夏は大きく深呼吸をし、ピットから飛び立った。
「今謝るなら、少し痛めつけるレベルを下げるわよ。」
「鈴に謝るようなことをした心当たりがない。だから、頭は下げない。」
「一応言っといてあげるけど、絶対防御も完璧じゃないのよ。シールドを突破する攻撃力があれば、殺さない程度にはいたぶることはできるの。」
「知っている。」
二人の会話が終わると、試合開始の合図が鳴り響く。
一夏は雪片弐型を、鈴は双天牙月を構え、互いに迫り、自分の得物を相手の獲物に叩き込む。そして、再び距離を離し、体勢を整え、再び、相手の獲物に自分の獲物を叩きこむ。
数度それを繰り返すと、鈴はもう1本の双天牙月を取り出し、二刀流になる。
片手で武器を持つことで威力は半減するが、体を軸にして、回転することで威力が増す。
結果、手数も威力も高まった。
一夏は防御に徹し、鈴の攻撃を防いでいく。
鈴が体勢を崩した時に、攻撃に移ろうと考えた。
そんな時だった。突如、甲龍の浮遊部位の形が変形し、何かが一夏を襲った。
一夏は直前で鈴の表情が変わったことから、何かの攻撃が来ると感じとり、雪片弐型で防御することができたため、白式のシールドエネルギーを大幅に削られることはなかった。
「衝撃砲ですね。」
アリーナのピットで真耶はそう呟いた。
中国で開発されたブルー・ティアーズと同じ第3世代型兵器。空間自体に圧力をかけ砲身を作り、衝撃を砲弾として打ち出す物だ。そのため、砲弾だけではなく、砲身すら目に見えないうえに、砲身の稼動限界角度はない。つまり、見えない上に、死角がない。
鈴は距離を取り、衝撃砲を撃ち続ける。
一夏が射撃武器を苦手としていると気づいたからだ。
事実一夏は回避もしくは防御することしかできなかった。
だが、一夏には切り札があった。
「鈴。」
「何よ?」
「本気で行くからな。」
「何よ!そんなことあたりまえじゃない!…挌の違いってのを見せてあげるわ!」
鈴は2本の双天牙月の柄を繋げ、一夏に攻撃を仕掛ける。
だが、一夏はそれを防ぎ、回避に徹する。防御ではなく回避をしているのは防御から攻撃に転じるより、回避から攻撃に転じる方が容易だったからである。
「織斑君、何かするみたいですね。」
「瞬時加速だろう。私が教えた。」
「瞬時加速?」
一瞬でトップスピードを出し、接近する奇襲攻撃だ。
出しどころさえ間違えなければ、今の戦局を覆すだけの効果はある。
だが、失敗すれば、相手に注意されてしまう。
そのため、通用するのは一回だけである。
一夏はフェイントを入れながら、鈴の視線を左右に振らせる。
そして、一夏は鈴の背後に回り込んだ。
鈴は後ろに居る一夏に向かって龍砲を放つが、一夏に当たることはなかった。
当たらなかったのは、龍砲に死角がなくとも、鈴の視界には死角があったからだ。
一夏の勝ちだ。
誰もがそう思った。
観客も真耶も千冬も箒もセシリアも、戦っている一夏も鈴も。
だが……。
アリーナの天井が砕け散り、何かが落ちてきて、地面に衝突した。
爆心地から大量の煙が上がる。それと同時に、アリーナの管制室のモニターにアリーナ破損の警告のサイレンが鳴り響く。
それを見た千冬はアリーナの観客と一夏に避難の指示を、戦闘職員にISの装備と乱入者の拘束の指示を出す。
「一夏試合は中止よ!今すぐピットに戻って!」
「いや、どうやらただ事じゃなさそうだ。君だけを置いていけないよ。」
白式のディスプレイに新たなウインドウが開かれた。
『ステージ中央に熱源 所属不明のISと断定 ロックされています。』
そして、黒煙の中から一機のISが出てきた。全身黒ずくめで、腕は長く、各所に砲口のような穴がある。手に得物はなく、装備に格闘武器は見えない。
射撃に特化したISだと鈴は推測した。
「アンタ、その武器しかないんでしょ!相手は射撃武器に特化した相手だから、相性悪いんだから、逃げなさいよ!」
「いや、それでもだ。僕をロックしているということは相手の標的は僕だ。僕がむやみやたらに逃げたら、他の人たちが巻き込まれてしまう。」
「仕方ないわね。付き合ってあげるわよ。でも、別にあたしも最後までやり合うつもりはないわよ。こんな異常事態、すぐに学園の先生がやってきて、事態を収拾するはずだもの。だから…」
その直後、鈴に向かってビームが放たれた。
鈴は咄嗟に衝撃砲を放ち、相殺させる。
「鈴。今は僕より相手に集中した方が良い。」
「分かってるわよ!」
さきほどの威力からセシリアのブルー・ティアーズを越えるものだということが分かる。
一夏と鈴はひたすら回避に徹する。防御をしないのは、得物が損傷しないようにする為だ。ISの武器と言えども、損傷はする。相手がISなら当然のことだ。
だが、回避だけでは事態は好転しない。
そこで鈴が射撃で相手を攻撃しながら、一夏が接近し、攻撃するという即興の連携を取ることにした。だが、相手の射撃武器の連射能力と威力は高く、上手く行かない。
それをモニターから見ていた真耶は何度も一夏と鈴に逃げるように指示を出すが、一夏と鈴には聞こえていないようだ。
遮断シールドをレベル4に設定され、アリーナの扉もロックされている。更には管制室の機器類のほとんどを制御不可能にされている。
それらの原因はおそらくあの乱入者であろうと千冬は推測した。
それでも、箒とセシリアも管制室のマイクから一夏と鈴に呼びかける。
「本人たちがやると言っているのだから、やらせてみても良いだろう。」
「…織斑先生、何をのんきなことを言っているんですか。」
「落ち着け。コーヒーでも飲め。糖分が足りないからイライラする。」
千冬はそう言うとコーヒーに大量のあるものを入れた。
なぜ、そんなものがこんな管制室に、それも大量にあるのか謎だが……。
とりあえず、真耶は千冬に一言言う。
「あの…先生、それ塩ですけど…。」
千冬は無表情で、真耶に塩味コーヒーを押し付ける。
「ほんとうに鬱陶しいわね。あれじゃなかなか近づけないじゃない!」
「だったら、止めるかい?」
「馬鹿、これでもあたしは代表候補生よ。」
「そうか。だったら、鈴の力当てにさせてもらうよ。」
一夏は再度突撃を試みる。だが、中々相手に近づけない。
相手のビームの連射は止まらないのだ。一夏と鈴はある程度のシールドエネルギーを削りながら活路を開こうとするが、決定打に繋がらない。
そんな時、鈴はあることに気が付いた。
「ねえ、一夏。」
「なんだい?」
「あれって、本当に人が乗っているの?」
「どうしてそう思う?」
「なんとなく、フィーリングよ。」
鈴は一夏の疑問をいつもの口調で返す。
鈴の発した2つの言葉自身には他人を納得させるような意味を持っていないが、長年連れ添っていた一夏を納得させるには十分の言葉だった。
あのISに人が乗っていないのように感じたのは、どこか無機質な感じがしたからだ。
具体的に表すのならば、無駄の動作がなさすぎるということだ。
「じゃあ、あれが鈴の言葉通り、無人機だとしよう。」
「無人機だったらどうって言うの?」
「人を殺す心配がないのだから、躊躇なく行ける。雪片弐型の零落白夜で。」
その頃、ドイツ
「いかがですか?隊長?」
「うむ。この服装は非常に機能性が高い。スカートの裾は短く歩きやすい。このニーソックスで足を保護してくれる。一昔前の水平の軍服と言ったな。悪くない。」
「えぇ、良いでしょう。ニーソックスとミニスカセーラー服が織り成す絶対領域は。」
「絶対領域?それは新手の兵器の名か?」
「いいえ。今は教えられませんが、おいおい教えます。今はこの棒付きキャンディーでも食べてください。」
「うむ。丁度小腹がすいていた所だ。礼を言う。…ペロペロ」