魔法…この世にあって全てのモノに微笑む女神の法…だが、いかんせん私にはその法に縋る資格が無い。我は一人、生まれた時よりただ一人、己の肉体の身で生き延びた。
始めはそう…記憶は朧げだがあの瞬間は覚えているとも…壊れ征く馬車、魔物の襲撃によって殺されゆく人間…私はそんな折に母の胎内より生まれ出でた。
「アウアァ~」
その時点で私には自我が有った。否意識が有ったと言いなおすのが正しいか。如何せんあの頃の記憶は曖昧だ。朝露を飲み…狼の子供に紛れ…歯が生えた瞬間にはその母を喰らった。
「私程呪われた生を受けた者もそう居ない…故に、女神の微笑みも無かった。」
私の身の中に有るのは多量の魔力と…外界の魔力を吸収できぬガラクタの様な鉢だ。故にこそ、私は如何なる法を犯してでも己が身を鍛えると誓った。
「だれに命令されることも無く…女神の法に従うことも無く…私は全てを超越する。」
それのみだ…何もないこの身に刻まれた原初の法…それこそが私と言う詰まらない男の物語の序章だ。…そうだ、あれは何時だったか、確か魔道具の講習があった日の事だ。
「言語を覚えたは良いが、この身は女神の法の介さぬ体だ。故に他の媒体物を探さねばなるまい…魔道具…成程、その様な未知にこそ、私の光明があるというもの」
私は好奇心が旺盛な子供だった。狼の乳を飲み干し、母の肉を喰らい…商人を襲い学を得た。その学びは正に師玉だった。何も知らぬ無知なる獣から、その瞬間に人へと至ったのだ。
「魔道具…成程、女神の法の対象外と言う事か」
私はこの世界に当たり前に存在する魔法…私流に言うのなら女神の法の庇護には居ない。故に何をするにも自己の魔力を必要とする。他の人物が当たり前にやっているイメージによる魔法発動…私にはその兆しすら無かった。
「だが、この法が違うと見える…これこそが、私を強者へと至らしめる法となろう」
「さっきから何言ってんだい?それよりも、付与は出来たのかい?」
この女は私の師と言っても過言ではない…私を人間から強者へと至らしめる法…その師と言うべき人だった。だが、それもこれまでの話だ。最早この女からの情報は期待できまいよ。
「なに…女神の法の庇護下に居ない…一人の男の妄想だとも…さらばら、名も知らぬ女よ。何れシャンバラで会おう」
「私は、アンタが何を言っているのかサッパリだよ。でもね、アンタに与えたのはこの世界で生きる方法そのものさね。何れ…成長して戻ってくるんだね。」
女と別れてから…私は風の赴くまま、気の向くままに旅を続けた。だが、この身は未だに幼い身…何度も己が身を犯される危険にあったとも…だが、その瞬間にも私の法の下にシャンバラへと送られた。
「女神の庇護下に有ってない我が身慣れど。唯一の法が微笑んでいる。それこそが魔術」
嘗ての女からの教えを紐解き、言語に宿る力を元にした法…この世界に満ちる女神の統治下に有ってはならない遺物…それこそが魔術、己が身が行使できる唯一の法だ。
「さて…今日と言う日をどれほど心待ちにしたことか…牢獄に囚われた虜囚が外界へと飛び出した時の気分だ。」
アールスハイド…言わずと知れた強国だ。お隣のブルースフィア帝国と並ぶ巨大な国家…そこの学園に私は来ていた。本来は女神の法を学ぶ場…私の様な男とは真反対の場所だ。
「故に来た。この場所で未知なる法と出会わんことを」
「何を言ってるのよ?さっきからブツブツと。」
おっと…一人でブツブツと語っていたらしい。如何せん一人旅が長かった。これは最早悪癖と言う奴だな。
「なに…女神の法を学ぶ場において、これ程不適格な人物が居ると認識してしまっただけだよ。」
「…何言ってるかさっぱり分かんないけど、同じ受験者って事で良いのよね?」
私に声を掛けてきた赤髪の少女…あぁ、名をマリアと言うのか…成程、正に女神に愛されている存在だよ。
「なに…これは悪癖と言う奴だ…マリアよ。心配はされるな」
「何で私の名前を知ってんのよ。」
あぁそうだ…女神の法の者にとってはこれは異質か…成程、一人旅と言うのはやはりどうしてもその感覚を鈍らせる。道中の男の言う通りだったな。これ程までに交流を学べる場も少なくはない。
「なに…ちょっと知っているだけだ。さてと、私はこちらなのでね。失礼さしてもらうよ」
やはり上々…筆記の試験は単純明快だが…奥が深い、恐らく作り手は細かいところを気にする人物なのだろうよ。
「さて、あなた達にはあそこの的に対して攻撃を当ててもらいます。それじゃあ最初はアルグ君」
やはり未熟と言う他無いな…さきのマリア程の力は無いと言っても差し支えない…いや、あの少女の方が強かったという方が正しいのであろうよ。
「それじゃあ、次はカリオストロ君ね。」
「しかり…その名すらも私を構成する者の一つに過ぎんが…焼き尽くせ〈火球〉」
その光景に辺りはシンと静まり返った。それは、カリオストロと名乗る受験生の魔法が異質だからだ。何か言いようの無い不安感…まるで、この世界の人物じゃ無いみたいな感覚を覚えた。
「さて…的の破壊は終了したわけだが…これで良いのかね?
「お嬢さんだなんて…まぁ良いです」
「それで…他の人物はこれで良いとしても、カリオストロ君はどういたしますか?」
「ふむ…筆記は問題なしで、魔法の腕前の英雄の孫にも匹敵する」
その場では、正に私の事が議題に上がっていた。それはこの世界に置いて強者の部類に入る私の魔術だ。最下級に力を抑えたとしてもこれ程の威力を誇る。正に神業と言う他ない力だ。
「それじゃあ今回は例外と言う事で。」
「あぁ…その方が良い、彼には何か異質なものがあるがね。」
ふむ…やはり優秀なお歴々だ。私の異質さをかなり評価しているようだ。…だが、それすらも甘いと言わざるを得ない。これから起こるであろう歌劇を…私だけが予測する事ができる。
「この物語はありきたりだが…役者が良い、至高と信ずる。故に、面白くなると思うよ。
では、今宵の
こんな水銀ロールで喋る主人公とか需要ありますかね?なんか勢いで書いたので投稿です。