驀進王に憧れてトレセン学園に来たダメダメな私が3つの玉座の女主人と称えられるまで 作:八幡悠
ノルデンレヨネット視点。
Umang Usは、宇宙船に紛れ込んだ裏切り者を探す正体隠匿ゲームだ。
クルーメイトは船内のタスクをすべて終えるか、会議でインポスターを全員追放すれば勝ち。インポスターはクルーをキルと追放で減らし、自分たちと同数にすれば勝利となる。
そして今回は、通常のクルーメイトとインポスターだけでなく、3つの特殊役職が採用されていた。
「インポスター2人の片方はイビルハッカーで、システムをハッキングして位置情報を見られる。マッドメイトはキルできない代わりに追放されるとクルー陣営をランダムに1人道連れにできる。シェリフは1度だけキルできて、相手がインポスター陣営ならキル、クルー陣営なら相手ではなく自分が死ぬ」
会場向けのルーラーシップの説明がこちらにも聞こえてくる。
眼の前では各々の耳飾りをつけた2等身の宇宙服アバターがわちゃわちゃと右往左往している。
ルラシは簡単だろ、みたいな言い方をしているがけっこうややこしい。
整理すると、インポスター陣営が合計3人で、キルできるインポスター2人(片方は位置情報を見られる)、マッドメイト1人。クルーメイト陣営は合計8人でクルーメイト7人、シェリフ1人だ。
「それじゃあ春のファン感謝祭、Umang Usスタート!」
──シーッ!
画面が暗転し、赤いアバターが人差し指を顔らしき場所の前に当てる。
ブ──ッ!
「ああっ! ジャーニーさんが無惨なおすがたにっ!」
「あの、おふたり以外の残り5人は皆で絆を繋いでおりまして……」
「えっ」
「ブエナさん以外に最後のインポスター候補はいないって思うな♪」
「なしてー!?」
「ディザイアがシェリフです! 私が死んでウオッカ様の確白を証明します!」
「うわちょっと待t──」
ザシュ
「あっ、シェリフ執行成功?」
「ウオッカの方が真っ二つ、ってことはインポスター……」
「ウオッカさm──」
ザシュ
ブ──ッ!
「ジャーニーです。私がインポスターなので、次行きましょう」
ブ──ッ!
「プスカですっ! 停電中でよく見えなかったけど、逃げていく人の名前がNで始まってるのだけ見えました!」
「ルーラーシップだ。Nで始まるのは2人しか居ねぇなぁ? じゃあそこローラーで」
「レヨネットだよ! あたしはウオッカさんと別のとこに居たから違うよ!」
「セミラミスです。私は前のターンでシェリフのプスカさんから確白出されてるので」
「あっ……」
「おっとそうだったな、最後のインポスターはお前だ!」
そんな調子で何試合かを終えた結果はクルーメイト陣営が全勝。インポスター陣営はまさかの未勝利だった。
「なんつーか思ったより皆サンしっかり議論できてるせいでインポスターが全然勝ててないな」
配信で何度もプレイしているカレンチャンは当然として、お姉ちゃんと、ジャーニーさんと、ルラシも妙に手慣れていた。少なくとも、昨日今日初めて触った人の議論ではない。
この4人が議論を引っ張るせいで、かなり早くインポスターが捕捉されてしまっていたのが痛いだろう。インポスターが勝ちたければこのあたりは早期に落としておく必要がありそうだ。
「つかよ、俺の時は悪くねぇだろ! なんで初手からシェリフのディザイアが突撃してくるんだよ!」
「だってシェリフはタスク無くて暇なのですもの!」
あれは純粋に運が悪かった。
多分ディザイアさんは、自分がシェリフの誤射で自爆することで、ウオッカさんを確白にしようとしたのだろう。そんなことをしてもシェリフが一人減るだけで、盤面上はむしろ不利になるのだが。
ところが、そのウオッカさんがたまたまインポスターだった。結果、真っ二つになったのはディザイアさんではなく、ウオッカさんのアバターだった。
そりゃ相方のジャーニーさんも降伏を選ぶ。
「というか絆が強いんだよね。すぐキルがつまっちゃうし」
「だからカレンはあんまりやらないように縛ってるんだ♪」
キルが発生したターンに複数人でずっと同行していれば、そのメンバーは自動で容疑者から外れてしまう。
あたしがインポスターだったときもそれが一番きつかった。その代わりタスクの効率は落ちてるのでインポスター有利ではあるけれど、だいたいインポスターが捕捉されて負けてるのであんまり変わらない気がする。
「えー、時間的にこれがラストゲームになりそうだな。会場の皆サンも、配信を見てる皆サンも、最後まで楽しんでくれ」
会場向けを兼ねたルラシの声に我に返る。
次がラストゲームということは、もうかなり時間が経っているらしい。思ったより面白かったし、今度は配信抜きでやってもいいかもしれない。
そう呑気に考えながら、次の役職表示を待った。
「それじゃ、よろしくお願いしまーす♪」
「よろしく!」
「よろしくお願いします」
各々の声が途切れ、画面に11体のカラフルなキャラクターたちがずらりと並ぶ。
○第1ターン 行動フェイズ
さて、私の役職はクルーメイトのようだ。
視界左下のマップを見ると、スポーン地点はマップ右端の貨物室。
・ミニマップ(推理したい人向け)
「あっ、ブエナちゃんだー。はろはろー」
「プスカさんにレヨさんも!」
「あたしたち3人が貨物スポーンみたいだね」
自分のタスク表を見ると奥の金庫を開けるタスクがあるようで、同じタスクがあるプスカとともに貨物室の奥へと向かう。
「ブエナは絵合わせだけ先に見てくるから」
「死なないでねブエナちゃん」
貨物室の逆側にある別のタスクに行ったブエナを見送り、あたしとプスカは金庫に向かう。当然だが、全員タスクの種類は別々で同じとは限らない。
どうもこのタスクはコツがあるようで、あたしはダイヤルがなかなか合わないんだよね。
「レヨー、プスカは終わったから先行くね」
「気をつけてね」
開始早々あたしを置いて単独行動とはプスカもなかなか薄情な、と思いながらダイヤルと格闘することしばし、ようやくタスクが完了した。
一瞬、照明が落ちた。
停電サボタージュ──と思った次の瞬間には、もう明かりが戻っている。
早すぎる。誰かがブレーカーの前で待ち構えていたらしい。
「やっほー、お疲れ」
振り向くとそこにはブエナ。
「プスカさんなら今すれ違ったけど、置いてかれたんだね」
「薄情なやつだよねー」
ピンポンパン♪
そう言って2人で奥まった金庫前から出ようとすると、緊急会議招集のチャイムが鳴り、アバターがミーティングルームに転送される。
どうやら誰かがミーティングの会議招集ボタンを押したらしい。
プスカ──!?
○第1ターン 議論フェイズ
「死んでるー!?」
「はいはいはい! ブエナ目撃あります! 貨物室で3秒前に生きてるプスカさん見ました!」
開口一番、ブエナが目撃情報を落とす。
3秒前ということは相当範囲が絞れるな。おそらく犯人も犯行現場も貨物室の中ぐらいの時系列だ。
メンバーが全員競走ウマ娘というのもあってこのあたりの時間管理は相当シビアだ。これもインポスターが負けがちな理由だろう。
「ボタン押したセミラミスです。3秒前貨物ならボタン押してる私と絆結んでたピサさんはキルに関われません」
「ピサからもそうです」
絆を結ぶ、というのはペア行動をしていてお互いに目を離していない、と言う意味だ。
ピサが初回からよくそういう言い方をするので定着してしまっていた。
確かにマップ中央上部のミーティングルームと右端の貨物室を数秒で移動するのは不可能なのでここは白でいいだろう。
「はいはーい♪ キッチンはカレンとルラシちゃんとジャーニーさんの3人で、ルラシちゃんを展望に置いてきたので絶対無理です。停電なおした?」
「ああ、俺が爆速で直した」
次に出てきたのがカレンチャンら3人。キッチンはマップ左下で、展望デッキはその横の左下隅。確かにマップの反対側だから届くまい。
まして直前に停電を直していたルラシは確実に無理だ。
「カレンと俺は展望でタスクやって、俺は配電盤待機で停電直したがカレンはその後どうした?」
「ジャーニーです。その後カレンさんはキッチンで料理タスクに来ておられました。私はそれを置いて電気室に入るところで終了です」
「……そう? カレンは気づかなかったけど動きは合ってるよ。その後のカレンは最終武器庫ね」
キッチン組3人の動きは、左下方面のキッチンから最初にカレンとルラシが左端の展望デッキへ、ルラシはずっと展望、カレンはその後キッチンに戻ってタスクしてキッチンの上隣の武器庫で終了。ジャーニーさんはマップ中央下の電気室に入るかどうかで終了。
……証言が正しいなら全員無理だな。
「時間的に俺達キッチン組は無理そうだな……」
「セミラミスです。ルラシさん、それはベントを考慮してもですか?」
ベント。そうか、インポスターはインポスターだけが使える近道があるのだった。
だが……マップを見る限りキッチンから直接貨物室には繋がっていないので行けない。それは難しいのではないだろうか。
「……流石にカレンは無理、かな」
「ですがジャーニーさんは可能ですよね。途中からカレンさんの視認が切れています。ベント内からカレンさんの動きを見て、証言を合わせた可能性もあります」
「そうだな……」
「ルラシさん、このさいジャーニーはキル可能で結構ですので、議論時間を他に使いませんか? あと、セミラミスさんもピサさんとのラインであることをお忘れなく」
「ああ、確かにセミラミスはキルができないだけで、相方のピサが切ってる位置偽装の可能性は一応あるな。一応」
やば……なんかすごい勢いで議論が重ねられて考察が伸びていってる……。
やっぱりこの人たちを生かしとくせいでインポスター勝てないんじゃないの。
「じゃあ次、他に誰か白でるか?」
このキルで白が出たルラシが議論の主導権を握る。するとブエナのアバターが手? を挙げた。
「ブエナです! レヨさんはブエナから白です! 貨物ではプスカさんとレヨさんといっしょにスポーンして、奥の金庫タスクから出てくるプスカさんとすれ違ってから奥にレヨさんが居たのでキルできません!」
確かに。
奥から出てくる生前のプスカとすれ違って奥にあたしが居たなら、ブエナ視点あたしはキルできない。
……でも、逆はできるよな。貨物室の通路とかでぶった切ってから奥に来て、あわよくばあたしも始末しようとした、とか。
「レヨネット、レヨネットからブエナに白は出るか?」
「出ないね。でも、あたしと3人で貨物スポーンなのはわかってたんだから切るかな、ってのと、あたしから見てもキルは直近で、貨物周辺なのは合ってるよ」
タスクに集中していたので何秒前かまでは正確ではないが、5秒かそこらしか経っていないと思う。
「おk、時間がもう無いから残りのウオッカ、カジノ、ディザイアのスポーン位置と経路を手短に頼む。次もすぐボタン押して議論続行しよう」
「ウオッカはアーカイブでずっとアーカイブだぜ」
「カジノはmain hallでディザイアとspawnして、engine room経由で宝物庫です」
「ディザイアはメインホールから電気室に降りました」
「全員容疑者かよ……」
アーカイブは事件のあった貨物室から左上、マップだと右上方面。
メインホールはマップ中央で、下に行くと電気室、左隣がエンジンで、そこから上に行って左が宝物庫、右上がミーティングのボタンだ。
だが、結局最終の視認がないので全員最後に貨物室に行けてしまう。
○第1ターン 投票フェイズ
「全員スキップな!」
ルラシの言うとおり、全員が誰も吊らないスキップ投票に入れた。
○第2ターン 行動フェイズ
今回のスポーン位置はキッチンだった。
一緒になったのはお姉ちゃんとカレンチャン。初手のキルには関われない2人だ。