驀進王に憧れてトレセン学園に来たダメダメな私が3つの玉座の女主人と称えられるまで 作:八幡悠
ノルデンレヨネット視点。
○第3ターン 議論フェイズ
「ああ、一番白っぽかった人がキルされてしまいました……」
「単独行動するからいけないんだよ」
「ですがこれ絆のお陰でけっこう白がでそうですよ?」
それぞれディザイア、カジノ、ピサの発言だ。
口ぶりからして、どこかで目撃情報があって、ペア行動のおかげで白が出るみたいだ。
……まずいかも。今回、あたしほとんど単独行動だったから……。
「はいはーい、ボタン押したんでカレンが音頭取りまーす♪」
白色のアバターにリボンをつけたカレンチャンが手? を振って議論を主導する。
いまやルラシが死んでお姉ちゃんも単独行動が多そうな以上、彼女が頼りだ。
「まずルラシちゃんの目撃は最初だけあって、エンジンルームから右のメインホール方向に行ってます。これはカレン、ジャーニーさん、カジノさんから出るし、直後にピサちゃんが上の宿舎から降りてきてるからそっちに行ってないのはピサちゃんからも出るよね?」
「ええ。その後はカジノさんと絆を結んでおりましたし、あのあとはブエナさんとも絆を結びましたので、今回カジノさんとブエナさんはキルできません」
うんありがと、とピサに言ったカレンは、次いでブエナとディザイアの方を向く。
「ブエナさんとディザイアさんも、絆結んでて多分キッチンスポーンだよね? 停電は直した?」
「はい、皆さんと会う前は私達もずっと一緒だったのでお互いキルは無理です」
「停電は展望デッキで直して、武器庫のあたりで一旦6人一緒になったあとは、カレンさんとジャーニーさんと3人でボタンまで一緒でした」
えーっと、ということは……?
「レヨネットです。つまり、ルラシが右のメインホールの方に行ったのは3人に見られてて、その後6人は3人ずつマップ左で一緒に居たからキルは無理、ってこと?」
「そうなるね♪」
ってことは、残りはあたし、お姉ちゃん、ウオッカさんの3人しか容疑者居ないってことじゃない。
ど、どうしよう。
「すみませんセミラミスです、割り込みます。一番情報持ってるのが私だと思うんで喋ります。左の6人に確認ですが、そちらは全員キル不可能で間違いありませんね?」
お姉ちゃんがアバターの手らしきところを挙げながら喋りだす。
その質問には6人ともが肯定を返した。
「ではセミラミスはシェリフですので、今回のキルができるのはレヨネットかウオッカの2択です。どっちから行きます? 私はレヨネットの方が黒いと思ってますが」
えっ……お姉ちゃん?
一瞬、言われた意味がわからなかった。
お姉ちゃんがシェリフなら確かにそうなる。
そうなるけど。
「ちょっと待ってお姉ちゃん!? あたし!?」
「ええ、キル可能範囲がレヨの方が広いので」
いつもの平静な様子であたしに疑いを向けるお姉ちゃん。
あっけにとられるあたしを置いて、黄色のアバターを使っているウオッカさんが口を挟む。
「ウオッカだ、このシェリフ、皆信じるのか?」
「ジャーニーです。信じるのかもなにも、誰も対抗してこない以上、正しいものとする他無いと思いますが。それともウオッカさんが真のシェリフなのですか?」
「ちげぇよ。ただ俺が言いたいのは、初日にピサとの絆で疑われた時に名乗り出た方が良かったんじゃないか、ってことだよ」
わぁウオッカさんもちゃんと議論してる……。
でも、お姉ちゃんのシェリフを疑うってことは、ウオッカさんがインポスターなんだろうか。
というかウオッカさんは初日の容疑者だし、あたしがクルーメイトなんだからウオッカさんはインポスターに決まってるのだ。
「初日のセミラミスはキル不可能位置でしたので、出ない方が得だと考えました。私がレヨネットを怪しいと思う理由を説明しても?」
「うん、カレンじゃなくて確白のセミラミスさんが進行したほうがいいと思うな♪」
まだ追いついていないあたしを置いて、では遠慮なく、とお姉ちゃんが話しだす。
「まずセミラミスはメインホールでウオッカとスポーンし、すぐに2人で電気室に下がっています。カレンさんらの証言からその間にルラシさんはメインホールに来たと思われます」
なるほど、2人がメインホールを開けたところにルラシが。
「そして電気室でセミラミスは停電中にウオッカを見失い、その後再びメインホールに戻ってタスクをし、右のシャワー室に入ったところでレヨネットと会い、アーカイブで終了です」
「じゃあ俺はセミラミスに見つからずに、どこでルラシをキルできるって言うんだよ」
「ですからレヨの方が怪しいと言っています。停電中に私より先にメインに上がったか、貨物室のベント経由でシャワー室の奥でキルするぐらいですから」
えっとつまり、マップ中央のメインホールに左から入ったルラシは下方向には来ておらず、メインホールに留まってもいなかったので右のシャワー方面にしか行けず、死亡推定位置はシャワー室の奥かその上のアーカイブやラウンジ方面、あたしが来た方向だと。
……確かにあたしが一番怪しい。……ってそうじゃなくて!
「あたしはやってない! 無実だ!」
「犯人はいつもそう言います。それとも潔白を証明する手段があるのですか?」
ぐぬぬ……確かにないけど、でもあたしはクルーメイトだから追放されるわけにはいかない!
「ジャーニーです。潔白を証明する手段、ございますよ。というよりこの局面、投票で追放するのは危険です」
ジャーニーさんの説明はこうだった。
今は9人残っていて、インポスターが2人確実に残っている。
ここで間違えてクルーメイトを追放してしまうと、8人中2人がインポスター。ここで次の会議をサボタージュで妨害されて、各インポスターが1人ずつキルすれば6人。マッドメイトが生きていれば3対3で投票による追放が不可能になって詰みだ。
「じゃあどうすればいいんですか」
「なに、簡単な話ですよ。セミラミスさんにレヨネットさんを切ってもらえばよろしい。潔白なら受け入れられるでしょう?」
……確かに。でも、そうするとお姉ちゃんが。
「そうですね。それがよろしいでしょう」
「お姉ちゃん!?」
「いいですか、もし私が自爆した場合でも、レヨが確白で8人盤面です。その場合ウオッカを追放して7人1インポスター盤面に持ち込めます。私が死んでその盤面に持ち込めるならそうすべきでしょう」
そう、だけど、と逡巡しているあたしを置いて、ウオッカさんがこぼす。
「……なんか気に入らねぇな。お前らが3黒に見えてきた」
「それは感情論というものでしょう。セミラミスさんの進行におかしいところはありませんし、ウオッカさんは初日の容疑者で私達はキル不可能位置ですよ」
「ジャーニーさんの言うとおり、カレンたちは死んだルラシさんからキッチンで関われないって言われてるし、対抗のシェリフが出てきてないんだから信じるしかないと思うな♪」
「わーったよ……。で、どうすりゃいいんだ」
ウオッカさんが諦めたように言ったところで議論時間の終了が迫ってきた合図のブザーが鳴る。
「全員メインホールに集合してください。そこで全員監視のもと公開処刑します。わずかにインポスターのキルよりシェリフのキルの方が早いので、全員で通報ボタンを連打していれば間に合います」
○第3ターン 投票フェイズ
「それではスキップにしますが、メインホールに来なかった人はどさくさに紛れてキルしようとしている黒陣営とみなしますので全員必ず来てください」
○第4ターン 行動フェイズ
エンジンにスポーンしてからメインホールに集合すると、既にお姉ちゃんを筆頭に何人かのアバターがわちゃわちゃとしていた。
「セミラミスです。全員は集まってませんが、私が自爆した場合の進行は確認しておきます」
改めて確認されたこの後の手順はこうだった。
シェリフのお姉ちゃんが自爆した時点であたしはインポスターでもマッドメイトでもないので白確定。
そうしたら自動でルラシをキルした犯人はウオッカで決定なので次の会議で追放。
「カレンでーす。ウオッカさんは初日のキルもできるから、レヨネットさん以外はまだキルしてないインポスターの可能性もあるのには注意だよ。カレンも含めて、ね」
カレンがそうやって補足する。
なるほどそうか、ウオッカさんは初日の有力容疑者だから、残りのインポスターはまだ手を汚していない可能性もある、と。
いやあカレンチャンの姿勢がその毛色ぐらい白いなぁ……。
そうこうしていると残りの全員が集合した。
「それでは手順を説明します。セミラミスとレヨネットを中央に、くっつきあうぐらいで。他は周りを少し開けてウオッカさんを中心に並んで、全員動かずに通報ボタンを連打してください」
ちょっとでも動いた人はシェリフの照準を妨害しようとしているのでインポスター陣営とみなします、とお姉ちゃんは続けた。
「サボタージュを入れられた場合はどうしますか」
「停電以外ならそのまま処刑執行します。停電中は執行しませんので、全員動かないでください。動いたら黒です。……そうですね、両キル白位置のピサさん、カレンさん、ジャーニーさんは停電修理に3人で向かってください」
「りょーかい♪」
「承知しました」
「お任せください」
そう言って3人が移動していく。
なるほど。全員が動かず通報ボタンを連打していれば、位置関係から誰がキルしたのかはわかる。
停電中は執行しないと宣言している以上、その間にお姉ちゃんが死ねば、隣にいるあたしが黒。誰かが動いていたなら、その人が黒だ。
ギャラリーもブエナさん、カジノさん、ディザイアさんとインポスターのウオッカさんが居るから、誰かが証言を落とせる。
完璧だね。
「それでは皆さん準備はよろしいですか、全員動かずに通報ボタンの連打をお願いします」
お姉ちゃんのその言葉とともに、私も死体通報に割り振られたボタンを連打する。
お姉ちゃんが自爆したら、インポスターのキルが入る前に通報しないとお姉ちゃんが体を張った意味がないからだ。
お姉ちゃんの赤いアバターと見つめ合ってその時を待つ。
そろそろキルのクールタイムが明ける。けれど、停電は来なかった。通信妨害も、反応炉暴走も。
インポスター陣営だって、このままでは会議で仲間が追放されるはずなのに。
……もう諦めた、とか?
「それでは、執行します」
ザシュ
えっ。
ブ──ッ!
えっ……なんであたしが?