驀進王に憧れてトレセン学園に来たダメダメな私が3つの玉座の女主人と称えられるまで   作:八幡悠

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息抜き&ルラち実装記念回。
ノルデンレヨネット視点。


179 トレセン学園春のファン感謝祭 ぱかチューブっ! Umang Us(後編)

 ○第4ターン 議論フェイズ

 

 場所はいつものようにミーティングルームに戻るが、私のアバターは足がなくて半透明になりふわふわと漂っている。

 音声も霊界チャットモードに自動で切り替わっていた。

 

『あーもう終わりだよ終わり、オワオワのオワ~』

 

 周囲には同じように幽霊になったルラシとプスカのアバターが漂っていた。

 

「セミラミスです。レヨネットは切れましたので黒が確定、これでインポスターは相当厳しくなりましたね」

「ジャーニーです。補足しますと、レヨネットさんがマッドメイトの場合はインポスターが2人残っていますので注意してください」

「カレンはこの会議で残りのインポスターを詰めたほうがいいと思うな♪」

 

 眼下では相変わらずお姉ちゃんたち3人が議論を主導している。

 ……あたしが黒、ってことになってる? えっ、なんで? 

 ていうかお姉ちゃんの名前表示が赤くなってる、ってことはお姉ちゃんインポスター!? カレンチャンも!? 

 

『ちくしょういけしゃあしゃあと黒3人で議論握りやがってぇ……。シェリフまで乗っ取られてもうこんなの勝ち目ないじゃんかぁ……』

 

 え、乗っ……取り? 

 

『お姉ちゃんがシェリフ乗っ取り!? じゃあ本物のシェリフは?』

『ルラシだねぇ』

 

 ふよふよと漂いながら器用にいじけているルラシ。

 

『しょうがないじゃんかぁ……。誰も居ないんで絆結びましょう、って言われてタスクやるフリしてたらシャワー室の奥でぶった切られたんだからぁ』

『あたしがタスクしようとしてたとこ!? あんなすぐそこで死んでたの!?』

 

 うわ……もうちょっとで死体発見できるところだったのか。

 というかお姉ちゃん、ルラシを始末したその足で、何食わぬ顔であたしに会ってたのか。やっぱお姉ちゃんヤバいんじゃ。

 

『議論姿勢も初手ボタンも白いと思ってたのにシェリフが偶然切られちまうなんて運ゲーだろ運ゲー』

『運ゲーじゃないプスよ。2日目の通信サボタージュのタイミングでカレンチャンに、ルラシちゃん多分シェリフです、って言われてたプス』

『オワオワ~』

『ちょっと待ってツッコミが追いつかない。まずプスカその語尾はなに』

『配信用のキャラ付けプス~』

 

 つまり、初手の動きか何かでルラシのシェリフが透けてたってことじゃないか。何やってんだ。

 

『って、2日目の通信妨害ってあたしと3人で居た時の!?』

『そうプス。あの場でカレンチャンは自分でサボタージュを起こして、レヨネットの眼の前でジャーニーさんがマッドでルラシの動きがシェリフっぽいってセミラミスさんに伝えて、自分で直してたプス』

『あたしの眼の前で……?』

 

 そう、「ジャーニーさんはマッド確定。ルラシちゃんはシェリフっぽいよ♪」「了解。ではルラシさんを優先して切ります」って言ってた、とプスカが言う。

 

『マジか……。その会話の横で、あたし、上手い人は時間を無駄にしないんだなぁ、とか思ってたんだけど!?』

『ぶっちゃけいつ死ぬかな……? って思ってたプス。むしろ霊界1人で喋らなきゃだから早く誰か来ないかなって思ってたプス』

 

 じゃあルラシがすぐ霊界に来て良かったのか。

 ……いや待て、初手お姉ちゃんはキル不可能だったはずだ。じゃあ誰が、というかカレンチャンに白を出したのはルラシだったのでは。

 

『そうプスよ~。ルラシのガバ白プス。ぜーんぶルラシが悪いプス』

『そこまで言わなくていいじゃんかぁ……』

『いや実際届かないって言ったのルラシじゃない』

『あんな短時間でベント乗り継いでメインシャワー走って長距離移動無理だと思うだろフツー。キャラコン鬼だろ。今から思えばあのタイミングでもうジャーニーサンと内通してたんだよなぁ』

 

 そんな早くから……。

 言われてみれば、キッチンでの証言はジャーニーさんからカレンへのものであって、なんとなく言葉を濁していたような気がする。

 カレンはそこまで考えてのことだったのか。

 

 そんな霊界会話の間も会議は進んでいた。

 

 なにせ、あたしがインポスターだったにしろマッドメイトだったにせよ、ブエナからキル不可能とされている以上プスカキルの犯人は別にいる事になっている。

 しかもしれっとジャーニーさんまでキル不可能だったことにされているので、ウオッカさん、カジノ、ブエナ、ディザイアの中に最大2人インポスターが居ることにされてしまっていた。

 もちろん4人全員クルーメイトである。

 

「カレンとしてはやっぱりウオッカさんは吊っておきたいかなぁ。どの場合でもインポスターの目が一番高いし」

 

 当然インポスターのカレンはウオッカの追放を推す。

 なんかカワイイと思ってたけど案外やることがえげつない。でもそういうちょっと腹黒いとこもいいんだよね。

 

「俺が一番怪しいってのは否定しねぇよ。けど、候補が4人も残ってんのに一番怪しいってだけで吊るのか?」

 

 当然、吹っ掛けられたウオッカさんは対抗しにかかるが、2回ともキル可能位置に入ってしまっただけに歯切れが悪い。

 このまま吊られてしまうのか、と思ったがそうでもないらしい。

 

「ディザイアもウオッカさんの意見に賛成です。容疑者が4人居るのにウオッカさんだけを追放するのは早計です!」

「ピサも、インポスターが1人しか残っていないのでしたらタスクでも良いと思います」

 

 意外にも明確に反対しているのはディザイアとピサ。

 ウオッカラブな気配のあるディザイアはともかく、気弱そうなヴィクトワールピサが明確に反対するとは意外だった。

 多分優しい子なんだろう。このゲームには向いてないと思ってたけど、案外適性はあるのかもしれない。

 

「やっぱりブエナもウオッカさんの位置が一番怪しいとは思いますけど……まだ追放まではしなくていいのでは?」

「私も、カジノも同意見かな。まだ次のキルを待っても良いんじゃないか。多分レヨネットはインポスターなんだろ?」

 

 どちらかというと慎重派がブエナとカジノ。

 思ったよりクルーメイトは慎重かつ賢明な判断をしているようだ……。

 が、実際はインポスター陣営3人が生き残っているので相当厳しい。

 

「ジャーニーです。私もウオッカさんが確定黒とは言えないのに吊りにいくのは反対ですね。少々リスキーかと」

「そうですね。シェリフのセミラミスとしても、ここはキルを待ちたいです。この状況ならどのみち勝てますし」

 

『くっそー、勝ち確だと思って余裕ぶっこきやがって……』

『どのみち勝てます、かっこインポスター並感』

 

 さも良識派です、みたいな顔をしているが、この2人はインポスター陣営である。

 といっても8人盤面なので、クルーを2人説得できないと追放はできない。2人が断固反対、2人が慎重意見だったので一旦諦めたのだろう。

 

「そんなんじゃ甘いよ! このゲームは殺意が高いほうが勝つんだよ! 見敵必殺! サーチ&デストロイ! 速さこそが真理! あやしきは処刑!」

「……なんか一理ある気がしてきましたね」

「おいこらセミラミス、カレンチャンに流されてんじゃねぇよ!」

 

『余裕過ぎて茶番始まっちゃってるプス』

『ちくしょぉ────』

 

 ○第4ターン 投票フェイズ

 

「それではスキップにします。タスクやりつつキルを待つ感じで」

 

誰も追放されなかった(スキップ投票)

 

 

 ○第5ターン 行動フェイズ

 

 霊界に行ったあともクルーメイトはタスクがあるので、一応タスク完了勝利に一縷の望みを賭けてタスクを行う。

 

『いやもう諦めていいだろ。クルーのタスク進行的に絶対無理だぜ』

『でもさっきの議論でウオッカさん耐えたんだしまだワンチャンあるでしょ』

 

 シェリフにはタスクがないため、手持ち無沙汰なルラシが半ばやさぐれたように言う。

 死んだことで表示されるタスク進捗的には、あと半分ちょっとといったところ。

 ……微妙だな。絆を結ぶとキルはされにくい代わりにタスクの進捗がどうしても遅くなる。

 

『いちおう、まだインポスターが1キルしか入れられてない状態で現行犯とかやると厳しくなるが……』

 

 1キルだと7人場面。それなら白4票黒3票なので、例えばセミラミスがキルした瞬間を白3人に見られたりした場合は吊られるおそれがある、のだが……。

 

『あ、ダメっぽいプス。セミラミスとカレンとジャーニーが合流してボタン方面に向かってるプス』

『オワタ』

 

 確かに見ると、ミーティング方面に黒3人が向かっている。同時に2人をキルしてしまえば先程の話は関係ない。

 その先、ボタンの奥のタスクには絆を結んだブエナさんとピサさん。

 

『逃げてー! 2人とも超逃げてー!!』

『霊界から声は聞こえないプスよ。それに、そろそろキルのクールタイムが明けるプス』

 

 ふと見ると、ジャーニーさんが奥に2人がいるのを認めて黙ってミーティングから立ち去っていく。

 ……ああ、万一でも巻き込まれないようにか。

 

「おふたりとも、タスクの進捗はいかがですか」

「あ、セミラミスさん。この暗証番号が終わったら、展望でデータアップロードのやつだけです」

「……そういえば、セミラミスさんもカレンさんももう緊急ボタンは押されていたのでは?」

「ええ、少しミーティングに用事がありまして」

「いっくよー、せーの♪」

 

 ザシュ

 ザシュ

 

『……えっ』

『なしてー!?』

 

 刹那、ほぼ同時に真っ二つになる2人のアバター。そして赤文字で表示されたインポスター2人のネームに、驚きを隠せない2人。

 

「思ったよりうまくいきましたね」

「ミーティング奥ならなかなか見つからないしね。あ、もう勝ち確だし反応炉暴走入れちゃお♪」

 

 カレンチャンの宣言通り反応炉暴走を示すブザーが船内に鳴り響く。

 このサボタージュは、リフト室左右2ヶ所で60秒以内にほぼ同時に修理しないとクルーメイトの負けとなるものだ。

 

『セミラミスさんとカレンさんが、インポスター……?』

 

 ルラシのカレンチャンへの誤白からキルされたうえでのシェリフ乗っ取りまでの流れをプスカが説明すると、案の定の反応が返ってくる。

 

『そんな、全部ウソだったんですか!?』

『なんということでしょう……』

 

 そして再びしおしおになるルラち。

 いいのか? これルラシ視点で会場に生中継されてんじゃなかったのか? 

 

『そんな言い方しなくていいじゃんかよぅ……』

『ガバ白シェリフ透け乗っ取られ罪プス』

『……オワオワ~』

 

 その時、宇宙船爆散まであと30秒強を残してブザーが鳴り止んだ。

 

『あれ、直せたんだ』

『でもこれ、そろそろキルクールが明けてもう1キルできるようになるんじゃ……』

『……あっ』

 

 その時、ミーティングルームへつながるはしごを誰かが登ってくる効果音が鳴った。

 カジノだ。

 

「あっ、セミラミスさんにカレンさん。ジャーニーさん黒ですよあの人。反応炉のサボタージュを直すふりだけして直してなかったんで」

「へー、そうだったんだ♪」

「あとウオッカさんも黒じゃなさそうです。前半ずっと一緒でしたけどキルされませんでしたし、逆側の反応炉を直したのは多分ウオッカさんです」

「なるほど。ではカジノさんは誰がインポスターだとお考えですか?」

「え? えっと、それは──」

 

 ザシュ

 

『──は?』

『……霊界にようこそ、カジノドライヴ』

『…………は?』

 

 カレンに後ろから真っ二つにされたカジノが混乱するのも無理はない。

 お姉ちゃんとカレン、これが配信されて色々と大丈夫なのだろうか。世間へのイメージとか。

 

「危なかったですね。奥へ行かれると先ほどの死体を通報されるところでした」

「ねー♪ あ、誰かまた来た」

 

 次に登ってきたのはウオッカとディザイアの2人。

 そして待ち構えるのはカジノの死体の上で仁王立ちするカレンチャンと、その横で通報するでもなく立っているお姉ちゃん。

 

「ッ!? やっぱりお前らが3人黒だったんじゃねぇか!!」

「正解です。流石はウオッカですね」

 

 ザシュ

 

敗北

クルーメイト敗北。

 

 

 

⏰️ ⏰️ ⏰️

 

 

 こうしてファン感謝祭は盛況のうちに幕を閉じた。ボードゲーム同好会も無事に活動実績を獲得したらしい。

 ルラシがルラちになってしまうという被害はあったものの、件の空き教室の使用許可も無事下りたとのことで、Umang Us企画そのものは大成功だったといえよう。

 

 それから数日後、カフェテリアでジャーニーさんとお姉ちゃんと3人で昼食を取っていると、トレーを抱えたカレンチャンとルラシがこちらへやってきた。

 

「見て見て♪ この前のUmang Us、切り抜きがすっごく伸びてますよ」

 

 カレンチャンが端末を机の中央へ置く。画面には、お姉ちゃんがあたしを全員の前で切る瞬間が映っていた。

 

『それでは、執行します』

 

 ザシュ。

 

 『妹を公開処刑する短距離女王』という題名の下で、再生数がものすごい勢いで増えている。

 

「最後の試合は撮れ高しかなかったもんね♪」

「普通にやっていただけなのですがね」

「一回普通の意味を調べてみたら?」

 

 あたしが突っ込むと、ルラシが机へ突っ伏した。

 

「俺の『ガバ白シェリフ透け乗っ取られ』も伸びてんだけど……主催者だぞ俺は……」

「たいへんおいしい立場ではありませんか」

「ジャーニーサンは目立たず全部成功させたから言えるんだよ!」

 

 実際、話題になっているのはお姉ちゃんとカレンチャンだけではない。ジャーニーさんの初手偽証も、ウオッカさんの3黒的中も、カジノがインポスター本人へ推理を報告した場面も切り抜きが出回るぐらい評判らしい。

 

「皆さんの個性がよく出た、ということでしょう」

「お姉ちゃんは個性が出すぎなんだよ。昔から、追い詰められると外聞とか常識とか全部わかったうえで無視するよね」

「ルールに反していないのであれば、勝率の高い手を避ける理由はありません」

 

 即答だった。

 どうやら6人に白が出そうな時点で、生きているシェリフ候補をあたしとピサさんまで絞り込んだうえで、乗っ取りに出たらしい。

 

 そうなのだ。お姉ちゃんは常識を知らないわけではない。

 何をすればどう見られるかも、人並み以上に理解している。ただ、それでも必要なら平然と切り捨てる。

 

 だからこの(ひと)を追い詰めてはいけない。まして、考える時間まで与えてはいけない。

 倒す時は力で正面からすり潰すか、一気に意識の外から刈り取るかだ。反撃する暇もなく、その場で終わらせるしかない。

 

「でもカレンは、そういうところ好きだよ♪」

「私も味方である間は頼もしく思います」

「味方である間は、って付けるなよ怖ぇな!」

 

 ルラシの悲鳴をよそに、お姉ちゃんは切り抜きを見返して首を傾げた。

 

「しかし、なぜ私ばかり悪役扱いなのでしょう。二人同時に切る合図を出したのはカレンさんですが」

「カレンはカワイくやったから♪」

「お姉ちゃんも、もっとカワイく切ればよかったんじゃない?」

「なるほど」

 

 そこで納得しないでほしかった。

 

「では次回は検討します」

「次回もやる気なの!?」

 

 カフェテリアに、ルラシの声が響き渡った。

 

「いいですね、お時間が合ったらカレン村にも来てくださいよ♪ レヨネットさんも」

「ええ、その時はぜひ」

 

 うわぁ……。行きたいような行きたくないような。

 




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役職内訳
ウオッカ クルーメイト 5T キル by ノルデンセミラミス
ドリームジャーニー マッドメイト
ノルデンセミラミス インポスター
カジノドライヴ クルーメイト 5T キル by カレンチャン
ノルデンレヨネット クルーメイト 4T キル by ノルデンセミラミス
ディープスカイ クルーメイト 1T キル by カレンチャン
ブエナビスタ クルーメイト 5T キル by カレンチャン
レッドディザイア クルーメイト
ヴィクトワールピサ クルーメイト 5T キル by ノルデンセミラミス
ルーラーシップ シェリフ 3T キル by ノルデンセミラミス
カレンチャン イビルハッカー


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