驀進王に憧れてトレセン学園に来たダメダメな私が3つの玉座の女主人と称えられるまで   作:八幡悠

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041 変則二冠と世代3強

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月間 トゥインクル 5月号

ティアラが主役のクラシック第2戦──三強が切り開いた新時代

 

(文:乙名史 悦子)

 

 クラシック三冠、トリプルティアラ、そしてNHKマイル。5月はクラシックの中盤戦に位置し、例年ならクラシック三冠組が世代の中心として脚光を浴びる。しかし今年は違う。

 桜花賞でハナ差のワンツースリーを分け合った3名が、別の道を歩んでいったからだ。ノルデンセミラミスはNHKマイルへ、ダイワスカーレットはオークスへ、そしてウオッカは64年ぶりのダービー挑戦へ。

 注目はすべて、ティアラ路線から現れた三強に集まった。朝日杯ウマ娘のドリームジャーニーも、皐月賞ウマ娘のヴィクトリーも、その輝きに比べれば霞んで見えたほど。今年の主役は、間違いなくティアラ路線である。

 

第12回NHKマイルカップ

ノルデンセミラミス、桜花賞に続き変則二冠達成! 

 5月6日、東京レース場で行われた第12回NHKマイルカップ(芝1600m・稍重)は、桜花賞ウマ娘ノルデンセミラミス(吉富)が1番人気に応えて勝利。桜花賞に続くG1連勝で、一昨年のラインクラフト以来となる変則二冠を達成した。勝ち時計は1分34秒2。出走18名の中、2着は17番人気ピンクカメオ、3着は18番人気ムラマサノヨートーという波乱の決着となった。

 

レース回顧

苦手な条件を跳ね返し示した総合力

 レース前から彼女は断然の支持を集めていた。桜花賞を制した実績に加え、クラシック級やティアラ組の実績が振るわなかったためである。ただし一部では重バ場不安の声も上がっていた。事実、普段は先行策を取ることの多い彼女だが、序盤の激しい先行争いを避け、中団待機の形を選択。自らの得意なパターンとは異なる展開を余儀なくされた。

 しかし、ここからが桜花賞ウマ娘の真骨頂だった。最終コーナー出口で外へ進路を切り替え、直線でスムーズに加速。2番人気ローレルゲレイロを追い比べの末に振り切ると、後方から台頭した人気薄のムラマサノヨートーとピンクカメオの追撃を半バ身差で凌ぎ切った。桜花賞が展開に恵まれた勝利と一部で評されたのに対し、今回は苦手条件を克服しての勝利。世代マイル戦線で頭ひとつ抜け出したことを印象づける結果となった。

 

勝者の声

 ノルデンセミラミス「バ場が重くて苦労したが、なんとか勝つことができました。みなさまの応援のおかげです」

 吉富トレーナー「彼女の実力であれば十分勝ちはあると考えていた。1番人気のプレッシャーに負けず、よく走ってくれたと思います」

 

記者の総括

 桜花賞が“薄氷のハナ差勝利”だったことで懐疑的な見方もあったが、今回のNHKマイルは内容がまるで違う。先行総崩れの流れを中団から差し切り、苦手とされた稍重バ場すらものともしなかった。勝因は展開を読む冷静な判断力と、クラシック級離れした総合力だ。

 この勝利で、世代のマイル女王であることを疑う声はもうないだろう。すでにシニア級と伍して戦える下地は整っていると記者は考える。陣営は「短距離マイル路線を歩む」と語るが、その表情には言葉以上の意味が隠されているようにも見えた。次に彼女が挑む舞台──その発表を待ちたい。

 

マイルの新女王、その歩みはもう止まらない。

 

 

第68回オークス レース結果

ダイワスカーレット、堂々の逃走劇で世代ティアラ戦線の頂点へ! 

 5月20日、東京レース場で行われた第68回オークス(芝2400m・良)は、1番人気ダイワスカーレット(北浦)が2バ身差をつけて快勝。ここまで桜花賞を含めて惜敗続きだったが、遂に悲願のG1初制覇を果たした。勝ち時計は2分25秒1。2着はベッラレイア、3着はラブカーナ。逃げたスマートストームは失速し最下位に沈んだ。

 

レース回顧

抜群のゲートと勝負根性、距離延長で花開く

 ダイワスカーレットは新バ戦で2000mを勝ち、続く1800mオープンも勝利。その後は桜花賞までマイル重賞を3戦連続2着と、常に善戦しながらも勝ちきれない姿が続いていた。しかし「距離が延びれば本領を発揮する」との声も多く、オークスでは断然の支持を集めていた。

 レースはゲートを五分に出て、1枠1番スマートストームとのハナ争いに持ち込む。道中はスマートストームとともに後続に数バ身の差をつける形での逃げ。3コーナーから4コーナーにかけても先頭を譲らず、そのまま直線へ。スマートストームが力尽きて後退する中、ダイワスカーレットは二の足を使って突き放し、最後まで脚色は衰えずゴール板を駆け抜けた。2着ベッラレイア以下を2バ身差で退ける完勝劇だった。

 

勝者の声

 ダイワスカーレット「やっぱり私が一番!」と人差し指を高々と掲げて喜びを爆発させたあと、観客の前で慌てて猫をかぶり「えっと……応援ありがとうございました。これからも頑張ります」と優等生ぶりを取り繕う姿が微笑ましかった。

 北浦トレーナー「いやぁ、実は番手で控えて直線抜け出すつもりやったんですけどな。出が抜群すぎて気付いたら前走ってましてん。でもまあ勝ったらええんですわ。やっぱりあの勝負根性は姉(ダイワメジャー)譲りやな。夏は合宿で鍛えて、ティアラ最後の秋華賞に備えます」

 2着のベッラレイアは「相手が強すぎました。直線では届くかと思ったんですが、前との差は詰まらなかったですね」と悔しさをにじませた。

 

記者の総括

 勝因は明確だ。距離延長でスタミナを活かせたこと、そしてフィジカルと勝負根性によるごり押し。これまでマイル戦で切れ負けしていた印象が強かったが、2400mという舞台で持ち味が見事に噛み合った。

 世間では「やはりマイルより中距離型」「この勝ち方なら秋華賞は堅い」との声が多い。桜花賞で涙をのんだ分、この勝利で一気に世代ティアラ路線の主役に躍り出たのは間違いない。

 夏は休養に充て、秋はトリプルティアラ最終戦・秋華賞、さらにはエリザベス女王杯が視野に入る。ティアラ三強の一角として、そして世代を代表する存在としてどんな戦いを見せるか、注目せずにはいられない。

 

“強さ”を証明したダイワスカーレット。次は“女王”の座を賭けた秋華賞だ。見逃すわけにはいかない。

 

 

第74回東京優駿(日本ダービー) レース結果

ウオッカ、64年ぶりの夢かなう! ティアラ路線からの歴史的快挙

 

 5月27日、東京レース場で皇太子殿下台覧のもと行われた第74回東京優駿(日本ダービー、芝2400m・良)は、3番人気のウオッカ(八木)が豪脚を披露し、2着アサクサキングスに3バ身差をつける圧勝。勝ち時計は2分24秒5。64年ぶりとなるティアラ路線からのダービー制覇という偉業を達成、ジュニア女王がG1 2勝目を挙げた。3着にはアドマイヤオーラが入線した。

 

レース回顧

府中に炸裂した末脚、その強さに心酔

 

 64年ぶりのティアラ路線からの挑戦。その挑戦に対しては「距離が長い」「クラシック路線相手では分が悪い」という懐疑的な声が支配的だった。だが府中の長い直線が、このウマ娘の爆発的な末脚に合うのではと一部の関係者は期待を寄せていた。

 スタートは上々。中団外目にポジションをとり、折り合いもスムーズ。前はややスローペースで流れ、人気のアドマイヤオーラ、フサイチホウオーも同じく中団に控える展開。

 最終コーナーを回ると、ウオッカは満を持して大外へ持ち出した。直線残り400mから一気に加速し、先行勢をまとめて差し切る。残り200mで完全に抜け出すと、後続を寄せ付けずそのままゴール板を駆け抜けた。まさに別次元の末脚。ダービーの舞台にふさわしい圧巻の勝利だった。

 

勝者の声

 ウオッカ「っっしゃぁ! 見たか、これが俺の走りだ!!」

 八木トレーナー「本当に良かった。もうトレーナーを辞めても思い残すことはない」

 2着アサクサキングス陣営コメント:「勝った相手が強すぎました。こちらも渾身の仕上げでしたが、あの脚には脱帽です」

 

記者の総括

 勝因は、東京コースの長い直線と距離延長で爆発した末脚に尽きる。先行勢が刻んだスローペースを冷静に見極め、直線で大外一気の豪脚を繰り出した判断も完璧だった。

 64年ぶりにティアラ路線のウマ娘がダービーを制したことは、単なる一勝にとどまらない。クラシック三冠組の評価を一気に覆し、ウオッカを「世代の象徴」として強烈に刻みつけた歴史的勝利である。

 今後はシニア混合戦となる宝塚記念をステップに、秋には凱旋門賞挑戦を表明。「俺のスケールはこの国には収まらねぇ! 次は凱旋門だ!!」と力強く語った姿からも、その志の高さが伝わってくる。

 

64年の壁を破ったその一瞬、ウオッカは確かに“伝説”になった。

 

 

ティアラ最強世代の物語はまだ始まったばかり

 結果は歴史に刻まれるにふさわしいものとなった。ノルデンセミラミスは桜花賞に続く変則二冠でマイル女王の称号を手にし、ダイワスカーレットはオークスを逃げ切ってティアラの正統路線を歩んだ。そしてウオッカは、ダービーを3バ身差で制するという64年ぶりの偉業を果たした。

 3人の挑戦は、それぞれ異なる舞台で成功を収め、クラシック世代の主役を完全に牽引した。クラシック三冠組は相対的に影を潜め、ティアラ路線のウマ娘はクラシック路線に劣る、という風聞は過去のものとなった。この世代を語るうえでティアラ三強を避けて通ることはできない。

 秋以降は、ノルデンセミラミスは短距離マイル戦線へ、ダイワスカーレットがティアラ最後の秋華賞へ。ウオッカは宝塚を経て凱旋門を見据える。舞台は分かれても、その存在感は世代の中心にあり続けるだろう。

5月の東京は、間違いなくティアラの月だった。そして、歴史に残るティアラ最強世代の物語は、まだ始まったばかりだ。

 

 

シニアティアラ路線 ヴィクトリアマイル回顧

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 机に置いたタブレットを閉じて、椅子の背もたれに身を預け、深く息を吐いた。

 記事には『三強』『マイル女王』なんて言葉が並んでいる。

 本当なら胸を張っていいはずなのに、もう安田記念まで一週間もないというのに、どうしても“私なんかが”という思いが拭えなかった。

 

「……シニア級と伍せる、だなんて」

 

 思わず漏れた独り言。

 それを聞きとがめたのは、短パンにTシャツ姿でベッドの上にあぐらをかいていたメジャーさんだった。

 

「……安田記念、出るんだろ」

 

 低く響いた声に、はっと顔を上げる。

 

「──どうしてそれを、って顔してるが、バレバレだぞ」

 

 メジャーさんは片肘をつきながら、指を一本ずつ折っていく。

 

「まず、マイネルスケルツィのトレーナー交代。前走で大負けしたわけでもないのに吉富トレーナーから代わるのは不自然だ」

「次に、お前NHKマイルの後も頻度を落とさず練習してたな。あれはどう考えてもすぐ次がある練習スケジュールだ」

「そして極めつけ。同室の俺様に、練習の強度まで隠せると思ったのか? 」

 

 絶句するしかなかった。

 メジャーは呆れたように鼻を鳴らし、タブレットを一撫でする。

 

「記事じゃ“短距離マイル路線を歩む”って書いてあるがな。お前の行動はもっと正直だ。……乙名史記者ももう気づいてる。シニアの短距離組じゃ噂になってるぜ」

 

「ち、違うんです……!」

 

 何がだ。

 しおしおと口をついて出た言葉は、我ながら情けなかった。

 

「つかな、直近で挑んだメイショウボーラー。あいつは俺様の同期だぞ。皐月賞3着、NHKマイル3着だからお前よりは微妙な成績だが、それでも11着だからな。シニアの壁はそう生易しいもんじゃねぇ」

 

 そう言われればそうだった。察しが付くのも当然だ。

 現実を改めて突きつけられ、胸の奥が冷たくなる。

 

「というかだな、昨日、府中マイル想定のコースで最終追い切りしておいて、今さらすぎるだろ」

 

 追い打ちに沈黙するしかない。

 

 胸の内で渦巻くのは、迷い。

 ──ウオッカのライバルであるために、誰も往かない道を往くのではなかったか。

 ──先の勝利が偶然でないと証明するのではなかったか。

 それでも挑むと、決めたのではなかったか。

 

 片頬を吊り上げ、メジャーさんが皮肉めいた笑みを浮かべる。

 

「どうした、怖気づいたか?」

 

 胸の奥がざわめき、握り締めた拳が小さく震えた。

 怖い。怖いけれど──それでも。

 

「……それでも。貴女に、勝ちます!」

 

 言葉を吐き出した瞬間、体の奥から力が湧いてくるのを感じた。

 メジャーさんはしばし私を見据え、やがてにやりと笑う。

 

「言うじゃねぇか。そうでなくちゃなぁ!」

 

 拳を握り込み、手のひらに勢いよく打ち付けた。

 

「かかってこい、小娘(ポニーちゃん)!」




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パパパパパウワードドン

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