驀進王に憧れてトレセン学園に来たダメダメな私が3つの玉座の女主人と称えられるまで   作:八幡悠

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044 東京レース場 安田記念(G1) 芝 1600m 晴 良 左(前編)

6月3日 東京レース場 第11レース

安田記念(G1) 芝 1600m 良

 

 

『先ほどまで晴れておりましたがちょっと雲が出てまいりました、春のマイル王者が決まる安田記念の発走が迫っております』

『実況席には解説として皇帝の導き手、園部トレーナーをお呼びしております。よろしくお願いします』

『よろしくお願いします』

 

 ターフビジョンにはゲート前に集まってきている出走ウマ娘が映し出されている。

 

『人気は高松宮記念を取ったスズカフェニックス、マイルCSと天皇賞秋を勝ったダイワメジャーが1、2番人気。3番人気にマイラーズCを勝ったコンゴウリキシオー、4番人気に香港勢ジョイフルウィナーがつけております』

『ここはやはりただ一人クラシック級から殴り込んできた5番人気ノルデンセミラミスも気になるところですが』

 

 上位人気にはやはり直近でG1を勝ったり同条件の重賞を勝利した面々が並ぶ。

 そんな中、クラシックG1とはいえ連勝しているノルデンセミラミスの順位がここというのが微妙な評価を反映していた。

 

『解説の園部トレーナーは如何ですか』

『前走のNHKマイルでは強いレースをしていましたからね。ただ、それがシニア級に通用するかと言えば、経験と地力の差はいかんともしがたいでしょう。落ち着いてうまく最後まで脚を溜められればあるいは』

 

 ベテラントレーナーである園部の目からしても厳しい戦いになるというのが予想だった。

 

『なるほど。ではスタート地点のほうを見ていきましょう。ずん子さん、お願いします』

『はぁい。地下バ道のほうで少々トラブルがあったようで集合が遅れていましたが、発走は定刻通りとなりそうです』

 

 スタート地点付近に待機していた女性リポーターにマイクが移る。

 

『各ウマ娘の様子はいかがですか?』

『先程、パドックからの移動中にダイワメジャーとジョイフルウィナーの間で口論があったとのことですが、少々睨み合ってはいるものの遺恨があるといった風ではありませんね』

『なるほど、トラブルとはそれですか』

 

 ここでトラブルの内容がレポーターの口から明らかになった。

 

『どうも、ジョイフルウィナーがノルデンセミラミスに絡んだのをダイワメジャーが割って入って口論になったようですね』

 

 それを聞いた解説席では失笑が巻き起こる。

 

『痴話喧嘩か何かですか? まったく、もうシニア級も3年目でしょう? もう少し落ち着いてほしいですね』

『あるいは外人と口論できる語学力を褒めるべきかもしれませんよ。確かジョイフルウィナーはオーストラリア出身です』

『サンデー仕込みの英語となると放送に乗らないところで良かったかもしれませんがね。他のウマ娘についてはどうですか?』

 

 教官としてトレセン学園に赴任していたサンデーサイレンスの口の悪さはレース業界では有名だった。

 それこそレポーターのずん子と並んで生放送でのフリートーク禁止令が出るほどには。

 

『そうですね。クラシック級から殴り込んできたノルデンセミラミスですが、パドックでのにこやかな様子から打って変わって研ぎ澄まされたようなただ一点を見つめて集中した雰囲気です。熱視線の先は……ダイワメジャーですね。ちょっと居心地が悪そうです』

 

 ホの字でしょうか、などと言い出したリポーターに苦笑しながら解説もこたえる。

 

『ダンスインザムードの件といい、よくよく桜花賞ウマ娘と縁がある。罪作りなウマ娘ですねダイワメジャーは』

『確か彼女らは寮で同室だったかと思いますが……妹のダイワスカーレットとウオッカといい、同室同士で対決するとなるとやはりやりにくいでしょうね。園部さんはどうお考えですか』

『……これは、吉富にしては思い切った手を切ってきたな。このレース、もしかしたらもしかするかもしれませんよ』

 

 微笑ましいものを見るような雰囲気のなか、予想外に真剣な表情をする園部トレーナー。どういうことかと実況が聞き返そうとしたところで、音楽隊がファンファーレを演奏し観客が手拍子で応える。

 いよいよ発走の時間となろうとしていた。

 万雷の拍手の下、URAの正装に身を包んだスターターが昇降台に乗って持ち上げられていく。

 

『豪フューチュリティステークス、ドバイDF、チャンピオンズマイルに続くアジアマイルシリーズ最終戦でもあります安田記念、いよいよ発走となります』

 

 内枠奇数番から順にゲートへとウマ娘が収まっていく。

 

『園部さん、展開はどのように予想されますか?』

『そうですね、コンゴウリキシオーかマイネルスケルツィがハナを切るでしょう。先行はダイワメジャー、すぐ後ろにノルデンセミラミス。スズカフェニックスや香港勢は後ろからのレースとなるでしょう』

『なるほど』

『いやぁちょっとね、面白くなってきたかもしれませんよこれは』

 

 実況と解説がそんな話をしている間にも奇数番のゲート入りは着々と進み、残るは半分。偶数番のゲートインが始まっていた。

 

『おっと、2番ダイワメジャー、ちょっと渋っていますね。やや落ち着かない様子』

 

 それを見た緑の制服の職員が数名集まってきて宥めすかす。

 

『係員に促されて今入りました。4番ノルデンセミラミス、6番ザデューク、8番スズカフェニックスと順調に入っていきます』

 

 一部スムーズではなかったものの、全体的にはすんなりとゲートイン。

 

『第57回安田記念、スタートが切られました!』

 

 ゲートが開いた。




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ずん子:ノーリーズンではない。名字は東北でもない。

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