驀進王に憧れてトレセン学園に来たダメダメな私が3つの玉座の女主人と称えられるまで   作:八幡悠

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079 若き春秋マイル女王とお茶会

 アダフェラチーム室、ミーティングスペース。

 

 

 マイルCSから数日が経った。

 メジャーさんは、変わらずメジャーさんだった。

 態度が変わったわけでも、距離ができたわけでもない。

 それなのに、あの夜のやり取りだけが時々、思い出される。

 

 

 そんな折、お世話になっている先輩方から、お茶会でもどうですか、とのお誘いを受けてこの場に集まっていた。

 場所はいつものチーム棟のチームルーム。メンバーは正面に座るフライトさんに加えて、少し席を外しているがゼファーさんとバクシンオーさんだ。

 

 

「……やっと、ここまで来たのね」

 

 フライトさんの万感がこもったような言葉に、思わず背筋が伸びる。

 やっとという響きが、長く見守られていた証のように聞こえた。

 

「春も秋も勝った。マイルで誰にも文句を言わせない勝ち方で」

 

 胸の奥が少し熱くなる。フライトさんにそう言われて、ようやく実感が追いついてきた気がした。

 ああ、この人に認められたのだ。入学以来ずっと目をかけてくださったこの人に。

 その感覚だけで、十分すぎるほどだった。

 

「もう誰かのコーディネートを真似る時期じゃない」

 

 フライトさんはそう言って表情を引き締めた。

 柔らかな微笑みはそのままに、瞳が真剣な色を帯びる。

 

「これからはあなた自身のスタイルを作っていく番だよ」

 

 胸の奥が、すっと軽くなる。

 自分の番──自分なりの戦法で、自分なりの勝ち方で、より洗練された強さを。

 フライトさんに選ばれた、認められた。そんな誇らしい思いでいっぱいだった。

 

 小さく息を吸い、頷く。

 

「……はい。もっと強くなります。誰の真似でもなく、勝てるように」

 

 フライトさんはそれ以上、何も言わなかった。

 ただ、穏やかに微笑むだけだった。

 

 

 席を外していたお2人がお盆と袋を持って部屋に入ってくる。

 バクシンオーさんの持つお盆には湯気の立つ湯飲み。ゼファーさんは幸味庵と書かれた紙袋を携えている。

 

「このたびのレース、雄風に帆を立てゆく様は見事でした」

 

 ゼファーさんが静かに口を開く。

 えっと、レースのペースに飲まれず逆に乗りこなす様は見事でした、だろうか。

 

「風のまにまに漂いて、高嶺颪(たかねおろし)の如く吹き下ろす」

 

 これは、状況を見て立ち回り、機をとらえて急襲する、で間違いないだろう。

 

「そんな凄風(せいふう)の如きウマ娘は今や貴女くらいのものかもしれません」

 

 そんな強いウマ娘、あるいはダイタクヘリオスさんのようなウマ娘は、今やあなたぐらいかもしれません。

 ……この訳で本当にあっているのだろうか。ものすごく褒められている気がする。

 

「……よくやりました。練習通りに、実力を遺憾無く発揮できていましたよ。あらためまして、おめでとうございます」

 

 あってた。

 ──ずっと練習に付き合ってもらっていたゼファーさんの目から見ても、マイルCSは良い出来だったらしい。

 それが、思ったより誇らしく、嬉しかった。

 

 

「私からも、セミラミスさんっ! おめでとうございます!!」

 

 ずいっ、と身を乗り出してそう祝福してくださったのはバクシンオーさん。

 

「先に抜け出して粘るウマ娘を外から一気に差し切る、それはあたかも翼が生えたような! 素晴らしい内容でした! 」

 

 その勢いに思わず半歩下がってしまう。

 

「もう見ていて年甲斐もなく熱くなってしまいまして! 本当に、1マイルは短すぎます」

 

 そうバクシンオーさんは根っからのスプリンターらしい表現……あれ、短すぎる? 逆では? まあいいか。

 とにかく私の走りを見て感じ入ってくださったらしい。

 

「本当に、素晴らしいバクシンでした! 速くて、強くて、これは先が楽しみですねッ!」

 

 とにかく花丸ですッ、と満面の笑みで褒めてくださった。

 

 

「……皆さん、ありがとうございます。そう言ってもらえて嬉しいです。私にとっては、1マイルがちょうど集中できる距離でした」

 

 私は3人に頭を下げる。

 

 よくよく考えれば、どうして私なんかにこんなレジェンド級のみなさんが目をかけてくださるのか。

 ゼファーさんはまだわかる。吉富トレーナーのチーム所属なのだから、トレーナーさんの教え子を指導するのはある意味自然だ。

 あの日、無謀にも生意気な宣言をかました小娘にこんなに目をかけてくださったバクシンオーさんの度量の深さには感謝してもしきれない。

 さらに言えば、フライトさんなどはよくよく考えれば私に目をかける理由などありはしないのに。それをここまで心を砕いてくださるのだから、聖母のようなものだろう。

 

 恐れ多くて何故お2人は私なんかに、とはついぞ聞けていない。

 

「さあ、行きつけの和菓子屋さんで買ってきたんだ。セミラミスちゃんから選んで選んで」

 

 ゼファーさんから受け取った袋から人数分の和菓子が取り出される。

 練切、栗金団になぜか季節外れの桜餅が関東風と関西風の2種類。たぶん関東風の長命寺はバクシンオーさんのだろう。

 

「楽しみですねッ! 早く食べたいですッ!」

「もうバクシンオーちゃんったら、もうちょっとなんだから待て、だよ」

 

 そう言っていつものようにお2人はいちゃついている。

 バクシンオーさんったら、たかが桜餅でそんな捕食者みたいな顔しないでくださいよ。

 

「ふふ、私は残ったので結構ですよ。どれでもおいしく味わえますので」

 

 その点、ゼファーさんは泰然としてて大人って感じだなと思う。たまに子供っぽいところもあるけど。

 そんなことを考えながら私は、ふと思い立って関西風の道明寺を選んだ。

 それぞれの前に和菓子が行き渡る。バクシンオーさんはやはり長明寺を選んだ。

 

「バクシンオーさん、よろしかったら半分いかがです?」

「よろしいんですかっ!? ありがとうございますッ!!」

 

 クロモジをナイフのように使って真っ二つに切り分け、片方をバクシンオーさんの口元に運ぶ。

 

「食い千切られないように気をつけてくださいね」

 

 笑みを浮かべたバクシンオーさんが大きく口を開けて私の差し出した桜餅にかぶりつくのと、開いていた扉からトレーナーさんが顔を出すのがほとんど同時だった。

 

「そんな、バクシンオーさんをサメかなにかみたいに」

「いえ、冗談ではないのですが……まあいいでしょう。ああ、フライトさん、お菓子の差し入れありがとうございます」

「いえいえ、いつもお邪魔していますので」

 

 お菓子のお礼に来たのかと思えば、どうやら私に用があるらしい。

 

「話は2つ。ああ、食べながらで結構です。まずは、来週の面談で来年のローテを仮組みしますので希望があれば考えておいてください」

 

 そうか。もう年末、来年のローテーションも組んでおかなくては。

 

 今年の私はもうマイルCSを最後に走るレースはない。

 香港スプリントを走る案もあったが、ウマインフルエンザの流行の影響で出走のためにワクチンの追加接種が必要になり、接種タイミングがマイルCSの調整時期に被ったため回避することが決まっていた。

 マイルとスプリントで招待状は来ていたので残念だったが。

 

「来年からはシニア級です。周りも、見る目も、全部変わります」

 

 トレーナーさんの声音は世間話でもするかのように変わらない。

 

「だから今は、走ることだけを考えなさい。それができる間は」

 

 そう言ってトレーナーさんは言葉を切る。

 

「もう1つですが、期間限定で新しいチームメンバーが加入します。有記念の1戦のみですが、練習にお付き合いいただくこともあるでしょうからご紹介しておきます」

 

 1戦のみ、ということはおそらくチームで複数が同じレースに出走する事になったので代打、ということだろう。

 有記念は2500mなのに私たちが練習に? と一瞬疑問に思ったがそれはスルーした。

 

 こういってはなんだが、トレーナーさんはよくそういう他のトレーナーに二股かけられてポイされたウマ娘を拾ってくる。

 だから、代打屋という評価はともかくNTR(ナリタトップロード)役というのは不当評価だ。

 うんうん、それ(頭真っ白)はアスケラのトレーナーが悪いね、じゃあ勝つね、というのが正しい。

 

「セミラミスさん、なにか不埒なことを考えてはいませんか?」

「いえ」

「なら結構です。今来ていただいているので、折角ですからご紹介します。どうぞ入ってください」

 

 そこに現れたのは、思いも寄らない、しかしてよく知っているウマ娘であった。




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突撃お前が晩御飯。

一体チームに加入するウマ娘は誰なんだ……

スターブロッサムは今濃厚なバクフーが続いてるので全員見てください。今なら無料です。

【フレーバー】レヨネット(主人公妹)の戦績【興味本位】ストーリーには影響しない&現時点でプレイアブルのネームドキャラの勝ち鞍には影響しないんで雰囲気で選んで大丈夫です。後選ばれたら絶対こうみたいな話でもないです。

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