「《号笛の奏者 ビルニスタ》」
「《大望の翼 ソエル》」
先攻はヒカリちゃんからだ。さて、どうするか。
「私のターン、ドロー。《愛琴の奏者 アドルファス》へライド。エネルギージェネレーターをセットしてターンエンド」
ライドデッキからアドルファスへライド。手札から捨てたのは《偏歴の剣聖 アイディラス》。山札へ戻すノーマルユニットをドロップへ貯めているのか。
「俺のターン、ドロー。《風巻の斥候 ベンテスタ》へライドして、エネルギージェネレーターをセット。エネルギーチャージ(3)を行い、ライド時に手札から捨てた《ディヴァインシスター びすこってぃ》 のスキルを発動! エネルギーブラスト(3)を行い、一枚ドロー。ソエルのスキルで更に一枚ドローする」
これで手札を抱え込めた。軽く攻め込んで様子を見るか。
「《エーリアル・セージ》を右列にコールしてバトルだ。ベンテスタでアタック」
「ノーガード」
ドライブチェックはノートリガー。先ずはヒカリちゃんに一点のダメージ。落ちたのは《時の運命者 リィエル=アモルタ》か。
「セージでアタック」
「《シーケンス・ウィザード》でガード」
「ターンエンドだ」
ガードしてくるか。一先ずはリィエルを一枚落としてペルソナライドの可能性を減らせたから良しとしようか。次はヒカリちゃんのターンだが、どう動くか。
「私のターン、ドロー。《麗弦の奏者 エルジェニア》にライド! アドルファスのスキル発動! ソウルブラスト(1)する事で二枚ドローし、手札からノーマルユニット《サルヴァール・ドラゴン》を捨てる。更にライド時に捨てた《スパイラルキューティ・エンジェル》のスキル! ソウルブラスト(1)とこのカードを山札の下へ戻し、一枚ドロー! 更に《偏歴の剣聖 アイディラス》と《アライト・イーグレット》をコール」
右列にアイディラスとイーグレット。ほどほどに殴ってくるつもりかな。ならここでダメージを二点貰っておこうか。
「エルジェニアでアタック!」
「ノーガード」
ドライブチェックはノートリガー。先ずは一点目。落ちたのは《ディヴァインシスター ふぃなんしぇ》か。
「イーグレットのブースト、アイディラスでアタック!」
「ノーガード」
クリティカルトリガーが出なかったからこの攻撃も許容する。これで予定通り二点ダメージ、と。
「ターンエンド。……ねぇ、あなたは一体何をするつもりなの?」
「目的は既に言っているだろう? 君を救う。ただそれだけだ」
「このファイトに乗ったのも、その為なの?」
「あぁ。全て必要な事だとも。どういう意味かは、すぐに分かるさ」
全てはヒカリちゃんを救う為に。また取り零してしまったと絶望したが、機会に恵まれた。もうこれ以上のチャンスは存在しないだろう。
今だ。今なんだよ。たとえ自分自身の命を砕き、燃やし尽くそうとも……ヒカリちゃんを救うのはもう今しか無いんだ。必ず助けてみせる。時間の矯正力に、今度こそ攫われてたまるかよ!
「俺のターン、スタンド&ドロー!」
さて、次のターンに備えて準備を進めていくか。
「《躍進の騎士 アゼンシオル》にライド、スキルで中央後列にベンテスタをコール。セージを後列に移動させ、《ディヴァインシスター ふぃなんしぇ》をコール! スキルでソウルブラスト(1)を行い、《
《大望の翼 ソエル》 をソウルブラストし、ライドコストとして《優麗の騎士 ノーヴィア》を捨てる。
「《
「ターン中一回だけ、リアガードをガードに回すセットオーダーだ。まぁ、この効果でガードしたらバインドされるけど」
一回限りのガード。だが、レザエルの特性と合わせると中々面白い事になる。
「ベンテスタのブースト、アゼンシオルでアタック」
「ノーガード」
ドライブチェックでトリガーは引けず、ヒカリちゃんに二点目のダメージが入る。
「セージのブースト、ふぃなんしぇでアタック」
「ノーガード」
これでダメージが三点目になった。落ちたカードは《時の運命者 リィエル=アモルタ》。
幸先が良すぎる。これでヒカリちゃんの山札にはもうリィエルが一枚しか残っていない。
「クッ……!」
ヒカリちゃんの顔が一瞬歪んだ。手札にまだ引いていないのだろう。このままだとペルソナライドだけじゃなく、ディバインスキルも使えない。
《時の運命者 リィエル=アモルタ》のディバインスキルは過去へ跳躍する力だ。攻撃後にドロップから同名カードにライドし直して連続攻撃を行うもの。強力なディバインスキルだが欠点もある。
彼女の力は、過去に跳躍出来る自分自身が居てこそ成り立つ。今のままではリィエルの強みの半分を失っているようなものだ。
「ターンエンド」
「私のターン、スタンド&ドロー!」
それでもヒカリちゃんは諦めないだろう。彼女の眼は死んでいない。必ず勝つという気迫を感じる。
「ケントさん。宿命決戦を奪ったのは、シヴィルトを滅ぼす為だったよね?」
「最初はそうだな。思えば、魄山の術式を調べていた事で目を付けられていたんだろうさ」
シヴィルトは宿命決戦の余興にすると言っていたか。一体何をするつもりだったのかはもう分からない。シヴィルトは未だに沈黙したままだ。あれはもう、何も語らないだろう。
「じゃあ今は? 私を救うと言ってるけど、シヴィルトはどうでもよくなったの?」
「……あぁ、なるほど。そう言う事か」
あれ程までに俺を苛んでいた悪意は既に感じられない。あるのはただヒカリちゃんを救わなければならないという使命感。或いは、この機会を逃せば手遅れになるのではと言う焦燥感。
飢餓感を覚える程の狂おしい殺意は欠片も感じられない。頭を切り替えたと言うには無理がある。つまり、これが精神汚染の特徴でもあるのだろう。自分の心が抱く、一番叶えたい願いを増幅させ、行動に移させる。
悍ましい。吐き気がする。この在り方が生物にとって正しいのだと、シヴィルトは信じているのだろうか。もしそうなのだとしたら、あれはもう共存出来ない化け物でしかない。
「そうだ。俺はもう、シヴィルトの事はどうでもいい。だがこの舞台が、宿命決戦がヒカリちゃんを助ける為に都合が良かったんだ。……偶然の産物だけどね」
「じゃあ、私を救ってくれたら――あなたは死ぬの?」
俺は、ヒカリちゃんのその問いに答えを返せなかった。やはりと言うべきか、彼女は気付いている。彼女を救う為に俺の命を燃やそうとしている事を。
この事は今生の誰にも伝えていない筈だ。過去の輪廻でガブエリウスに話した事はあるが、そんな情報など俺以外の誰も知らないだろう。
「何となくだけどさ。……今のケントさん、私にそっくりだよ」
「そうか。あぁ、そうだったな。君は自分が消滅する事を承知で、過去へと来たんだったな。……だったら、説得は無理だと言う事も当然分かっているだろう?」
「もちろん。だから私は今、あなたの前に立っているんだ!」
そう言うと彼女はライドデッキから一枚のカードを掲げる。それこそが、彼女をここまで連れてきた運命者カード。
「私は勝つ! 勝って、あなたの無茶も止めてみせる! 決意の翼、未来よりここにッ!! 《時の運命者 リィエル=アモルタ》に――ライド!!」
彼女の言葉は自分の決意に満ちていると同時に、どこか悲鳴のようにも聞こえた。
「エルジェニアのスキル! ドロップのノーマルユニット三枚を山札の下に戻し、一枚ドロー!」
ドロップに落ちていた《偏歴の剣聖 アイディラス》《シーケンス・ウィザード》《サルヴァール・ドラゴン》を山札に戻される。
「《サルヴァール・ドラゴン》をコール!」
《サルヴァール・ドラゴン》……これで、リィエル主軸のデッキにおけるメインアタッカーが二種類揃ったか。
「イーグレットのブースト、アイディラスでアタック!」
「ノーガード」
これで俺のダメージは三点。このターンは四点までは許容できるかな。
「リィエルでアタック、そしてスキル発動! カウンターブラスト(1)する事でアイディラスをバインドし、山札からアイディラスをコール! アイディラスがバインドされた時、ソウルブラスト(1)する事で一枚ドローし、リィエルのパワー+5000!」
合計でパワー18000か。それならふぃなんしぇと手札のクリティカルトリガー1枚……合計35000でガードしておくか。
「セットオーダー、《
「ツインドライブ! ファーストチェック……ゲット、ドロートリガー! 一枚ドローし、サルヴァールのパワー+10000!」
トリガーを踏んだか。ただ、二枚目は無いと踏んだのかリアガードへパワーを割り振っている。ならばこの攻撃はヒットしない事は確定した。
そのままヒカリちゃんはセカンドチェックを行うが、案の定ノートリガーだった。俺はセットオーダーの効果で(G)に出したふぃなんしぇをバインドさせる。
「サルヴァールでアタック!」
「ノーガード」
ここでガードはしない。ガードするのは次のアイディラスの攻撃だ。
「ダメージチェック」
山札の上からカードを捲ると、ヒールトリガーである《悠音の運び手 アラウヌス》が見えた。これはラッキーだ。次のアイディラスの攻撃はガードせずに素通しさせようか。
「ゲット、ヒールトリガー! アゼンシオルのパワー+10000、ダメージを回復!」
ダメージゾーンにあるふぃなんしぇをドロップに落とし、これで俺のダメージは三点から変わらない。
「アイディラスでアタック! アイディラスのスキル、同名カードがバインドされている時、自身のパワー+10000!」
「ノーガード」
最終的にダメージは四点。ここまでは想定通りの展開だ。
「ターンエンド」
ヒカリちゃんの手札は九枚。このターンで出来る限り削っておきたいが……。
「俺のターン、スタンド&ドロー!」
思えば、最初にレザエルと出会ってから既に永い時が過ぎた。過去の輪廻の中で、運命者カードの所有者になった時にイメージの中で運命者と対面したという話を聞いた事がある。
俺は二回目の運命大戦で《奇跡の運命者 レザエル》の所有者に選ばれているが、そんな経験はした事が無い。レザエルの本来の所有者はアキナであり、俺は仮の所有者という事なのだろう。
このファイトが終われば俺の命脈が尽きる。そして、最悪の場合は次の輪廻などなく世界から消滅する。ヒカリちゃんを救う為とは言え、こんな自己満足の自殺に、果たしてレザエルを巻き込んでも良いのだろうか。
「……いや、もう今更か」
たとえレザエルに憎まれようとも、俺は俺のやりたいようにやるだけだ。ヒカリちゃんを救い、問答無用のハッピーエンドを手繰り寄せる。その為に俺はここまでの旅路を歩んで来たのだから。
そう考え、ライドコストの為に手札を捨てようとした瞬間──俺の意識はファイト場から別の場所へとんでいた。
「ここは……ケテルサンクチュアリ、なのか?」
空を飛ぶ荘厳な白亜城。そして目の前には《奇跡の運命者 レザエル》が居て、俺を見つめている。そうか、これが運命者との出会いか。
「……お前は、俺の自殺を恨まないのか?」
レザエルは何も言わず俺に手を差し伸べるだけだ。ただそれだけで、レザエルの意志を俺は感じる。共に彼女を救おう、と。たとえこの身が滅びるとしても。
「そうか。なら俺はもう迷わない。──共に逝こうか、レザエル!」
レザエルの手を取った瞬間、俺の意識は魄山の大舞台へと戻っていた。周りの様子からそれほど時間も経っていないらしい。
ライドデッキの最後のカードを掲げて宣言する。さぁ、
「希望の大翼、久遠の彼方より来たれッ!! 《奇跡の運命者 レザエル》へ――ライド!」
最後に勝つのは、この俺だ。誰にも邪魔はさせない!
明日に後編を更新します。