──<明導ヒカリ(未来)Side>
心臓の音が聞こえる。手札を握る手に力がこもる。
彼がヴァンガードに捧げてきた時間は文字通り桁違いだ。努力や積み重ねを強さの理由にするファイターの、その極致と言ってもいい。
勝ち目は薄い。だけど勝つしかない。勝たなきゃ、あの人は精神汚染に溺れたままだ。
「希望の大翼、久遠の彼方より来たれッ!! 《奇跡の運命者 レザエル》へ――ライド!」
お兄ちゃんと同じ運命者カード。けれどお兄ちゃんとはデッキ構築が大きく違っている。
セットオーダーでインターセプト以外にリアガードをシールドへ変換するギミックが思ったよりも厄介だ。
「アゼンシオルのスキル発動! ドロップから《優麗の騎士 ノーヴィア》をコール! 更にノーヴィアのスキルでカウンターブラスト(1)する事で、山札の上三枚からユニットをコールする」
ライドされたアゼンシオルのスキルで山札のカードを見たケントさんの顔が僅かに歪む。少し考えた後、コールしたユニットは予想外のものだった。
「……《栄典の光竜神 アマルティノア》をコール。更に手札から《迅弓の騎士 ニルベリス》をコールし、《
《栄典の光竜神 アマルティノア》──よりによってオーバートリガーをデッキから抜いた。他の二枚は絶対にデッキから抜きたくなかったとなると、クリティカルトリガーかヒールトリガーだったのだろう。
セットオーダーでシールドに変換するとそのカードがバインドされるから、レザエルで戻せるクリティカルやデッキの防御力に直結するヒールトリガーを避けた結果だろうか。
「セージのブースト、ニルベリスでアタック!」
「ガード!」
「ニルベリスのスキル! バトル終了時にエネルギーブラスト(3)とこのユニットをソウルに置き、一枚ドローして山札の上を見て……下に置く」
手札のヒールトリガーでガードを選択するものの、ニルベリスのスキルで一枚カードを掘り進められた。
「ベンテスタのブースト、レザエルでアタック! レザエルのスキル発動! ふぃなんしぇとソエルをコールし、セージは退却!」
「二枚でガード! 《天音の楽士 アルパック》のスキルでシールド+5000!」
「……ツインドライブ!」
《イニュクリエイト・エンジェル》と合わせて合計25000シールド。レザエルのパワーは23000だから、これでガードはほぼ成功するだろう。
その考えを裏付けるように、ファーストチェックではトリガー無し。だけど……。
「セカンドチェック……ゲット、クリティカルトリガー! ノーヴィアのパワー+10000、クリティカル+1! 続けていくぞ! アマルティノアのブースト、ノーヴィアでアタック! ノーヴィアのスキル発動! ソウルブラスト(1)する事でこのバトル中パワー+10000!」
「二枚でガード! 《加護の魔法 プロロビ》のスキルでシールド+5000!」
ニルベリスがソウルブラストされて、ノーヴィアのパワーは35000。プロロビ──ドロートリガーとヒールトリガーを合わせて合計シールド25000でガードを行う。
「ソエルのブースト、ふぃなんしぇでアタック!」
「ノーガード!」
「ターンエンドだ」
これで私に四点目のダメージが入る。落ちたカードは《ペインキラー・エンジェル》。リィエルはまだ残ってる。
次のターンで引けなければ勝機はほぼ無いだろう。……だからと言って、それが諦める理由にはならない。
「私のターン、スタンド&ドロー! 更にジェネレーターのスキルで一枚ドロー! イーグレットをコール!」
最初のドローで引けなかったので、ペルソナライドは行えない。ジェネレーターのスキルも使ってドロー機会を増やすものの、リィエルが手札に来ない。
それなら、もうこのまま攻める! アイディラスの枚数は山札に二枚。ダメージに落ちる可能性も考慮して、ここはサルヴァールにリィエルのスキルを使う!
「イーグレットのブースト、サルヴァールでアタック!」
「一枚目の聖歌の効果でふぃなんしぇを(G)へ、手札からもう一枚追加して合計25000シールド!」
ヒールトリガー込みで25000シールドで防がれた。でも!
「リィエルでアタック! リィエルのスキルでサルヴァールをバインド! 山札からサルヴァールをコール!」
「二枚目の聖歌を発動! アマルティノアを(G)へ移動! 50000シールドでガードだ!」
ツインドライブを行うが、リィエルもトリガーも引き当てる事が出来なかった。
「ック、イーグレットのブースト、アイディラスでアタック!」
「ノーガード」
これでケントさんのダメージは五点。あと一点!
「サルヴァールでアタック!」
「ガード!」
最後の攻撃はクリティカルトリガーの15000シールドで防がれた。
「ターンエンド……ッ」
状況は悪い。次はほぼ確実にペルソナライドからの猛攻が来る。その上、たとえ防げたとしても次の私のターンでダメージを入れられる程のリソースが残るだろうか?
勝機を残す為にアイディラスは温存している。けれど、それは私のターンで一枚しか残っていないリィエルを引く事が前提となっているプレイングだ。
それでも……それでも、私は──ッ!!
「あえて他人事のように言うけれど……随分必死だね」
「……ッ!」
「助けたい。救いたい。そういう気持ちは理解出来る。今の俺も、君を救いたいと心から願って行動しているし、その気持ちに嘘は無い。たとえシヴィルトの精神汚染が無くても、俺は同じように行動しただろう」
ケントさんの独白が続く。
「だけど、君が俺を必死に止めようとするのはどうしてだ? 俺がヒカリちゃんに生きていて欲しいと願うのは、君に恋をしたからだ。君の事が愛おしくてたまらないから、生きて笑ってほしいと願うんだ。……ヒカリちゃん、君はどうだ?」
「目の前で死のうとする人間を止めようとするのは悪い事なの? ましてや、あなたは──」
「アキナの、君の兄の友人だから? 君の過去に俺自身が居たのかすら分からないのに、それでも君は手を伸ばすのか?」
「当然でしょ!」
私の言葉に彼は深々と溜息を吐いて、光が消えた目で私を見据えた。
「俺は、君に救われるような人間じゃないんだ。そうだな……昔話をしようか。過去の、俺が踏破した輪廻の旅路の話を。……薄々気付いているとは思うがね」
「一体何を……?」
「初めて会った時の事を覚えているかな? タイゾウさんの会社のビルの屋上で」
覚えている。いきなり名前を呼ばれて私が仮面を落としてしまった時の事だろう。あの時、彼は何と言っていただろうか。
『かつて俺は二回目の運命大戦に参加し、勝ち残りました。奇跡の運命者カードの所有者として』
確かこう言っていた。二回目の運命大戦を勝ち残ったと。それはつまり──。
「──私にも勝ったんでしょ?」
「そうだ。俺が歩んで来た輪廻の中で、二回目の運命大戦に参加した時は必ず勝ち残った。俺が願いを踏み躙った人の中には……当然、ヒカリちゃんも居たよ」
「……ちょっと待って」
それはおかしい。別の世界の明導ヒカリに勝ち、彼が願いを叶えたならば……どうして私を救う事に必死になるのか。
レザエルの奇跡で願ったのは、明導ヒカリの治癒では無かったのか? だが、彼がそれ以外にレザエルへ願う奇跡が思いつかない。
「あなたは二回目の運命大戦で明導ヒカリの治癒を願ったんじゃないの?」
「もちろん願ったさ。ヒカリちゃんに勝ち、その身体を癒して……そしてどうなったと思う?」
もしも。もしも私が運命大戦で負けていたら、その時はどうしていただろう? お兄ちゃんを救う事が出来ない私の末路は……。
「死んだよ。かつての輪廻で俺が願いを叶え、病気が治ったヒカリちゃんは……自ら命を絶った。例外は無い」
その言葉に私は驚くよりも先に納得した。願いを挫かれた私がお兄ちゃんの居ない世界で生きていけるイメージが出来ない。
「俺は止まらない! 止まれないんだよ!! 俺はこの旅路で、ヒカリちゃんを救うと誓いながら愛する女性を殺し続けた罪人だ! ここで君を時間の矯正力から救う事を諦めてしまったら、彼女達の犠牲が無駄になってしまう! それだけは絶対に許されないッ!」
「……それでも私はあなたが犠牲になる事を望まない! だってそれじゃ、あなたが……ケントさんが救われないじゃない!!」
「いいや、それは違う。君が笑っていられる未来があるだけで俺は救われるんだ! アキナを喪った世界でヒカリちゃんは生きてくれなかった! だけどこの世界は違うッ!! 君が救ったアキナがいる! 君とは違う未来を歩いて行けるヒカリちゃんもいる!!」
彼の言葉に熱が宿る。執着と言う名の熱が。
「ずっと考えていた。アキナが救われたならヒカリちゃんも生きてくれるだろう……なら過去へ跳んだヒカリちゃんは? アキナの居ない世界では生きられなかった彼女でも、アキナが救われた世界なら生きてくれるんじゃないか?」
「それは……」
「否定は出来ないだろう? 俺はヒカリちゃんが生きる理由になれなかった。俺では
既に覚悟が決まっている。それが素面なのか、精神汚染による狂気の産物なのかは分からないけど……少なくとも、彼は本気で私を救う為に命を捧げようとしている。
「俺のターン。スタンド&ドロー……行くよヒカリちゃん! 《奇跡の運命者 レザエル》をペルソナライド! 更にノーヴィアをコール! スキルにより山札から《黄宝獣 トールパーズ》をコール! トールパーズのスキルは使わない」
聖歌でシールドに変換されたリアガードが再び埋まる。
「俺が誇れるものはただ一つ! 旅路と共に積み重ねたこの
奇跡は掴むものではなく、簒奪するものなのだと彼は言う。
「奇跡──轟臨ッ! ディバインスキル発動! ソウルブラスト(1)する事でドロップのクリティカルトリガーを全て山札へ戻し、ドライブ+1!」
レザエルの奇跡が駆動する。最後の砦にして殺意の刃。彼はこのターンで私の七枚の手札を叩き落としに来た。
「ソエルのブースト、ノーヴィアでアタック! ノーヴィアのスキルでパワー+10000!」
「二枚でガード! プロロビのスキルでシールド+5000!」
パワー36000に対し、プロロビとクリティカルトリガーの合計25000シールドでガード。これで私の残りの手札は後五枚。
「ベンテスタのブースト、レザエルでアタック! スキルでニルベリスとセージをコールし、ノーヴィアとソエルを退却! レザエルの効果でニルベリスがコールされたので、ニルベリスのパワー+10000!」
「完全ガード!」
残り三枚……!
「トリプルドライブ!」
ファーストチェック、セカンドチェックは共にノートリガー。けれど《衛護の運び手 ケスラン》が──完全ガードが見えた。
「サードチェック……ゲット、クリティカルトリガー! ノーヴィアのパワー+10000、クリティカル+1!」
クリティカルトリガーが捲られた。これで攻撃を通せるのはニルベリスのみ。
「セージのブースト、ニルベリスでアタック!」
「ノーガード!」
私に五点目のダメージが入る。もう後が無くなった。
「ニルベリスのスキルで一枚ドローし、山札の上を確認し……上に置く。トールパーズのブースト、ノーヴィアでアタック! スキルで更に+10000!」
「もう一枚、完全ガード!」
「ターンエンド」
これで手札も一枚。次の私ターンで全てが決まる。
ケントさんの手札は八枚。完全ガードが手札に入るのも見えているし、山札の一番上を確認した時に上に戻しているところを見ると、何かしらのトリガーが埋まっていると考えていい。だとすればレザエルの奇跡込みで最低二回の攻撃が防がれるし、ここまで彼の完全ガードが一枚しか見えていない事を考えるともう一枚くらいはあの手札に入っている可能性もある。
それらの防御に対してこちらのパワーが足りていない。……後一点のダメージが果てしなく遠い。
「絶望的だけどまだ諦めない、いや……諦めるわけにはいかないと思ってる?」
「……だったら、何?」
「そこまで必死になる事は無いんじゃないか? どの道、精神汚染が解けようが解けまいが俺はこの世界から消える。……意味が無い、とまでは言わないがそこまで勝敗に拘らなくても──」
「──ふざけんなァ!! 私は最後まで私の意地を通す! ケントさんが止まらないなら、私が無理矢理にでも止めてやるッ!!」
その言葉は受け入れられない。結局はこの世界の明導ヒカリと同じだ。全てを投げ捨てて誰かを救おうとしている。たとえ負けたとしても諦めてやるものかッ!!
「私のターンッ!」
私の手札は残り一枚。次に引くカード次第では、私は確実に敗北する。
山札に手を伸ばす。状況は絶望的で、逆転する可能性もほとんど残っていない。だけど……それでもッ!!
「「……わずかな光でも手を伸ばした者にのみ奇跡は舞い降りる」」
私とケントさんの言葉が重なる。ふと顔を見上げると、驚くほど穏やかな笑顔で私を見つめている。
「アキナの……俺の親友の言葉にして、この旅路を照らしてくれた星明りだ。この言葉と、君への恋を抱きながらここまで足を進めて来たんだ。……君は決して諦めない。分かっているさ。諦めてくれと言ったところで聞きやしない。一度こうと決めたら曲げない……そこもまた、君の魅力なのだけれど」
その独白に狂気は一切感じられない。少なくとも今の彼は精神汚染の影響を受けていない。
「さぁ、カードを引くといい。逆転の目がまだあると信じられるのなら」
まだ終わらない。まだ私の戦意は萎えていない。お願いリィエル――力を貸してッ!
「スタンド&ドローッ!!」
ドローしたカードを確認して──。
「ペルソナライド――リィエル=アモルタ!」
「──は、ははは……ハハハハハハハッ!! 引くか! 引いてくるのか! まさかここで! この土壇場でッ!!」
もう私がやれる事はただ一つ! このターンで決着をつける!
「《ブレードフェザー・ドラゴン》 をコールし、バトル! イーグレットのブースト、アイディラスでアタック!」
「ノーガード! ダメージチェック……ゲット、ドロートリガー! この瞬間、レザエルの奇跡が再駆動する!! そのディバインスキルによりダメージ回復! レザエルにパワー+10000!」
ケントさんの手札がこれで九枚になった。その上でパワー+10000……それでも、これ以上退く事は出来ない! 一度進むと決めたのだからッ!!
「ブレードフェザーのブースト! リィエルでアタック! リィエルのスキルでアイディラスをバインドし、山札からアイディラスをコール! アイディラスのスキルで一枚ドロー、リィエルのパワ-+5000! 更にブレードフェザーのスキル発動! 自身をソウルに置き、リィエルのパワー+2000!」
「完全ガード!」
アイディラスのスキルでソウルブラストをするのはリィエル=アモルタ。これで、ディバインスキルの準備が整った!
ケントさんの手札は残り七枚。全てを乗り越えて、必ず勝利を掴むんだ!
「時よ逆巻け──ディバインスキル発動! バトル終了時、ドロップの同名カード──《時の運命者 リィエル=アモルタ》にライド! ドライブ-1!」
過去へ跳躍するリィエルの力。これで更に攻撃を重ねる!
「イーグレットのブースト、サルヴァールでアタック!」
「二枚でガード!」
パワー46000のサルヴァールに対して、15000シールド二枚で防がれた。だけどこれで、彼の手札は残り五枚!
「リィエルでレザエルにアタック!! スキルでサルヴァールをバインド! 山札からもう一枚のサルヴァールをコール!!」
「手札の《アンブルボマー・エンジェル》でガード! 更に二枚の聖歌でソエルとセージを(G)へ移動! 合計15000シールドでガードだ!」
残り手札は四枚。お互いのヴァンガードのパワーは同じ23000同士で、15000シールドを作られた。
「先に宣言しておくけれど、今俺の手札に完全ガードが二枚ある」
「……ッ!」
はったりだ。そう思いたかったけれど、ケントさんは四枚ある手札の内、二枚をおもむろに公開する。《衛護の運び手 ケスラン》……間違いなく完全ガードだった。
「……ドライブチェックのあるリィエルに、完全ガードを使わなかったのは……」
「この局面、君は必ずトリガーを引く。かつての輪廻でもそうだった。ここぞという時に君は引き込む。さっきのリィエルのように」
それはトリガーでリアガードへパワーを割り振られる事を確信しているかのようだった。そんな狂った前提に身を任せ、委ねた。一体彼には何が見えているのだろう?
「ワケが分からない……そんな顔をしているが、何てことは無いんだよヒカリちゃん。膨大な旅路の中で得た経験則。対人メタに近いかな」
それは記憶を持ち越して並行世界へ転生し続ける彼だからこそのプレイング。明導ヒカリとのファイトで積み重なった、私にしか意味が無い対抗策。
「トリガーのパワー+10000は重い。そうなれば手札のシールド値が足りない。だからこそ、リィエルを15000シールドで止めるのが現状の最適解だ」
「……」
最適解、か。確かにこれで私の勝ちはほぼ無くなったと言っていい。ここから勝つには、もう──ッ!
「……まだ、だ」
「うん?」
「まだだッ! まだ終わっていない!! ファイトは最後まで──何が起こるか、分からないッ!!」
「……いいだろう。ならばドライブチェックをするといい。これが君の、最後のドライブチェックになる」
──心臓が跳ね回る。──息がうまく吸えない。──手が震えそうになる。
歯を食いしばり、ケントさんに悟られぬよう、私は山札にそっと手を乗せる。
「ドライブ、チェック──」
怖い。これで終わってしまうのが……彼が居なくなってしまうのが、どうしようもなく怖い。
もしも何も変わらなかったら? もしもこのファイトが無駄になってしまったら? もしも彼にかけた言葉が無意味になってしまったら?もしも、もしも、もしも、もしも、もしも──最悪の結末が次々と駆け巡っては消えていく。
冷汗が流れる量に反比例するように、恐怖心は増すばかり。私は、本当に──このまま彼を見殺しにするしか出来ないの……?
「……?」
気が付くと私の周りの景色が変わっていた。身に覚えがある。これは運命者のイメージの世界だ。
青空に浮かぶ白亜城──ケテルサンクチュアリの一角で、リィエル=アモルタが震えそうになる私の手に、そっと彼女の手で重ねてくれる。大丈夫だと。デッキを信じろと――まるでそう励ましてくれているかのように。
「このカードで、私は──運命を切り拓くッ!!」
リィエルのイメージが消えて現実に帰ってくる。今も恐怖は残っている。だけど、カードを引かなきゃ何も変わらない。
私はもう一人じゃない。それが理解出来た今、最悪な結末ばかりが脳裏に浮かんでいた私はもう居ない。この手で手繰り寄せられる未来に繋がる最高の結末を、今の私なら信じられるッ!
山札から引き、そのカードを──《栄典の光竜神 アマルティノア》を公開する。
「ゲット! オーバートリガー!! リィエルのパワー+1億ッ!!」
「な──ぁッ!!?」
私が掴み取った奇跡に、ケントさんはただ目を見開く。
油断していたわけじゃない。寧ろ警戒していたからこそのプレイング。それが一枚のオーバートリガーで悪手へ転じた。
「……ダメージチェック……」
ここでヒールトリガーを引かれれば、私はもう何も出来ない。だけど間違いなく、勝負の流れは私にある。
「ノー、トリガー……ッ!」
山札から捲られたのは《通貫の騎士 キャドワラ》……これで、彼のダメージが六点になった。
「……あぁ、このファイトは俺の負けだ。最後の最後でトリガーを引くと思ってたけど、まさかオーバートリガーを引き込むとはね」
今の彼の目に赤い輝きは無い。私が勝ったから精神汚染も完全に抜けきったようだ。
「ケントさん。色々説明してもらうから覚悟してね」
「分かっているさ。俺がやろうとしてい
そう言って彼はレザエルのカードを掲げる。同時に、私が持つリィエルのカードの紋章が輝き始めた。
ちょっと待って。今のケントさんの台詞、何かおかしかったような──。
「ケントさ……ッ!?」
「ごめんねヒカリちゃん。ファイトでは負けたけど……運命に勝つのは、この俺だッ!!」
それはかつての運命大戦のように、運命者カード同士による
話のストックが切れてしまいました。
時間がある時に書いてはいますが、更新頻度は今まで以上に不定期になるかも知れません。