なので急遽オリジナル設定をでっち上げて、ヴェイズルーグデッキを使用する理由付けにしておりますが、違和感があってもスルーして頂ければと思います。
──<
「《月の使者 レプソルト》」
「《リザードランナー アンドゥー》」
八雲カゲツのファーストヴァンガードを見て、思わず顔を顰めてしまった。
《月の使者 レプソルト》。かつての輪廻で戦った八雲カゲツと同じファーストヴァンガードだ。だが問題は時代だ。
そうなると答えは一つ──。
「そのカードは……っ」
「おっと、もしかして知っていたか? ならその予想は正しい。これはフューチャーリーグのデッキだ」
フューチャーリーグはエキシビションマッチの形式の一つだ。未来に発売するカードを採用したデッキでプロファイター同士がファイトを行うエンターテインメント。基本的にフューチャーリーグで使用されるカードは販売されている最新弾の次弾にあたるカードが使われる事が多い。
けれど何事にも例外がある。たとえば、遠い未来で施行予定のルールを採用した特殊なフューチャーリーグも珍しくない。採用ルールが悪用されないか。ゲームとしての面白さを担保出来るか。そう言った事も実践を通して調整していくという開発側の意図もあるのだろう。
現にこの時代では影も形もないエネルギージェネレーターが採用されたフューチャーリーグを俺はテレビで何度も見た事がある。ファイトを重ねる度に何かしらの調整をされていた事を覚えている。エネルギーチャージ量だったり、スキルでドローする時のエネルギーブラストの数値だったり、そもそもエネルギーチャージを行うタイミングも一番最初は違っていた筈だ。
「これから俺が君に見せるのは、いずれ来るであろうヴァンガードの未来だ。このカードを君にも渡そう。……試させてもらうよ、世界を相手にするという君の事を」
そう言って八雲カゲツから渡されたのはエネルギージェネレーターのカード。……コピー用紙を切り取って手書きで効果を書いている。あからさまな開発中のカードだった。
「さぁいくぞ! 俺のターン、ドロー。そしてエネルギージェネレーターをセット」
俺がエネルギージェネレーターを受け取ったのを確認すると、八雲カゲツが自分のターンを開始する。
「《月の従者 フレネル》にライドし、スキル発動! ライドデッキの《月の門番 ヴェイズルーグ》を公開し、山札から《月の門》をオーダーゾーンにセット! ターンエンドだ」
彼のプレイングは過去の輪廻で戦った彼のものと遜色ないものだった。この時代ではまだ使い込んですらいないデッキだろうに、よくもまぁ回せるものだ。
これがトッププロの才能というものなのだろうか。
「俺のターン、ドロー。エネルギージェネレーターをセットしてエネルギーチャージ(3)を行う」
まさかこの時代にエネルギージェネレーターを使えるとはな。とは言え、エネルギーを活用出来るカードは当然ながら入っていない。このファイトではカードを一枚ドローするだけになりそうだ。
「《鎧の化身 バー》へライド! アンドゥーのスキルで一枚ドロー!」
ライドコストとして《ドラゴニック・オーバーロード》を捨てる。オーバーロードをソウルに入れる手段が、《アルダーハチェット・ドラゴン》 か《
「バーでアタック!」
「ノーガード」
お互いにノートリガー。八雲カゲツに一点のダメージが入る。次は彼のターンだが、そろそろ月の門が動き出す頃合いだな。
「ターンエンドだ」
「俺のターン、ドロー。エネルギーチャージ(3)を行い、《月の忠臣 ラムズデン》へライド」
八雲カゲツがライドコストとして《烏輪の幻真獣 レヴノローグ》を捨てた。ヴェイズルーグの効果の準備をしているのか?
「山札の上七枚から幻真獣ユニット二枚を公開して一枚を手札へ、もう一枚をオーダーゾーンへ置く。俺は《烏輪の幻真獣 レヴノローグ》二枚を公開し、手札とオーダーゾーンへ加える」
ここまでの動きを見るに、おそらくは初期型のヴェイズルーグか。ならばレヴノローグは最大の十六枚入っている可能性が高い。結構厄介なんだよな。
「《月の門》、起動! エネルギーブラスト(3)と自身をレストさせる事で、山札の上七枚から、ヴァンガードのグレード以下の幻真獣ユニットを一枚コール出来る。レヴノローグをコールだ!」
右前列に月の門の効果でレヴノローグがコールされる。二回殴られるか。それならレヴノローグをガードしようか。
「ラムズデンでアタック」
「ノーガード」
ここでもお互いにノートリガー。俺に一点のダメージ。
「レヴノローグでアタック」
「ガード」
ヒールトリガーによる15000シールドでガードを行い、このターンのダメージを一点に抑える。ヴェイズルーグデッキは月の門を起動し続け、デッキから幻真獣ユニットをどんどん取り除いていくのが特徴だ。
それはつまり、トリガーのヒット率を自分で底上げ出来ると言う事だ。後半になればなるほどダメージ管理で悲鳴を上げる事になる。だからこそ序盤のダメージは最低限に、だ。
「ターンエンド」
「俺のターン、スタンド&ドロー」
このターンでネハーレンにライドしてバーのスキルが使用出来る。問題は何のカードを引き入れるか。
──少し、保険を引き込んでおくか。
「《ドラゴンナイト ネハーレン》にライド! バーのスキルでカウンターブラスト(1)を行い、山札からグレード1のカードを手札へ加える。俺が加えるのは、《猛火の守護者 モンジュ》……完全ガードだ」
現時点でのバーのアクセス先はフシマチマドカ、ハルブ、完全ガードの三種類だ。ただこの手札だと防御が不安だったので完全ガードを持ってきた。ハルブも握れているし、これで問題は無いだろう。
「ネハーレンでアタック!」
「ノーガードだ」
八雲カゲツに二点目のダメージが入る。次のターン──ヴェイズルーグにライドしてからが本当の勝負だ。
「ターンエンド」
「俺のターン、スタンド&ドロー。……一つ、聞いていいかな?」
「何だ?」
「もし君が努力を重ねても、大切な人を救えなかったらどうする?」
八雲カゲツの言葉に俺は沈黙で返答する。ある種の核心的な問いだと言えるが、俺の置かれたシチュエーションがあまりにも特殊過ぎる。
並行世界を転生で渡り歩き、その度に大切なものを喪い続ける体験が重なり続ける。救済の旅路に終わりはないが、その果てでもアキナやヒカリちゃんが救えなかったなら……俺は諦めるだろうか? 世界に屈し、運命に嘲笑われるままに奴隷のように生きるのか?
──そんなもの、決まっている!
「救えなかったら、だと? それは愚問だ。救うまで努力し続けるんだよッ! そもそもやる前から失敗する事を考えてどうする!? 足踏みする時間だけ手遅れになるだけだ!」
「……そうか。君は強いねぇ、まだ小学生なのにさ」
八雲カゲツにとって、ファイトマネーを注ぎ込んだ海外のぶらり旅は未知だろう。何があるかも分からないし、たった一人の女性を追いかけるにはリスクが重すぎる。だけど、そんな後付けのような情報など関係ない事は八雲カゲツも分かっている筈だ。
美夜呼ルカは既に未知の旅へ踏み出している。ならば八雲カゲツも踏み出さなければならない。自分の生きてきた文化や常識すら通用しない場所へ、自分の意志で一歩進まなければならない。
ただそれだけだ。それだけだが、それでも踏み出せないと言うのなら──俺がやれる事は一つだけだろう。
「それじゃあ、その強さが偽りじゃない事をこのファイトで証明してくれ」
「あぁ。俺が勝って、あんたを海外へ引っ張って行ってやるよ」
俺の言葉に八雲カゲツは頷くと、ライドデッキの最後の一枚を掲げる。
「立ち塞がるは黄金の星! 幻真従えし異界の番人! 心しろ、月の試練これより開幕ッ! ライド──《月の門番 ヴェイズルーグ》!!」
ついにきたか。八雲カゲツの代名詞、ヴェイズルーグが。
「《月の門》、起動! ヴァンガードがヴェイズルーグなら山札の上七枚から三枚まで選び一枚をコール、残りをオーダーゾーンへ置く」
そして呼び出されるのは当然のようにいつものユニットだった。
「汝、我が声聞こえるならば呼応せよ。一つ目の祖にして、戒めの牙となりし幻想。天を駆ける真なる獣──コール! 《第一の幻真獣 “天戒牙狼” ロズトニル》!!」
左前列にコールされたロズトニルを見てやっぱりかと嘆息する。ヴァンガードがヴェイズルーグの時にコールされると、前列のユニット一体とヴァンガードへの同時攻撃を行ってくる非常に厄介なユニットだ。
特に立て直しが難しい俺のデッキとの相性は極めて悪い。
「そして、レヴノローグ二枚をオーダーゾーンへ。更にヴェイズルーグのスキル発動! ソウルブラスト(2)を行い、《月の門》を再び起動させる!!」
現状、ヴェイズルーグのソウルはグレード0~2の計三枚。その内二枚がブラストされて残り一枚。このままいけば、次のターンにペルソナライドを行うかボバルマインを出さないと《月の門》の再起動は行えない。
……自分で言っておいてあれだが、それは八雲カゲツに対してあまりにも楽観過ぎるか。
「山札の上七枚からレヴノローグをコール。レヴノローグとロズトニルをオーダーゾーンへ。そして手札からレヴノローグ二体をコール!」
後列全てにレヴノローグが並んだ。ボバルマインは無しのようだ。となると次のターンにはペルソナライドがとんでくるか?
「レヴノローグのブースト、レヴノローグでアタック!」
「ガード」
手札のクリティカルトリガーで15000シールドでガードを行う。さて、問題は次の攻撃からだ。
「レヴノローグのブースト、ヴェイズルーグでアタック! そしてスキル発動! カウンターブラスト(1)する事で、オーダーゾーンからレヴノローグ二枚を同じ縦列にコール! そして前列のパワー+5000!」
「ガード!」
「ツインドライブ!」
手札のオーバートリガーを使い、50000シールドでガードを行う。これで合計パワー28000のヴェイズルーグのアタックはヒットしないが、リアガードにトリガーを乗せられると厄介だな。
「ファーストチェック──ゲット、ヒールトリガー! レヴノローグのパワー+10000!」
これで八雲カゲツのダメージが一点まで逆戻りだ。リアガードのパワーを上げられたのはこの際いいだろう。どの道シールド値が足りないんだ。クリティカルじゃないだけ有情だろう。
続くセカンドチェックはノートリガーで終わった。
「レヴノローグのブースト、ロズトニルでアタック! ロズトニルは《月の門》がある時、自身のパワー+5000!」
「ノーガード」
これで俺のダメージは二点。
「ロズトニルのスキル発動! カウンターブラスト(1)する事で一枚ドロー! 続けてレヴノローグのブースト、レヴノローグでアタック!」
「ノーガード」
俺のダメージはこの攻撃で三点になった。
「ターンエンド」
「俺のターン、スタンド&ドロー!」
ここで出来るだけダメージを与えておかないと危険だ。後半になればトリガーのヒット率が跳ね上がる。
俺のライドデッキから、己の分身を高々と掲げる。
「終滅せよ!
ここからだ。ここから世界に
「ネハーレンのスキルにより、自身をソウルからコール。エネルギージェネレーターのスキルで一枚ドロー! 更に手札から《アルダーハチェット・ドラゴン》をコールし、スキル発動! 自身を退却させ、ドロップの《ドラゴニック・オーバーロード》をソウルへ!」
右前列にネハーレンを出しつつ、アルダーハチェットのスキルでバーのライドコストとして捨てていたオーバーロードをソウルへ置く。これでジエンドの永続効果が起動する!
「ジエンドのスキル! ソウルに《ドラゴニック・オーバーロード》があるなら自身の効果でドライブが減らず、パワー+5000! 更に手札から《忍竜 フシマチマドカ》と《バーニングホーン・ドラゴン》をコール」
左縦列にバーニングホーンとフシマチマドカをコールする。ついでにバーニングホーンのスキルを使ってペルソナライド用のジエンドを探しておくか。
「バーニングホーンのスキル発動! カウンターブラスト(1)する事で、山札の上七枚からジエンドを手札へ加える!」
運よくジエンドの確保が出来た。後はネハーレンのブースト要員だな。一応手札にハルブを握っているが、これはジエンドのスキル用に置いておきたい。となると、だ。
「オーダーカード《
よし、ネハーレンのブースト要員も何とか用意できた。
「最後にネハーレンのスキル発動! ソウルブラスト(1)する事で、自身とヴァンガードのパワーをそれぞれ+5000!」
準備は整った。これでバトルといこうか!
「ジエンドでアタック! この瞬間にバーニングホーンのスキル発動! ジエンドがアタックした事により、自身のパワー+5000!」
「ノーガード」
八雲カゲツのダメージはヒールトリガーを踏んだ事もあり一点。余裕があるからこそノーガードで様子を見るのだろう。
「ツインドライブ! ファーストチェック──ゲット、クリティカルトリガー! ジエンドのパワー+10000、クリティカル+1!」
「ダメージチェック──ゲット、ドロートリガー! 一枚ドローし、ヴェイズルーグのパワー+10000」
八雲カゲツのダメージチェックの二枚目はノートリガーだった。しかし、やはりトリガーを引いて来たか。本当に嫌になるほどの幸運だ。けれどこれで八雲カゲツのダメージは三点だ。
「ジエンドのスキル発動! バトル終了時、カウンターブラスト(1)と手札二枚を捨てる事で自身をスタンドさせる! 《ドラグリッター ハルブ》を捨ててスキル発動! ジエンドの能力で手札から捨てられるなら二枚分として扱う! 更にこの時、自身のスキルにより後列の(R)にコールされてパワー+5000!」
これで中央後列にハルブをコールし、ジエンドもスタンド。さて、追撃といこうか!
「ハルブのブースト、ジエンドでアタック! バーニングホーンの自己強化も発動だ!」
クリティカル込みでジエンドのパワーは46000。さぁ八雲カゲツ。これをどう防ぐ?
「レヴノローグとロズトニルでインターセプト! 更に手札からレヴノローグ二枚でガード! この時、ヴェイズルーグのスキル発動。幻真獣が(G)に置かれた時、ドロップから幻真獣ユニットを山札の下に戻してシールド+5000!」
そして八雲カゲツはドロップから三枚のレヴノローグを山札の下へ戻した。なるほど、ラムズデンのライドコストで捨てたレヴノローグ含めて三枚分のシールド強化か。
「これで35000シールド、合計58000でガード!」
「ツインドライブ!」
こちらのパワーは46000。トリガーを一枚引いたところで突破は出来ない。ファーストチェックはノートリガーだったので、この時点でジエンドの攻撃は失敗が確定した。
「セカンドチェック──ゲット、フロントトリガー! 前列のパワー+10000!」
《焔の巫女 パラマ》をセカンドチェックで引き当て、他の前列ユニットにパワーが追加される。これは嬉しい誤算だ。
「フシマチマドカのブースト、ネハーレンでアタック! フシマチマドカは相手のドロップが4枚以上あればパワー+2000!」
「ガード」
パワー35000のネハーレンをヒールトリガー一枚でガードされた。ヴェイズルーグがドロートリガーでパワーが上がっているから止められやすいな。
「フシマチマドカのブースト、バーニングホーンでアタック!」
「ノーガード」
これで八雲カゲツのダメージは四点となった。……四点か。欲を言えばもう一点ほしいところだが、及第点ではあるか。
「ターンエンド」
「俺のターン。スタンド&ドロー!」
次の八雲カゲツのターン。ここを凌げなければ俺に勝利は無い。さて、どう出てくる?
「未来のデッキ相手でも動じずに突っ込んでくるその度胸。羨ましいよ。それは俺にはない、紛れもない君の強さだ」
「まだ勝負は終わっていない。そのデッキの本気を見せてくれよ。俺はその本気をも超えてやるッ!」
「いいねぇ。フューチャーリーグでこのデッキと戦ったプロでもそんなセリフは出てこなかった。……楽しい。そうだ。俺は今、君とのファイトに魅せられている」
「だが一番ではない。そうだろう?」
「あぁ、そうだね。俺の一番は今も変わらず、真夜中の遊園地が胸に煌めいている。あの光景こそが――俺という月を照らす太陽だッ!!」
晴れやかな表情で八雲カゲツは言う。そこにはもう、最初のような幽鬼の如き顔はない。
「月の試練、続行だ! ペルソナライド!」
これでヴェイズルーグのスキル、《月の門》の再起動が出来るようになった。
「《月の門》、起動! 二枚レヴノローグを公開し、一枚をコール! もう一枚をオーダーゾーンへ! 更にヴェイズルーグのスキルで再起動! ロズトニルをコールし、レヴノローグ一枚をオーダーゾーンへ!」
インターセプトで退却したユニットを埋めるように左右前列にロズトニルとレヴノローグがコールされた。
「そしてこれが今の俺の全力だ。太陽光を反射する星、幻真獣を導く月の輝き──オーダーカード《
ペルソナライドの上、更にパワーを上げてきた。一気に防御がきつくなってきたな。
「レヴノローグのブースト、レヴノローグでアタック!」
「ノーガード」
ここは通す。とにかく致命的な攻撃だけは喰らわないようにしないといけない。
「ダメージチェック──ゲット、クリティカルトリガー! ジエンドのパワー+10000!」
よし。これでペルソナライドのパワー上昇を相殺出来た。俺のダメージは四点。クリティカルが乗っていないリアガードの攻撃を後一回受けられる。
「レヴノローグのブースト、ヴェイズルーグでアタック! スキル発動! オーダーゾーンからロズトニルとレヴノローグ同じ縦列にコールし、前列のパワー+5000!」
やはりと言うべきか、ロズトニルを出してきたか。このままだと二体のロズトニルでネハーレンとバーニングホーンが退却させられる。実質、インターセプトの強制だ。
今のヴェイズルーグのパワーは43000。完全ガードを切るとロズトニルによってシールド値に変換される前に前列のリアガードが退却させられてしまう。
「ネハーレンとバーニングホーンでインターセプト! 更に手札からフシマチマドカ、アルダーハチェットを(G)へ! フシマチマドカは相手のドロップが四枚以上でシールド+5000、八枚以上で更に+5000! アルダーハチェットも自身のスキルでシールド+5000! トリガーによるパワー上昇も含め、合計58000でガード!」
「ツインドライブ!」
ネハーレン、バーニングホーン、フシマチマドカ、アルダーハチェットの四枚で35000シールドを作り、ガードを行う。
「ファーストチェック──ゲット、クリティカルトリガー! ロズトニルのパワー+10000、クリティカル+1!」
続くセカンドチェックはノートリガー。そうなると完全ガードの切り方は決まったか。
「レヴノローグのブースト、ロズトニルでアタック!」
「ノーガード」
クリティカルが乗っていないロズトニルでの攻撃。これを受けて俺のダメージは五点となった。
「……ロズトニルのスキル発動! カウンターブラスト(1)する事で一枚ドロー! 続けてレヴノローグのブースト、ロズトニルでアタック!」
「完全ガード!」
バーのスキルで持って来ていた完全ガードをここで切る。そして八雲カゲツはロズトニルのスキルを使用した事により、ダメージゾーンの四枚全てが裏側になった。
ロズトニルのスキルを使う前、手札を見て一瞬考えて発動させたという事は、何かを引きたかったのだろう。それは何だ?
次のペルソナライド用のヴェイズルーグ? 俺の攻撃を一点で抑える前提で《
……いや、もしかして……。
「ターンエンドだ」
「俺のターン、スタンド&ドロー!」
俺の手札は四枚。ここから前列のリアガードを準備して、反撃開始だ!
「次は俺の全力をあんたへ叩き付ける! ペルソナライド──ジエンドォ!!」
ペルソナライドで一枚ドロー。よし、このカードならいける!
「バーニングホーンをコールし、スキル発動! 山札の上七枚から──」
オーバーロード名称のユニットを引き入れて、リアガードにする。七枚の中のオーバーロード名称のユニットは……。
「──《ドラゴニック・オーバーロード》を手札へ! そしてそのままコール!」
勝つ為の準備は全てやった。後はバトルでトリガーに賭ける!
「ハルブのブースト、ジエンドでアタック! バーニングホーンのスキルで自身のパワー+5000!」
「ロズトニル二体でインターセプト! 更に手札からレヴノローグでガード! ヴェイズルーグのスキルでドロップのレヴノローグ三枚を山札へ戻し、それぞれシールド+5000!」
「ツインドライブ!」
ジエンドのパワーは31000。それに対し30000シールドを作って合計43000のガードか。
「ファーストチェック──ゲット、クリティカルトリガー!」
ここだ。ここが俺の分水嶺だ。今までは基本的にジエンドへ全て割り振っていた。自身をスタンドさせるスキルがあるから、追撃時の圧を高めるのは重要だ。
だが、セカンドチェックでトリガーを引けずに終わればまずい。残り七枚ある八雲カゲツの手札には、完全ガードが一枚は握られている筈だ。もしかすると二枚……いや、可能性として高いのは一枚か。
前のターン、カウンターブラストが枯渇する事が分かっている筈なのに、迷った末にロズトニルのスキルでカードを引きに行ったのは何故か。次の自分のターン用の攻撃札を引きに行くにしてはあまりにも不自然だ。
だとすれば、手札のシールド値が心もとないのか。八枚ある手札でシールド値を気にするという事は、少なくとも二枚はシールドに変換出来ないカードが手札に握られている可能性が高い。
八雲カゲツのデッキでシールド値に変換出来ないカードなど《月の門》を除けば二種類だけだ。ヴェイズルーグと、オーダーカードである《
そう考えるならば、このクリティカルトリガーはリアガードへ割り振るのが一番勝率が高い。
「オーバーロードのパワー+10000、クリティカル+1! 続けてセカンドチェック──ノートリガー」
セカンドチェックはハルブ。これでジエンドの攻撃で完全ガードを引き出せる確率が上がった!
「ジエンドのスキル発動! 手札のハルブを捨てて自身をスタンド! ハルブのスキルで自身を後列へコールし、パワー+5000!」
ブースト済みのハルブを退却させ、新たなハルブがコールされる。さぁ、二回目の攻撃だ!
「ハルブのブースト、ジエンドでアタック! バーニングホーンは更にパワー+5000!」
「……ッ! 完全ガード!」
「ツインドライブ!」
一瞬迷った。ここでブラフを張る意味も無いだろうから、完全ガードはあの一枚である可能性が更に上がった。ここでほしいトリガーは、一つのみだ!
「ファーストチェック──ノートリガー」
次だ。次のチェックで……ともすればこのファイトの勝者が決まる。
「セカンドチェック──ゲット、クリティカルトリガー! バーニングホーンのパワー+10000、クリティカル+1!!」
「ぐぅっ、まさか……最初からこれを──ッ!?」
「これが俺が最も勝率が高いと判断した割り振りだ。二回目のツインドライブでクリティカルトリガーを引けるか……俺は引ける方に全てを賭けた」
これで左右両方のリアガードのクリティカルが2。ダメージが四点の八雲カゲツは、これでどちらの攻撃も通せなくなった。
完全ガードを切って残りの手札は五枚。その中に完全ガードはあるか? シールド値は足りるか?
「あんたはリアガード一体の攻撃は通さざるを得ない。全ての攻撃を凌ぐほどのシールド値がない。俺はそう予測して、この盤面を作り上げた」
「……もし、完全ガードを二枚握っていたらどうする?」
「握っていたならあんたの
六点目ヒールトリガーは言うまでもなく低確率だが、トップ勝負もヴェイズルーグの特性も相まって分が悪い。
今、山札に眠っているノーマルユニットの数は少ない。《月の門》を起動し続けて抜いているからだ。それはトリガーのヒット率を上げる攻防一体の強みだが、同時に弱みでもある。
ヴァンガードにおいて最後のドローで逆転なんて状況は珍しくない。ペルソナライド用のグレード3、アタッカー、ブースト要員、オーダーカードによる切り返し。数え上げればキリがない。
その中でもヴェイズルーグは、後半戦になるにつれてトップ勝負に弱くなる。何せトリガーのヒット率が上がるという事は、その他のカードが無くなっていくと事と同義だからだ。
トリガーユニットはトップ勝負においては外れ札だ。パワーも弱いから出したところで打点の圧を押し付けられない。しかも今の八雲カゲツはカウンターブラスト用のダメージも残っていない。トップ勝負になったところで、俺の手札で彼の攻撃を凌ぎ切れる可能性が高い。
「さぁ勝負だ! フシマチマドカのブースト、オーバーロードでアタック!!」
「……ノーガードォ!!」
叫ぶように宣言し、八雲カゲツは山札の上に手を乗せる。
「ダメージチェック、一枚目──グッ!? ……ゲット、ヒールトリガー……ッ!!」
一枚目にヒールトリガーが出た。しかし俺のダメージは五点で、八雲カゲツのダメージは四点だ。ヒールトリガーでの回復は行われず、ダメージも五点になった。
「……二枚目──はぁ、俺の負けだ」
公開されたカードは《警邏ロボ デカルコップ》。クリティカルトリガーが六点目のダメージとなり、八雲カゲツの負けが決まった──。
ファイトが終わったところで一旦区切って、次の話でその後の展開を書こうと思います。
※2025/09/21 オリジナル設定のフューチャーリーグ周りの説明をもう少し詳しくしてみました。