「へぇー。君とカゲツ君の出会いってそんな感じだったんだね」
教会で昔話に花を咲かせていた時、途中で合流したルカさんの感想がこれだった。言った事なかったんだっけ、この話。
そんなルカさんは合流早々ミチルさんとファイトをしているが。
「ここまで聞く限りだと恨みの理由が見えてこないんだが」
「それは多分、俺が旅費を稼ぐ為に……まぁ、色々とアレな裏ファイトに誘ったからですね」
タイゾウさんが首を傾げる中、俺は当時の事を明かす。
俺が世界を旅する上で、その国の大会に出場して賞金を得る事が前提となっている。だが今生はカゲツさんとの二人旅だ。カゲツさんにはプロ時代のファイトマネーがあるとは言えルカさんが見つかる保証はないし、金銭的な理由でこの旅を終えると言うのは彼にとっては不本意だろう。
そこで過去の輪廻で度々お世話になった裏ファイト巡りも行うようになったわけだが。
「海外の大会を荒らし回ってるとその手のファイトの招待状が届くので、まぁいい機会かなと」
「負けたら臓器を売りとばされるとか聞いてなかったなぁ、俺」
「うっわ予想以上にエグかった。そりゃ恨まれるでしょ」
裏と称されるだけあって勝てばかなり稼げるものの負ければ全てを失う。正直リスクとリターンがあまり釣り合っていないのだが、こう言ったものに参加して裏にも顔を利かせておかないと不慮の事故が起こるから参加せざるを得ないというのもある。
カゲツさんの恨み言はその裏ファイトでの事だ。負ければ死ぬという極限状態の中で何度もファイトをしてきたのだ。俺は割と緩く相手をしているだけだったが、当時のカゲツさんは真面目だったので挑まれたファイトはどんどん買っていた。そして勝利とお金を積み重ねていた。
そんなカゲツさんの旅の目的だったルカさんからの言葉は、恨まれて当然と言うものだった。
「でもまぁ、それを差し引いても感謝はしてるさ。あの時ケント君が引っ張ってくれなかったら、多分腐ったままだったからさ」
「自殺でもするんじゃないかって思うくらいには酷い顔でしたし」
冗談抜きで死ぬ一歩手前なんじゃないか。当時のカゲツさんはそう思わせる表情をしていた。
「結局、カゲツさんがルカさんと再会したのは
「第一回デラックスがあった年だったな」
ルカさんが作ったチーム、ブラックアウトからも何人か出場していたな。今生の第一回デラックスの優勝者が当時のブラックアウトのリーダーだったか。
輪廻によって優勝者が違ったりするから思い出すのに時間がかかるんだよな。ミチルさんやタイゾウさんが優勝した事もあった。
「ルカは俺に光を灯してくれた。それは胸の奥で今も輝く宝物だ。だから今度は俺が彼女を支えたい。夜空に浮かぶ月のように寄り添いたいと思えたんだ」
「ちょっとカゲツ君、急に変な事言わないでよーッ!!」
カゲツさんは俺の変わりように驚いていたけれど、カゲツさんも随分と変わったな。ミチルさんとのファイトを終えたルカさんが、カゲツさんに抗議している様子を見ながらタイゾウさんが苦笑する。
「なぁ
「そうですね。俺と一緒に世界を回ってた頃のカゲツさんじゃあ出てこないセリフですね」
「お熱いねぇ」
カゲツさんがあれだけ言えるようになったのも、裏ファイトで度胸がついたからなのかも知れない。あの海外ぶらり旅もカゲツさんの糧になっているのだろう。
「あの言い回しは
「……微妙に否定しづらい事を。いや確かに数ヶ月前に似たような事は口走りましたけども」
自分の命を全て燃やし尽くすつもりで色々と吐き出した宿命決戦。願いが叶えるという使命感と高揚感、大切な人を救えると言う安堵にシヴィルトによる精神汚染。感情がぐちゃぐちゃに混ざり合ったあの夜は、これ以上ない程に口が軽かった事だろう。
「……何か、みんな変わった気がする」
タイゾウさんの言葉に頭を抱えているとミチルさんがぼそりと呟く。しばらく昏睡状態だったし、色々変わったと感じるのは当然なのかも知れない。
「ヴァンガードのルールも変わりましたけど大丈夫ですか?」
「エネルギージェネレーターはフューチャーリーグで何度も触ってたし特に問題は無いよ。美夜呼ルカとのファイトで確認も出来たし」
さぁファイトしよう、とばかりにデッキをちらつかせるミチルさんに頷いて了承する。
結局気が済むまでにファイトしたり、カードショップ巡りをしたり、小規模大会に飛び入り参加したりで今回のアメリカ旅行は終わった。
次は結構長い話になる予定なので、その分更新が遅くなるかも知れません。